パイアーケス人(Phaiakes)→ファイアケス人
パイドラPhaidra
クレタ王ミノスとパシファエの娘。→ ヒッポリュトス
バッカス Bacchus → ディオニュソスDionysos
パウサニアスPausanias
生没年未詳。2世紀後半のギリシアの旅行家。小アジアのリュディア(Lydia)出身。
全十巻の『ギリシア案内記』(Periegesistes Hellados)の著者。
これは地理のほか、歴史、宗教、神話、美術、建築なども扱っており、ありし日のギリシアの町々や神域を彷彿させる旅行案内書として価値が高い。
(The Encyclopedia Britannica)
パシファエPasiphae
太陽神ヘリオスとペルセイス(Perseis オケアニド Oceanid 海のニンフ)の娘。キルケの姉妹。クレタ王ミノスの妃。
ミノス王との間に、カトレウス(Katreus)、デウカリオン2(Deucalion)、グラウコス3(Glaukos)、アンドロゲオス(Androgeos)、アカレ(Akalle)、
クセノディケ(Xenodike)、アリアドネ、ファイドラ(Phaidra)を生んだ。
あるとき、ミノスがポセイドンに祈って授けられた雄牛を、神との約束にそむき犠牲に捧げるのを怠った。
その罰として彼女はこの雄牛に恋をするようになり、ダイダロスに頼んで雌牛の模型をつくってもらってその中に入り思いをとげた。
この交わりの結果、彼女が生んだのが、牛頭の怪物ミノタウロスである。
(アポロドロス 第三巻 1-2,1-4)
バシリスクBasilisk
アタマに冠状の突起をもつ蛇の姿をした魔物。
「王」を意味するギリシア語「バシレウス (basileus)」に由来し、名前の意味も「蛇の王」である。
古代エジプトの砂漠にいたとさいれる蛇で、全身のあらゆる箇所に毒を持ち、その視線は人を石化させる力を持つといわれる。
なお、ヘルメスの伝令の杖 (ケリュケイオン) に巻きついている二匹の蛇はバシリスクであるとされている。
Giants, Monsters, and Dragons(Carol Rose )
パックPuck
イングランドの民間伝承に登場するいたずら好きな妖精。
毛深い小柄な人間の姿か、半人半獣の牧畜の神ファウヌス(Faunus)のように、ヤギの脚を持つこともある。
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」に登場するパックは、妖精王オベロン(Oberon)と人間の娘との間に生まれた半妖精で、陽気でいたずら好きの妖精として描かれている。
パックは、だまされやすい人間相手にいたずらを仕掛け、しばしば人間を困らせ、まごつかせたりする。
また貧乏人、弱者、恋人たちの利益を図る面があると信じられている。
しかしこの妖精にも、貧乏人や虐げられている者、そして恋人たちの利益を図る面があると信じられている。
Spirits, Fairies, Gnomes, and Goblins (Carol Rose)
ハデスHades/プルート(Pluto) 冥界の神。
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クロノスとレアの子。
兄弟のゼウス、ポセイドンとともにティタンたちとの戦いに勝ったあと、くじを引いて世界を分け合い、冥界の支配権を引当てた。
ゼウスがデメテルに生ませた娘ペルセフォネを、ゼウスの同意のもとに地上からさらってきて妃とし、彼女とともに死者の国に君臨する。
キュクロプスたちから贈られた、かぶると姿の見えなくなる兜(Helm of Hades)を所有するという。
ハデスは非情の神であり、人々に恐れられた。
人々は礼拝する際、必ず目を伏せたまま生贄を捧げたという。
ヘルメスに連れられて冥界へと降り立った死者の魂は、まず悲しみの河アケロンを渡る。
そこにはカロンという強欲な渡し守がいて、渡し賃を払えない者は舟に乗せてもらえず、永遠に河岸をさまようという。
そのため、古代ギリシアでは、死者の口に銅貨一枚の渡し賃を含ませるという慣習があった。
河を渡ると、いよいよ冥界の入口である。
そこには三つの頭を持ち、尾は蛇で、体中から多くの蛇が生えている番犬ケルベロス(Kerberos)が待ち構えている。
この番犬は、冥界に入る者にはおとなしいが、出ようともくろむ者には牙をむき、決して外に出すことはなかった。
冥界の裁判は、エウロペの子であるミノスとラダマンティスの兄弟と、アイアコスの三人が務めている。
