ギリシア神話事典                あ行 い行  え行   お行  か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 ら行


オイオノスOionos
ミュケナイ王エレクトリュオン(Elektryon)の子リキュムニオス(Likymnios) の子。ヘラクレスの従兄弟であり友人。
スパルタにて、ヒッポコオン(Hippokoon スパルタ王オイバロス Oibalos の子)の息子の飼い犬に石を投げた。
その犬の飼い主である、ヒッポコオンの息子達は激怒し、オイオノスを殺してしまった。
後にヘラクレスは、復讐のため、ヒッポコオンとその12人の息子達を皆殺しにする。
(アポロドロス 第ニ巻 7-3)(New Handbook of Greek Mythology: Based on H.J. Rose's)


オイジュスOizys
ニュクスの子で「苦悩」の神。


オイシンOisin
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フィアナ騎士団(Fiana)を率いたフィン・マクール(Finn Mac Cool)の息子。
ドルイド(Druid)の魔法によって小鹿に変えられたダーナ神族(Dannan)の血をひく少女サヴァ(Sava)とフィンとの間に生まれた。

成長したオイシンは真珠のような歯と明るい髪、鋭い青い日と血色の良い褐色の頬をした巨漢で、こめかみには魔の毛が生えていたという。
また有能な戦士にして詩人であり、息子のオスカー(Oscar)と勇名を馳せた。

18世紀の「常若の国のオイシン(Oisin in the land of youth)」やそのもととなった伝承によれば、オイシンは、
マナナン・マクリル(Manannan Mac Lir)の娘ニアヴ(Niav)に誘われ常若の国テイル・ナ・ノーグ(Thierna na oge)に渡り、そこで300年の時を過ごしたとされる。

しかし、望郷の念に駆られた彼は、故郷に戻りたいと考えるようになった。そんな彼をニアヴは「決して馬から降りて地に足をつけないように」と警告し送り出す。

故郷に戻ったオイシンを出迎えたのは、変わり果てたアイルランドと小さな人々だった。
オイシンは彼らに騎士団の行方を開くが、それは昔話だと一笑に付されてしまう。
その後、彼らは石の下敷きになった仲間を助けて欲しいとオイシンに頼んだ。

オイシンは快く引き受けるが、誤って落馬してしまう。
そして一気に300歳を超える目の不自由な老人となった。
オイシンが詩人として名を馳せるようになったのは、この後のことである。 → 常若の国

Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)

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オイディプスOidipus
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テバイ王ライオス(Laios)と妃イオカステ(Iokaste テバイのメノイケウス Menoikeus の娘)の子。

息子に生命を奪われると予言されていた父によって、生後すぐ両足のかかとをピンで貫かれ、
キタイロン(Kithairon)の山中に捨てられた。

しかし隣国コリントスの羊飼いに拾われ、子供のなかったポリュボス王(Polybos)と妃ペリボイア3(Periboia)
の子となり、王の後継者の地位を約束された。

成長ののち、自分の素性に疑問をもち、デルフォイに行きアポロンの神託にたずねたところが、
父を殺し母と結婚する運命にあると告げられた。

この神託の成就を避けるため、父母のいるコリントスに帰るのをあきらめ、テバイに向った。

狭い山道を歩いていると、テバイ王ライオスの車が道をふさいでいる。
ライオス王は怒って、オイディプスを轢き殺すよう御者に命じた。

オイディプスは、御者とライオス王を殺してしまった。
もちろん、オイディプスは殺したのがテバイの王で、自分の父親だということを知らない。




テバイに着くと、当時この市を悩ましていたスフィンクス(Sphinx)の謎を解いて、この女怪を自殺させ、その功績によって未亡人のイオカステと結婚。

テバイ王となったオイディプスは、ニ人の息子ポリュネイケス(Polyneikes)、エテオクレス(Eteokles)とアンティゴネ(Antigone)とイスメネ(Ismene)のニ人の娘をもうけた。

しかしテバイは、オイディプスが知らずに犯した大罪のために悪疫と飢饉に襲われ、その原因を究明する過程で、自分のほんとうの素性を知る。

イオカステが自殺したあと、オイディプスは自分の目を突いて盲目になり、アンティゴネに手を引かれ放浪の旅に出た。

そして最後には、アッティカのコロノス(Colonus)に来てテセウスの保護を受け、エウメニデス女神たち(Eumenides)の聖林の奥で、神秘的な死をとげたとされる。

