関ヶ原    1981年(昭和56年)         ドラマ傑作選

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1598年(慶長3年)豊臣秀吉の死後、朝鮮半島に渡っていた日本軍は撤退を始めた。

しかし、この朝鮮からの撤兵は、生命を賭して戦った武将たちに大いに不満を残した。

彼らは何の恩賞も得る事はなく、ただ多大な戦費と兵力を徒に浪費したのみであった。

不満の矛先は、秀吉の側近として強権を振るった石田三成に向けられ、険悪な状況になる。

三成は、秀吉の朝鮮出兵という無謀な行動の残した負の遺産に大いに苦しむことになった。


そうした中、豊臣政権の大老職についていた徳川家康は、この内部対立に巧みにつけ込み、

三成に不満を持つ加藤清正や福島正則などの武将を、次々に味方につけることに成功する。

さらに家康は、自らの養女を加藤清正に娶らせ、縁戚関係を結ぶなど、秀吉により禁止

されていた大名間の婚姻を勝手に進めるようになった。




その後、家康は、豊臣家への謀反の兆しがあるとして、会津の上杉景勝討伐に出征する。

家康と同じく大老職にあった上杉景勝は、居城の改修を行うなどして不穏な動きを見せていた。


これを危険視した家康は、秀頼の名において上洛を命じるが、景勝はこれに従わない。

家康にとっては、後方の脅威であった上杉を討伐する格好の大義名分を得たことになる。


しかし、これは三成の挙兵を挑発する策動であった。一連の家康の行動に激怒した三成は、

打倒家康を掲げ、毛利輝元、島津義弘、小早川秀秋など西国大名を糾合して挙兵する。


1600年(慶長5年)9月15日、美濃国関ヶ原(岐阜県関ヶ原町)にて、石田三成を中心とする

「西軍」総勢十万と、徳川家康を大将とする「東軍」総勢七万五千の両軍が激突となった。

西軍は数で勝っていたものの、諸将の足並みが揃わず戦況は芳しく進まなかった。


家康は事前に、西軍諸将に周到な懐柔工作を重ねており、戦局が佳境に入った後も、西軍は

実に総勢の三分の二が、戦況を傍観したまま微動だにしないといった異常な軍容となった。

それでも残る西軍部隊は奮戦し、寡勢ながらも善戦して、次第に東軍を追い詰めていった。


三成は勝利を確信したが、突如として西軍の小早川隊が東軍に寝返り、友軍に襲いかかった。

この小早川隊の造反を引き金として、寝返りを約束していた他の西軍諸将も次々と東軍に加わり、

西軍はたちまちのうちに総崩れとなった。これによって東軍が大勝し、家康の覇権が確立した。




1964年(昭和39年)「週刊サンケイ」に連載された司馬遼太郎の時代小説のドラマ化。


権謀術数に長けた老獪な徳川家康と、愚直なまでに秀吉への忠誠を貫く石田三成。

家康は徳川の世を招いて、天下に号令しようとし、三成は豊臣の世を一日でも長く存続させようとした。

そのために、一人でも多くの大名を味方につけようと、双方とも様々な多数派工作を展開する。

そうした一連の政治的策謀を重ねて勃発したのが、関ヶ原における天下分け目の決戦であった。


そこで勝ちを引き寄せるために、家康と三成が知略を競い合ったのだが、家康のほうに分があった。

家康自身、開戦前から西軍諸将に入念な懐柔工作を行い、周到な準備を重ねて東軍の勝ちが確定的になる

段階にまで政情を誘導し、最終的に勝利を手にした。


一方、三成は、その優れた行政能力によって、秀吉から過度なまでに重用され、若くして出世した事から

武功派から嫉妬を買いやすく、その生涯全体を見ても、つくづく人望には恵まれなかった。

関ヶ原では、西軍十万の実質的な指揮者として東軍との対決に臨んだものの、人望がないために諸将との

連携も上手くいかず、軍の統御に難渋した。


加えて、防諜・謀略といった感覚に欠け、家康の執拗なまでの攪乱工作を防ぐことができず、無数の

内通者を出して、西軍は内部から瓦解することとなった。

関ヶ原での敗北後、三成は再起を図って戦場から落ち延びるも捕縛され、六条河原で斬首された。


本作は、石田三成が主人公であり、ただ一途に豊臣家に対する「義」を掲げる三成に対して、家康は

天下取りへの野心を露わにし、巧妙な謀略を次々と繰り出す敵役のように描かれている。


司馬遼太郎の原作は、石田三成の立場・視点で物語が語られ、敗軍の将に光を当てた小説と言える。

作者の思いの中には、不器用ながら義を重んじるばかりに散っていった三成という人物に対する同情、

いわゆる判官びいきの気持が込められているかのようである。

   

 
(制作)TBS(原作)司馬遼太郎(脚本)早坂暁

1/2 第一夜「夢のまた夢」1/3 第二夜「さらば友よ」1/4 第三夜「男たちの祭」

(配役)石田三成(加藤剛)島左近(三船敏郎)徳川家康(森繁久彌)本多正信(三国連太郎)豊臣秀吉(宇野重吉)
豊臣秀頼(岩瀬浩規)前田利家(辰巳柳太郎)小早川秀秋(国広富之)直江兼続(細川俊之)大谷吉継(高橋幸治

小西行長(川津祐介)毛利輝元(金田龍之介)宇喜多秀家(三浦友和)上杉景勝(三沢慎吾)島津義弘(大友柳太朗
福島正則(丹波哲郎)鳥居元忠(芦田伸介)加藤清正(藤岡弘)黒田長政(菅野忠彦)細川忠興(竹脇無我

初芽(松坂慶子)北政所(杉村春子)淀殿(三田佳子)まつ(沢村貞子)阿茶の局(京塚昌子)細川ガラシャ(栗原小巻
お夏(古手川祐子)大蔵卿(賀原夏子)出雲の阿国(木の実ナナ)国友寿斎(笠智衆



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