三人の裁判官は、死者たちの情状を調べて裁きを下すのである。
刑罰は、復讐の女神エリニュスたち(Erinys)によって執行される。
エリニュスたちは、悪人や罪人にいつでも襲いかかろうと、ハデスの玉座の上を飛び回っているのである。
極悪重罪人の赴くところは、冥界の奥底にある奈落タルタロスである。
ここは恐ろしいところで、炎に焼かれたり、岩を転がす役につかされたり、飢餓に苦しめられたりといった責め苦がある。
神々の怒りに触れた大悪人は、永遠にタルタロスで責め苦に遭うとされている。
なお、古代ギリシアの至る所に冥界への出入り口とされる深い洞穴があり、その奥が冥界へと通じていると考えられていた。
(トマス・ブルフィンチ Thomas Bulfinch、『The Age of Fable (伝説の時代)』 第24章、第32章)
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ハデスの隠れ兜 → アイドス・キュネエ
ハトシェプストHatshepsut [BC1503〜BC1458]
古代エジプト第18王朝6代目のファラオ(在位BC1472〜BC1458)
夫トトメス2世(ThutmoseU 在位BC1493〜BC1479)の没後、甥トトメス3世(在位BC1479〜BC1472、BC1458〜BC1425)の摂政に任命され、
やがてみずからファラオにつき、女王として先例のない権力を掌握、内治と経済復興に力を注ぎ、臣下たちに献身的な奉仕を強いた。
また紅海を下ってプント(Punt 現ソマリア)との交易に力を入れ、カルナック神殿(Karnak temple)にオベリスクを建造(1本は現存)。
やがてトトメス3世が勢力を強めて彼女の治世12年に共同統治者となった。
彼女の死が自然死か否かは明らかではないが、死後、神殿の柱や壁面、記念建造物などにある女王の浮彫や名前は、トトメス3世により削り取られた。
(The Encyclopedia Britannica)
ハトホルHathor
古代エジプト神話の女神。
天空の女神として通常ラー(Ra)の娘、ホルス(Horus)の妻とされる。
ときには彼女の名は「ホルスの家」と解釈され、ホルスの母とみなされた。
小安貝、雌牛などに象徴される繁殖、育児の神。また、歓喜と愛の女神として広く信仰された。
「西方の女王」の名のもとに、テーベ(Thebes)の地下墓地の守護神でもあり、「死者の書」(前1570−1305)には彼女を象徴するリビアの山の牛の姿が描かれている。
主聖所はデンデラ(Dendera)にあり、ホルスと息子イヒ(Ihy)とともに祀られている。
なお、古代エジプトのファラオの額についている蛇形記章は「ハトホルの眼」(第三の眼)と言われ、日輪を象徴し、王を守護する聖なる蛇(コブラ)とされている。
ハトホルは、戦いの女神としての一面を持ち、この「ハトホルの眼」という彼女の称号は、ラーが人類を滅ぼすために自らの眼をえぐって生み出した
破壊女神セクメト(Sekhmet)との同一視の結果、つけられたものである。
(The Encyclopedia Britannica)
パトロクロスPatroklos
メノイティオス2(Menoitios)とステネレ(Sthenele イオルコス王アカストス Akastos の娘)の子。
アキレウスに仕えた武将で、主人のアキレウスとは竹馬の友でもあった。
アキレウスに従いトロイ戦争に参加し、総指揮官アガメムノンと諍いを起こして出陣を拒否したアキレウスの代わりに出陣した。
ギリシア軍の劣勢を挽回するが、トロイの総指揮官ヘクトルに討たれてしまう。
(アポロドロス E4-6)
バーバラ・ウォーカーBarbara G. Walker
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アメリカの作家、フェミニスト。
1930年7月、ペンシルヴァニア州フィラデルフィアに生まれる。
10代の頃、女性への抑圧、ジェンダーの問題は「父権」の宗教であるキリスト教に存在すると結論、その宗教的な懐疑を解決するために聖書の研究を始める。
ペンシルヴァニア大学で新聞学を修め、地元の電話カウンセラーとして働くかたわら、虐待を受けた女性や妊娠した少女たちの身の上相談を担当する中で、
彼女のフェミニズムへの関心は大いに高められた。
1983年、神話・伝承事典「失われた女神たちの復権」 (The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets)を発表。
