ギリシア神話事典              あ行 か行 き行  さ行 た行 な行 は行 ま行 ら行

キオス島Chios
エーゲ海東部に位置する島。トルコ海岸からわずか6kmにある。
ブドウ、イチジクなど地中海性の農産物に富み、特に乳香(Boswellia carterii)の名産地。
ホメロス(Homer)の出身地としても知られる。
(The Encyclopedia Britannia)


ギガンテスGigantes/ギガス(Gigas)
クロノスが父ウラノスの陰部を切り取った際に流れた血でガイアが受胎して生まれた巨人族。(ヘシオドス186)
アポロドロスは、ウラノスとガイアとの子供たちとし、頭と顎に濃い毛を生やし、足は竜の鱗からなるという。(アポロドロス第一巻6-1)
彼らは凄まじく巨大で、山脈や島々を引き裂きながら突き進み、燃え盛る巨大な樫の木や山脈などを武器にして、ゼウスらオリュンポスの神々に戦いを挑んだ。
しかし、この壮大な戦争はヘラクレスを味方につけたオリュンポスの神々の圧勝に終わった。ヘラクレスを味方につけた神々によって倒されたという。( → ギガントマキア)


ギガントマキアGigantomachia
---------------------------------------------------------------------

ギガンテス(巨人族)とオリュンポスの神々との戦い。

クロノスに代わり、神々の王となったゼウスだったが、ティタンたちを冥界タルタロスに幽閉したことに対してガイアが激怒した。
ガイアはまずギガンテスと呼ばれる、並外れた怪力を持つ巨人族を生み、ゼウスに戦いを挑ませた。
ギガントマイアの勃発である。

ギガンテスは、山脈や島々など、ありとあらゆる地形を引き裂きながら進軍し、巨岩や山そのものを激しく投げ飛ばして神々を攻撃した。
これに対し、オリュンポスの神々も迎撃を開始し、ティタノマキア以来の宇宙の存亡を賭けた戦争が再び始まった。

ゼウスは神託により、人間の力を借りなければ巨人族に打ち勝つことはできないと告げられていた。
このため、ゼウスは人間の女アルクメネ(ミュケナイ王エレクトリュオン Elektryon の娘)と交わり、ヘラクレスをもうけ、味方とした。

ゼウスは巨人たちを雷で討ち、デュオニュソスが杖でうち、アテナとポセイドンは火山や島を投げて押しつぶした。
ヘラクレスはオリュンポスの神々が倒した巨人たちを、毒矢をもってとどめをさしたのである。

怒りが収まらないガイアは諦めず、タルタロスとの間に怪物テュフォンを生み出す。
テュフォンは、肩に100の竜の首を持ち、腰から下はとぐろを巻いた毒蛇の姿で、立てば頭が天に触れ、両手を広げれば世界の両端に届くほどの巨漢だった。

テュフォンの襲来に神々は動物に姿を変え、慌てふためいてアイギュプトス(Aigyptos エジプト)まで逃げ出すという始末だった。
ひとり果敢に立ち向かったゼウスは雷や金剛の大鎌を使いテュフォンに応戦した。

激闘の末、シリアのカシオス山(Kasios)に追い詰められたテュフォンは、そこで反撃に転じ、ゼウスを締め上げて、金剛の大鎌と雷をとりあげ、
手足の腱を切り落としたうえ、デルフォイ近くの岩屋(Korykion コリュキオン)に閉じ込めてしまう。

そこでテュフォンはゼウスの腱を熊の皮に隠し、番人として半獣の龍女デルフュネ(Delphyne)をおき、自分は傷の治療のため、ガイアのもとへとむかった。
ゼウスがとらわれたことを知ったヘルメスとパンはゼウスの救出に向かい、デルフュネをだまして手足の腱を盗み出し、ゼウスを治療した。

力を回復したゼウスは再びテュフォンのもとへ向かい、追い詰める。
テュフォンはゼウスに勝つために、モイライ(運命の女神)たちを脅し、どんな願いもかなうという「勝利の果実」を手に入れたが、食べたとたんテュフォンは力を失ってしまう。
それは女神が騙して与えた「無常の果実」であり、決して望みがかなうことはないというものであった。

敗走を続けたテュフォンは、シチリア島まで追い詰められ、そこで最後はエトナ火山の下敷きにされた。
彼は不死身であったため、ゼウスも封印するしかなかったのである。
以来、テュフォンがもがくたびに、エトナ火山は噴火するのだという。

ここに至り、ガイアもゼウスを世界の支配者として認めざるを得なくなった。
こうしてゼウスは、永遠に神の王としての地位を確立したのである。
(アポロドロス 第一巻 4-1,4-2,4-3)

---------------------------------------------------------------------


キクラデス文明Cycladic civilization
BC3000〜BC2000にエーゲ海のキクラデス諸島(Cyclades)に栄えた文明。
19世紀末にギリシア人考古学者クリストス・ツンタス(Christos Tsountas)によって発掘された。
出土品はエーゲ海域全体に広く及んでおり、特に大理石を素材とした小偶像は著名で、扁平であるが幾何学的に単純化された形態の女性を表わす像が多い。
(The Encyclopedia Britannica)



キタイロン山Kithairn
ボイオティアとアッティカとを分ける山脈名。
アテネの北方、テバイの南にあたる。石灰岩ででき、最高標高は1,409m。
この山脈でアクタイオンは鹿に変身させられ、オイディプスは捨て子にされるなどギリシア神話にしばしば登場する。



ギネヴィアGuinevere/グウィネヴィア
-----------------------------------------------------------------------

アーサー王(King Arthur)の王妃。
カーマライド(Cameliard)王レオデグランス(Leodegrance)の王女で、美しく聡明で、勇敢な一面を持った女性。

のちに円卓の騎士のひとり、ランスロット(Lancelot)と許されない恋に落ち、それがアーサー王とその王国を破滅させるきっかけになる。

Guinevere(ギネヴィア)のウェールズ語形である Gwenhwyfar(グエンフイヴァル)は、ケルト語で「白い妖精」を意味する。

ギネヴィアは、もともとは神話や民間伝承に登場する女神や妖精の類であり、おそらくは王の領土でもあるブリテンの地自体を
象徴するような存在であったと考えられる。

彼女はブリテンの大地と王権を象徴する「超自然的」な王妃であり、アーサーの王権は妻にささえられていたといえる。

ケルトの伝承では、王はその統治対象である土地(国)と婚姻を結ぶものと考えられていた。

土地の女神を伴侶とし、統治権を獲得することによって初めて、アーサーはブリテンの君主となり得るのであり、
この伴侶なしには彼の王としての地位はあり得ないのである。

一例としてエリン(Erinn)の大地女神エリウ(Eriu)の結婚があげられる。
彼女との結婚は、アイルランドの大地を手中に収めることと同義であり、その夫には王権とその義務が与えられた。

彼女は、王権を受け継ぐ人間と結婚すると、ワインを満たした黄金の盃を差し出し、大地の支配権と太陽がもたらす光や豊穣を与えた。
この儀式は、当時のアイルランドの中心と考えられていたタラ(Tara)で行われており、王となる者はさまざまな試練を与えられたという。

またコナハト(Connacht)の女神メイヴ(Medb)は、アイルランドの9人の王と夫婦になった。
彼女は、どの王にも彼女と結婚せずにはタラで統治させなかったという。

後に王妃ゲネヴィアは、メレアガント(Maleagant)、ランスロット、アーサー、モドレッド(Mordred)らによって何度も誘拐されることになる。

これは、王位を望む多数の騎士が、統治権を自分のものにしようとしていたという意味であった。
アーサー王の王国の崩壊は、彼が王妃を失ったことと密接に関連していたのである。

Nouveau dictionnaire de mythologie celtique (Jean Markale)
The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Barbara G. Walker)
堕ちた女神 : 王妃グウィネヴィアの変遷(秋山 直美)

----------------------------------------------------------------------------------------------


ギザGiza
エジプト北部、ナイル川下流左岸の都市。
カイロの対岸に位置し、第4王朝のクフ、カフラー(Khafra)、メンカウラー(Menkaure)3王のいわゆる「三ピラミッド」がある観光地。
(The Encyclopedia Britannica)


ギザのピラミッドGreat Pyramid of Giza
------------------------------------------------------------

古代エジプト人は、膨大な労力を費やしてピラミッドを築きあげた。
世界最大のピラミッドは、紀元前2600年、第4王朝のクフ王(Khufu)が建造したギザのピラミッドである。

