タイムカプセル (53) 平成19年 (2007年) タイム・カプセル
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この年、人気ミュージシャン「ZARD」のボーカル・坂井泉水(さかい いずみ)さんが入院していた慶応病院の非常階段から転落、
脳挫傷のため死去した(5/27)享年40歳。青山葬儀所で音楽葬が行われ、約4万人が参列した。
(映画)第80回アカデミー「ノーカントリー」
「スパイダーマン3」「マリー・アントワネット」「マンデラの名もなき看守」(デニス・ヘイスバート、ジョセフ・ファインズ)
東宝「それでもボクはやってない」(加瀬亮、瀬戸朝香)松竹「大日本人」(松本人志)松竹「武士の一分」(木村拓哉)東宝「HERO」(木村拓哉、松たか子)
(音楽)第49回日本レコード大賞 「蕾(つぼみ)」コブクロ
「千の風になって」秋川雅史「おしりかじり虫」おしりかじり虫「Love so Sweet」嵐「Keep the faith」KAT-TUN 「旅立ちの唄」Mr.Children 「愛しき悪友へ」モーニング娘。誕生10年記念隊 「道化師のソネット」(松浦亜弥)
(テレビ)風林火山(NHK大河ドラマ 内野聖陽、市川亀治郎、Gackt)どんど晴れ(NHK朝ドラ 比嘉愛未、大杉漣)ちりとてちん(NHK朝ドラ 貫地谷しほり、和久井映見)ハゲタカ(NHK 大森南朋、柴田恭兵)華麗なる一族(TBS 木村拓哉、鈴木京香、長谷川京子)塗られた本(TBS 沢口靖子、勝村政信)
花より男子(リターンズ)(TBS 井上真央、松本潤、小栗旬)ハケンの品格(日テレ 篠原涼子、大泉洋、加藤あい、小泉孝太郎)ガリレオ(フジ 福山雅治、柴咲コウ)医龍2(フジ 坂口憲二、内田有紀、小池徹平)花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜(フジ 堀北真希、小栗旬、生田斗真)
プロポーズ大作戦(フジ 山下智久、長澤まさみ)ライアーゲーム(フジ 戸田恵梨香、松田翔太)ファースト・キス(フジ 井上真央、伊藤英明)冗談じゃない!(TBS 織田裕二、上野樹里)警視庁警備部警護課第四係(フジ 岡田准一、真木よう子)李香蘭 (テレ東 上戸彩) 特命係長只野仁3(テレ朝 高橋克典、梅宮辰夫、蛯原友里)
点と線(テレ朝 ビートたけし、高橋克典)2007年(平成19年)ホタルノヒカリ(日テレ 綾瀬はるか、藤木直人)
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(流行語)「どげんかせんといかん」「ハニカミ王子」「どんだけぇ〜」「ネットカフェ難民」
(スポーツ) 5/20 15歳石川遼、世界最年少V/男子ゴルフ
(社会)1/20あるある大事典「納豆ダイエット」はねつ造、関西テレビ。1/22東国原英夫(そのまんま東氏(49))宮崎県知事当選。1/30「ウィンドウズビスタ」を全世界で発売。3/26元モーニング娘。加護亜依、再び喫煙、事務所契約解除。5/10杉浦太陽&辻希美、でき婚、結婚会見。5/28松岡農相が赤坂議員宿舎で首つり自殺。
5/29ZARD、坂井泉水さん死去、病院のスロープから転落。7/16新潟県柏崎市などで震度6強、11人死亡1300人以上けが。9/12安倍首相辞意不祥事続いたお友だち内閣。10/5力士急死で、協会時津風親方を解雇処分、師匠に適用は初。10/26NOVA
会社更生法の適用申請。
(物故)植木等、横山ノック、宮沢喜一、阿久悠、坂井泉水(ZARD)、石立鉄男
(その他)2/17 藤原紀香(35)、陣内智則(32)と結婚。3/2 宇多田ヒカル(24)、紀里谷和明(38)と離婚。6/15 宮崎あおい(21)、俳優の高岡蒼甫(25)と結婚。6/21 辻希美(19)、杉浦太陽(26)と結婚。7/7
元モーニング娘。の飯田圭織(25)、7HOUSEのケンジ(28)と結婚。8/9 日本ハムのダルビッシュ(20)、女優のサエコ(20)と電撃結婚。12/28
松たか子(30)、ギタリストの佐橋佳幸(46)と結婚。12/28 新庄剛志(35)、大河内志保(36)と離婚。
「iPod」「Wii」「ビリーズブートキャンプ」「ニンテンドーDS」「パスモ」「メガマック」「おふくろさん」歌唱禁止。「消えた年金」「食品偽装」