この文献は、フェミニズム、比較神話学などの手法を駆使して、世界各地の神話・伝説、宗教に秘められた女神・女性崇拝の歴史を解説した一大著作である。
1993年、アメリカ人道主義協会 (American Humanist Association) により「人道主義のヒロイン」 (Humanist Heroine) に選ばれた。
1995年、ニュージャージー全米女性組織(National Organization for Women)から「女性史を作りあげた女性」 (Women Making Herstory) として栄誉を与えられた。
著作:『タロットの秘密:その神秘な歴史と大秘儀・小秘儀』The Secrets of the Tarot: Origins, History,
and Symbolism. (1984)、
『懐疑的なフェミニスト:乙女、母親、そして老婆の秘儀』The Skeptical Feminist: Discovering the Virgin, Mother, and Crone. (1987)、
『シンボルと聖的な物体に関する女性のための辞書』The Woman's Dictionary of Symbols and Sacred Objects
(1988)、
『神聖なストーンズの本:クリスタル世界の事実と誤謬』The Book of Sacred Stones: Fact and Fallacy in
the Crystal World. (1993)、
『子供のためのフェミニストのおとぎ話』A Children's Book Feminist Fairy Tales. (1996)、
『女性たちの精神性と儀式の基本的なハンドブック』The Essential Handbook of Women's Spirituality
and Ritual. (2001)。
Humanist Profile: Barbara G. Walker(National Organization for Women of New Jersey)
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パフォス遺跡Paphos
パフォスは、キプロス島南西海岸にある港町。内陸部にギリシアからローマ時代にかけて栄えた古代都市パフォスの遺跡があり、
ギリシア神話をモチーフにしたモザイク画が保存されている。
ローマ時代に建てられた4つの邸宅(ディオニュソスの館、テセウスの館、オルフェウスの館、エオンの館 House of Aion)のほか、
海泡から生まれたというこの地の伝説に基づき、アフロディテの神殿がある。
1980年世界遺産の文化遺産に登録。
ハマドリュアデス(Hamadryades)→ ドリュアデス
パラスPallas
1 クレイオス(Kreios ティタン神族)とエウリュビア(Eurybia ポントスとガイアの娘)の子。
ステュクス(Styx)との間にゼロス(Zelos)、ニケ、クラトス(Kratos)、ビア(Bia)を儲けた。
2 アテネ王パンディオン(Pandion)の子。50人の息子とともにテセウスに殺された。
3 アテネ女神の呼称の一つ。
4 トリトンの娘。海のニンフ。アテナ女神の従者。
パラケルススParacelsus [1439−1541]
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パラケルススは、15世紀のヨーロッパに実在した、近代医学の始祖ともいうべき先鋭的な医者であり、錬金術師であり、
さらに悪魔使いでもあるという、3つの顔をもった驚異の人物である。
パラケルススは、魔術は信じなかったが、万物に魔術的力が宿っていることは信じた。
この思想に則り、鉱物を調合して薬品をつくり患者に投与することで、梅毒やペストの患者も救い、名声を博した。
また、傷の治療に熱湯をかけるか、壊疽してから切断するかしかなかった時代に、膿を絞りだし、
患部を清潔にして化膿を防ぐことで傷は自然治癒するという画期的な考えを示し、それに成功した。
しかし、あまりに歯に衣着せぬもの言いが敵をつくり、せっかく手にいれたバーゼル(Basel)大学の教授の職を棒に振り、放浪生活を送る羽目になる。
この放浪の時代に、多数の著作をおこなっている。
伝説的な人物というのは、奇妙なエピソードが必ずあるものだ。
以下はパラケルススの才能が、悪魔に由来するとしたエピソードである。
