ギリシア神話事典
ファイアケス島Phaiakes
ファイアケス人の王アルキノオス(Alcinous)が統治する島。
オデュッセウスは難破してファイアケス島にたどりつく。
アルキノオス王は、オデュッセウスを厚くもてなし、その故郷イタケ島に送り返した。
アルゴ号遠征伝説では、イアソンとメディアは、アイエステ王の追手を逃れてこの島に到着する。
現在の地中海東部イオニア海北東部に位置するコルフ(Corfu)島とされる。
(オデュッセイア 第五歌 34,第六歌 8)(アポロドロス 第一巻 9-25)
ファイアケス人Phaiakes
ファイアケス島(Phaiakes) に住む伝説的な民族。
オデュッセウスは難破してファイアケス島にたどりつく。
ファイアケス人の王アルキノオスとファイアケスの人々は、オデュッセウスを歓待し、
多くの贈り物を用意し、選りすぐりの若者を漕ぎ手とした船を、オデュッセウスのために準備した。
船はオデュッセウスを乗せて、夕刻ファイアケス島を離れ、夜明け前に故郷イタケに着いた。
(オデュッセイア 第五歌 34,第六歌 8)
ファウヌスFaunus
ローマ神話に登場する半人半獣の牧畜の神。
農業の後援者ならびに羊飼いの庇護者として崇められた。
ある日彼は、英雄ヘラクレス(Herakies)と彼の愛人オムファレ(Omphale)に会った。
ファウヌスはオムファレに熱烈な恋心を抱き、ふたりのあとをつけることにした。
ヘラクレスとオムファレが夜、洞窟に宿泊すると、ファウヌスは彼らのあとから忍び込み、ふたりが寝静まってから、静かにオムファレの隣にすべりこんだ。
彼女に触れたファウヌスは、毛むくじやらの胸とたくましい腕に驚いた。
カップルは夜の間衣類を交換していたのだ。
ヘラクレスはファウヌスを寝床から追い出し、恋人たちは爆笑した。
Myths&Legends (Philip Wilkinson)
ファエトンPhaethon
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太陽神ヘリオスとオケアニデスの一人クリュメネ3の末子。
ゼウスとイオの息子エパポスの前で父が太陽神だと自慢したが、信じてもらえなかった。
そこで、母クリュメネに父である証が欲しいとねだり、太陽神の宮殿に行く許可をもらった。
太陽神はファエトンを不憫に思い、証が欲しいと言う息子に対し、ステュクスの川に誓いを立てて何なりと望みを叶えると言った。
ところがファエトンは太陽神の天馬を一日だけ御したいと言うのだった。
それを聞いて太陽神は誓いを立てたことを後悔し、なんとか望みを変えさせようとしたが、ファエトンは頑として譲らなかった。
太陽神は仕方なく進路の忠告をする。
火を吐く天馬たちを連れ高く上り過ぎれば天界の宮殿を焼き、低すぎれば大地を焼いてしまう。
それらの忠告も空しく、天馬たちはいつもと違う主人を載せていつもの軌道をはずれ、遂には暴走してしまった。
町々は燃え城壁は崩れ川は干上がり天も山々も燃えた。
事態を収拾するためにやむを得ずゼウスはファエトンに雷霆をふるう。
ファエトンは炎に包まれたまま真逆さまに墜落し、エリダノス河(Eridanos)に受け止められた。
姉たち(ヘリアデス Heliades)は悲しみ続けて河の樹木(ポプラ)となり、流す樹液(涙)は金色の琥珀になったという。
(オウィディウス 『変身譚 Metamorphoses』 巻ニ)
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ファミリア (Familiar) → インプ
フィアナ騎士団(Fiana)
ケルト神話に登場する騎士団。
エリン(Erinn アイルランドの古名)の王コーマック・マック・アート(Cormac Mac Art)に仕えたフィン・マクール(Finn Mac Cool)が団長を務めた集団を指す。
「フィアナ」とはアイルランド語で「兵士」を意味する。
クー・フーリン(Cu Chulainn)活躍したアルスター伝説(Ulster Cycle)のさらに300年後の伝説であると、フィアナ伝説(Fiana Cycle)では語られている。
