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城の召使いたちは、晩餐会でベルを手厚くもてなす。
ベルは、皆の優しさに心打たれ、楽しい時間を過ごす。

夜中、野獣の部屋に忍び込んだベルは、魔法のバラを見つける。
野獣はバラを守ろうと怒り狂い、ベルは城を飛び出してしまう。

だが途中で狼の群れと遭遇し、危機一髪の所で野獣に救われる。
ベルは傷ついた野獣を放っておけず、献身的に介抱するのだった。



     

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【第三課 第六節】

(火炉上的罐子和锅冒着气泡,蒸汽缭绕,空气里全是诱人的香气。

为了给贝儿一个惊喜,仆人们精心准备了一顿丰盛的晚餐。茶煲太太带着贝儿进了餐厅。
卢米亚跳上餐桌,一束月光透过窗子照射到他的身上)


卢米亚:亲爱的小姐,很荣幸有这个机会为你服务,我们以最热忱的心欢迎你,
现在,请先上座,放松心情,享受本餐厅特别为你准备的晚餐。

(卢米亚点了点头,贝儿身后的椅子便上前让她坐下)

卢米亚:(唱)请享用,小贵客,我们可爱的贵客。请把餐巾先围好,让我们来为你服务。
热的汤,先上口,再请尝些小西点,它的味道既甜又美,不要怀疑,去问餐具。
他们能唱,他们能跳,中国人是最好客。想要饱餐一顿就到这里来。

首先请打开菜单,选出你所想要,请享用,小贵客,请享用。
烤小排,起司烘蛋,派和布丁是甜点,所有美食都呈现给你。

唯有贵客才拥有,你孤单,你惊慌,我们会给你温暖,当你看到银器飞舞,
你将忘掉所有烦恼,说笑话,耍特技,大家一起陪伴你。


(瞧,盘子一个接一个在半空中飞舞,餐巾排着队在餐桌上跳起了舞。
贝儿看着盘子和餐巾精彩表演、跳跃,她完全被吸引了)

餐具们:你可放心大胆尽管去享用,希望你接受我们,做我们的贵客,请享用,
别烦恼,尽情享受这晚餐,请享用,小贵客,请享用。

卢米亚:欢笑离你远去,忽然人们不需要你,整个世界似乎把你给遗忘,啊,过去那些美好时光,
忽然间,消失得无影踪,十年盼望等待,得到的只有那些尘埃,希望有机会让我们重生。
寂寞无聊在城堡中游荡,松懈,偷懒,肥胖,是你燃起了我们活力。

茶煲太太:小贵客,你出现,带来生机和欢笑,酒已斟满感谢天。
叫我早把桌巾烫平,吃甜点,配热茶,亲爱的,这样最美。
当小茶杯开心的扭动,不停飞舞,心情开朗,水快开,让蒸气。快把我身上污点洗干净。
我们要给她好印象,你想要加多少? 是一勺或二勺,热诚欢迎,请享用,小贵客,小贵客!

葛士华:拜托,各位唱可以,小声一点!

餐具们:(唱)在这十年里,我们没有任何人到这里来。
这佳肴和美食是全部为你准备,当那烛光闪耀发亮,我们的歌声绝不停。

为你歌,为你唱,直到你说“我饱了”,我们会用歌声送你入梦乡,今晚有我们陪伴,
但你要先吃饱,请享用,请享用,小贵客,请快享用。



贝儿:哦,好棒了,唱得实在是太好了。
葛士华:恩,谢谢小姐,表演得很好,对不对? 好了,各位,天啊,几点了? 小姐,你该上床去睡觉了吧。

贝儿:哦,我怎么睡得着呢? 这是我在被施了魔法的城堡里的第一个晚上啊。
葛士华:魔法? 哦,谁说…这城堡被施了魔法啊? (指卢米亚)是你,对不对?

贝儿:是我自己瞎猜的,如果可以的话,我想到处去看看。
卢米亚:哦,你想参观一下么?