彼がインスブルック(Innsbruck)滞在中のことだが、森を散策中に奇妙な声を聞いた。
彼の名前を叫んでいるのだが、あたりに人のいる気配はない。
いぶかったパラケルススは大声でたずねた。
パラケルスス
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パラディオンPalladion
トロイにあったとされるアテナ神像。
市の創建者ダルダノス(Dardanos)のため、ゼウスによって天から下されたとされ、これがある間はトロイは不落であったが、そのことを知ったオデュッセウスは、
ディオメデスとともに市内に忍び込んでこれを盗み出し、ギリシア軍のトロイ攻略を可能にしたという。
(アポロドロス E5-13)
バラモン教Brahmanism
インド古代の宗教。バラモン(Brahmin)が司祭し指導したためヨーロッパ人が便宜的につけた名称。
仏教興起以前のヒンドゥー教(Hinduism)をいい、そのうちの最古の段階を「ヴェーダ Veda の宗教」ということもある。
アーリア人(Aryan)がインダス川上流地方に侵入し、先住民を征服してこの地方に定住、発展する間に次第に形成された信仰。
彼らは自然現象を神々として畏敬し、供犠によって神を祭ることで災厄を免れ、幸福がもたらされると信じた。
この祭りを司るバラモンが最高の階級で、王族 (Kshatriya クシャトリヤ) を第2、農工商人 (Vaishya ヴァイシャ) を第3、被征服民の奴隷
(Shudra シュードラ)
を最下位とするカースト(Caste)をつくり上げた。
やがてガンジス川上・中流へ広がっていく間に、この祭祀中心主義への反省批判が起り、自然現象の背後にあって現象を動かす原理としての梵 (Brahman
ブラフマン) と、
自己の内奥にある純粋無垢の我 (Atman アートマン 真我) とが融合する梵我一如の境地を追求する思想が出現。
ここから祭祀にとらわれない自由思想家群が現れ、このなかからブッダやマハーヴィーラ(Mahavira)が出て、仏教やジャイナ教(Jainism)を説いた。
他方、一般の人々に対しては現象を動かす原理である梵を神とし、この神ブラフマー(Brahma)を唯一最高神とする信仰を説くこととなり、このような最高神として、
ほかにシヴァ神(Shiva)やヴィシュヌ(Vishnu)神崇拝が出現しのちのヒンドゥー教となった。
(The Encyclopedia Britannica)
バリオスとクサントスBalios and Xanthos
英雄アキレウスの持つ名馬。
バリオスとクサントスはもともとポセイドンの馬だったが、ペレウスとテティスが結婚したさいに贈られた。
その後、アキレウスはトロイ戦争にニ頭を連れていき、エエティオン(Eetion)との戦争で得た名馬ペダソス(Pedasus)との三頭で自分の戦車を引かせた。
パトロクロスの死によってアキレウスが戦争に復帰したとき、ヘラはクサントスの口を借りてアキレウスに死の運命を予言した。
アキレウスの死後、バリオスとクサントスは再びポセイドンの馬になったという。
(Theoi Project Balios & Xanthos)
パリスParis
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トロイ王プリアモスとヘカベ(Hekabe フリュギア王デュマス Dymas の娘)の子。
生まれるときに見た夢が、ヘカベが産んだ燃え木が町全体を焼き尽くすというものであったことから、
やがて自分が国を滅ぼすことを意味すると解され、イデ山2(Ide)に捨てられる。
五日間は熊に育てられ、その後はプリアモスの召使アゲラオス(Agelaos)に拾われる。
のちに美貌と力を合わせ持つ若者に成長し、家畜を守っていたことからアレクサンドロス Alexandros(「守る男」の意)と呼ばれるようになる。
ヘラ、アテナ、アフロディテの三女神が、争いの女神エリスから、最も美しい者に黄金の林檎を与えると言われて美を競ったとき、
ゼウスにより、その審判役に選ばれる(→ パリスの審判)。
三人の女神たちはそれぞれ彼に賄賂を贈り、ヘラは彼を全人類の王とすること、アテナは戦いにおける勝利を約束したが、
最高の美女ヘレネを与えると言うアフロディテの約束を選び、ヘレネのいるスパルタに発つ。
スパルタ王メネラオスに歓待されて十日目、メネラオスの留守を狙ってヘレネを誘拐。それがトロイ戦争の発端となる。