クフ王のピラミッドは、各底辺の長さ230m、高さ146m、2.5トンの石灰岩が230万個使用されている。
すぐ近くにあるカフラ王(Khafre)のピラミッドは、高さ136m、北側に人面獅子身のスフィンクスを配しており、
「第2ピラミッド」と呼ばれている。

ギリシアの歴史家ヘロドトスは、「10万人が年に3ヶ月働いて完成まで20年かかった」と記しているが、
クレーンもヘリコプターもない時代に、この壮大な建造物ができあがったことに驚愕の思いがする。

現代の工法では、ピラミッド建造に、どのくらいの手間がかかるものだろうか。

昭和53年、大林組の見積もりによると、石材の切り出し、運搬、積み上げから外装石材のはめ込みまで
「約1250億円」かかるとのことである。
現代工法をもってしても、大変な建設工事だということがわかる。

ピラミッドはその大きさだけでなく、謎の多さも世界最大といわれている。

クフ王のピラミッドは各面が東西南北に向っていてほぼ完全な直角を成している。
驚くべきことは各辺の長さに誤差があるといってもその差が0.1%を超えていないのである。

もう一つの事実は、クフ王の大ピラミッドが今日まで沈下されたのは5o程度という。
これを今日の先進国で大型ビルの地盤沈下基準である100年間15cmと比較してみると、ほぼ奇跡に近い数値である。

古代エジプトにおいては、王は政治的な支配者であると同時に神でもあった。
そして、王は地上での人生を終えると、神の国へと旅立つためにピラミッドに入ったのである。

ピラミッドの内部には、床、壁、天井など、いたるところに象形文字による呪文が描かれている。
これを「死者の書」といい、ミイラとなっておさめられた王の、来世における生を可能にするのだ。

つまり、ピラミッド自体が巨大な王の棺であり、また、輪廻転生のための装置なのである。
天をさし示す三角形は、その底辺が東西南北を向き、各辺の長さと角度も幾何学的に均整がとれている。

これは古代エジプト人が天文学に長けていたことを証明するとともに、王権と太陽神の信仰とを強く結びつけていたことをも意味している。

魔法事典(山北篤)

-------------------------------------------------------------------------


キビシスKibisis
ペルセウスが、水のニンフたち(ナイアデス)から貰い受けたメドゥーサの首をいれる袋。
この袋以外にはメドゥーサの首をいれられる袋はないという。
(アポロドロス 第ニ巻 4-2)


キマイラChimaira/キメラ(Chimera)
テュフォン(Typhon)とエキドナの間に生れた怪物。
ライオンの頭、山羊の胴、蛇の尾をもち、口から火を吐いた。
小アジアのカリア地方(Karia)に住み、周辺の土地を荒していたが、リュキア(Lykia)のイオバテス王(Iobates)の命令を受けたベレロフォンが、
天馬ペガソスの助けをかりて退治したとされる。
(アポロドロス 第ニ巻 3-1-2)


キメラ (Chimera)  → キマイラ


キャロル・ローズCarol Rose
-----------------------------------------------------------
イギリス、ヨークシャー州出身。ケント大学研究員、カンタベリー大学特別講師。

大学で美術史を専攻する中で、さまざまな国の絵画や彫刻、また超自然的な存在に接する機会が多かったが、
それらの神話・伝承の意義を知ろうとすることは、専門的な研究書がないため困難をきわめた。

こうした適切な研究書の欠如は、超自然的存在が特定の地域に限定されておらず、言語的、歴史的、そして文化的境界を超越した存在であることに気づき、
古代から現代にいたる世界各地の伝説、民間伝承に関する文献の研究調査をはじめる。

1998年、ニューヨークのノートン社より「世界の妖精・妖怪事典」(Spirits, Fairies, Leprechauns, and Goblins: An Encyclopedia)を出版。
昔話で馴染み深いエルフやドワーフをはじめ、世界各地で伝承されてきた妖精や妖怪・精霊たちを豊富な図版とともに紹介した一大著作である。

世界中の妖精・妖怪を網羅するほどの膨大な情報量であり、生活に密着した想像力の産物としての文化的な価値を持つ一方で、随所に盛り込まれた伝説や逸話は、
読み物としても、資料としても、眺めているだけでも楽しい一冊となっている。

また2001年には、前作に続いて「世界の怪物・神獣事典」(Giants, Monsters, and Dragons: An Encyclopedia of Folklore, Legend, and Myth)を出版。

今作は、神話や民間伝承に出現する怪物・神獣を網羅的に紹介しており、それぞれの地域や文化様式による独自性や共通性などを相互に比較することができる。
古代ギリシアや中国の神話は もちろん、アメリカ先住民やアジア、オセアニアの島々からも資料が集められており、
世界にはこれだけの怪物達が多く存在している事を圧倒的に思い知らされる内容となっている。

著者のキャロル・ローズは、序文の中で、超自然的存在の調査を通じ、自国の文化に固有と思い込んでいた信仰が他の多くの文化にも存在することを、
そして妖精や精霊は名前こそ違うが非常によく似通っていることを発見した。
これらの超自然的存在の伝説を通じて、歴史、文化、そして言語の壁を超え、世界中の人々と、これら共有の遺産を享受できることを願ってやまないと述べている。

----------------------------------------------------------------------------------------


吸血鬼Vampire/ドラキュラ(Dracula)
-------------------------------------------------------------------------------

アイルランドの作家ブラム・ストーカー(Bram Stoker)の怪奇小説「吸血鬼ドラキュラ」の主人公。
人間の生血を吸う吸血鬼。
昼間は柩(ひつぎ)の中でねむり、夜になると歩きまわり、人間をおそうといわれる。

古来、吸血鬼への恐怖から、人々は様々な防御法を考案している。
まず吸血鬼にとどめをさす方法を紹介しよう。

吸血鬼の防御法としては十字架、ニンニクなどが知られているが、決定的に吸血鬼の息の根をとめるのには
サンザシ(Hawthorn)の杭を使用するのが最も効果的である。
吸血鬼はもともとは死者なので、まず彼らの眠る場所である墓地へ赴き、棺桶を掘り返さなければならない。

不自然なほど、崩れていない死体を発見すれば、それが吸血鬼である。
吸血鬼が目覚めないうちに、サンザシの棒の一方を鋭く尖らせた杭を心臓部分に打ち込むのである。
こうすれば吸血鬼が蘇ることはないという。

<吸血鬼の特徴>
(1)血を吸う (2)日光に弱い (3)十字架に弱い (4)ニンニクに弱い (5)鏡にうつらない
(6)夜行性である (7)コウモリのように空を飛ぶ (8)高貴な身分であることが多い

吸血鬼の息の根をとめるのは、なまやさしいことではない。
ナイフで刺しても、銃を撃ち込んでも簡単には死なないのである。
死体となっても、肉の一片でも残っていれば蘇ってしまうのである。

そこで呪術的効果を持つサンザシを使用するのである。
これでも不安だったら火葬することで、吸血鬼の恐怖は完全に消え去る。

悠久なる魔術(真野隆也)

---------------------------------------------------------------------------------


旧訳聖書Vetus Testamentum/Old Testament
----------------------------------------------------------------------------------

BC538年新バビロニア滅亡後に編纂されたユダヤ教の聖典。

ラテン語の「Testamentum」は契約、つまり神と人類との約束の意。
旧約聖書はユダヤ教の聖典であり、正式の名は「律法、預言書と諸書」である。
キリスト教でも新約聖書とともに正典とされている。

「旧約」の名はキリスト教の立場からの名称であり、「コリント人への第2の手紙(2 Corinthians)」3章14にみえるが、
2世紀末頃から新約と区別するために用いられるようになった。
旧約聖書の原典であるヘブライ語正典 (24巻) の最終的決定は1世紀末頃とされている。

律法 (モーセ五書といわれる創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記) 、預言書、諸書の3部に大別される。


旧約聖書



----------------------------------------------------------------------------------------


ギュエスGyes
またはギュゲス(Gyges)。
ガイアとウラノスから生まれたヘカトンケイル(Hekatoncheir 百手巨人)のうちの一人で、50の首と100の手を持つ。
生まれたときから父ウラノスに憎まれて地下に縛られていたが、ゼウスに救われて味方となりティタン族と戦った。
(ヘシオドス 149,618,713,734,815)


キュクラデス文明Cyclades civilization
エーゲ海ほぼ中央部に位置するキュクラデス諸島に、前3200年頃ギリシア本土・クレタ島に先立って成立した青銅器文明。
壁画や大理石製の独特な石偶を多数出土。エーゲ文明の一環をなす。
(The Encyclopedia Britannica)