葛士华:哦,等一下,等一下,这不是很好的建议!
(指卢米亚)有很多地方我们是不能让她乱走的,要是让主人知道的话,你跟我就惨啦。

贝儿:(指葛士华)也许你能带我参观,我相信你对这座城堡一定非常了解。
葛士华:哦,没错,我是…好吧,我带你去。



(葛士华和卢米亚带着贝儿参观城堡里)

葛士华:我们这座城堡,它是由洛可可精心设计的。虽然表面已经有点剥落了,
但是这些图形在外面你看不到的。至于天花板呢,就是巴鲁克时代最新的创作。

就如我常说的,格调跟水准是非常重要的……哦,我说到哪了?
哦,天花板,不知道你有没有仔细的注意到上面的那些柱子…小姐?

(贝儿已经往西厢房的方向走去,葛士华和卢米亚急忙阻拦)

贝儿:那上面有什么?
葛士华:哪里?那儿,哦,哦没什么,没什么好看的,西厢房,又脏又乱,对不对。
贝儿:啊,那就是西边的厢房。

卢米亚:(指葛士华)好聪明。
贝儿:不知道他在那里面藏了些什么?
卢米亚:藏? 主人没有藏任何东西啊。

贝儿:那为什么不准去呢?
葛士华:也许你喜欢看些别的,我们这里有很漂亮的壁毯,它就挂在那边,它是从波斯来的…。
贝儿:等等再说。

(贝儿继续往前走)

卢米亚:你要不要去看看花园,或图书馆呢?
贝儿:你们有图书馆?
卢米亚:哦,是的,当然有,都是书,好多的书。

葛士华:象山一样高,就跟田地一样的广,整齐的,排好的,数不尽的书,
你一辈子都看不完的书,各式各样的书,世界各地的名著,哈哈哈。

(贝儿往回走了几步,看着他们走去图书馆的背影,又悄悄转身向西厢房跑去)



西厢房的门微微敞开着,贝儿走上前,慢慢地推开了门。
西厢房里面是个巨大的套房。目之所及,全是野兽发脾气后留下的证据。

窗帘就像一块块的碎布条挂在杆上,那些一看就很漂亮的花瓶被打碎散落在地。
贝儿转过身,因为她以为有人在身后正盯着她。

只见,墙上挂着一幅破损的年轻人画像。
她发现那不过是画里那个年轻人的蓝色眼睛,这显然是一张皇室的画像。

他的脸已经很难辨认,但是那双眼睛的部分还完好无缺。
向窗边看去,有个小阳台,里面有一张桌子。

桌子上有一个玻璃瓶,而里面是一枝美丽的红玫瑰,玫瑰漂浮着。
贝儿朝着桌子走去,慢慢地将手伸向瓶子。

“谁准你到这来的?”
突然,野兽对着贝儿咆哮道。

“对……对不起”
她立马远离桌子。

野兽不断逼近她。

“我警告过你不准来这的”
“我没有恶意”

“你知道你会弄坏什么吗?”

野兽的爪子挥出去,穿透了一根靠近阳台门的细柱。
伴随着可怕的开裂声,柱子开始破碎,碎片四处散落,落到了靠近玫瑰的玻璃瓶那儿。

野兽眼里满是惊慌。
野兽飞身过去护住了玫瑰,竭尽全力地保护着它。

“对不起,我…”
“滚!”

他回过头吼道。

“啊,天呐。”
她转过身逃了回去。

她跑出房间,跑下长长的走廊,以及更长的楼梯,一直奔向城堡前门。

“你要去哪里啊?”