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道化師のソネット(松浦亜弥)
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ハケンの品格
派遣初日、大前春子(篠原涼子)は、営業部に配属された。
だが春子は、自分の担当以外の仕事はせず、残業もしない。
それを見た販売二課の主任・東海林(大泉洋)は、春子に詰め寄る。
「時給をもらっているのだから、働け!」
すると、春子は東海林をにらみつけて言う。
「主任、この仕事は私の担当ではございません」
「そうか、あんた自分の担当以外はシカトするんだな?」
「はい」
「ケンカ売ってんのか、おまえ!」
「大前、春子です」
「おまえ」ではなく、名前は「おおまえ」なのだ。
愛想のない春子の態度は周囲から反感を買うが、実は春子の正体は
あらゆる資格を持つ「スーパーハケン」であった。
口癖は「〜ですが、それが何か?」
何らかの失敗を冒したときは「私としたことが…」とつぶやく。
コメディタッチであるが、派遣社員が置かれた現状や悩みを
リアルに描いた社会派ドラマでもある。
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ガリレオ
湯川学(福山雅治)は、帝都大学物理学科の准教授である。
変人だが、頭脳明晰で、警視庁捜査1課に科学的見地から捜査協力もしている。
ある日、彼の元に、貝塚北署の女性刑事・内海薫(柴咲コウ)がやってくる。
彼女は、管内で起きたある事件について、湯川に協力を求めに来たのだった。
それは、住宅街で騒いでいた若者が、突然頭部から発火し死亡するという事件だった。
人体が突然燃え上がるという不可解な現象に、警察は全くお手上げの状態だという。
事件のあらましを聞いた湯川は「実に面白い」と言って笑みを浮かべるのだった。
天才物理学者・湯川が、警視庁捜査1課が持ち込む摩訶不思議な事件を解決する物語。
その事件というのが、人間が突然発火する事件や、幽体離脱して殺人現場を目撃する
など、奇妙な現象や科学がらみの怪事件のオンパレードで、湯川の頭脳がさえ渡る。
福山雅治演じる湯川は、将来を嘱望されている天才物理学者だが、理屈っぽい性格で
論理的に説明できないことには我慢がならない。
彼は子供が大の苦手である。なぜなら子供は非論理的だからだ。
そのため、子供から聞き込みするときは、全部内海刑事にやらせている。
熱血刑事の内海は、そんな変わり者・湯川の言動に神経を逆なでされつつも、
ともに事件のさなかに起きる超常現象の謎を解き明かしていくのだった。
事件解決の際に、湯川がものすごい勢いで、方程式を所かまわず書きなぐる
お決まりのシーンも話題となった。
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ハゲタカ
鷲津政彦(大森南朋)は、米国投資ファンド会社の社長である。
経営の悪化した企業や銀行が抱える不良債権を、情け容赦なく買収する彼は、
世間から「ハゲタカ」と呼ばれるようになる。
鷲津は、手始めに、かつて勤めていた三葉銀行の不良債権を買い叩いた。
価値のない不良債権については、1件1円で買い取るというすさまじさだ。
そんな彼は、かつて銀行員時代に、自らの貸し渋りで小さな町工場の社長を
自殺に追いやってしまった過去を持つ。
その葬儀で「人殺し!」と遺族になじられたことが、彼の生き方を大きく変えた。
バブルが崩壊した当時、企業への貸し渋りは、銀行側の至上命令だったのだ。
今回の買い叩きは、利益第一主義に走り、弱者を切り捨てる銀行への復讐でもあった。
投資ファンド会社の社長を主人公に、企業買収劇にまつわる人間模様を描いた経済ドラマ。
村上世彰が逮捕された「村上ファンド事件」、堀江貴文が逮捕された「ライブドア事件」など、
企業買収に関わる事件が世を騒がせていた当時、本作は時宜にかなったドラマとして注目された。
物語は、バブル崩壊後の日本を舞台に、冷徹な企業買収で「ハゲタカ」の異名をとるファンド会社の
社長・鷲津と、エリート銀行員・芝野との攻防戦を軸に、野望と挫折の人間ドラマが描かれる。