キュクノスKyknos
コロナイ(Colonae)王。ポセイドンとカリュケ2(Kalyke エドレミット Edremit のヘカトン Hecaton の娘)の息子。
名は「白鳥」の意。 白鳥に育てられ不死身の体を持っていた。
トロイ戦争で同じく不死身だったアキレウスと戦い、大岩の下敷きにされて窒息させられた。
ポセイドンはその体を星空に投げ上げ、白鳥座に変えたという。
(オウィディウス Ovidius『変形譚 Metamorphoses』巻12)



キュクロプスKyklops
---------------------------------------------------------------------

シチリア島(Sicilia)に住んでいといわれる一つ目の巨人。

その名前は「丸い目」を意味し、複数形ではキュクロぺス(Kyklopes)の名で呼ばれる。

ガイアとウラノスの子供で、当初はブロンテス Brontes(ギリシア語で「雷鳴」の意)、ステロペス Steropes(同じく「電光」)、
アルゲス Arges(同じく「閃光」)の三人一組であった。

彼らはその大きな一つ目と、巨大な身体から、父ウラノスに疎まれ、大地の深奥タルタロス(Tartaros)に閉じ込められる。

のちにゼウスによって解放され、クロノスに対抗したゼウスたちの味方となって、さまざまな武器を作った。

その貢献の報償として、彼らはエトナ火山(Etna)の下に仕事場を与えられ、火と鍛冶の神ヘファイストスとともに、
アポロンの弓やアテナの鎧、ゼウスの雷霆(らいてい)を作っている。

(アポロドロス 第一巻 1-2,2-1)

---------------------------------------------------------------------


キュジコスCyzikos
アナトリア半島ミュシア地方のマルマラ海(Marmara Sea)に突き出した半島にあった古代都市。
当時この半島は島で、徐々に大陸と繋がったという。
(The Encyclopedia Britannica)



キュベレKybele
----------------------------------------------------

アナトリア半島(Anatolia)のフリュギア(Phrygia)のペッシヌス(Pessinus)を中心に崇拝されていた大地と豊饒の女神。

ギリシアではゼウスの精液から生まれたとされ、もとは両性具有であったが、神々がこれを去勢したために女となり、
切断されたところからは巴旦杏(ハタンキョウ)の実が生えたとされる。

その巴旦杏の実によって身ごもったナナ(Nana)が産んだアッティス(Atthis)を愛したが、彼が他の女と結婚しようとしたことに怒って
彼の頭を狂わせたため、アッティスは自らを去勢して死んだ。

キュベレの熱心な信奉者は、みずからを聖なる儀式で去勢した男性たちで、この儀式のあと、彼らは女性の衣装をまとい、社会的に女性とみなされた。
信奉者たちは、フリュギア語でクルュバンテス(Corybantes)、ギリシア語でコリュバンテス(Korybantes)と呼ばれ、彼らは一晩中続く太古の乱打、
剣と盾を打ち鳴らす野性的な音楽、踊りに歌に叫び声によって女神への恍惚として乱交的な崇拝を示した。

(The Encyclopedia Britannica)(パウサニアス Pausanias 『ギリシア案内記 Periegesistes Hellados』7-17-9)

------------------------------------------------------


キューピッド(Cupid) → エロス


キュロス2世Kuros U(BC600〜BC529)(在位BC550〜BC529)
アケメネス朝ペルシア(Achaemenid Empire)の創始者。メディア(Media カスピ海西南方の王国)を滅ぼし、小アジア・アッシリアなどを征服し、
BC539年、エジプトを除く全オリエントを統一。BC538年、バビロン捕囚のユダヤ人を解放した。
(The Encyclopedia Britannica)


ギルガメシュ叙事詩The Epic of Gilgamesh
------------------------------------------------

バビロニア・アッシリア(Babylonia and Assyria)文学のなかで最も重要な作品の1つ。
古代メソポタミアの有名な英雄ギルガメシュの物語の集大成。

アッカド語(Akkadian language)で記された文献は、ニネベ(Nineveh)のアッシュールバニパル(Ashurbanipal)の図書館跡出土の 12枚の書板がおもなもので、
欠損部分は、メソポタミア各地およびアナトリア(Anatolia)で発見された多くの断片により補足されている。

この原型というべきシュメール語(Sumerian languages)の断章が、前2千年紀前半に書き残されている。
歴史上のギルガメシュは、前3千年紀前半にウルク(Uruk)を支配した実在の人間とされているが、詩のなかには史実と思われることは述べられていない。

親友エンキドゥ(Enkidu)が、女神イシュタル(Ishtar)の怒りに触れ、12日間の病気で苦しんだ末に没したことから、
ギルガメシュが不死を求めて放浪する、というのが本編の主要テーマ。

(The Encyclopedia Britannica)

---------------------------------------------------


ギルガメシュの物語
--------------------------------------------------------------------------

ギルガメシュはウルク(Uruk)の無慈悲で残酷な支配者だった。
彼は男を奴隷にし、女を愛人にした。

強大な力を持つギルガメシュに対してどうすることもできず、人々が助けを懇願したため、神々はエンキドゥ(Enkidu)という野人を送りこんで
ギルガメシュと戦わせ、屈服させることにした。

ギルガメシュは神殿娼婦を送ってエンキドゥを誘惑させ懐柔しようとした。
女はエンキドゥをウルクに連れて行って文化的な生活に慣れさせたが、町の結婚式でギルガメシュが初夜権を主張するのを見たエンキドゥは、彼に決闘を申し込んだ。

ふたりは互角で、長く戦った末、決着がつかないことを悟った。
こうして彼らは抱き合い、友人になった。

これにより、ウルクの人々を脅かす暴君がふたりになった。
そこで神々はフンパパ(Humbaba)という火を吐く怪物を送り込んだ。

しかしギルガメシュとエンキドゥは太陽神シャマシュ(Shamash)の支援を受け、怪物と戦った末、殺した。
次に神々は性愛の女神イシュタル(Ishtar)を使ってギルガメシュをたぶらかそうとした。
しかし彼は拒絶した。

本来非常に魅力的なイシュタルは断固たる拒絶に憤慨し、神々に不平をもらしたため、神々は「天の牡牛」という怪物を送りこんだ。
しかしそれさえもエンキドゥとギルガメシュに殺された。

そこで神々はふたりのうちのひとりがフンパパと「天の牡牛」を殺した報いを受けねばならないと決める。
彼らはエンキドゥを死なせると宣言した。

エンキドゥの死はギルガメシュに自分の死をも連想させた。
ギルガメシュはウトナピシュティム(Utnapishtim)という、大洪水を唯一生き延び不死を授かった男のことを知り、不死身になる方法を知ろうと彼を訪ねた。

ウトナピシュティムによれば、神々が洪水を引き起こしたのは人間の罪に腹を立てたからだった。
しかし水の神エア(Ea)がウトナピシュティムの夢に現れ、彼に船を作れと指示したのだという。

ウトナピシュティムはギルガメシュに、人間である自分の運命を受け入れよと助言するが、冥界の湖底に生えている草のことも教えてくれた。
それを食べれば誰でも永遠の若さを授かるのだという。

ギルガメシュは冥界に行き、その草を見つけたが、戻る途中で蛇に盗まれてしまう。
不死の探求が無駄だと知ったギルガメシュは、自分の運命を受け入れた。

Myths&Legends (Philip Wilkinson)

---------------------------------------------------------------------------------


キルケKirKe/Circe
------------------------------------------

ヘリオスとペルセイス(Perseis)の娘で、アイエテス(Aietes)の妹。

アイアイエ島に住み、気に入った人間の男がいると島に連れて行って養い、飽きると魔法で獣や家畜に変えて暮らしている。
その名前は古典ギリシア語で「鷹」を意味する。

ホメロスの『オデュッセイア』では、キルケの住むアイアイエ島にたどり着いたオデュッセウスの部下たちは、キルケの差し出す食べ物を食べて豚に変えられてしまう。
オデュッセウスのみは、魔法を打ち消す効力のある薬草モーリュ(Moly)をヘルメスからもらっていたおかげで豚に変えられずにすんだ。

キルケは魔法が効かない相手に屈して部下たちを元の姿に戻す。
しかし、オデュッセウスはキルケの魅力にとりつかれ、一年間キルケとともに過ごす。

(オデュッセイア 第十歌 133-574)

----------------------------------------------




キルムーリスKillmoulis
------------------------------------------------------

スコットランド低地地方の水車小屋に住む妖精。

口がなく、巨大な鼻から食物を食べる奇怪な妖精である。

水車小屋で粉挽きの手伝いをしてくれるが、麦に灰を吹きかけるといった悪ふざけをすることもある。

また乳しぼりも手伝い、ハロウィーンには、家族の未来を占った。

家族に災難が起こりそうになると、泣きわめきながら警告するという。


→ 水車小屋

Carol Rose (Spirits, Fairies, Leprechauns, and Goblins: An Encyclopedia)