オイディプスとは、ギリシア語で「ふくれ足」を意味し、赤子のときピンで貫かれたあとがはれたままになったゆえにつけられた名であったという。

(ソフォクレス Sophokles 『オイディプス王 Oidipous Tyrannos』)

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オイディプス・コンプレックスOidipus complex
男子が母親に性愛感情をいだき、父親に嫉妬する無意識の葛藤感情。
人間は乳幼児期から性愛衝動をもち、無意識に異性の親の愛情を得ようとし、同性の親に対しては嫉妬するが、この衝動は抑圧されている。
このことを十分理解してなんらかの方法で解放しないと、一種のしこりないし屈折となり、のちに神経症を発症することがあるという考え方。
父親を殺し母親と結婚したギリシア神話のオイディプス王にちなんで名づけられた。
(The Encyclopedia Britannica)


オイネウスOineus
1 カリュドン王。
ディオニュソスより最初にぶどうの栽培を教えられ、できた酒を自分自身の名にちなみオイノス(Oinos)と命名したという。
アルタイア(Althaia アイトリアのプレウロン王 Pleuron テスティオス Thestios の娘)と結婚し、有名なカリュドンの猪狩の主人公メレアグロス(Meleagros)をはじめとする
息子たちと、ヘラクレスの妻となったデイアネイラなどの娘たちをもうけた。
彼の治世に行われたこの狩りの最中の事故が原因で、アルタイアがメレアグロスを殺したうえで自害して果てると、
ペリボイア(Periboia オレノス王 Olenos ヒッポノオス Hipponoos の娘)を後妻にめとり、テバイ攻めの七将の一人テュデウスを生ませ、
トロイ戦争の英雄ディオメデスの祖父となったとされる。
(アポロドロス 第一巻 8-1,8-2,8-3,8-4,8-5,8-6)

2 エジプト王アイギュプトスの息子の一人。


オイノネ(Oinone)
ケブレン河神(Kebren)の娘。(オレアド Oread イデ山2 Ide のニンフ)
レアより予言の術を学び治癒能力を持っている。
トロイ王子パリスにヘレネを求めて航海せぬように忠告するが自分を棄てたパリスに手当せず、彼は死んでしまう。
後悔して自害する。
(アポロドロス 第三巻 12-6)


オイノマオスOinomaos
アレス神の息子でピサ(Pisa)の王。父神から贈られた駿足の馬を所有していた。
娘のヒッポダメイア(Hippodameia)を溺愛し、求婚者たちに、もし負ければ首を取るという条件で、彼と戦車競走をすることを要求して、次々に 12人の首を取り、王宮の飾りにしていた。
ペロプス(Pelops)がヒッポダメイアに求婚し、王との戦車競走にのぞんだとき、ヒッポダメイアは御者のミュルティロス(Myrtilos)にペロプスの味方をするよう頼んだ。
ミュルティロスは、王の戦車に細工をし、オイノマオス王は、戦車の疾走中に車輪がはずれ惨死をとげた。
(アポロドロス E2-4,2-5,2-6,2-7)


黄金の鎌 (ハルペ Harpe)
ヘルメスが持つアダマス製の鎌。
彼はこの鎌を用いて百眼巨人アルゴスの首をはね、「アルゴス殺しの」という有名な異名を得た。
また、ペルセウスもこの鎌を借りてメドゥーサの首をはねた。
(The Origins of Greek Religion by Bernard C. Dietrich)


黄金のりんごGolden Apple
不和のりんご。エリスのりんご。トロイ戦争の発端となる。ヘファイストス作。


オウィディウスOvidius [前43-後18]
ローマの詩人。恋愛エレゲイア elegeia詩(エレジー)の完成者。
『恋さまざま』 Amores (五巻、前 20) や『名婦の書簡』 Heroides が平和と繁栄のさなかのローマの上流社会に受けて一躍時代の寵児となった。
しかし、官能的で優雅な叙情詩『愛の技術』 Ars amatoria (三巻、前1) がアウグスツス帝の綱紀粛正政策に合わず、
黒海沿岸のトミス(現、ルーマニアのコンスタンツァ)に追放され、終生帰国を許されなかった。
中世を通じて彼の作品、特に『変形譚』 Metamorphoses (八C頃完成)は旧約聖書に類似する点があるために広く読まれ、
ルネサンスの芸術家たちの神話的題材の源となり、フランス宮廷文学をはじめ、シェークスピア、ミルトンらにも大きな影響を与えた。
(The Encyclopedia Britannica)