卢米亚和葛士华问她要去哪里,她也没有停下来和他们说话。

“不管我答应过什么,我都要离开这里!”
她回头叫道,继续往前跑。

“不,小姐,别走。你别走啊”


贝儿没有花多长时间就找到了费力。
贝儿把它拉出了马厩,然后迅速上马。

片刻之后,他们跑到了包围着城堡的森林当中。
可他们还没跑出多远,就遇上了森林里游荡的狼群。

饥饿的狼群流着口水将贝儿和费力团团围住。
一只狼追着费力的后腿,它巨大的下颚猛咬过来。

紧接着,另一只狼加入攻击。
费力又是乱踢,又是狂跳,试图保护自己。

当它的后腿踢到半空中时,贝儿被甩下马鞍,飞落到了旁边的雪堆上。
贝儿站起来,疯狂地环视四周,想找点东西来保护自己。

她看到了一根粗树枝,就抓了起来,在面前挥舞着。
一只狼朝着她冲上来,她挥着树枝,击中了狼的身体。

尽管她奋力回击,但狼群还是继续地涌上前来。
贝儿不断后退,她的心脏猛烈地撞击着,恐惧感淹没了她。

她听见头顶一声嗥叫,只见最大的一只狼正站在她上方的岩脊上准备扑过来。

这时,她听到一声嚎叫以及砰的落地声,感到身后一阵风吹草动。
她转过身,看到了野兽,十分震惊。他已跳入狼群当中了。

有一些狼已经退后,看上去正舔着伤口。
突然,最大的头狼站立着,竖起颈毛,露出牙齿。

野兽背对贝儿,她可以看见狼群咬到了他身上哪些地方。
这只大灰狼以一个流畅的动作跳上了野兽的背。

头狼对准野兽的脖子张开了嘴。
接着,野兽用尽最后的力气将头狼甩了出去。

头狼飞到空中,接着砰的一声,撞在了一块大石头上。
其他狼看见首领被摔晕了,惊慌地逃走了。


野兽倒在了雪地上。他的伤口接触到的那些地方,亮白的雪花变成了红色。
贝儿直直站着,一动不动。

她低头看向野兽躺着的地方,知道这是自己逃跑的机会。
他没法跟着她,更不可能设法阻止她。

这时,他蓝色的眼睛对上她的目光,只是短暂的一瞬间,但足够贝儿看清那双眼里的痛苦与脆弱,
足够让她做出决定:她不会把他留在那儿,伤痕累累,躺在雪地里。

她跑过去,跪倒在他身旁,拉下斗篷盖在了他的身上。
她钻到野兽的肩膀下,用力向上撑,让野兽靠着她,像拄着拐杖那样。

他痛苦地咆哮着,痛感袭来时,他变得更重了。
贝儿心慌意乱。她需要把野兽送回城堡去——不然就来不及了。



(贝儿把野兽放在马背上回到城堡。她细心地为野兽包扎伤口)

贝儿:来,把手给我。

(野兽甩开贝儿的手)

贝儿:我帮你擦药。
野兽:(发怒)好痛!
贝儿:如果你不乱动,就不会那么痛了。

野兽:都是你跑走才害得我受伤的。
贝儿:谁叫你要吓我,你不吓我,我才不会跑走呢。

野兽:你不应该到西厢房去。
贝儿:你才应该学学控制自己的脾气。

(贝儿拿起野兽的手)

贝儿:小心哦,这会有一点点刺痛。

(野兽做痛苦状)

贝儿:对了,谢谢你刚才救了我。

(接着,贝儿又轻轻地说。野兽听后,竟不好意思地说)

野兽:啊? …不客气。



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【注 釈】

【好聪明】(=说话不慎)  このまぬけめ。(Nice going)
「好聪明」は反語。この場面では、軽々しく口をすべらせたコグスワースを非難している。

【目之所及】mù zhī suǒ jí(=眼睛能看到的地方)  見渡してみると。
<用例> 目之所及一片田园风光。(見渡す限り田園風景が続いている)

【谁叫你】(=都怪你)  お前のせいだ。
<用例> 谁叫你不听话! (お前が駄駄をこねるからだ)

【做痛苦状】zuò tòng kǔ zhuàng(=产生痛苦的状况)  苦痛の表情を浮かべる。



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【口語訳】

(鍋が煮立ち、フライパンがジュージュー音をたて、厨房には食欲をそそるにおいがたちこめている。
ベルを歓迎するため、召使いたちは、心をこめて盛りだくさんの料理を用意した。