二人はかつて銀行で上司と部下の関係だったが、その後対照的な道を歩んだ両名のぶつかり合いは
凄味に満ち、その重厚な「男たちの戦い」にしびれる人が続出した。
また、本作に登場した「ハゲタカ」「TOB」などの目新しい経済用語も話題となった。
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ライアーゲーム
平凡な女子大生・神崎直(戸田恵梨香)の元に謎の小包が届く。
その小包に入っていたものはなんと1億円!!
そして同封されていたのは、謎のゲーム「ライアーゲーム」の招待状。
1億円を元手に、対戦相手からより多くのお金を奪った方が勝ちというゲーム。
ゲームに参加する意志もないのに開封したため、自動的に参加することに。
ゲームが開始されると、お人好しの彼女は、ライバルに次々と欺かれてしまう。
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だが、彼女は勝ち抜いていく。
それは、天才詐欺師・秋山(松田翔太)が彼女をサポートしてくれたからだった。
甲斐谷忍の同名漫画のドラマ化。嘘つきの最強を決める戦いを描いた物語。
主人公・神崎直は、ある日突然、謎のゲーム「ライアーゲーム」に巻き込まれる。
負けた者に降りかかるのは巨額の負債というペナルティーであり、主人公も
他のプレイヤーたちも、極限状態での戦いを強いられていく。
昨今、巷にはびこる振り込め詐欺やネット詐欺などの犯罪を連想させる「いつ自分が
巻き込まれるか分からない」という現実的な恐怖も感じられる。
荒唐無稽な設定と展開だが、不気味な世界観と登場人物たちの駆け引きの緊迫感とが
あいまって、第一級の知的エンターテイメント作品に仕上がっている。
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塗られた本
出版社の女社長・紺野美也子(沢口靖子)は、かつては銀座で伝説のホステスといわれていた。
夫の卓一(勝村政信)は、芥川賞を受賞した作家だが、今は若年性アルツハイマーに侵されて
日常生活もままならない。
美也子は、そんな夫を何とか再起させ、彼が執筆した作品を自分の会社から出版したかったが、
その為には有名作家のヒット作を出版して実績を作る必要があった。
そこで、売れっ子作家の青沼(吹越満)に近づき、強引に書き下ろし小説の原稿を依頼する。
一流ホステスだった美也子は、女の武器をちらつかせ、青沼に原稿の執筆を承諾させるが…。
1962年(昭和37年)「婦人倶楽部」に連載された松本清張の同名サスペンス小説のドラマ化。
作家の夫を再起させるため、美貌を武器に策をめぐらす主人公を沢口靖子が熱演している。
周囲の男たちを踏み台に、自らの望みを遂げるという点で「けものみち」「黒革の手帖」と
同じ流れの作品と言えそうだ。
だが番宣で紹介された「悪女」「魔性の女」などという表現は妥当ではない。
なりふり構わず、男たちを翻弄したのも、全ては夫を再起させるためであり、女性が発言力を
得るためには、自らの美貌という武器を利用するしかなかった当時の時代性も垣間見られる。
本作は、サスペンスというよりも、むしろ夫婦の絆を軸としたヒューマンドラマ的な色彩が
強くなっている。
病に侵されて書けなくなった作家の夫に再びペンを持たせるため、必死になって奔走する妻の
一途な愛の強さに、観る者は心打たれるのである。
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点と線
博多郊外の海岸で男女の心中遺体が発見される。
男は汚職の摘発が進む建設省の課長補佐、佐山。
女は料亭の女中、お時であった。
現場の状況から、単純な「情死」と思われたが、捜査を進めるうちに
所轄の刑事、鳥飼(ビートたけし)と三原(高橋克典)は、ある重要な証言を得る。
お時の同僚ふたりが、商事会社社長の安田(柳葉敏郎)を東京駅で見送ったとき、
13番線ホームから線路を隔てた15番線を歩く佐山とお時を見かけたというのだ。
13番線から15番線が見渡せるのは一日のうちたった4分。
そこに作為を感じた刑事は、やがて安田を、二人を殺害した容疑者と特定。
が、彼には、事件当時は北海道にいたという崩せぬアリバイが…。!