王権Kingship
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ケルトの伝説では、人間の王は、その国の女神の一人と結婚することによって、真の王権を得るとされた。
すなわち王位に就くためには、この地上では女神を体現している女王と結婚しなければならなかったのであり、これが「聖婚(Holy Marriage)」の本来の意味であった。

その例としてエリン(Erinn)の大地女神エリウ(Eriu)の結婚がある。
彼女との結婚は、アイルランドの大地を手中に収めることと同義であり、その夫には王権とその義務が与えられた。

彼女は、王権を受け継ぐ人間と結婚すると、ワインを満たした黄金の盃を差し出し、大地の支配権と太陽がもたらす光や豊穣を与えた。
この儀式は、当時のアイルランドの中心と考えられていたタラ(Tara)で行われており、王となる者はさまざまな試練を与えられたという。

コナハト(Connacht)の女神メイヴ(Medb)は、アイルランドの9人の王と夫婦になった。
彼女は、どの王にも彼女と結婚せずにはタラで統治させなかったという。

またアーサー王 (King Arthur)の妃ゲネヴィア(Guinevere)は、メレアガント(Maleagant)、ランスロット(Lancelot)、
アーサー、モドレッド(Mordred)らによって何度も誘拐された。

これは、王位を望む多数の騎士が、統治権を自分のものにしようとしていたという意味であった。
アーサー王の王国の崩壊は、彼が王妃を失ったことと密接に関連していたのである。

Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)
The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Barbara G. Walker)

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牡牛(おうし)座 → エウロペ2


オェングスAengus
ケルト神話のダーナ伝説(Danann cycle)に登場する愛の神。
豊穣神ダグダ(Dagda)とボイン河(The River Boyne)の女神ボアン(Boann)との不倫の末に生まれる。
アイルランド王の系譜「レンスターの書(Lebor Laignech)」では、迫害される恋人たちの頼もしい守護神として立ち回る反面、
「オイングスの夢(Aislinge Oenguso)」という物語では、夢で見た乙女への恋慕のあまり衰弱するという親しみやすい面も描かれている。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)



オオクニヌシOkuninushi(大国主命)と兎 (出雲伝説)
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あるときオオクニヌシと80人の兄たちは、ヤガミヒメ(八上姫)という美しい娘と結婚したいと思い、彼女に求婚しに出かけた。

途中で彼らは泣いている赤むけの兎に出会った。

彼はワニザメに生きたまま皮をはがれ、ひどい痛みに苦しんでいた。

意地悪な兄たちは、兎をもっと苦しめてやりたくて、毛皮を元に戻すには、海水につかればよいと助言した。
嘘と知らず、兎は言われたとおりにすると、痛みが悪化し、さらに苦しくなった。

兄たちの荷物を持ち、遅れて通りかかったオオクニヌシは、真水で体を洗って、蒲の穂綿にくるまれと兎に教えてやった。

オオクニヌシの言葉にしたがうと、兎は見る間に元気になった。

すると兎は神の姿になって、姫と結婚したいというオオクニヌシの望みをかなえてやった。


この兎、実は「因幡の白兎」と呼ばれる、ヤガミヒメの使いのものだったのである。

オオクニヌシの成功を妬んだ兄たちは、彼を二度殺したが、神々はそのたびに彼を生き返らせた。

このオオクニヌシと兎の物語は、ちっぽけな動物にも魂があり、彼らが実は強い力をもつ神かもしれないという日本人の信仰を明示している。

(古事記)

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オーガOgre
シャルル・ペロー (Charles Perrault) の童話「長靴をはいた猫 (Le Chat botte)」に登場する人食い鬼。
性格は凶暴で、人間の2〜3倍の身長を持ち、怪力をふるって人間をとらえて食べてしまうといわれている。
山間で、獲物を求める野獣のような生活をしていることもあれば、邪悪な魔術などによって支配されて護衛役をする時もある。

また、ときにはゴブリン (Goblin) やオーク (Orc) を従えて登場することもある。
彼らの自慢はその太鼓腹で、腹が肥えていればいるほど強くパワーがあるとされている。
しかし、童話ではネズミに変身したところを猫に食われてしまう。
El libro de los seres imaginarios (Jorge Luis Borges&Margarita Guerrero)


