ギリシア神話事典          あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行  む行   ら行  


マアトMaat
古代エジプトの神。真実と秩序の女神。
太陽神ラー(Ra)の娘で腹心の友。「マアトの主人」と呼ばれるトト(Thoth)の妻。
直立あるいは膝を曲げてすわり、頭にだ鳥の羽を載せている女の姿で表現される。

頭にダチョウの羽根を差した女性の姿であらわされるが、この羽根は大気の神と同じ「シュウ(Shu)」とよばれ、マアトの象徴である。
この羽根は、オシリス(Osiris)の裁きの間で人間の魂が真実かどうかをはかる真実の羽根と呼ばれる。

宗教改革を行なったことで有名なアメンホテプ4世(Amenhotep IV)の標語は「マアトにおいて生きる」ことであった。
(The Encyclopedia Britannica)



マイアMaia
アトラスとプレイオネ(Pleione)の間に生れた娘たちプレイアデス(Pleiades)の一人。
アルカディアのキュレネ山中(Kyllene)の岩屋でゼウスの愛を受け、ヘルメスの母となった。
のちにゼウスがカリスト(Kallisto)に生ませたアルカス(Arkas)の乳母の役もつとめた。
(アポロドロス 第三巻 10-2)


マーキュリー(Mercury)  → ヘルメス


マケドニア王国Macedonia
BC700〜BC168年。バルカン半島のエーゲ海に面する地方にペルディッカス1世 (Perdiccas I 在位BC700〜BC678)によって建国。
BC327年アレクサンドロス3世(大王 Alexander the Great BC356〜BC323)の東方遠征により、その版図はギリシアから小アジア、エジプト、
シリア・メソポタミア・イラン・インダス川流域に及び、地中海世界とオリエントを含む、広大なものとなった。
BC168年、共和制ローマとのマケドニア戦争(Macedonian War)で敗れ、マケドニア王国は滅亡。BC146年、マケドニア全土は共和制ローマの属州の一つとなった。
(The Encyclopedia Britannica)


魔術Magic
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科学が世界を席巻する以前、ほんの数世紀前まで、呪術、魔術、錬金術といったものは科学と混在していた。
これらを扱う人々は呪術師、魔術師、錬金術師と呼ばれ、その方法を自分たちの伝承や神話から見つけ出そうとしてきたのである。

伝承や神話の登場人物は、自由自在に空を飛んだり、時間を超越したり、物の形を変えたりしている。
これが、いわば魔術のルーツである。

パラケルスス(Paracelsus)やアグリッパ(Agrippa)など中世ヨーロッパの魔術研究家は、バビロニア、エジプト、北欧、ギリシアなどの古代文献を
解読していくつもの魔術論、実施方法を現代に残している。

彼らは、魔術を「霊を呼び出して、超自然現象を起こさせる術」と定義した。
「霊」とは、精霊、悪魔、天使、妖精などと呼ばれているものすべてを網羅した言葉である。

人間とは無力な存在であるが、肉体を持たない霊は、時間や空間を行き来したり、人間の知らない知識や能力を持ち合わせている。
そうした霊的存在の力を借りるのが魔術である。

それを、どのようにして借りるかというのが魔術の術、つまりテクニックであり、その際、大きな役割を担うのが魔術儀式である。

すべての人間は魔術師の素質を備えているといわれる。
人間の肉体は霊的存在を感じ取る「受信器 Receiver」である。

魔術の才能とは、人間が祖先から受け継いだ、古代人の直感そのものなのだ。
しかし、潜在意識によってその能力は極度に抑制されている。

その隠された能力を開発し、創造的な天賦の才能を呼び起こすことができるかどうかが、魔術師となるうえでの鍵なのである。
悠久なる魔術(真野隆也)
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魔女の飛行術Aeronautics of Witchcraft
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魔女の飛行アイテムといえば「魔法のホウキ」だが、それは空を飛べるホウキがあるわけではなく、実は「魔女の軟膏」という秘薬を使うのである。

空中飛行を可能にする「魔女の軟膏」には各種の作り方がある。
その製造法はベラドンナ(300g)、ヒヨス(150g)、トリカブト(150g)、チョウセンアサガオ(100g)、オランダ・パセリ(100g)、サソリ(3匹)、
トカゲの舌(30匹分)、馬の陰茎(1本)、ガマガエルから採った脂肪(150g)を大鍋に入れ、棺桶に溜まった水を適量注いでから弱火にかける。