ギリシア側の弓の名手、フィロクテテス(Philoktetes)に射られた際、パリスの傷は自分しか癒すことができないと言っていた
前妻オイノネ(Oinone)が住むイデ山2に向かったが、ヘレネに溺れたことで治療を拒否され、トロイに運ばれる途中に死んだ。
(アポロドロス 第三巻 12-6)
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パリスの審判Judgement of Paris
トロイ王プリアモスの息子パリスは、ヘラ、アテナ、アフロディテの三女神が、争いの女神エリスから、最も美しい者に黄金の林檎を与えると言われて美を競ったとき、
ゼウスにより、その審判役に選ばれた。
三人の女神たちはそれぞれ彼に賄賂を贈り、ヘラは「全人類の王の座」、アテナは「戦いにおける勝利」を与えることを申し出た。
しかし、「美女ヘレネ」を与えるとしたアフロディテが勝ちを得た。
ヘレネはすでにスパルタ王メネラオスの妻であったが、パリスはアフロディテの助けを得て彼女をトロイに連れ帰り、これがトロイ戦争の発端となった。
(ヒュギヌス Hyginus, 神話集 Fabulae, 92: Judgment of Paris)
ハリロティオスHalirrhothios
ポセイドンとニンフのエウリュテ(Euryte)との子。
アスクレピオス(Asklepios)の泉の近くで、アレスとアテネ王女アグラウロス(Aglauros)の娘アルキッペ(Alkippe)を犯さんとして、アレスに殺され、
アレスはポセイドンによってアレイオス・パゴス(Areros Pagos)の法廷に訴えられた。
その結果、情状酌量の余地ありとしてアレスは無罪を勝ち取るが、それ以降アレオパゴスでは、数々の重要な裁判が行われたと言う。
(アポロドロス 第三巻 14-2)
バルカン(Vulcan) → ヘファイストス
パルテノンParthenon
アテネのアクロポリス(Acropolis) 丘上にある女神アテナ(Athena)の神殿。
紀元前432年、優秀な建築家や工芸家が集められ、15年の歳月をかけて完成したドーリア式の神殿である。
ローマ帝国時代にはビザンチン教会、オスマントルコ時代にはイスラム教寺院として使われた。
しかし1687年に戦争で神殿が大破。19世紀になって大がかりな修復作業が行われ現在の姿となっている。
(The Encyclopedia Britannica)
バルデルBalder
北欧神話の光明の神。
オーディン(Odin)とフリッグ(Frigg)の息子で、アース神族(Aesir)のなかで最も美しい神。
オーディンの最愛の子だったが、悪神ロキ(Roki)の悪巧みにより、盲目の兄弟ホズル(Hodur)の手にかかって非業の死をとげたとされる。
行く先々に喜びと光をまき散らし、賢く親切で、だれからも愛された彼の死は、自分が死ぬという不吉な夢から始った。
バルデルを守るため、フリッグをはじめ神々は手を尽したが、ついにロキの悪巧みによって彼は打ち倒され
ヘル(Hel)の支配する冥界に送られてしまう。
フリッグの要請にこたえて、ヘルは全世界の者がすべてバルデルの死を悲しむのなら、彼をアスガルド(Asgard)に返そうと約束するが、
またもやロキのために、彼はヘルのもとにとどまることになった。
しかし、ラグナロク(Ragnarok 終末の日)のあとでは、彼はホズルとともに復活して新世界を支配する神々の仲間入りをするという。
(The Encyclopedia Britannica)
パルナッソス山Parnassos
ギリシャ中部、ピンドス山脈(Pindhos)中の高峰。2,452m。
古代から聖山とされ、南西麓にアポロンの神域デルファイがあり、デルファイと山頂との間にはニンフと牧神パンを祀るコリュキオンの洞穴(Korykion Cave)がある。
(パウサニアス 10-32-2)
パールヴァティ(Parvathi) → ドゥルガー
バルバロイbarbaroi
古代ギリシア人が非ギリシア人、おもにオリエント人 (とりわけペルシア人) をさした呼び名。
わけのわからない言葉を話す人という意味らしい。
ギリシア人とバルバロイとを対立的にとらえる傾向は、前6世紀なかば以降、ペルシア人のギリシアへの進出が脅威となってから生じた。
この語にはしばしば、無学の、粗野な、野蛮な、不実な、などという軽蔑的な意味がこめられていた。
のちに古代ローマ人はギリシア、ローマの影響と支配に属さないすべての人々にこの語を用いた。
(The Encyclopedia Britannica)