オークOrc
トールキン (John Ronald Reuel Tolkien) の小説「指環物語 (The Lord of the Rings)」に登場する豚のような頭部を持った人型の怪物。
性格は野蛮で人間を襲って食べ物と女性を略奪するといわれる。
彼らは日光を嫌い、そのため活動の多くは夜間に限られている。

彼らの目は、赤外線をとらえることができ、夜間でも自由に行動できるようになっている。
棲家は洞窟や廃墟、廃屋、森の奥深い場所と暗いところを好んでいる。
彼らは、邪悪な魔法使いの率いる軍団の尖兵として利用されることが多い。
El libro de los seres imaginarios (Jorge Luis Borges&Margarita Guerrero)


オグマ Ogma
ケルト神話のダーナ伝説(Danann cycle)に登場する雄弁、霊感、言語を司る戦神で、ダヌ女神(Danu)の息子。 ダグダ(Dagda)の兄弟。
アイルランド語の最古の文字であるオガム文字(Ogham)の発明者。
フォモール族(Fomorians)の混血児ブレス(Bres)の圧政時には、過酷な薪拾いをさせられるなど屈辱的な扱いを受けた。
知性派の神といった印象が強いが、かなりの怪力で武勇にも優れており、英雄ルー(Lugh)の指揮下で多くの敵将を討ち取っている。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)


オギュギア島Ogygia
海のニンフ、カリュプソが住む絶海の孤島。アトランティス大陸が水没した後に残った島の一つという。
(オデュッセイア 第一歌 85)(The Chronology of Ancient Kingdoms Amended by Sir Isaac Newton)


オケアニデスOkeanides
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オケアニドOceanid(単数)海のニンフたち。
ティタン神オケアノスと姉妹のテテュス(Tethys)の間に生れた。

いずれも絶世の美女の娘たちで、ヘシオドスによれば総数は 3000とされる。

おもなオケアニドに、
アドメテ(Admete ヘラの従者)
エイデュイア(Eidyia コルキス王アイエテスの妻)、
エウリュノメ(Eurynome カリスたちの母)、
カリロエ(Kallirrhoe エキドナの母)、
クリュティエ(Klytie アポロンの愛人)、
クリュメネ(Klymene イアペトスの妻)、
クリュメネ3(Klymene 太陽神ヘリオスの妻)、
クロリス(Chloris 西風の神ゼフュロス Zephyros の妻)
テュケ(Tyche 幸運のニンフ)、
ディオネ(Dione ホメロスによれば、アフロディテの母)
テレスト(Telesto 成功のニンフ)、
ドリス(Doris ネレウスの妻、ネレイデスの母)、
フィリュラ(Philyra ケイロンの母)、
プルト(Plouto タンタロスの妻)、
プレイオネ(Pleione アトラスの妻)、
ペルセイス(Perseis 太陽神ヘリオスの妻)、
メティス(Metis ゼウスの最初の妻)、
メリボイア(Meliboea アルカディア王リュカオンの母)、。
レウケ(Leuke 冥界の王ハデスの愛人)がいる。

(THEOI Greek Mythology Encyclopedia, THE CLASSES OF NYMPH)

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オケアノスOkeanos
ガイアとウラノスの子。大地を取り巻く大河神。ティタン十二柱のひとりで長兄。
オケアノスは、平板な円形の大地の周囲を巻いて流れる大河を表す神であり、古代ギリシアでは世界のあらゆる河川や泉はこの水が地下を通って地上に現れるものと考えられていた。
同じく海の神である妹テテュスを妻とし、たくさんの娘をもうけ、娘はほとんど海のニンフである。
娘たちのことを総称してオケアニデス(Okeanides オケアノスの娘)という。
息子たちはほぼ全員河の神である。
なお、英語の「海 ocean (オーシャン)」は、オケアノスの名に由来する。
(ヘシオドス 20,133,337)



オシリスOsiris
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エジプト神話の冥界神。ヌト(Nut)とゲブ(Geb)の子。
エジプトの「よき存在」として善政を行い、慈愛により地方を支配した。

神々を礼拝することと農耕の正しい法を教えた。
弟セト(Set)に殺され、その死体はシリアのビブロス(Byblos)にまで流されたが、妻で妹のイシス(Isis)が発見してエジプトに持帰った。