時折、掻き回す必要があるが、これにはサンザシの枝を使用する。
日が昇ったら火から降ろし、夜になったらまた鍋を火にかける。
こうして丸一週間煮込む。

できあがったらガーゼで漉して、乳香(10g)を足してからカシの木の根元に一か月間埋めておく。
これでできあがりである。

こうして作った軟膏を身体に塗るのであるが、その箇所は大腿の内側、肩のくぼみ、性器の周囲である。
また、飛行道具となるカシのホウキにも塗りつける。
この軟膏は塗ってから10分から一時間後に効果を発揮する。

まず、身体全体に倦怠感が起こり、つぎに浮遊感が襲う。
それからしばらくすると本当に身体が重力を感じなくなるという。

これで飛行できる肉体に変身を遂げたのである。
カシのホウキにまたがり、両足で床を蹴れば身体は空中に浮かび上がる。
あとは自由に行きたい場所に飛んで行けばいい。

最初は不安感にとらわれるかも知れないが、飛行のテクニックはすぐにマスターできる。
ただし、その効果が持続するのは雄鶏が鳴くまでだといわれている。

注意事項
悪魔が魔女となることを志望する人間に、最初にもたらす魔術がこの「魔女の軟膏」の製造法である。

魔女はこれを身体に塗ることによって、空を飛行できるようになり、数百キロも離れたサバト(Sabbath 魔女の夜会)会場にも参加が可能になる。
また動物に変身する際にも使用される。


魔女の飛行術


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マナナン・マクリルManannan Mac Lir
ダーナ伝説(Danann cycle)やアルスター伝説(Ulster Cycle)など多くのアイルランド伝承に登場するダーナ神族(Dannan)の海神。
海神リール(Llyr)の息子でルー(Lugh)やミディール(Midir)の養父。
本来は、マン島(Isle of Man)の海の神であったとされ、虹色のマントを身に着け、馬の引く馬車で海を走る姿や、3本の足で作られた車輪の姿で描かれる。

マナナンは、幻術を得意とする強力な魔術師で、神々や英雄の支援者だった。
ダーナ神族が身を隠す時に使う魔法の霧「フェース・フィアダ(Feth fiada)」は彼が授けたものとされ、決して的を外さない魔剣「フラガラッハ(Fragarach)」
をはじめとする英雄ルーの持ち物も、元々はマナナンの持ち物であったとされる。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)


真野隆也(まのたかや)
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1947年、神奈川県生まれ。
早稲田大学卒業後、新聞記者、雑誌編集者を経てフリー・ライターとして執筆活動を始める。

1990年、新紀元社より「悠久なる魔術」を出版。
本書は、さまざまな魔術の方法を具体的に示した手引書であり、変身・降霊・悪魔召還・護符魔術など、多岐に渡る40ヶ近い魔術が平易な解説で紹介されている。
また注釈で用語の説明、魔術的意味合いや下地となる神話なども掲載されており、「オカルト趣味」の読者にとっては最も楽しんで読める一冊である。

その後、新紀元社よりシリーズとして宗教関連の解説書を数多く出版。
広範な知識が平易に、要領よく解説されており、宗教・神話・伝説の入門書として好適な内容となっている。

主な著作:
「悠久なる魔術」1990年09月
「堕天使 悪魔たちのプロフィール」1995年07月
「楽園 追想の彼方へ」1996年08月
「世界の神々 ギリシア神話編」2009年07月
「天使と悪魔」2009年11月
「聖書の秘密 旧約・新約のすべて」2010年07月
「猫ファンタジー 愛らしき隣人の不思議学」2011年09月
「天使」2011年11月
「タオの神々」2012年04月
「魔術への旅」2012年08月
「マンガでわかる聖書」2012年09月
「日本の神々を知る 神さま44柱からみる」2014年01月
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マハーバーラタMahabharata
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世界最長の詩のひとつ「マハーバーラタ」は、古代インドの二大叙事詩の2番目の作品である。

ヴェーダ(Veda)の編纂もおこなった編者ヴィヤーサ(Vyasa)の作と昔から言われてきたが、
おそらく前8世紀から後4世紀の間に幾人かの作家によって書かれたものと思われる。

叙事詩はふたつの競合する一族の戦いを中心に展開するが、ヒンドゥー教の重要な教義の要点を述べた聖典
「バガヴァッド・ギータ」(Bhagavad Gita)もこのなかに編入されている。