ハルピュイアHarpyia 疾風の精。
ポントスの子タウマス(Thaumas)とエレクトラ2(Electra)との間に生まれた娘たちアエロ (Aello)とオキュペテ (Okypete)を指す。
盲目の予言者フィネウス(Phineus)の食物を奪って彼を苦しめていたが、アルゴ号乗組員のゼテス(Zetes)とカライス(Kalais)に追い払われた。
人が突然姿を消すのを、ハルピュイアにさらわれたと表現することがある。
(アポロドロス 第一巻 2-6,9-21)
ハルペHarpe
ヘルメスが持つアダマス製の黄金の鎌。
彼はこの鎌を用いて百眼巨人アルゴスの首をはね、「アルゴス殺しの」という有名な異名を得た。
また、ペルセウスもこの鎌を借りてメドゥーサの首をはねた。
(Greek vase-painting in Midwestern collections,Moon Essey 32 by Warren
G. Moon)
ハルモニアHarmonia
アレス(Ares)とアフロディテ(Aphrodite)の娘。
カドモスに嫁し、イノ(Ino)、セメレ(Semele)、アガウエ(Agaue)、アウトノエ(Autonoe)、ポリュドロス(Polydoros)を産んだ。
夫に従ってテバイを去りイリュリオス(Ilyrios)を産んだが、その後は夫と共に大蛇になり、ゼウスによりエリュシオン(Elysion)に送られた。
(アポロドロス 第三巻 4-2,5-4)
ハルモニアの首飾りHarmonia's necklace(不幸をもたらすものの意)
アフロディテ(Aphrodite)とアレス(Ares)の子ハルモニアが、カドモス(Kadmos)王に嫁ぐとき、
アフロディテの夫ヘファイストス(Hephaistos)が呪いをこめて贈ったという首飾り。
(アポロドロス 第三巻 4-2)
ハロウィンHalloween
アングロ・サクソン系民族の祭日。
10月31日すなわちキリスト教の万聖節の前日をいう。
古くはケルト人の祝日で、ケルト暦の大みそかにあたり、この夜悪霊や魔術師たちが戸外を駆けめぐって次の年の予報を声高に叫び歩いたという。
現在でもこれらの習慣が残っていて、仮面をかぶって広場で踊り、子供たちがかぼちゃをくりぬいたランプを捧げて行列を行う。 → サウィン
(The Encyclopedia Britannica)
パロス島Paros
エーゲ海中部、キュクラデス諸島(Cyclades)中部の島。ナクソス島(Naxos)の西、海峡を挟んで約8kmのところにある。
島自体が大理石でできており、パロス大理石として知られる彫像用の白色大理石を輸出して繁栄した。
ルーブル美術館所蔵のミロのヴィーナスの素材も、パロス大理石とされる。そのほか、ワイン、オリーブ、干しイチジクを特産する。
(パウサニアス 第一巻 14-7)(The Encyclopedia Britannia)
バロルBalor
ケルト神話のダーナ伝説(Danann cycle)に登場するフォモール族(Fomorians)の王。
一つ目の巨人で、その目に映るもの全てを破壊する力を持ち「邪眼のバロル(Balor of Evil Eye)」という異名を持つ。
王位を追われたダーナ神族の王ブレス(Bres)の要請により、アイルランドに攻め込むが、予言の子である孫息子のルー(Lugh)によって目玉を打ち抜かれて死亡する。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)
パンPan
半人半羊。ゼウスとヒュブリス(Hybris アイテル Aither とガイアの娘)の子。(アポロドロス 第一巻 4-1)
(一説では、ヘルメスとペネロペ2の子。アポロドロス E7-39)
本来はアルカディア地方の山野の精で、ニ本の角と山羊の脚を持ち、笛を携えて山野や林間を歩き回るのを好む。
快活で色好み。アポロンに予言の術を教えたとされる。
(アポロドロス 第一巻 4-1)
木陰で昼寝をするのを妨げる人間に恐慌を起こさせるといわれ、これがパニック panic の語源となる。
パンドラPandora
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ゼウスの命令により、ヘファイストスが土から作った最初の女。
プロメテウスを懲らしめるため下界に送られたが、弟のエピメテウス(Epimetheus)が妻とする。
その後、神々から送られた箱の蓋をあけて人間にさまざまな苦難を招く。