セトはさらにこれを奪って死体を寸断しエジプト全土にまいたが、イシスはこれを拾って復活させ、子ホルス(Horus)が父の仇を討ち、オシリスはそののち冥界の王となった。
元来、シリア起源の穀物神で収穫時に死に、穀物の胚芽とともに再生すると考えられた。

はじめ、ナイルデルタのブシリス(Busiris)で、のちに南方へも広まり土着の死神と結合して全土で信仰された。
「死者の書(Book of the Dead)」は、オシリスの裁きの間での最後の審判を経て西方の天国に到達するための案内書。
ギリシア人は、ディオニュソスやハデスと同一視した。

(The Encyclopedia Britannica)

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オシーン → オイシン


オードルOdr/オード/オーズ
北欧神話の神。 名は「激情」の意。美と豊穣の女神フレイヤ(Freyja)の夫。
オードルはしばしば長旅に出たが、ある時はいつまでも帰ってこなかったため、フレイヤは夫を恋しがって世界中を探した。
「エッダ」(Edda)では夫と出会えたかは明記されていない。

しかし別の伝承では、オードルが南の国で、天人花の咲く中に放心状態で座り込んでいるのをフレイヤが見つけ、彼女が呼びかけるとオードルは正気を取り戻した。
フレイヤはオードルを伴って帰郷したが、2人が1歩ずつ進むにつれて、それまでフレイヤの不在によって枯れていた大地に花が咲いていったとされている。

「スノッラ・エッダ」(Snorra Edda)によると、この探訪の合間にフレイヤが流した涙が黄金となって少しずつ大地に染み込んでいったという。
(この伝承は同時に、世界中で黄金が少量ずつ産出される理由を説明している)
(Wikipedia, the free encyclopedia)


オーディンOdin/ヴォータン(Wotan)
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宇宙のもっとも高い場所にあるアスガルド(Asgard)と呼ばれる神界に住む北欧の神々の支配者。
灰色の髭を蓄えた隻眼の老人の姿をとる。

神界では黄金の鎧を身に着けるが、地上ではつば広の帽子と青いマントを愛用する。
優れた用兵家で、魔術の使い手でもある。

オーディンは、勇敢な戦士たちの友で、彼らに武器を贈った。
彼が率いるアース神族(Aesir)は、大地の神々であるヴァン神族(Vanir)と長い戦いを続けていた。
戦死した英雄たちは、オーディンの宮殿ヴァルハラ(Valhalla)でともに暮らした。

オーディンは運命の女神ノルン(Norn)によって、ラグナログ(Ragnarok 終末の日)で命を落とすことを予言されていた。
にもかかわらず、彼はヴァルハラに戦士たちの魂を集め、いずれ来るラグナロクに備えて鍛錬を行っていた。
破滅の予言を受けても、オーディンはそれに対抗しようとしたのである。

しかし、定められた運命を変えることはできず、世界には最後のときが訪れる。
攻め上がる敵の軍勢を前に、オーディンは黄金の鎧を身にまとい、神々の先頭に立って戦う。
しかし、奮戦むなしく巨狼フェンリル(Fenrir)に飲み込まれ、命を落とすのである。

Myths&Legends(Philip Wilkinson)

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オデュッセイアOdysseia
「イリアス」とともにホメロス作と伝えられる古代ギリシアの長編叙事詩。
トロイ戦争終結後、故郷をめざすオデュッセウスの十年間の漂泊と、不在中、妃ペネロペに求婚した男たちに対する報復とをのべる。
(The Encyclopedia Britannica)


オデュッセウスOdysseus/ユリシーズ(Ulysses)
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「憎まれっ子」の意。ヘルメスの曾孫。イオニア海(Ionian Sea)の小島イタケ(Ithaca)の王。

コリントス王シシュフォス(Sisyphos)とアンティクレイア(Antikleia ヘルメスの子アウトリュコス Autolykos の娘)の子。
もともとヘレネの求婚者のうちの一人であったが、その求婚者たちの数があまりに多いことに悩んでいた
スパルタ王テュンダレオス(Tyndareos)に、求婚者たちが争わずにすむ方法を提案。

すなわち、すべての求婚者たちに、ヘレネが夫の選択をすることを受諾させ、この結婚に関して、夫が誰かに害を蒙った場合には、
求婚者たちはすべて彼に助力すると宣言させたのである。
オデュッセウスは、その代償として、テュンダレオスの姪のペネロペを娶り、テレマコスを儲けた。