---------------------------------------------------------------------------------------





金の羊毛皮The Golden Fleece
アイエテス(Aietes)の羊毛皮。
コルキスの聖林(アレスの杜 Sacred Wood of Ares)に奉られている。アルゴ探検隊発足の原因。
英雄イアソンは、伯父であるイオルコスの王ペリアスに王位を譲ると言われ、コルキス王アイエテスに金の羊毛皮を求め訪れるが、アイエテスは彼の要求に対し
「火を吹く牛を手なずける」「竜を退治する」などの難題を押し付けることでイアソンを追っ払おうとする。
ところが、アイエテスの娘メデイアは、イアソンに惚れてしまい、「火傷しなくなる薬」「竜を眠らせる薬」などの秘薬を彼に難題を解決させ、
そのままイアソンとともに金の羊毛皮を持ったまま、父の元を去る。 ( → おひつじ座の伝説)


ギンヌンガガプGinnungagap
北欧神話に登場する、世界の創造の前に存在していた巨大で空虚な裂け目。
ギンヌンガガプの北からは闇と寒冷の国、ニフルヘイム (Niflheim)の激しい寒気が、南からは火の国、
ムスペルスヘイム(Muspellsheim)の耐え難い熱気が吹きつけている。

世界の始まりの時において、寒気と熱気がギンヌンガガプで衝突した。
ニフルヘイムの氷は、ムスペルスヘイムの熱気により生気を与えられ、集まって、生ける肉体、原初の巨人ユミル(Ymir)の肉体を形造った。

このユミルは全ての霜の巨人たちの父となり、またのちに殺され、彼の肉体によって世界が形造られることとなる。
ニフルヘイムの氷からは雌牛のアウズンブラ(Audumbla)も生まれ、ユミルはアウズンブラから流れ出る乳を飲んで生き延びた。

アウズンブラは氷をなめ、そのなめた部分から原初の神ブーリ(Buri)が生まれた。
北欧神話の主神であるオーディン(Odin)はブーリの孫にあたる。
のちにオーディンらによってユミルが殺されたときに、ギンヌンガガプはユミルの血で満たされたという。
(Wikipedia, the free encyclopedia)


グウィネヴィア → ギネヴィア


クウレKoure (大洋の乙女)
オケアノス(Okeanos)とテテュス(Tethys)の娘たちで、神々と英雄達の母。
オケアニデス3000人のうち、ステュクス(Styx)をはじめとする年長者41名の娘たちを指す。
(ヘシオドス 346)


草薙剣(くさなぎのつるぎ) → 三種の神器(さんしゅのじんぎ)


クセルクセス1世Xerxes I(BC519〜BC465)(在位BC486〜BC465)
アケメネス朝ペルシア(Achaemenid Empire)の王。ダレイオス1世(Darius the Great BC550〜BC486)の子。
BC480年父の遺志を継いでギリシア遠征(ペルシア戦争)を行ったが、サラミスの海戦(Battle of Salamis BC480)に敗れた。
(The Encyclopedia Britannica)


グノーシス主義Gnosticism
---------------------------------------------

智恵を意味するギリシア語のグノーシス(Gnosis)から派生した言葉で、キリスト教と同時期に地中海近辺で誕生した一種の宗教思想運動。
サマリア(Samaria)の魔術師シモン・マグス(Simon Magus)が始祖だといわれている。

キリスト教の異端であると誤解している人もあるが、本来は独自に発生した。
ただし、後期になってキリスト教を一部取りいれたキリスト教グノーシス派が発生している。

グノーシス主義によれば、人間は本来神と同等の存在であったが、なんらかの原因でこの地上に落とされ、
肉体という枷をまとわされているためにその能力を発揮できないものとされる。
そこで、覚醒をへることでその体を脱却し、神のところまでいくことも可能になる。

この思想からすると、エデンの園でアダムに知識のりんごを食べさせた蛇は、悪魔などではなく、人間を神の地位へと戻してくれようとする恩恵者である。
逆に、智恵をつけた人間を追いだした神は、人間が自分の地位まで昇ってくることを恐れる抑圧者なのである。

覚醒すれば神に等しいのであるから、その途中の段階であっても、人間に不可能な行為=魔法のような行為も、簡単に実行できる。
このような思想から、後代になって多くの魔術師やオカルティストが、グノーシス派の後裔を名乗る原因となっている。

実際、現代の魔術師のルーツをたどれば、カバラ(Kabbalah)かグノーシス主義のどちらか、もしくは両方にたどりつく。 → カバラ
魔法事典(山北篤)
---------------------------------------------------------------------------


クノッソス宮殿Knossos
----------------------------------------------

クレタ島にあるミノア文明(Minoa civilization)の宮殿。
1900年にイギリスのサー・アーサー・エヴァンス(Sir Arthur Evans)によって発見された。

ミノア文明は、紀元前2600年頃、クレタ島を中心とするエーゲ海に発生した青銅器文明で、ヨーロッパ原初の文明の一つであるといわれている。

クノッソス宮殿は、階段で繋がる複数階にもなる壮麗な石造建造物で、青銅器時代の最大の遺跡であり、水洗トイレや排水施設など、
水力を動力とする高度な装置があったと考えられている。

最盛期にはクレタ王ミノスが全島を統一し、地中海の海上権を独占し、クレタは東西の諸地域と交易する海上王国となった。
当時のクノッソスは、宮殿とそれを取巻く王族、貴族らの住む都心部、さらにそれを取巻く下層民の住む郊外から成る大都市であった。

しかし、ミノア文明は紀元前1400年中頃、突然に滅びてしまう。
クレタ島の北にあるサントリーニ島の噴火による、地震・火山灰と津波によって滅びた説と、そのころ力を付けてきたギリシア文明により滅ぼされた説がある。

現在では、サントリーニ島の噴火説が有力であると考えられている。

(The Encyclopedia Britannica)

----------------------------------------------------


クノッソス宮殿の迷宮Knossos Labyrinth
クレタ島の王ミノスの妻パシファエは、牛頭人身の怪物ミノタウロスを産んだ。
そのいきさつは、海神ポセイドンは、ミノス王に一頭の牡牛を贈り、これを殺して自分に捧げたらさらなる栄光を与える、と約束した。
だがミノス王は、これを殺さず我が物としたため、ポセイドンは怒り、ミノス王の妻とこの牡牛を交わるよう仕向けた。
かくして誕生したのが牛頭人身の怪物ミノタウロスである。
ミノス王は名工ダイダロスに命じて、宮殿のなかに巨大な迷宮を作らせ、その奥にミノタウロスを幽閉した。
この迷宮は真っ暗で曲がりくねっていて、まさに複雑怪奇な地下室の集合体とも言えるものであった。
ひとたびここに入れられたら最後、二度と再び地上には出て来ることは不可能だった。
(The Encyclopedia Britannica)


クフ王Khufu [生没年未詳]
古代エジプト第4王朝(前2613−前2494)2代目の王。
大ピラミッド建造時代の王でみずからの墓としてギザ(Giza)最大のピラミッドを建設。
底辺の一辺は230m、高さは146m、平均2.5tの石灰岩を230万個積んであり、総重量は575万tという。
(The Encyclopedia Britannica)


クー・フーリンCu Chulainn
ケルト神話のアルスター伝説(Ulster Cycle)に登場する英雄。
ダーナ神族(Dannan)の英雄ルー(Lugh)とアルスターの王女デヒテレ(Deichtire)の子。
「影の国(Land of Shadows)」の女王スカサハ(Scathach)に武術を学び、戦場に投げれば30の矢じりが炸裂するという
魔槍ゲイ・ブルグ(Gae Bulg)とその用法を伝授された。
コナハト(Connacht)の女王メイヴ(Medb)の侵攻から、たった一人でアルスターを守るなど赤枝騎士団(Red Branch)
の戦士として数々の偉業を成し遂げ、アルスター最大の英雄として名を馳せる。
しかし、女王メイヴの姦計にかかり、若くして命を落とした。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)


グライアイGraiai/フォルキデス(Phorkides) (フォルキュスの娘たちの意)
三姉妹の魔女。「老婆たち」の意。単数形はグライア(Graia)。
海神ポントスとガイアの交わりから生れたフォルキュス(Phorkys)とケト(Keto)の三人の娘、パムフレード(Pamphredo)、
エニュオ(Enyo)、デイノ(Deino)を指す。
生れながらの白髪の老婆で、三人でたった一つの目と歯をもち、交代でそれを使って暮していた。
彼女らは不死で、西のはて、太陽の上らない国の岩屋に住んでいた。
彼女たちの姉妹であるゴルゴンのすみかに行く道を知っているのは、このグライアイだけだったが、たった一つしかない目と歯を
ペルセウスに奪われてしまい、しぶしぶゴルゴンの居場所を教えたという。
(アポロドロス 第ニ巻 4-2)