(伝説)         
ハスティナープラの王国はバラタ族のパーンドゥによって治められていた。
パーンドゥは早くに亡くなったため、彼の盲目の兄ドリタラーシトラが王になった。

彼は、まとめてパーンダヴァと呼ばれるパーンドゥの5人の息子を、カウラヴァと呼ばれる自分の100人の息子とともに育てた。


マハーバーラタ



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マビノギオンMabinogion
中世ウェールズの物語集。「若き英雄の物語」の意。
11〜13世紀の神話、伝説に基づく 11編の物語を収め、集成は 14世紀頃から行われた。
アーサー王 (King Arthur)伝説の最古の物語を含む。
(The Encyclopedia Britannica)


マーメイドMermaid
上半身が人間、下半身が魚の姿をとる伝説上の生物。
海牛の一種ジュゴン (Dugong) がその原型といわれる。

伝説上の発祥はフェニキアの海神ダゴン (Dagon)、シリアの女神アタルガティス (Atargatis) 、バビロニアの水神エア (Ea)、
半魚人オアンネス (Oannes) など古代オリエントの半人半魚の水神に求められる。
多くの場合は海辺の岩礁で見かけられ、櫛と手鏡を持ち魅力的な声で歌う美しい女性とされている。

マーメイドには善悪両方のエピソードがあり、オデュッセイアやアルゴ号の遠征に登場するセイレン (Siren) 、
ライン川の水の精ローレライ (Loreley) のように、その美しい歌声に惹かれてきた人間を溺れさせたり、
捕食したりするという言い伝えがある一方、デンマークの童話「人魚姫」のような悲恋の主人公であったりもする。

東洋では中国の「洽聞記(こうもんき) 」「山海経」などに、同様な美しい女体として現れている。
日本でも「和名抄」「古今著聞集」「扶桑略記」などに上半身は女体、下半身は魚の形で描かれている。
また日本では、人魚を延寿の霊肉をもつものとする考え方もあり、これを食べたため 800年の齢を得たとする「八百比丘尼」の話もある。
(The Encyclopedia Britannica)


マラトンMarathon
アッティカ地方のアテネ北東にある村。
マラトンの戦い(紀元前490年)の舞台として知られており、このときの故事にちなむ陸上競技マラソンの名の由来となった。
(Cities and Locations of Ancient Greece by Bernard Suzanne)


マラトンの戦いBattle of Marathon
ペルシア戦争中、ギリシア軍がアッティカ北東部のマラトンで、アケメネス朝のペルシア軍を大敗させた戦闘。
前490年九月マラトンの南海岸に上陸したペルシアの大軍約ニ万五千に対し、アテネはミルチアデス(Miltiades)の提案により約一万の重装歩兵を送った。
プラタイア(Plataea)の援軍1000を得て、ミルチアデス指揮下のギリシア軍はペルシア軍と戦いを交えて勝利した。
ペルシア軍は船へ逃げ戻り、アテネ市へ向ったが、アテネ軍が陸路をとってただちに市へ戻ったことを知り、攻撃をあきらめて自国へ引返した。
ペルシア軍が6400人の兵士を失ったのに対し、ギリシア側の死者はわずか192人だったといわれている。
(The Encyclopedia Britannica)


マーリン(Merlin)
中世伝説上のブリテン島(Britain)の魔術師。
人間の母親と、夢魔(Incubus)の父親との間に生まれるという特殊な出自を持つ。
そのため父親の血によって邪悪に染まることを懸念した母の手により、生後間もなく教会へと連れられた。
そこでマーリンは穢れを払ってもらう。
しかし、人外の力は変わらず残り、その力を以て偉大な魔術師として名を残す。

マーリンは、ブリタニア(Britannia)王ユーサー(Uther)とコーンウォール公(Duke of Cornwall)の夫人イグレーヌ(Igraine)の密会を取り仕切り、
アーサー(King Arthur)を誕生させた。
マーリンは、王の証となる剣エクスカリバー(Excalibur)を石に刺し、アーサーはその刺さった剣を引き抜き、わずか15歳で父王の所領を引き継ぐ。
アーサーが王になると、彼に帝王学を施すなど、アーサー王伝説の陰の立役者的存在になっている。