トロイ戦争にはケパレニア勢(Kephallenia)12隻を率いた。
戦争末期に木馬の建造を思いつき、その中に自らと軍勢が入り、外側には「帰還の感謝のためアテナに捧ぐ」と彫り、トロイ軍を欺く。
トロイ陥落後、報賞としてトロイ王プリアモスの正妃ヘカベを得る。

帰途、キコーン人(Kikon)の町イスマロス(Ismaros)を掠奪し、ロトパゴイ人(Lotophagoi)の国では、
食えばすべてを忘れるという果実ロトス (lotus)を食した部下を失う。

キュクロプス人たちの国では、ポセイドンの子ポリュフェモス(Polyphemos)に、アポロンの神官マロン(Maron)から贈られた
ワインを与えて酔わせ、棍棒で彼の目を潰したことからポセイドンの恨みを買う。

アイオリアの島(Aiolia)で、その王アイオロスから風の袋を贈られて領地イタケに近づくが、
部下がその袋を開けたため、再び吹き流される。

人食い巨人族ライストリュゴネス(Laistrygones)の国では多くの乗組員を食われ、ただ一隻残った船でアイアイエの島に寄った際には、
そこに住んでいたキルケの魔法により、豚や驢馬に変えられそうになるが、
ヘルメスから貰った魔除けの霊草モーリュ(Moly)を用いて魔法を防ぐ。


オデュッセウス



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鬼Oni
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日本の民間伝承に登場する伝説上の生き物。

頭に2本、もしくは1本の角が生え、頭髪は細かくちぢれ、口に牙が生え、指に鋭い爪があり、虎の皮の腰布をつけていて、
表面に突起のある金棒を持った大男の姿をしている。

奈良時代には、修行僧の開祖、役小角(通称、役行者)が生駒山で鬼を退治し、その後、使役したという鬼神や、
平安時代には、羅生門で渡辺綱に腕を切られた鬼、室町時代になると、桃太郎に退治された鬼ヶ島の鬼が出現した。

鬼(おに)の語は、隠(おん)が変化したもので、元来は姿の見えないもの、この世ならざるものであることを意味している。

そこから、人間が死んで現世に恨みや未練があり、それが形となって鬼になったとされている。

鬼は忌み嫌われるものであることが多いため、節分をはじめとして、全国には鬼に関わりのある行事が多数存在している。

世界の幻獣大事典(広済堂)

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おひつじ座の伝説
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テバイ王アタマス(Athamas)には、美しい雲の精ネフェレ(Nephele)とのあいだに、二人の子供がいた。
子供の名は、王子フリクソス(Phrixos)と王女ヘレ(Helle)。

しかし、浮気な王はネフェレを捨て、イノ(Ino)と再婚する。
この後妻イノは、前妻の子をとても憎んだ。
そして、ついに子供たちを亡き者にする計略をめぐらした。

『兄妹を大神ゼウスのいけにえにささげよ』
後妻が出させたニセの神託を受け、二人の兄妹はいけにえとして差しだされてしまう。

そのとき、空のかなたから金色の羊が現れた。
羊は兄妹を背中に乗せると、再び空へと舞い上がった。



この羊こそ、雲の精ネフェレが、我が子を救うために差しむけた使いだった。
危機一髪で兄妹を助けた羊は、東へ東へと空を駆ける。

すると、妹のヘレはふと下をのぞいた。
とたんに目がくらんでしまい、しがみついていた手を放し、海へ落ちてしまった。

羊はどうすることも出来ず、ヘレの落ちた海を何度も振り返りながら飛びつづけた。
ヘレの落ちた海は、以後彼女の名にちなみヘレスポントス(Hellespontos 現ダーダネルス海峡 Dardanelles)と呼ばれる。

王子フリクソスは、黒海を横切り、コルキス(Kolchis)に辿り着いた。
金色の羊はコルキスで神託によりゼウスに捧げられた。

羊の毛皮はフリクソスを手厚く迎えてくれたコルキス王アイエテス(Aietes)に贈られた。
その後、羊はゼウスによって夜空にかかげられ、おひつじ座になった。

(アポロドロス 第一巻 9-1)

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オプスOpus
ゼウスとプロトゲネイア(Protogeneia デウカリオンの娘)の子。
ロクリス(Lokris)の地の王となり、その住人オプス人に名を与えた祖。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


オベロンOberon
シェイクスピアの喜劇「真夏の夜の夢」に登場する妖精王。
オベロンは堂々とした態度の、美しい顔をしたドワーフ(Dwarf)として描かれている。