パンドラの箱
ギリシア神話では、人間を造ったのはプロメテウスとエピメテウスというティタン族の兄弟だったと言われている。
「先に考える者」という名を持つプロメテウスと違い、「後で考える者」という名を持つエピメテウスは行き当たりばったりの行動が多く、
他の動物を造ってから最後に人間を造るという段になって、翼や蹄などを全て先に造った動物たちに与えてしまい、
肝心の人間に与えるべき贈り物が何も無いことに気づいた。
そこで兄のプロメテウスは天から火を盗み、人間に与え、人間はその火をもって他の動物よりも優れたものとして地上に君臨することとなった。
プロメテウスと人間の勝手な行動に激怒したゼウスは、パンドラという女を彼らのもとに送り込む。
しかし、弟のエピメテウスは、絶世の美女であるパンドラに魅了され、「ゼウスからの贈り物は受け取るな」という
プロメテウスの言いつけを忘れ、パンドラを家に迎え入れる。
パンドラには美貌の他に神からもう一つ贈り物をもらっていた。
「好奇心」である。
「好奇心」に駆られたパンドラはエピメテウスの家にあった箱の中身に興味を持ち、開けてはならないという言いつけを破って開けてしまう。
その途端、箱の中から「痛風」や「リュウマチ」などの病気や「嫉妬」、「怨恨」、「復讐」といったあらゆる災厄が飛び出し、全世界を覆った。
パンドラが慌てて箱の蓋を閉めると、底の方にあった希望だけが箱の中に残った。
だから、人間は現在あらゆる災厄に苦しみながらも、希望は捨てずに生きることができるのだという。
(ヘシオドス Hesiodos 『仕事と日々 Erga kai Hemerai』90 )
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ハンプティ・ダンプティHumpty Dumpty
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イギリスの童話作家ルイス・キャロル(Lewis Carroll)の作品「鏡の国のアリス」(Through the Looking-Glass)に登場する卵の妖精。
もともとイギリスの伝承童謡「マザー・グース」(Mother Goose)に登場するキャラクターである。
童謡の中で堀の上から落ちたときに誰も元に戻せなかったことから、いったん壊れたものは元通りには戻せないという事の例えに用いられるばかりでなく、
現代では、ずんぐりむっくりの人物を指す言葉としても用いられている。
(Wikipedia, the free encyclopedia)
ハンプティ・ダンプティは、高い壁(かべ)の上に足を組んで座(すわ)っていました。
「まあ! たまごにそっくり!」
「たまご呼(よ)ばわりされると、まったく頭にくる」
「あら、あたしは、たまごに『そっくり』だっていっただけです」
アリスは、あわてて話題(わだい)を変えました。
「こんなところでなぜひとりで座(すわ)っていらっしゃるの?」
「なぜって、ひとりしかいないからさ!」
そして、落ちたらたいへんよ、と心配(しんぱい)するアリスにむかって、ハンプティは、こう言いました。
「王様の馬と兵隊(へいたい)が、すぐさまわしをおこしてくれるんだ。」
そういうと、ハンプティ・ダンプティは顔いっぱいに口を広げて、にたっと笑いました。
「ところで、おまえの名前と、それから年はいくつか言ってみな」
「名前はアリスで――」
「聞くからにまぬけな名前だな!」 ハンプティは、短気そうに口をはさみます。
「年は七歳と六か月よ」
「七歳と六か月だと!」 ハンプティ・ダンプティは、考えこむように言いました。
「落ち着きのわるい年ごろじゃな。わしに言わせてもらえば『七歳でやめとけ』と言っとっただろうな・・・だが、もう間に合わんわい」
「人は大きくならずには いられないでしょう?」 アリスはいぶかしげに聞き返しました。
「ひとりでは、まあ、できまいね。でもふたりならできるさ。ちゃんとだれかに手伝ってもらえば、おまえも七歳で成長(せいちょう)を止められたかもしれんぞ」
「まあ!」 ハンプティ・ダンプティの言っていることがよくわからないアリスは、ほかに言うことが思いつきませんでした。
そのあと、ハンプティと別れたアリスは、森に響(ひび)きわたる大きな音を聞いて、ハンプティが壁(かべ)から落ちたことを知るのでした。
ハンプティ・ダンプティ(鏡の国のアリス 第6章)
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