ポット夫人がベルを案内して食堂に入って来る。
ルミエールが食卓に跳び乗ると、窓から差し込む月の光が、スポットライトのように彼を照らし目立たせる)


ルミエール:親愛なるお嬢さま、貴女をお迎えして感激の極みです。
今宵は、腕によりをかけた料理を、ごゆっくりお楽しみください。

(ルミエールが合図すると、後ろから椅子が駆け寄って来て、ベルを座らせる)

ルミエール:(歌う)お気に召すまま、お客さま、私たちのお客さま。
ナプキンどうぞ、首の周りに。熱いスープを召しあがれ、オードブルはいかが? 

味は天下一品、お疑いなら、聞いてみて、皿たちに。
彼らは歌えて、ダンスもできる。彼らはみんなお客好き。中国人はお客好き。

たらふく食べたきゃ、こちらへおいで。
選んでみてみて、メニューを開けて。お気に召すまま、お客さま。

チーズにエッグに、スペアリブ。パイとプリンはデザートで。あらゆる美食は何でもござれ。

ひとりぼっちで、寂しがりやのお客さま、こちらへ来てみて、見てみてごらん。
空を舞う皿、ジョークに手品、あらゆる娯楽は何でもござれ。


(すると、皿たちが一つ又一つと飛び舞い、ナプキンたちは、食卓に整列し、ラインダンスを踊り始める。
ベルは、皿やナプキンたちのショーや踊りを眺めるうちに、いつしか自分自身が魔法にかかったように魅了されていった)

食器達:ストレスや、悩み忘れて、存分に、この晩餐を存分に、お気に召すまま、お客さま、心ゆくまで、楽しんで。

ルミエール:快活に笑ったあの頃、今いずこ。笑顔消え、人からは見放され、役立たずになったボク。

楽しき日々は、遠い過去。あれから十年、今こそ積もった埃を払うとき。
孤独、肥満、怠惰な暮らしは今こそおさらば。あなたに出逢えて、ボクは新たに生まれ変わった。

ポット夫人:生命と喜びを与えてくれたお客様、ワインを注いで感謝感激、雨あられ。

ナプキン折りつつ、デザートは、甘いお菓子に、熱いお茶。
小さいカップは、喜びはしゃぎ、気分はルンルン、楽しく踊る。

お湯わいて、蒸気ゆらゆら、まあたいへん、すぐに拭かなきゃ、シミかしら。
笑顔でご奉仕、お客さま、ひとさじ、ふたさじ、どれくらい? お気に召すまま、お客さま、熱烈歓迎、お客さま!

コグスワース:お願いだ、歌っていいけど、小さな声で!

食器達:(歌う)ここ十年、初めていらしたお客さま。楽しい歌と、キャンドルで、豪華絢爛、素敵なディナー。

料理はひと皿、また一皿、歌は一曲、また一曲、お腹いっぱい、叫ぶまで、お客さまが叫ぶまで。
お気に召すまま、お客さま、心ゆくまで、存分に!



ベル:素敵だわ、楽しかった!
コグスワース:おほめにあずかり、恐れ入ります。おや、もうこんな時間だ。さあ、お嬢さま、お休みになってください。

ベル:だめよ、とても眠れそうにないわ。魔法のお城で、一晩を過ごすなんて、初めてだし。
コグスワース:え、魔法のお城? そんなこと誰が言ったのですか?(ルミエールを指す)お前だな、そうだろ?

ベル:いいえ、私がそう思ったの。すこし見て回りたいの、構わない?
ルミエール:城を見学したいと?