グラウケGlauke
1 コリントス王クレオンの娘。メディアに殺された。
2 ポセイドンの息子キュクレウス(Kychreus)の娘。アクタイオス(Aktaios)の妻。テラモンの母。


グラウコスGlaukos
1 海神。もとはボイオティアのアンテドン(Anthedon)に住むただの漁師であったが、あるとき偶然発見した不死の薬草を食べて海に飛込むと、
ネレイデスたちに清められ、下半身が魚の形で、緑色の毛とひげのある体を海藻でおおわれた海神となり、予言の能力をもつようになった。
もとは美しいニンフだったスキュラが、キルケの魔法によって恐ろしい怪物に変えられたのは、グラウコスの熱心な求愛を拒み続けたことが原因であったとされる。
(オウィディウス Ovidius『変形譚 Metamorphoses』巻13)

2 コリントス王シシュフォス(Sisyphos)の子。
3 クレタ王ミノスとパシファエの子。


クリシュナ (krishna)   → ヴィシュヌ



グリュフォンGryphon
------------------------------------------------------------------------------

鷲の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ伝説上の生物。

鳥のような巣をつくり、卵のかわりに瑪瑙を産む。

長い蹄と嘴は大きく、盃がつくれるほどだという。

故郷はインドだという。山から黄金をみつけ、黄金で巣をつくる。
狩人が狙うので夜も寝ずに番をする。

生まれながらに黄金の埋まっているところを知っているという。

最強の獣であるライオンと、最強の鳥類である鷲の組み合わせという勇壮な姿から、
古くは貴族や騎士の紋章としてよく用いられた。


ヘロドトス Herodotos「歴史 Historiai」Book III Thalia

------------------------------------------------------------------------------



クリュサオルChrysaor
「黄金の剣を持てる者」の意。
ポセイドンとゴルゴン三姉妹の一人メドゥーサの息子。
ペルセウスがメドゥーサの首をはねた際に、その流血が海にしたたり、ペガソスと共に産まれた。
生まれた時から黄金の剣を持っており、その剣を振り回したという。
オケアノスの娘カリロエ(Kallirrhoe)との間にゲリュオン(Geryon)とエキドナをもうけた。
(アポロドロス 第ニ巻 4-2)


クリュセスChryses
1 クリュセイスの父。トロイのアポロン神官。捕らわれた娘を返してもらいにギリシア陣営まで出向く。
2 クレタ王ミノスとパシファエの子。


クリュセイスChryseis
ミュシア(Mysia)のテーベ(Thebe)でギリシア軍に捕まった美しい女性。
アガメムノンの戦利品となるが、アポロンの怒りを受けて父親に返す。


クリュタイムネストラKlytaimnestra
スパルタ王テュンダレオスと妃レダの娘。ヘレネの姉妹。
はじめタンタロス3に嫁したが、のちにアガメムノンの正妃となり、オレステス(Orestes)、イフィゲネイア、クリュソテミス(Chrysothemis)、
エレクトラ(Electra)を産む。
夫がトロイ遠征中にアイギストス(Aigisthos)と情を通じ、アガメムノンが帰国した際には、風呂場で首と両手の部分を縫いつぶした下着を着せ、
夫が両手の自由を失っているところを殺した。
しかし、七年後に成人して父の仇討ちのために帰国したオレステスによってアイギストスと一緒に殺された。
(アポロドロス E3-22,6-9,6-23,6-25)


クリュティエKlytie
オケアノスとテテュスの娘。(オケアニド Oceanid 海のニンフ)
クリュティエは海のニンフでアポロンに恋焦がれていた。
クリュティエは何も口にせず日の出から日没まで、じっと太陽を見つめていた。
他のものは何も見ず、絶えずアポロンを見つめていた。
アポロンは太陽の神である。
朝太陽が昇り、一日のコースをゆっくりとアポロンは馬車で移動するのである。
彼女の足は地面に根付き、ついに一輪の花と化した。
彼女は向日葵(ひまわり)の花となり、アポロンの一日の航路を見つめつづけた。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


クリュメネKlymene
1 オケアニデスの一人でティタン神族イアペトスの妻。
アトラス、プロメテウス、エピメテウス、メノイティオス(Menoitios)の母。
クリュメネは「名高い女」の意。

2 ボイオティアのオルコメノス王(Orchomenos)ミニュアス(Minyas)の娘。アルカディア王イアソス(Iasos)の妻。アタランテの母。

3 オケアニデスの一人で太陽神ヘリオスの妻。ファエトンおよび五人の娘(ヘリアデス Heliades)の母。




クルーラホーンCluricaune
-----------------------------------------------------

酒蔵に住みつく大酒飲みの妖精。アイルランドに生息。

赤いとんがり帽に赤い上着、革のエプロン、青い靴下に銀の留め金のついた靴を履いている。

この精霊は古い屋敷の酒蔵やワインセラーに住み着いては、家の酒をこっそりいただき、
ほとんど毎日のようにクダを巻いている困った存在である。

そのいっぽうで、ビンの口がきちんと閉まっているか、樽の栓が開けっ放しになっていないかを確認したり、
屋敷の使用人が盗み酒をしないように見張ったりしている。

呑みすぎて大騒ぎすることもあるが、そんな後は少し反省して食糧庫や酒蔵を掃除することもある。

家の者になついているわけではないが、家主が引っ越す時は、酒樽の中に隠れて一緒に引っ越しをする。


Spirits, Fairies, Gnomes, and Goblins (Carol Rose)

-----------------------------------------------------------



クレオボイアKleoboia
1 アルゴス王クリアソス(Kriasos)の娘。
アストライオス(ティタン神族)の息子ヘオスフォロス(Heosphoros)の妻。
ケユクス(Keyx)、ダイダリオン(Daidalion)、フィロニス(Philonis)、テラウゲ(Telauge)の母。

2 カリュドン王テスティオス(Thestios)の妻。エウリュテミス(Eurythemis レダ Leda の母)の母。


クレイオKleio
ムーサの一人で、歴史を司る。ピエロス(Pieros マグネシア王 Magnesia マグネス Magnes の子)との間にヒュアキントス(Hyakinthos)を産んだ。


クレイオスKreios
ウラノスとガイアの子。ティタン神族。
ポントスとガイアの娘エウリュビア(Eurybia)との間に、アストライオス(Astraios)、ペルセス(Perses)、パラス(Pallas)をもうけた。


クレオパトラ7世Cleopatra VII(BC69〜BC30)(在位BC51〜BC30)
エジプトのプトレマイオス朝(Ptolemaic dynasty)の女王。プトレマイオス12世アウレテス(Ptolemaios XII Auletes)の娘。
その才知と美貌でカエサル(Julius Caesar BC100〜BC44)の愛人となり、のちアントニウス(Mark Antony BC82〜30)と結婚して専制支配を図ったが、
アクティウムの海戦(Battle of Actium BC31)で敗れ、毒蛇に身をかませて自殺。
(The Encyclopedia Britannica)


クレタ島Krete
エーゲ海の最南部にある、ギリシア最大の島。
古代ギリシアに先立って文明が発達し、エーゲ文明の一中心地となった。
クノッソス宮殿をはじめとする多くの遺跡を持つ。
(The Encyclopedia Britannica)


クレタ文明Kretan civilization → ミノア文明


クレテスKuretes
クレス(Kures 単数)。赤子のゼウスの守護をレアに託されたニンフたち。(オレアド Oread イデ山 Ide のニンフ)
クレタ島に住み、レアが赤子のゼウスをこの島のイデ山中の岩屋に隠したときに、彼のまわりで槍と楯を打鳴らしながら踊り、その騒音によって、
ゼウスの泣き声が外に漏れクロノスの耳に達するのを防いだとされる。
(アポロドロス 第一巻 1-6)


グレムリンGremlin
イギリスの作家、ロアルド・ダール (Roald Dahl) の小説「グレムリン (The Gremlins)」に登場する航空機や機械にいたずらをするとされる妖精。
人間よりもはるかに小さい種族で、イタズラ好き、曲がった爪をもち、翼と尻尾を生やした小鬼のような姿をしている。
とにかく道具や機械がある場所を好み、それらを隠したり故障させたりする。
そして人々があたふたするのを物陰から見て楽しむといわれる。
「グレムリン効果 (Gremlin Effect)」という言葉があるが、機械が誤作動を起こすのは、この妖精の仕業だと考えたのが始まりである。
(The Encyclopedia Mythica)


