旗本退屈男 1958年(昭和33年) 邦画名作選
元禄年間、五代将軍・綱吉の治世。
旗本退屈男こと早乙女主水之介は、剣は諸羽流の奥義を極める将軍家の直参旗本。
太平の世に退屈した彼は、外泊禁止の掟を破り、騒動を求めて全国各地へ現れる。
時に奥州を旅していた主水之介は、伊達藩お家乗っ取りの不穏な噂を耳にする。
主水之介は、持ち前の正義感から事の真相を探り始めるのだが…。
佐々木味津三原作、比佐芳武脚色、松田定次監督によるオールスター娯楽時代劇。
市川右太衛門三百本出演記念と銘打たれた「旗本退屈男」シリーズ23作目である。
伊達藩の殿様・忠宗(片岡千恵蔵)は、連日お浜御殿で酒色にひたっていた。
実は、藩の重臣たちの悪事を探るために、わざと放蕩三昧の殿様を装っているのである。
伊達藩の居城に乗り込んだ退屈男は、忠宗と出くわし、二人は対決することになる。
対決といっても、斬り合いをするわけではない。
二人は、しばし睨みあった後、忠宗が「頭が高い!」と怒鳴りつける。
すると退屈男も「頭が高い!」と怒鳴り返す。まさに腹芸の応酬である。
東映のオールスター映画では、たいてい両御大が対決する名場面が登場する。
どちらも立てねばならない会社事情もあり「さて今回はどう折り合いをつけるか?」
などと、映画内容そのもの以外にも、観客の興味がかき立てられるのである。
製作 東映
監督 松田定次