醉いどれ天使   1948年(昭和23年)     邦画名作選

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闇市に住む人々を診る町医者の真田(志村喬)は、口は悪いが心根は優しく腕も一流。

そんな真田の元に、闇市の顔役・松永(三船敏郎)が、銃弾の傷の手当てのために現れる。

真田は松永が肺を病んでいることを知り何かと世話を焼く。

しかし若く血気盛んな松永は素直になれず虚勢を張るばかり…。



戦後の闇市を舞台に、無骨な町医者と肺病病みの若いヤクザの交流を描いた人間ドラマ。

ヤクザな松永に一歩も引かない醉いどれ医師の真田。お互いの人間らしさが全編通して描かれる。


主人公は、志村喬の演じる酔っ払いだが、根は優しい中年の医者である。この中年男は、正しい生き方を
見失っている人々に、乱暴なやり方で正しい道を指し示す。だから彼は「酔いどれ天使」なのである。


三船敏郎の演じる若者は、闇市を支配するヤクザの幹部だ。医者はこの無軌道な若者を教え導いて、
立ち直らせるのが、もともとの筋書きだった。だが狂暴に暴れまくる彼の姿が、観客の大喝采を受けた。

結局、若者はヤクザから抜け出すことが出来ず、仲間と争って死んでしまうのだが、少なくともそれは、
やりたいことを存分にやった結果の破滅であり、一種の悲壮美を帯びたヒーロー像を演出することになった。


本作は、三船敏郎の黒澤映画初出演作であると共に、志村喬の黒澤映画初主演作となった。

また結核に侵されながらも明るく生きる少女を久我美子が好演、この作品が彼女の出世作となった。




 製作  東宝

 監督  黒澤明

配役 真田 志村喬 美代 中北千枝子
松永 三船敏郎 セーラー服の少女 久我美子
岡田 山本礼三郎 ぎん 千石規子
    奈々江 木暮実千代 高浜 進藤英太郎

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