クロトKlotho
運命の三女神モイラ(Moira)の一人。「紡ぐ者」の意で、人間の運命を糸のごとく紡ぐ。


クロノスKronos/サタン(Saturn)/サトゥルヌス
---------------------------------------------------------------------

ウラノスとガイアの子。ティタン神族。
夫ウラノスの非道さを怨んで大鎌(Adamas)を作った母の勧めで、ウラノスの陰部を切り取った。
姉妹のレアとの間に ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドンを儲けるが、自分の息子に倒されるという予言を信じて子供たちを飲み込む。

ゼウスを身篭っていたレアはクレタ島(Krete)に赴き、ディクテ(Dikte)の洞窟でゼウスを産んだ。

クロノスは生まれたゼウスも同様に飲み込もうとしたが、レアはうぶ着に石をくるんで生れたばかりの赤子に見立て、クロノスに渡し呑み込ませた。

ゼウスが十分に成長すると、オケアノスの娘メティス(Metis)を協力者とした。
メティスはクロノスに飲み薬を与え、それによってまず石を、次いでクロノスが呑み込んだ子供たちを吐き出させた。

その後、ゼウスは父クロノスとその兄弟ティタン族に戦を仕掛けた。

ティタン戦争(Titanomachia)は十年に及び、ガイアはタルタロスに投じられた者らを味方につければゼウスは勝利を得るだろうと予言した。
そこでゼウスは女看守カムペ(Kampe)を殺し、彼らを解き放った。

キュクロプスらはゼウスに雷霆(らいてい)を与え、ポセイドンには三叉の矛を、ハデスには隠れ兜を授けた。
神々はそれらを身につけてティタンに打ち勝ち、彼らをタルタロスに閉じ込め、ヘカトンケイルらに見張らせた。

神々は世界を分け、ゼウスは空の統治権を、ポセイドンは海の統治権を、ハデスは冥界の統治権を得た。
なお、オウィディウスは、クロノスがタルタロスに落とされるまでを「黄金の時代」とした。
(アポロドロス 第一巻 1-3,1-4,1-5,1-7,2-1)
(オウィディウス Ovidius『変形譚 Metamorphoses』巻一)

---------------------------------------------------------------------


クロリスChloris
1 オケアノスとテテュス(Tethys)の娘。西風の神ゼフュロス(Zephyros)の妻。豊穣と春の女神。
2 テバイ王アムフィオン(Amphion)とニオベ(Niobe)の娘。
3 オルコメノス王(Orchomenos)アムフィオン3(Amphion)の娘。
ネレウス(Neleus)に嫁ぎ、ネストル(Nestor)の母となった。


契約の櫃(けいやくのひつ Ark of the Covenant)
契約の箱、神の箱ともいう。
古代ユダヤ人の伝承で、モーセが神から授かった十戒を記した二枚の石板を納めたと信じられている箱で、
そのふたの上に「万軍の主の名がいます」と書かれ、神の現存の場とされていた。
旧約聖書の「出エジプト記」によれば長さ約 110cm、幅、高さ各約 67cmで、長側面に金輪があり棒を通して持運ばれた。
荒野での民族放浪や戦いのときに持出されたが、のちソロモンの神殿に安置され、バビロニア王ネブカドネザル(Nebuchadnezzar)
がBC586年にエルサレムを破壊したとき失われたといわれる。
キリスト教では聖母マリアが契約の櫃と呼ばれている。
(The Encyclopedia Britannica)


グングニルGungnir
オーディン(Odin)が所有する魔法の鎗。
「イーヴァルディ(Ivaldi)の息子たち」と呼ばれる小人の細工師によって作られたもの。
穂先にルーン文字が刻まれた槍で、狙いをはずすことはない。
手に入れて以来、オーディンの象徴的な武器となった。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)


ケイロンCheiron
半人半馬の種族ケンタウロスの一人。
クロノスが雄馬の姿をかりてフィリュラ(Philyra)(オケアニド Oceanid 海のニンフ)と交合してもうけた子。
ケンタウロスのなかでは例外的に不死の存在で、賢者として評判が高く、テッサリアのペリオン山中の岩屋に住み、そこでアキレウス、
イアソン、アスクレピオスなどの多くの英雄の教育にあたった。
しかしヘラクレスがケンタウロスたちと争ったおりに、ヘラクレスが射た矢がケイロンの腕に刺さってしまった。
その矢にはどんな薬でも直せないヒュドラの猛毒が塗ってあったのでさしものケイロンも苦しみ喘ぎ死んでしまった。
ケイロンの死を惜しんだゼウスは、彼を天に舞いあげて射手(いて)座にした。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


ケクロプスKekrops
アテネの第二代王。大地から生れ、上半身は人間、下半身はへびの形をしていた。
初代アテネ王アクタイオス(Aktaios)の娘アグラウロス(Aglauros)と結婚して一人の息子と三人の娘をもうけたが、
すべて若死にしたため、彼と同様大地から生れたエリクトニオス(Erichthonios)に譲位した。
アテナとポセイドンが、アテネの所有権を争ったのは、彼の治世中の出来事で、一伝によれば、
このおり彼は知者としての評判のゆえに、この争いの判定をまかせられ、
アテナに有利な裁決を下し、その結果アテネの町は、怒ったポセイドンが引起した津波の害に苦しめられたという。
(パウサニアス 第一巻 2-6)
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


ケストスCestus
官能の帯び。アフロディテの帯。その帯を腰に巻けば、男を腰抜けにしてしまうという魔法の帯。
(New History Book 4 by Ptolemy Hephaestion)


ケトKeto
ガイアとポントスの子。
兄のフォルキュス(Phorkys)と交わり、三姉妹の老魔女グライアイ(Graiai)、見る者を石に変える三姉妹の女怪ゴルゴン(Gorgon)、
また西のはての楽園で黄金の林檎を守る竜ラドン(Ladon)を生んだ。


ゲブGeb
古代エジプト神話の大地の神。
風の神シュウ(Shu)および雨の女神テフヌト(Tefnut)の息子。
姉妹の天空の女神ヌト(Nut)と結婚し、オシリス(Osiris)、セト(Set)、ネフティス(Nephthys)、イシス(Isis)の4子をもうけたといわれる。
別の伝説では、太陽神のラー(Ra)も、この夫婦の子で、ゲブはすべての神々のなかで最古の存在であるともいう
(The Encyclopedia Britannica)


ケユクスKeyx  
---------------------------------------------------------------------

ヘオスフォロス(Heosphoros 暁の明星)とクレオボイア(Kleoboia アルゴス王クリアソスKriasos の娘)の子。

テッサリアの王ケユクスには、最愛の妻がいた。
風の神アイオロスの娘、アルキュオネ2(Alkyone)である。

二人は片時もお互いの側を離れない、仲の良い夫婦だった。

ゼウスとヘラの夫婦のようだと噂され、お互いを「ゼウス」「ヘラ」と呼び合った。
しかし、このことが神々の怒りを買ってしまった。

王国に天災や異変が続くようになった。
ケユクスは、神々の怒りを鎮めるため、船出して神託を伺うことにした。

海の嵐の恐ろしさを知っているアルキュオネは必死で反対した。
それを振り切って船に乗り込んだケユクスを、アルキュオネは泣く泣く見送った。

悲劇は起こった。
船出して間もなく、ケユクスの乗った船は嵐に巻き込まれ、荒れ狂う海に飲み込まれてしまった。
あわれケユクスは海の底に沈んでしまったのである。

アルキュオネは、必ず戻ると誓った夫の言葉を信じて、何日も彼を待ち続けた。

けなげに夫を待ち続けるアルキュオネを気の毒に思ったヘラは、虹の神イリスを彼女の夢の中につかわせ、夫の死を知らせた。
事実を知ったアルキュオネは、絶望のあまり海に身を投げてしまった。

愛し合う二人の悲劇を哀れに思ったゼウスは、二人の亡骸(なきがら)を二羽のカワセミに変え、新しい命を与えた。
空に舞い上がったカワセミの夫婦は、再び仲睦まじく飛び去っていった。

冬至前後の二週間、カワセミとなった娘夫婦が海上の浮巣で卵をかえす時期には、風の神アイオロスは、海に吹く風を静め、海に嵐を起さないようにした。

冬の海は荒れることか多いが、風がぴたりと止み、波が穏やかにおさまる時期がある。
船乗りたちはこの期間をアルキュオン・ディズ(Alkyon・Days)と呼んでいる。
(オウィディウス Ovidius『変形譚 Metamorphoses』巻11)