やがてマーリンや忠実な円卓の騎士らの補佐を得たアーサーは、反対勢力を滅ぼしてブリテン島を統一平定。
さらには、攻め寄せてきた異民族の侵略者たちを撃退して、ブリテンの首都キャメロット(Camelot)を築く。

アーサーは、強敵ペリノア王(King Pellinore)との一騎打ちの際に、自分の剣を破損してしまう。
マーリンの助言を受け、共に新たな剣を探しに出かけたアーサーは、湖から突き出た「湖の乙女 (Lady of the Lake)」の手から、新たな聖剣エクスカリバーを受け取ることに成功した。
この後、王国の滅亡まで、エクスカリバーはアーサー王とともにあった。

しかし、偉大な魔術師であり導師でもあるマーリンは、湖の乙女ヴィヴィアン(Vivian)と老いらくの恋に落ちた。
そして、彼女の罠にはまって「迷いの森(Forest of Broceliande)」に幽閉されてしまうのである。
マーリンは二度と人間界に戻れず、アーサー王と円卓の騎士たちは、二度と彼の助力を得ることが出来なくなってしまった。
Wikipedia, the free encyclopedia
Vita Merlini&Historia Regum Britanniae(Geoffrey of Monmouth)
Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table (Thomas Bulfinch)


マルシュアスMarsyas
半獣神シレノス(Silenos)またはサテュロス(Satyros)の一人。
アテナ女神が発明した楽器で、吹くと頬がふくれ、顔が醜くなるという理由で捨てた笛を拾い、巧みに吹くようになった。
増長した彼はアポロンの竪琴に対して、ムーサたちを審判官にして、音楽の技比べを挑んだが敗れ、罰としてアポロンにより木にくくりつけられ、生皮をはがれた。
流れ出た彼の血はフリュギア(Phrygia)のマルシュアス河となったという。
(アポロドロス 第一巻 4-2)
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


マルス(Mars) → アレス


マルドゥクMarduk
古代バビロニアの神。
バビロン(Babylon)が優勢になるとともにバビロンの守護神であるためその地位も重視されてバビロニア・パンテオン(Babylonia・Pantheon)の主神となり、
シュメール・パンテオン(Sumer・Pantheon)の主神ベール・エンリル(Beel・Enlil)と合体してベール・マルドゥク(Beel・Marduk)と呼ばれ「国々の王」となった。

エア(Ea)の長子として生まれた彼は、豊かな水の人格化であり、農耕神の性格をもっていた。
しかし、「創世伝説」のなかでアヌ(Anu)やエアをしのぐ力を示して海神ティアマット(Tiamat)を退治したため、神々により至上権を与えられ、そこから最高神と呼ばれるにいたった。
宇宙をつくり、神々の住居を建て、病気を治療するなどの権限をもったことから、50の称号を与えられている。
(The Encyclopedia Britannica)


マンティコアManticore
人面のライオンで、コウモリの翼とサソリの尾を持っているとされる。

砂漠や密林に棲み縦横に飛び回り、通り掛かった人畜を尾の毒や鋭い爪で襲い、強靭な歯で噛み砕き最後は残らず食い尽くすといわれる。
語源はペルシア語で虎の異称だった Martya Xwar「人間 (martya) を食らう (xwar)」で、生息地も砂漠や密林とされている。

なお、二種類以上の異なる動物が一体化した生物を「合成獣 (Chimera)」という。
ギリシア神話には、エキドナ (Echidona)、キマイラ (Chimaira)、グリフォン (Gryphon)、ケンタウロス (Kentauros)、ケルベロス (Kerberos)、ゴルゴン (Gorgon)、
サテュロス (Satyros)、スキュラ (Skylla)、スフィンクス  (Sphinx)、セイレン (Siren)、テュフォン (Typhon)、ハルピュイア (Harpyia)、ミノタウロス (Minotauros)、
ラミア (Lamia)、など様々な合成獣が登場する。

Carol Rose (Giants, Monsters, and Dragons)
El libro de los seres imaginarios (Jorge Luis Borges&Margarita Guerrero)
Indica (Ctesias), Naturalis historia (Gaius Plinius), History of Animals (Aristoteles)


マンドラゴラMandragora Officinarum
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ジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)を告発したパリ大学の神学者によれば、彼女は常に、マンドラゴラを身につけていて、その神秘的な力は、
すべてこの植物から授かったものであるという。