しかし、彼は人間にも自分のお供の妖精たちにもいたずらを仕掛けたり悪さをしたりすることがある。
オベロンはパック(Puck)の率いる妖精たちとともに英国の森林に出没する。
そして森の中を行く旅人をだまし、妖精時間に引き留めようとする。

彼に出会った人は、たとえ彼が魔法を使っていかなる恐怖や嵐や恐ろしい光景をもたらしても、決して彼に話しかけたりせず、じっと黙っているのがよい。
オベロンに話しかけた者は、永久に彼の力に支配されてしまうのである。
Spirits, Fairies, Gnomes, and Goblins (Carol Rose)


オリオンOrion
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ポセイドンとクレタ王ミノスの娘エウリュアレ(Euryale)の子。

狩猟好きの美青年であったオリオンは、海原を歩く力を父ポセイドンより授かっていた。
海に野山に獲物を追いかけ回していたオリオンは、ある時、狩りの女神アルテミスと出会う。

ふたりはお互いの狩りの腕前を認め合い、やがて恋に落ち、共に暮らすようになった。

仲睦まじく獲物を追い、矢を放つ二人の姿に、アルテミスの兄アポロンは嫉妬する。
永遠に処女を守るとゼウスに誓ったアルテミスが恋をしているのが許せなかったのだ。

アポロンは海辺でアルテミスに「あの的(まと)を射ぬけるか?」とけしかける。
アルテミスは海原遠くに揺れる的を見事に射抜いた。
しかし、それは海上を歩くオリオンの頭であった。

事実を知ったアルテミスは深く悲しみ、父ゼウスに頼んでオリオンを星座に加えてもらった。
オリオン座は、天空で狩りを続け、アルテミスは月とともに銀の戦車で空を駆け、彼を見守り続けている。
(ヒュギヌス Hyginus 天文詩 Astronomica 2-34 Orion)

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オリュンポス山Olympos
ギリシア北部、テッサリア(Thessaly)にある峻峰。
オリュンポス十二神を初めとするギリシア神話の諸神が住んだという。最高峰2917メートル。
(The Encyclopedia Britannica)


オリュンポス十二神Twelve Olympians
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ギリシア神話に登場する十二柱の神々。
ギリシア神話世界を統べる主要な神々であり、天空神ゼウスを筆頭に多様な神々がその座を担っている。

ゼウスZeus (ジュピター Jupiter ) 天空神・雷神。
ヘラHera (ジュノー Juno) 婚姻の女神。

アテナAthena (ミネルヴァ Minerva) 智恵の女神。
アポロンApollon(アポロ Apollo) 太陽神。芸術・弓術・予言・医術の神。

アフロディテAphrodite (ビーナス Venus) 愛と美の女神。
アレスAres (マルス Mars)軍神。戦いの神。

アルテミスArtemis (ダイアナ Diana) 純潔と狩猟の女神。
デメテルDemeter (ケレス Ceres)大地の女神。五穀豊穣の女神。

ヘファイストスHephaistos (バルカン Vulcan) 火と鍛冶の神。
ヘルメスHermes (マーキュリー Mercury) 商業の神・旅人の守護神。

ポセイドンPoseidon (ネプチューン Neptune) 海神。
ヘスティアHestia (ウェスタ Vesta)炉の女神。
(The Encyclopedia Britannica)

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オリュンピアOlympia
ペロポネソス半島西部に位置する都市。
古代オリンピックが行われた場所であり、ギリシア最大のドリス式神殿の一つであるゼウスの神殿、オリュンピアで最古のヘラの神殿などがある。
(The Encyclopedia Britannica)


オルトスOrthros
ヘラクレスに退治された巨人ゲリュオン(Geryon)の牛の番犬。
姿は黒い双頭の犬で、たてがみ一本一本と尻尾が蛇になっている。
エリュテイア島(Erytheia)でゲリュオンの雄牛を守っていたが、牛を求めてやって来たヘラクレスを発見して跳びかかり、棍棒で殴り殺された。
テュフォン(Typhon)とエキドナ(Echidona)の子で、ケルベロス、ヒュドラ、キマイラを兄弟に持つ。
また、母であるエキドナとの間にネメア(Nemea)の獅子、スフィンクス(Sphinx)をもうけたとされる。(The Encyclopedia Britannica)