---------------------------------------------------------------------


ゲラスGeras
ニュクスの子で「老齢」の神。


ゲリュオンGeryon
三頭三身の巨人。ゴルゴンのメドゥーサがペルセウスに首を切られたとき、その傷口より出生したクリュサオル(Khrysaor)が、
オケアノスの娘カリロエ(Kallirrhoe)と交わってもうけた子。
世界の西のはての海上に浮ぶエリュテイア島(Erytheia)に住み、牛の大群を所有し、それをエウリュティオン(Eurytion)
という名の牛飼いと双頭の犬オルトス(Orthros)に番をさせていた。
その後、ヘラクレスによって退治され、牛も奪われたという。(The Encyclopedia Britannica)


ケリュケイオンkerykeion/カドゥケウス(Caduceus)
ヘルメスの伝令の杖。元々はアポロンの持ち物だが、竪琴と交換した。
柄に二匹の蛇が巻きついている杖であり、その頭にはヘルメスの翼が飾られている。
この杖は眠っている人を目覚めさせ、目覚めている人を眠りにいざなうと言われる。
死にゆく人に用いれば穏やかになり、死せる人に用いれば生き返るという魔法の杖である。
(The Oxford Classical Dictionary 3rd ed.by Simon Hornblower and Antony Spawforth)


ケルキア島Kerkira
エーゲ海イオニア諸島(Ionian Islands)北端の島。別名コルフ島(Corfu)
BC435年、ペロポネソス半島のコリントスとの不和からアテネに助けを求め、ペロポネソス戦争の要因となった。
ホメロスの「オデュッセイア」に記されたスケリア島(Scheria) はここであるという説もある。
(オデュッセイア 第五歌 34,第六歌 8)(The Encyclopedia Britannica)


ケルト人Celts
----------------------------------------------------

古代ヨーロッパの中部と西部に住み、ローマ人がガリア人(Gauls)と呼んだ人々の総称である。

その言語はインド=ヨーロッパ語族に属する。
先史鉄器時代の遺跡出土品から、南ドイツのバイエルンおよびボヘミアあたりが原住地と推定される。

前7世紀頃からフランス、スペイン、ブリテン島、イタリア、バルカン半島、小アジアなどに移動。
前4世紀にイタリアに侵入してエトルリア人居住地域に定住し、前 390年頃にはローマを略奪した。

アルプス以南のケルト人居住地域はガリア・キサルピナ(Gallia Cisalpina )と呼ばれ、ローマにとっては不断の脅威であったが、前 192年までにはローマの支配権が確立し、
西部アルプス以北もローマの属州となった。
戦士は長身で筋骨たくましかったが、各部族が統一行動をとらず、やがてローマとゲルマン人に征服された。

その社会構成は王、戦士貴族、自由農耕民の3部から成り、呪術的祭祀を担当したドルイド(Druid)僧は特に高い身分を保持した。

家族は一夫多妻、男系で、土地所有権は血族単位で考えられ、経済の基礎は混合農耕であった。
概して活発、好戦的で興奮しやすく、音楽、美術の才能にも恵まれていた。

(The Encyclopedia Britannica)

--------------------------------------------------------


ケルト神話Celtic mythology
--------------------------------------------------------

ケルト民族の神話。
古代ヨーロッパ大陸のケルト人(Celts)はキリスト教に改宗する以前には神話を書残していない。

今日ケルト神話といわれるのは、主としてアイルランドやウェールズで、中世以後に書かれた写本により伝えられた説話をさす。

その代表的なものに、ダーナ神族(Dannan)を主とするアイルランドの神話や勇士クー・フーリン(Cu Chulainn)を主人公にする「アルスター伝説(Ulster Cycle)」の叙事詩、
「マビノギオン(Mabinogion)」に収められたウェールズの神話伝説などがあり、その他アーサー王(King Arthur)伝説などのなかにも
その遺構がかなり大幅に保存されていると考えられる。

ダーナ神族は、ダヌ女神(Danu)を祖とする神々の種族で、そのなかの最もおもだった存在は、ルー(Lugh)、ヌアダ(Nuada)、ダグダ(Dagda)などであり、
クー・フーリンはルーの生れ変りであるとされる。
「マビノギオン」のなかでは、大陸で崇拝された大女神エポナ (Epona) の別名と考えられるリアンノン(Rhiannon)の活躍が特に目立つ。

(The Encyclopedia Britannica)

--------------------------------------------------------


ケルピー (Kelpie)  → 妖精


ケルビムCherubim
ヘブライ語ケルブ(Cherub)の複数形。
四つの頭と羽根、腕をもつ。足下には車輪がある。
正面は人間の顔のようであり、右は獅子、左は牛、後ろは鷲の顔をしている。
神の玉座や聖なる場所を守衛すると信じられ、契約の櫃(Ark of the Covenant)には黄金のケルビムが配置されていた。
キリスト教 (特にカトリック) では智天使(Cherub)と訳し、天使の一つとしている。美術では頭と翼だけの幼児に描かれる。
(The Encyclopedia Britannica)


ケルベロスKerberos/ヘルハウンド(Hellhound)
テュフォン(Typhon)とエキドナ(Echidona)の子。
三つの頭を持ち、尾は蛇で、体中から多くの蛇が生えているといわれる。
冥界タルタロスの番犬で、冥界から出ていこうとする者を食う。
また月の見えない虚ろな夜、松明を掲げた魔女ヘカテ (Hekate) の従者として三つ辻を徘徊し、赤い蛇の如き炎の舌を出しながら死の前触れを告げるという。
ヘラクレスの最後の難行で、ケルベロスは、彼に捕らえられ、エウリュステウス(Eurystheus)のもとへ連行されたが、その後に再び冥界に戻された。
死者は冥界に入る際、蜜せんべいをケルベロスに投げ与えることになっているという。
(アポロドロス 第ニ巻 5-12)


ケレス → デメテル


ケンタウロスKentauros
上半身は人体、下半身は馬の形をしている半人半獣の種族。テッサリアの平原を徘徊しているという。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)



玄武Black Tortoise
-------------------------------------------------------------------

玄武(げんぶ)は、中国の伝説上の神獣であり、北方を守護する水神とされる。

玄は黒を意味し、黒は五行説では北方の色とされ水を表す。

脚の長い亀に蛇が巻き付いた形で描かれる。
古代中国において、亀は「長寿」の象徴、蛇は「子孫繁栄」の象徴であった。

白虎、青龍、朱雀とともに、天の四方を司る四神(Four Symbols)のひとつとされ、
西を白虎、東を青龍、南を朱雀と、それぞれが各一方を分担して守護している。

玄武と相対する方角には朱雀がおり、一説ではこれが鶴亀の由来となっている。



日本では、奈良県の薬師寺金堂の本尊台座や、明日香村のキトラ古墳の
石室内壁にも玄武が描かれている。

中国の道教では、最高神を象徴したり、北極星とも関わりがあるとされている。


→ 朱雀(すざく)、青龍(せいりゅう)、白虎(びゃっこ)

世界の幻獣大事典(広済堂)

---------------------------------------------------------------------



コイオスKoios
ウラノスとガイアの子。ティタン神族。
姉妹のフォイベを妻とし、レト(アポロンとアルテミスの母)およびアステリアの父。


コキュトスKokytos
「嘆きの河」の意。
アケロン河の支流で、スティクス河とともに冥界を流れている河。
(オデュッセイア 第十歌 514)


コス島Kos
エーゲ海南東部、ドデカネス諸島(Dodekanisos Islands)中部の島。古代にエピダウロス(Epidauros)のドーリス人が植民。
1315年ヨハネ騎士修道会(Johanniterorden)が占領、要塞を建設。
古代には医神アスクレピオス(Asklepios)の神域があったところで、その遺跡が発掘されている。医学の祖といわれるヒポクラテスの生誕地。
(The Encyclopedia Britannica)


琴(こと)座 → オルフェウス



ゴブリンGoblin
-----------------------------------------------------

スコットランドの作家、ジョージ・マクドナルド (George MacDonald) の作品「お姫さまとゴブリンの物語 (The Princess and the Goblin)」に登場する邪悪な子鬼。

人間の子供と同じくらいの背丈を持つ小人で、多くは釣り上がった目と尖った耳をもつ。
知能程度も高く、魔法も使えるものもいる。

そのようなゴブリンは一つの部族の長になっていることが多い。
攻撃してくるときも、ゴブリンは人間と同じ様な武器を使って攻撃してくることが多い。

ただし、体があまり大きくないため、小さめの武器しか持てない。

ヨーロッパでは「悪いことをすると、ゴブリンに連れていかれるぞ」と子供をしつける際に使われたという。

El libro de los seres imaginarios (Jorge Luis Borges&Margarita Guerrero)