彼女が宗教裁判により異端の宣告を受け、やがて火刑に処せられた時の、裁判所側の告発状には、次のように書かれた箇所がある。

「ジャンヌは、しばしば乳房のあいだにマンドラゴラを隠しもって世俗的な富を手に入れんと望んだ。
彼女はこの植物に、このような効能があることを断言してはばからなかった」

要するに、ジャンヌはマンドラゴラの魔力を用いて善良な民衆をまどわし、イギリス軍を苦しめた憎むべき女妖術使にほかならない、という結論である。

マンドラゴラは、ナス科の多年草で、ふたまたにわかれた根の形が人間の下半身に似ていることから、多くの伝説が生まれた有毒植物である。
古代人の催眠飲料、催淫剤として古くから重要な役割を果たし、ペルシャからギリシア、地中海へと伝わった。

旧約聖書には、「恋茄子」という名称が使われており、不妊の女に飲ませると子供が授かるという説が古くからある。
「創世記」に登場する美人で石女のラケル(Rachel)が、その姉レア(Leah)の子沢山を羨み、夫を貸す代償として、マンドラゴラを借り、
ヨセフ(Joseph)を産む話がある。(創世記 第30章14-24節)

また、この植物は、無実の罪で処刑された犠牲者の断末魔の射精から生じると一般に信じられ、キリストが息を引き取る瞬間に精液を漏らした際、
これが土中にしみ込んでマンドラゴラが生まれたという話は、グリム兄弟の「ドイツの伝説」(Deutsche Sagen 1865) に見られる。

この草がひきぬかれたときにあげる大きな悲鳴を聞いた人間は発狂し、ひきぬいた当人は死ぬといわれ、犬をひもでつないでひきぬかなければならないという。
「毒薬の手帖、エロスの解剖」(渋澤龍彦)
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ミカエルMichael /アークエンジェル(Archangel)
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ミカエルは「神に似たもの」という意味。
ミカエルは神が最初に作った天使といわれ、三大天使(Michael、Gabriel、Raphael)の一人として聖書などの物語にも登場する天使の代表である。

光り輝く翼を備え、剣を持った姿で、絵画などに描かれることが多く、天使の軍団を率いて悪魔と戦ったり、人間の魂を天秤にかけ、最後の審判を下す重要な役割を受け持っている。
旧約聖書ではイスラエルの守護天使とされ、新約聖書ではサタンとの戦いを指揮する天使として描かれている。

ミカエルは聖書に登場する以外にも、何世紀にもわたって地上にその姿を現しているとされている。
六世紀末にローマでペストが猛威を振るったとき、ミカエルが現れて剣を鞘に収めると、たちまちペストは収束したという。

またフランスの国民的英雄であるジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)も、ミカエルに国民を救うよう告げられたといい、
それに従って戦いに身を投じ百年戦争を終結に導いたとされている。

「その時あなたの民を守っている大いなる君ミカエルが立ちあがる」(ダニエル書 第12章1節)
「さて、天では戦いが起った。ミカエルとその御使たちとが、龍と戦ったのである。
龍もその使たちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らのおる所がなくなった」(黙示録 第12章7-8節)
The Angels of Cokeville: And Other True Stories of Miraculous Interventions (John Ronner)
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ミケーネ文明 → ミュケナイ文明


ミコノス島Mikonos
エーゲ海中部、キュクラデス諸島(Cyclades)中部の島。
海の青、太陽の明るさを強調する家々のイメージから「エーゲ海に浮かぶ白い宝石」とも言われる。
ギリシア神話ではゼウスとギガンテス(Gigantes 巨人族)の戦いの地として知られる。
(The Cyclades by Freely John 2006)(The Encyclopedia Britannica)



湖の乙女(Lady of the Lake) → ヴィヴィアン


水瓶(みずがめ)座 → ガニュメデス


ミダスMidas
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ミダスは、フリュギア(Phrygia)国の王ゴルディアスと、女神キュベレとの間の子で、父の後を継いでフリュギアの王となった。

あるとき、ミダスは、泥酔して捕えられ、彼の宮廷に連れて来られたシレノスを丁重にもてなし、ディオニュソスのもとへ送り届けた。
ディオニュソスはこのことに感謝して、ミダスに対して何でも望むものを与えることを約束した。

すると、ミダスは、自分が手で触れるものを黄金に変えることを求め、ディオニュソスはその願いを叶えた。
こうして、ミダスは、あらゆるものを黄金に変える力を手に入れた。