原作は「時刻表トリックの傑作」と称される松本清張の同名長編推理小説。
1958年(昭和33年)に映画化されているが、50年を経て、久し振りにテレビドラマになった。
その撮影で一番困ったのは、当時走っていた電車がもはやないことだったという。
結局、オープンセットとCGを駆使して、昭和33年当時の駅と街並みを再現したのだが、
主演のビートたけしは「こんな電車に乗っていたのか」と改めて驚いたそうだ。
汚職がはびこり、巨悪が高笑いする物語は、松本清張の真骨頂だ。
物語の舞台となった昭和30年代は、戦後復興が一段落し、いよいよ高度成長を迎えようと
していた時代。その一方で、官民癒着による汚職、贈賄事件が相次いでいた。
疑獄事件が取り沙汰されながら、巨悪は逃げ延び、犠牲になるのは、中間管理職。
本作は、そうした社会悪が蔓延する時代に犠牲になった個人の悲劇が描かれている。
ビートたけしが演じる定年間近のベテラン刑事・鳥飼重太郎が、無理心中に見せかけた
完全犯罪の真相を暴いていくのだが、その犯行の動機を解き明かす過程も、説得力があり、
リアリティを生んでいる。
ドラマは二部構成、二夜連続で、5時間に渡り放映され、豪華キャスト陣の演技も相まって、
いずれも20%を超える視聴率を記録した。
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李香蘭
南満州鉄道で中国語を教えていた山口文雄の娘・山口淑子は、父親の友人で家族ぐるみの
付き合いがあった瀋陽銀行頭取・李将軍の義理の娘となり、李香蘭という名を得た。
日本語と中国語が堪能だった上、絶世の美貌だったことから、日本の国策会社・満州映画社に
スカウトされ、女優・歌手として満州国で人気を博す。
1941年(昭和16年)初来日し当時の日劇に日満親善の慰問歌手として出演。
このとき大勢のファンが大挙して押し寄せたため、消防車が出動・散水し、
群衆を移動させる程の大騒動となった。
だが終戦後、敵国の日本に協力した裏切り者として軍事裁判にかけられてしまう。
死刑になるとの見方もあったが、戸籍により日本人であることが判明し、
ようやく無罪となり釈放された。
原作は、2004年に出版された李香蘭(山口淑子)の自伝「李香蘭を生きて 私の履歴書」
旧満州に日本人として生まれ、中国人の女優・歌手として日本と満州で大人気となる。
一方、その活動は国策に利用され、彼女は波瀾万丈の生涯をおくることになった。
今回のドラマで李香蘭を演じたのは上戸彩。
とてもハードルの高い役だったようで「台本はボロボロになるまで何度も読み返した」
とインタビューで語っていた。
CMと青春ドラマばかりの印象があった彼女にとって、従来のアイドルのイメージを脱皮し、
大人の女優への転機となる作品になった。