コグスワース:え、ちょっとお待ちを。あまりおすすめできませんな。
(ルミエールに)むやみに歩き回られては困る場所があるだろ。ご主人様に知られたら、えらい事になる。

ベル:(コグスワースを指す)あなたが案内してちょうだい。お城のすみずみまでご存じでしょう?
コグスワース:え、いやそれほどでも…いいでしょう、私がご案内します。


(コグスワースとルミエールはベルに城の中を案内する)

コグスワース:城の内装は、若干傷んでますが、ロココ調の設計となっており、
城の外側からは、その装飾が見えない工夫がされております。

天井は、ネオクラシックのバロック時代のものです。
やはりバロック様式は、格調というか、品位の高さが感じられますな。ハハハ…はて、どこまで?

そうそう、天井でしたな、さて次に、上のほうにある柱にご注目を…あれ? お嬢さん、どちらへ?

(ベルが西の塔に向かって歩いていく。コグスワースとルミエールは慌てて押しとどめる)

ベル:この上は何があるの?
コグスワース:どこ? あちらの部屋? 何もありません。西のはずれの部屋で、中は汚れて埃だらけ、退屈なだけです。

ベル:そこがあの西の塔なのね。
ルミエール:(コグスワースに)このおしゃべりめ。

ベル:一体、何を隠しているのかしら?
ルミエール:隠してなんかいませんよ。

ベル:じゃ、入ってもいいのね?

コグスワース:あの…ほかのものを見られては? 見事な壁掛けがあります。
これはなんとペルシアから取り寄せたもので…。

ベル:あとで見るわ。

(ベルが歩みを進める)

ルミエール:では庭などを…それとも図書室は?
ベル:図書室があるの?

ルミエール:え、はい、ありますとも、たくさんの本が。

コグスワース:本だらけ、本の山、本の海です、整然と並ぶ数え切れない本、読み切れないほどあります。
世界各地の名著、どんな分野の本もそろってます、ハハハ。

(ベルはいったん戻りかけたが、図書室へ向かう二人の後ろ姿を見て、
踵を返し、西の塔に向けて走って行った)


西の塔の扉は少し開いたままになっている。ベルは、歩み寄り、ゆっくりと扉を押し開けた。
巨大な部屋の至るところに、野獣が怒りをぶつけた名残りがある。

カーテンは無残に引き裂かれ、花瓶は床に落ちて粉々になっている。
ふとベルは、後方に視線を感じて振り向いた。

視線の主は、壁に掛けられた若者の肖像画だった。
かなり破損しているが、王家の肖像画に描かれた若者の青い目だけは傷ついていない。


窓際に目を向けると、小さなテラスがあり、ガラス瓶の置かれたテーブルがある。
瓶の中には、一輪の美しいバラの花が漂っている。

ベルは、ゆっくりとガラス瓶に手を伸ばし、指で触れようとした。

“ここで何をしている?”
突然、野獣の声がとどろいた。

“あの…ごめんなさい”
ベルはあわててテーブルから離れる。

野獣はまっすぐベルの方へ進んで来る。
“ここには絶対来るなと言ったはずだ!”

“悪気はなかったの…”
“どんなことになるか分かっているのか?”

野獣の鋭い爪が、テラスの柱に食い込む。柱がメリメリと音をたて、ガラス瓶のすぐそばに倒れた。

その瞬間、野獣の顔に恐怖の色が走った。
彼はすぐさま、ガラス瓶に突進し、バラを守るように大きな体でつつみこんだ。


“お願い、やめて、私…”
“出ていけ!”

野獣が肩越しにわめいた。

“もういや!”
ベルは、さっと向きを変えて逃げ出した。

部屋を出て廊下を走り、長い階段を一気に駆け降り、まっすぐ城の入り口の扉をめざして走った。

“あ、どこへ行くんですか?”

ルミエールとコグスワースに問いかけられても、ベルは足を止めなかった。

“あんな約束したけど、もうここにはいられないわ!”
ベルは肩越しに叫び、走り続ける。

“待って、お嬢さん、行かないで!”