------------------------------------------------------



コリュバンテスKorybantes
フリュギア(Phrygia)の女神キュベレの従者たち。
激しい音楽と踊りを行いつつ、女神に従った。
この名は、また女神に仕える神官をも意味し、狂気のごとくに踊り狂う人の名称ともなっている。
(The Encyclopedia Britannica)


コリントスKorinthos
ペロポネソス半島北東部コリントス地峡に位置する港湾都市。
1996年、ドーリア式(Doric order)列柱をもつアポロン神殿を含む古代遺跡が出土した。
コリントスは、ギリシア本土とペロポネソス半島を結ぶ交通の要所である。
従って、ギリシアを支配するにはここを押さえる必要があるため、しばしば攻撃の的になった。
事実、この遺跡は、紀元前六〜八世紀の遺跡であるが、この間ローマ帝国に占領された時代があるので、ローマ時代の遺跡も多く混在している。
神話ではコリントスの創設者はシシュフォス(Sisyphos)であり、コリントスの王はその子孫であるとされる。
また英雄イアソンがメディア(Medeia)を離婚した土地とも伝えられる。( → ペイレーネの泉)
(The Encyclopedia Britannica)


コリントス同盟League of Korinthos
マケドニア王フィリッポス2世(Philip II of Macedon BC382〜BC336)がカイロネイアの戦い(Battle of Chaeronea BC338)で
アテネ・テバイ連合軍に勝利した翌年のBC337年、ペルシア討伐を主目的にコリントス(Korinthos)で結成した同盟。
マケドニアの覇権を認めないスパルタを除くギリシアの全ポリスが加盟した。フィリッポス2世は盟主として最高軍事指揮権を掌握した。
(The Encyclopedia Britannica)


ゴルゴフォネGorgophone
1 ペルセウスとアンドロメダの娘。
2 ダナオスの50人の娘のひとり。


ゴルゴンGorgon/Gorgones
-------------------------------------------

1 フォルキュス(Phorkys)とケト(Keto)の間に生まれた女怪たちステンノ(Stheno)、エウリュアレ(Euryale)、メドゥーサ(Medousa)を指す。
竜の鱗で覆われた頭、猪のような歯、青銅の手、真鍮の爪、黄金の翼を持ち、その眼に睨まれる者は、忽ち石に化してしまうという。

このうち末妹のメドゥーサは、元は美しい娘だったが、ある時その丈(たけ)なす金髪で海神ポセイドンの心を捉え、アテナ女神の神殿で彼と情を通じたため、
神罰を蒙り、髪の毛がことごとく蛇と化した。
それに抗議した姉ふたりも、醜い化け物に変えられてしまったといわれる。

後に、メドゥーサがペルセウスによって首を取られた際、他の二人は彼を追ったが、ペルセウスは姿を消すことのできる兜を
ヘルメスからもらっていたため逃げられてしまった。

(ヘシオドス275、280)(アポロドロス 第一巻 2-6, 第二巻 4-2-3)
(ヒュギヌス Hyginus, 神話集 Fabulae, 63:Danae 64:Andoromeda)
(オウィディウス Ovidius『変形譚 Metamorphoses』巻四 10)
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)

2 アイギュプトス(Aigyptos)との間にペリパス(Periphas)、オイネウス2(Oineus)、アイギュプトス(Aigyptos)、メナルケス(Menalkes)、
ランポス(Lampos)、イドモン(Idmon)を産んだ女。

-----------------------------------------------


コルネリウス・アグリッパCornelius Agrippa  [1486−1535]
-----------------------------------------------------------------

ルネサンス期ドイツの思想家で、魔術師としての名声を博した人物。

ローマ皇帝マクシミリアン1世(Maximilian I)に仕えたあと、大学で哲学を教えた屈指の知識人であったが、オカルトに詳しく、
当時の教会が容認できない魔術的な世界観をもっていたため、異端として追放。
ヨーロッパ各地を転々する羽目に追いこまれ、失意のうちに死亡した。

ヘルメス学の知識をもとに、自然の成り立ちから神の意図の理解に到達しようとするために書かれたアグリッパの著作「オカルト哲学」は、自然科学の重要な研究書として、
そして実践的な魔術書として、以降の魔術界の理論的バックボーンとなった。

このためアグリッパは「近代魔術の父」とも呼ばれている。
アグリッパの理論では、魔術は悪魔とも妖術とも関係がなく、一種の心霊能力であるとされる。

アグリッパのエピソードで有名なのは、死体の一時再生である。
あるとき、アグリッパの留守に彼の書斎に入った若者が、誤って悪魔をよびだしてしまい、首を絞められて殺されてしまう。

帰宅したアグリッパは、死体の処理に困った。(当時の彼は教会からにらまれていたので、このままでは殺人の罪で逮捕されてしまう)
そこで、悪魔をよびだして死体を再生し、町の広場を歩きまわらせて、自然死であるかのようにその場に倒れさせた。

しかし、死体に絞殺の跡があったので、せっかくの偽装も効を奏さず、逃亡しなければならなかったという。
魔法事典(山北篤)
--------------------------------------------------------------------------


ゴルディアスGordias
フリュギア(Phrygia)王。ゴルディオン(Gordion)市の創建者。
生まれは百姓で、フリュギアで内乱が起こり、神託が、王が車に乗ってきて乱を鎮めるだろうと告げたときに、ちょうど彼が牛車に乗って現れたので、ただちに王にされた。
ゴルディオン市のアクロポリスには、彼がフリュギアの神サバジオス(Sabazios)に捧げた牛車があったが、
その轅(ながえ)には非常に複雑な結び目がついていて、だれにも解けなかった。
しかし解き得た者にはアジアの支配が約束されていた。
アレクサンドロス大王がここに遠征の途中に立ち寄り、この結び目を刀で断ち切ったという。
(ヘロドトス歴史 Historiai 第ニ巻エウテルペ Euterpe)


コルフ島(Corfu)→ ケルキア島


コレー(Kore)→ ペルセフォネ


ゴーレムGolem
ユダヤ教に伝わる動き回る泥人形で、ヘブライ語で「胎児」を意味する。
律法学者 (rabbi) が祈祷などの儀式を行った後、土をこねて人形を作り、呪文を唱えて、「真理」を意味する「emeth」という文字が書かれた羊皮紙を人形の額に貼ると、
ゴーレムは完成して主人の命令に忠実に動き出す。
ゴーレムを壊す時には、額の文字から「e」を削り、死をあらわす「meth」とすることで、肉体は崩れて元の土へと戻る。
鍛冶の神ヘファイストスが作った青銅の巨人タロス (Talos) もゴーレムの一種である。
また原初の人間アダムも、魂を吹き込まれる以前はゴーレムであったという。
(The Encyclopedia Mythica)


コロスChoros
ギリシア劇に参加した合唱舞踊団。12〜15人で編成。
もとは舞踊も行い、芝居と交互に舞台に現れた。
やがて舞台下で劇を引き立てる合唱隊となり、音楽とともに歓喜や驚きの声を上げるなど観客を盛り上げる効果も担当した。
(The Encyclopedia Britannica)


コロニスKoronis
1 テッサリアのラピテス族(Lapithes)の王フレギュアス(Phlegyas)の娘。
医神アスクレピオス(Asklepios)の母。
アポロンに愛され、その子を妊娠していたにもかかわらず、神を裏切ってイスキュス(Ischys)という人間の男と結婚したために、怒ったアポロンの矢で射殺された。
彼女の死後、後悔したアポロンは、彼にコロニスの裏切りを通報したカラスの羽を黒くし、
愛人の死体から赤子のアスクレピオスを取出してケイロンに預け、養育させたという。
(アポロドロス 第三巻 10-3)

2 アトラスとアイトラ(Aithra)の娘。ヒュアデスの一人。赤子のディオニュソスの養育をゼウスから委託される。


コロボックルKorobokgur
アイヌの伝説に現れる矮小民族。
アイヌ語で「ふきの葉の下の人」の意で、雨が降ると一本のふきの葉の下に何人かが集ることができるほど小さかったという。

伝説によれば、アイヌ以前に先住していた民族で、初めアイヌと平和に交際していたが、のち争いを起して北方に去った。
北海道各地に残る竪穴は彼らの住居跡で、石器や土器を使用していた、とされる。
(The Encyclopedia Britannica)








 
         あ行 か行 き行 さ行 た行 な行 は行 ま行 ら行