帰り道の途中、彼が木の枝を折ると枝は金に変わり、地面の石を拾うと石が金に変わった。
素晴らしい能力を得て、ミダスはすっかり有頂天になった。

ところが宮殿に帰ってみると、飲食物まで彼の身体に触れるとたちまち黄金になってしまうので困り果ててしまった。
さらに、彼が自分の娘に触れた途端、娘は黄金の像に変わってしまった。

困り果てたミダスがディオニュソスに助けを求めると、ディオニュソスはパクトロス河(Pactolos)にいって河の水で体を清めるように伝えた。
ミダスが河の水に触れると、すべて黄金に変る力は河に移り、パクトロス河はそれ以来、砂金が出るようになった。


またあるとき、ミダスは、マルシュアスの葦笛とアポロンの竪琴の腕比べの場面に居合せた。

ミダスは、アポロンを勝者とするムーサたちの判定に抗議し、マルシュアスの勝利を主張して譲らなかった。
そのため、アポロンの怒りを買い、耳をロバの耳に変えられてしまった。

そこで彼は、冠で耳を隠し、ただひとり秘密を知る理髪師には、それを口外すれば死刑に処すると申渡した。
しかし、理髪師は黙っているのに耐えられなくなり、地面に穴を掘ってその中に王の秘密をもらした。

すると付近に生えた葦が風に揺れるたびに「王様の耳はロバの耳」とささやくようになったので、ミダスの秘密は国中に知れ渡ってしまったという。
(The Encyclopedia Mythica)

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ミディールMidir
ケルト神話のダーナ伝説(Danann cycle)に登場する神。
ミディールは万能神ダグダ(Dagda)の息子であり、ミレー族(Milesians)によって追われ、逃げ込んだ地下世界「ブリ・レイ(Bri Leith)」の王である。
高い知性をもち、詩才に長け魔術にも精通している彼は、離れ離れになってしまった愛する女性を取り戻すために、幾つもの策略や計画を巡らせたと言われている。

ミディールは、あるとき美少女エーディン(Edain)を見初めて地下世界に連れ帰ったところ、彼の妻であるフゥーナッハ(Fuamnach)が激怒し、エーディンを蝶に変えてしまった。
ミディールは千年もの間エーディンを探し続け、生まれ変わってアイルランドのエオヒズ王(Eochaidh)と結婚していた彼女を発見。
二人は白鳥の姿となって宮殿を去った。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)


ミドガルドMidgard
世界を構成する九つの国のひとつで、人間族の居住する界域。
世界のほぼ中央に位置する。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)


ミネルヴァ(Minerva) → アテナ


ミノア文明Minoa civilization
クレタ島で栄えた前20〜15世紀頃の青銅器文明。
名称はクレタの伝説上の王名ミノスにちなむ。
ギリシア本土にも影響を及ぼし、ミュケナイ文明興隆の一因となった。
1900年、エヴァンズによるクノッソス宮殿(Knossos)の発掘でその存在が知られた。クレタ文明とも言う。
(The Encyclopedia Britannica)


ミノスMinos
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ゼウスとエウロペ2の子であるが、のちにエウロペが嫁したクレタ王アステリオス(Asterios)によって育てられ、その王位を継いだ。

このとき彼の兄弟のラダマンチュスとサルペドンも継承権を主張したが、ミノスはポセイドンに祈り、海から雄牛を出現させてもらって、
自分が王になるのが神意にかなうことを証明してみせた。

ところが彼は、ポセイドンとの約束に違反し、この雄牛をいけにえにせず、飼い続けたためにポセイドンの怒りを買い、妻パシファエが雄牛に欲情を抱くように仕向けられてしまう。
パシファエは、アテネから来てミノスの宮廷に逗留していたダイダロスの助けをかりて欲望をとげ、牛頭の怪物ミノタウロスを生んだ。

ミノスはダイダロスに命じ、迷宮を造らせてその中にミノタウロスを閉じ込める一方で、息子のアンドロゲオス(Androgeos)が、
アテネで催された競技に参加したあと殺害されたことに激怒し、アテネを攻めて降伏させ、この市から毎年七人ずつの若者と娘たちを貢物として送らせ、
ミノタウロスのえじきにすることにした。

ミノタウロスがテセウスに退治されると、ミノスは、彼の娘アリアドネに頼まれ迷宮から脱出する方法をテセウスに教えたかどで、
ダイダロスを息子のイカロスとともに迷宮に幽閉した。