城の外へ出て、愛馬のフィリップを見つけるまで、それほど時間はかからなかった。
ベルは、手綱をつかんでフィリップを厩舎の外へ連れ出す。

すばやく、鞍にまたがり、城の門を駆け抜け、城を囲む森の中へ入って行った。


森の中に入ってまもなく、ベルたちの前には、野生のオオカミの群れが待ち構えていた。

ひもじいオオカミたちの群れは、よだれを流しながら、ベルとフィリップをぐるりと取り囲む。
一匹のオオカミの強いあごが、フィリップの後肢に喰らいつき、別のオオカミもそれに続く。

フィリップは暴れ回り、攻撃をかわそうとする。
フィリップが後肢を蹴り出したはずみに、ベルは鞍から振り落とされ、雪の吹き溜まりに突っ込んだ。

ベルはすばやく起き上がると、あたりを見回し、身を守るものを捜した。
彼女は太い木の枝を見つけて、やみくもに振り回す。

一匹のオオカミが飛びかかって来たとき、ベルが大きく振り回した枝が、オオカミの脇腹に命中した。
彼女は奮闘を続けたが、オオカミたちは次々に襲い掛かって来る。

ベルはじりじりと後ずさりする。彼女の心臓は恐ろしさで破裂しそうだった。
彼女の頭上で吠える声がして、高い岩の上から一匹のオオカミが、鋭い牙を剥き出し、ベルに襲い掛かった。


と、その時、背後で雪の上をドンと打つ重い音とうなり声が響き、つむじ風を思わせる速さで何かが動いた。
ベルがはっとして振り返ると、そこには野獣の姿が!

野獣がオオカミの群れの中央に躍り出る。
野獣は果敢にオオカミたちを蹴散らす。数匹のオオカミが、傷口をなめながら退いていく。

突然、オオカミのボスが、体中の毛を逆立て、鋭い牙で襲い掛かって来る。
野獣がベルを覆うように守る。野獣の体のあちこちは、オオカミの咬み傷で血が流れ出している。

ボスのオオカミは、すばやく野獣の背に跳び掛かり、首に鋭い牙をあてようとした。

次の瞬間、野獣は最後の力を振り絞り、相手を背中から投げ飛ばした。
宙を舞うオオカミの体は、大きな岩に激しくぶつかった。

気を失ったボスを見ると、オオカミの群れは一斉に逃げ出した。


オオカミが消えると、野獣は雪の中に倒れ込んだ。傷口から流れる血が、雪を赤く染めはじめる。
ベルは、茫然と立ち尽くしたまま、微動だにしない。

野獣は、力尽きて動くこともままならない。「逃げるなら今よ!」 
彼女の脳裏に一瞬、このまま逃走してしまおうかという考えが浮かんだ。

と、その時、野獣の青い目が、ベルを見つめた。彼の眼中には苦痛の色がありありと浮かんでいた。
ベルは心に決めた。このまま見捨てることなんてできない。

ベルは、野獣の傍らにひざまずき、マントを脱いで、傷ついた背中にかけた。
そして肩の下に、自分の体を入れて、助け起こした。野獣は、痛みにうめき、全身を震わせた。

ベルは焦った。
一刻も早く城に戻らなければ ―― 手遅れになる前に。



(ベルは野獣をフィリップの背に乗せ、城に戻ると、すぐさま傷の手当をはじめた)

ベル:さあ、手をこちらへ。

(野獣はベルの手を振り払う)

ベル:薬を塗るからじっとして。
野獣:(腹を立てる)痛いぞ!

ベル:動くから痛むのよ、じっとしてればそんなに痛くないわ。
野獣:お前が逃げるから悪いんだ。

ベル:怖がらせたのは誰?
野獣:西の塔へ行ってはならんのだ。

ベル:すぐカッとなるのがいけないのよ。

(ベルは野獣の手を取る)

ベル:じっとして、少ししみるわ。

(野獣は苦痛で歯ぎしりする)

ベル:あの、さっきは…助けてくれてありがとう。

(ベルがさり気なく礼を言うと、野獣は、きまり悪そうに呟いた)

野獣:…いいんだ。