オルフェウスOrpheus
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トラキア王オイアグロス(Oiagros)とムーサのカリオペとの子。
竪琴によって鳥獣木石をも従わせた吟唱詩人。
アルゴ船でセイレンの島を通った際には、竪琴をかなで彼女らに対抗した。

オルフェウスには、エウリディケという美しい妻がいた。
ある時、花を摘みに出かけたエウリディケは、毒蛇にかまれ、死んでしまった。

オルフェウスはいかなる危険を冒してまでも、妻を取り戻そうと、冥界に降った。

オルフェウスが竪琴を弾き始めると、冥界の王ハデスもその音色に心を奪われ、「地上に出るまで後ろを振り向いてはならぬ」と約束させて、エウリディケが地上に戻ることを許した。

オルフェウスは、エウリディケの手をひいて地上へつながる階段を上っていった。

しかし、地上まであと一歩の所まで来ると心を抑えきれなくなり、思わず振り返ってしまった。
エウリディケはたちまちにして冥界に引き戻された。

彼は再び妻を追って冥界に戻ろうとしたが、三途の河の渡し守カロンはこれを許さず、望みは果たせなかった。

オルフェウスは悲しみのあまり竪琴と共に湖に身を投げて死んでしまった。
オルフェウスの持っていた竪琴はゼウスが天へと舞いあげてこと座になった。
(アポロドロス 第一巻 3-2)(オウィディウス Ovidius『変形譚 Metamorphoses』巻十)

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オルフェウス教Orphism
古代ギリシアの密儀宗教。BC7世紀ごろからBC5世紀ごろに栄え、とくに南イタリアのギリシア植民都市、シチリア島にかけて広く信仰された。
その特色は、輪廻転生の教説にあり、肉体は牢獄であり、それに対して魂(プシケ)は永遠不滅の本質であるとみなしている。オルペウス教。
(The Encyclopedia Britannica)


オレアデスOreades 
オレアドOread(単数)山のニンフ。
おもなオレアドに、
アドラスティア(Adrasteia イデ山 Ide のニンフ。ゼウスの乳母)
アマルティア(Amaltheia イデ山 Ide の山羊のニンフ。ゼウスの乳母)
イデ(Ide イデ山 Ide のニンフ。ゼウスの乳母)
オイノネ(Oenone イデ山2 Ide のニンフ)、
キュレネ(Kyllene キュレネ山のニンフ)、
クレテス(Kuretes イデ山2 Ide のニンフ)、
ディオネ2(Dione トモロス山 Tmolos のニンフ。タンタロスの妻)
トリアイ(Thriai パルナッソス山 Parnassos の三人のニンフ)がいる。
(THEOI Greek Mythology Encyclopedia, THE CLASSES OF NYMPH)


オレステスOrestes
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トロイ戦争におけるギリシア方の総指揮官だったアガメムノンと妃クリュタイムネストラの子。
トロイから帰国した父が、母と愛人のアイギストス両名に殺されたとき、まだ幼少だった彼は、姉のエレクトラの助けでフォキス(Phokis)に住む
伯父のストロフィオス(Strophios)の宮廷に逃れ、そこで従兄弟のピュラデス(Pylades)と固い友情に結ばれ成長した。

成人ののち、アポロンの神託に父の仇を討てと命じられ、ピュラデスと一緒に故国に帰り、エレクトラと再会し、彼女に励まされクリュタイムネストラと
アイギストスを討ったが、母殺しの大罪を犯したために、復讐の女神エリニュスたちに取りつかれ、その迫害を受け苦しみながらピュラデスとともに諸国を放浪した末に、
最後にアポロンの勧めでアテネに行き、そこでアテナ女神の主宰するアレオパゴスの法廷において無罪の宣告を受けた。

このあと彼は、アポロンの助言に従い、黒海北岸のタウリス(Tauris)に行き、そこでかつてアウリスの浜でアルテミスにいけにえに捧げられたはずの姉イフィゲネイアと再会した。
そして彼女が祭司をつとめる神殿のアルテミス像を盗み出し、姉と一緒にアッティカに持帰ったうえで、ミュケナイに帰って王となり、
ネオプトレモス(Neoptolemos アキレウスの子)の妻になっていた婚約者のヘルミオネを取戻して結婚し、彼女の父メネラオスの死後、スパルタの王座を継承した。
(エウリピデス Euripides 『オレステス Orestes』)

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オンディーヌ (Ondine) → ウンディーネ








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