ダイダロスが人工の翼をつくってそこから脱出すると、行くえをたずねて、シチリア島のコカロス王(Kokalos)のところにいるのを突止め、
みずから引渡しを求めに行ったが、コカロスにだまされ、その娘たちに浴槽の中で煮殺された。

しかし生前ゼウスとも親交のあった彼は、冥界で死者を裁く法廷の判事に任じられ、ラダマンチュスおよびアイアコスとともにこの役を果しているという。

パシファエとの間に、カトレウス(Katreus)、デウカリオン2(Deucalion)、グラウコス3(Glaukos)、アンドロゲオス、アカレ(Akalle)、
クセノディケ(Xenodike)、アリアドネ、ファイドラ(Phaidra)を、パレイア(Pareia)(ナイアス Naias 水のニンフ)との間にエウリュメドン(Eurymedon)、
クリュセス2(Chryses)、ネファリオン(Nephalion)、フィロラオス(Philolaos)を、またデクシテア(Dexithea)との間にエウクサンティオス(Euxanthios)を儲けた。
(The Encyclopedia Mythica)

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ミノタウロスMinotauros
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牛頭人身の怪物。クレタ王ミノスの妃パシファエが、ダイダロスにつくってもらった模型の雌牛の中に入り、雄牛と交わって生んだ子。

ミノスがダイダロスに命じつくらせた迷宮の中に隠され、毎年アテネから送られてくる七人ずつの若者と娘たちをえじきに与えられて養われていたが、
みずから志願していけにえの若者の一人としてクレタに来たアテネの王子テセウスに退治された。

アテネ王アイゲウスは、大きな悩みを一つ抱えていた。

それはクレタ島の迷宮に住む人身牛頭の怪物ミノタウロスへの生贄として、毎年未婚の若い男女を七人ずつ差し出さねばならなかったのだ。

これもすべてクレタ島の王ミノスとの戦争に負けた賠償金の一部なのである。

クレタ島に送られた子供たちは、真っ暗な迷宮に閉じ込められ、ミノタウロスのエサにされるという残酷な運命が待ち構えていた。

その事を知って強い憤りを感じた王子テセウスは、ミノタウロスを退治するため、父王アイゲウスの反対を押し切り、自ら進んで生贄に志願した。

生贄を運ぶ船は、国民たちの悲しみを表す印として黒い帆が張られていた。
テセウスは他の生贄たちと共にその船に乗り込み、クレタ島へ向かった。

クレタ島に到着した生贄たちは、王宮内のミノス王の元に連れてこられた。
それを柱の影からそっと垣間見ていたミノス王の娘アリアドネはテセウスを一目見て好きになり、彼にこっそりと麻糸の玉と剣を渡すのである。

テセウスはアリアドネからもらった麻糸の端を入口の扉に結び付け、糸を少しずつ伸ばしながら、他の生贄たちと共に迷宮の奥へと進んでいった。
そして一行はついにミノタウロスと遭遇した。

皆がその恐ろしい姿を見て震える中、テセウスはひとり勇敢にミノタウロスと対峙し、アリアドネからもらった剣で見事これを討ち果たした。
その後、テセウスの一行は糸を逆にたどって、無事に迷宮の外へ脱出する事ができた。

そして自分たちの乗ってきた船にアリアドネと生贄の子供たちを乗せてアテネに向けクレタ島を出港したのである。 → テセウス
(Theseus by Plutarch The Internet Classics Archive. Retrieved 2013-01-17)

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ミーミルMimir
原初巨人ユミル(Ymir)の息子。
知恵と活力を与える蜜酒が湧き出る泉の番人で、常にこれを飲んでいたため賢者となり、一度は甥のオーディン(Odin)にも飲ませる。
その際、ミーミルは水を飲む代償としてオーディンの片目を提供するよう求めた。

アース神族(Aesir)とヴァン神族(Vanir)との戦争が終わり和睦した際、アース側からの人質としてヘーニル(Haenir)とともにヴァン神族へ送られた。
ヴァン神族はヘーニルを首領にしたが、彼が期待したような人物でないことが判明すると、ミーミルの首を切断してアース神族の元へ送り返した。

その後、オーディンが首が腐敗することのないように薬草を擦り込み、魔法の力で生き返らせ、大切なことは必ずこの首に相談したと伝えられている。
ラグナロク(Ragnarok)が到来した際も、オーディンは真っ先に首の助言を仰いだという。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)


ミュケナイMycenae ミケーネ
ギリシア、ペロポネソス半島北東部、アルゴリス地方(Argolis)にある古代都市。ミュケナイ文明の中心。
(The Encyclopedia Britannica)


ミュケナイ文明Mycenaean civilization ミケーネ文明
前16〜12世紀にギリシア本土に発達した文明。
エーゲ文明後期の中心で、ミノア文明のあとをうけて
ペロポネソス半島のアルゴリス Argolis(ミュケナイが中心地)に成立。
ギリシア文明の先駆となる。
遺跡としては、ミュケナイのアトレウスの宝庫 (アトレウスの墓) 、
獅子門を含む城塞跡などが有名。
この文明は長らく忘れられていたが、19世紀末シュリーマンの発掘によって
トロイ文明とともに再発見された。
(The Encyclopedia Britannica)


ミュシアMysia
古代小アジア北西部プロポンティス海(Propontis 現マルマラ海 Marmara)
に臨む地域にあった国。
(The Encyclopedia Britannica)


ミューズ →  ムーサ


ミュルティロスMyrtilos
ヘルメスがダナオス(Danaos)の娘の一人ファエトゥサ(Phaethusa)に生ませた子で、
ピサ王オイノマオス(Oinomaos)の御者をつとめていた。
ペロプス(Pelops)がピサ王の娘ヒッポダメイア(Hippodameia)に求婚し、
王との戦車競走にのぞんだとき、ヒッポダメイアは御者の
ミュルティロスにペロプスの味方をするよう頼んだ。

そこでミュルティロスは王の戦車の車輪から楔(くさび)を外した。
このためオイノマオス王がペロプスを追跡すると車輪が壊れ、
手綱が絡まって引きずられて死んだ。

ヒッポダメイアを手に入れたペロプスは、先王オイノマオスの跡をつぎ
次々と近隣諸国を治めていった。
その後、ミュルティロスは、ひそかにヒッポダメイアに想いを寄せていたため、
想いを遂げようとする。
だが、悲惨にもペロプスに見つかり、ミュルトオン海(Myrtoon)に投込まれてしまう。
ミュルティロスは海に飲み込まれながらペロプスとその一族に呪いをかけた。
このミュルティロスの呪いによって、以後彼を始祖とするミュケナイの王家に
不幸が絶えないようになったという。( → アトレウス家の伝説)


ミュルミドンMyrmidones
アキレウスに従ってトロイ戦争に加わったテッサリアの戦士集団。
ゼウスとアイギナの息子で、母の名にちなみ命名されたアイギナ島の王となったアイアコスが、
ヘラに迫害され疫病を送られて島の住民を全滅させられる憂き目にあったとき、彼の祈りにこたえて、
ゼウスが一夜の間にギリシア語でミュルメクス(Myrmex)と呼ばれる「あり」を人間に変え、
新しい人民をつくり出してやったのがその起りとされる。
アイアコスの息子でアキレウスの父にあたるペレウスに従ってテッサリアのフティア(Phthia)に移住し、
そこからアキレウスに率いられてトロイ戦争に参加し、ギリシア軍中の最精鋭部隊をなした。
(アポロドロス 第三巻 12-6)


ミョルニルMjolnir
雷神トール(Thor)が武器として使う鎚。
短気なこの男神は、常にこれを手にし、自分の機嫌をそこねた相手を成敗するが、物を清め、あるいは死んだ動物を蘇生させるためにも使う。
睡眠中に盗まれるという失敗をしたことがあり、一騒動の末に取り戻す。
小人族の兄弟シンドリ(Sindri)とブロック(Brokk)作。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)


ミレトスMiletos
トルコの西端部、エーゲ海に臨むイオニア地方の都市国家。
ペルシア戦争の発端となるイオニア諸市の反乱の中心となった。
(The Encyclopedia Britannica)


ミロス島Milos
エーゲ海キュクラデス諸島(Cyclades)の西端に位置する。ミロのヴィーナスの発見地として知られる。
ペロポネソス戦争(Peloponnesian War BC431〜BC404)中、中立を保ったことがアテネの怒りを呼び、
島の男はすべて殺され、女や子供は奴隷にされた。
この事件に着想を得てエウリピデスが「トロイの女たち」を書いたといわれる。
(Troiades by Euripides BC415)(The Encyclopedia Britannica)




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