フランスの武勲詩ローランの歌(La Chanson de Roland)に登場する十二勇士、アーサー王(King Arthur)率いる円卓の騎士の原型であるとされる。
(Wikipedia, the free encyclopedia)
フィアナ伝説(Fiana Cycle)
アルスター伝説(Ulster Cycle)のさらに300年後に現れた伝説で、フィアナ騎士団(Fiana)の団長フィン・マクール(Finn Mac Cool)を中心とする物語群。
彼が仕えるのは、3世紀初頭にアイルランドを統治したとされるコーマック・マク・アルト王(Cormac mac Airt )で、
レンスター(Leinste)とマンスター(Munster)が主たる活躍の舞台である。
Dictionary of Celtic Myth and Legend(Miranda J. Green)
フィリッポス2世Philip II of Macedon(BC382~BC336)(在位BC359~BC336)
マケドニア王。アレクサンドロス大王(Alexander the Great BC356~BC323)の父。カイロネイアの戦い(Battle of
Chaeronea BC338)でアテネ・デバイ連合軍を破り、
コリントス同盟(League of Korinthos)の盟主となってギリシアの覇権を握った。ペルシア遠征の準備中、側近に暗殺された。 ピリッポス2世。
(The Encyclopedia Britannica)
フィロクテテスPhiloktetes
テッサリアのメリボイア王(Meliboia)ポイアス(Poias)の子。
オリゾン人(Olizon)。ヘレネの求婚者の一人。
トロイ遠征にはオリゾン人を率いて七隻の船とともに参加した。
遠征中、蛇に噛まれた傷が治らず臭気を放ち、ヘラクレスの弓とともにレムノス島(Lemnos)に棄てられる。
彼の力が必要になったギリシア軍は彼を呼び寄せ、ヘラクレスの弓でパリスを射る。
(ソフォクレス Sophokles 『フィロクテテス Philoktetes』)
フィロテスPhilotes
ニュクスの子で「愛欲」の神。
フィン・マクールFinn Mac Cool
フィアナ伝説(Fiana Cycle)と呼ばれるアイルランドの英雄伝説群のなかで、勇猛な野性的戦士集団フィアナの統領として大活躍する英雄。
有名な英雄オイシン(Oisin)は、彼の息子である。
武勇にすぐれていただけでなく、詩と音楽の名手でもあり、親指を口に入れればあらゆることがわかり、魔法の頭巾を回転させることにより、
犬、鹿、その他あらゆる動物に自在に変身できた。
レンスター(Leinste)とマンスター(Munster)が主たる活躍の舞台で、多くの超人的武勲をあげ、3世紀の後半に 230歳で死んだとされる。
(The Encyclopedia Britannica)
フェアリー (fairy) → 妖精
フェニキアPhoenicia
古代の地中海東岸に位置した歴史的地域名。
現在のレバノンの領域にあたる。
フェニキア人は、創世期に登場するノア(Noah)の末裔(セム族)である。
航海にすぐれ、BC13世紀から海上貿易を営み、西は地中海から大西洋まで進出。
ギリシアの台頭によって次第に衰え、BC64年、ローマに併合された。
フェニキアとは深紅色(Phoinike)を意味するギリシア語である。
これはフェニキア特産の「ムレックス」(Murex)という巻き貝から採取した深紅色の染料が語源とされている。
(小山茂樹「レバノン」中央公論社)
フェンリルFenrir
ロキ(Loki)の息子の巨大狼。
北欧の人々は、天界の鎖には、巨大なオオカミであるフェンリルがつながれている、と言った。
フェンリルはノルンたち (Norns 運命の女神) によって解放されるが、世界の終末(Ragnarok)のときに、天界の父親であるオーディンを貧り食ってしまう。
これが合図になって、すべての神々が死滅してしまう。
北欧の人々は、このため、世界の終末の日を「オオカミの日」と呼んだのである。
Myths of Live By(Campbell,Joseph)
フォイベPhoibe
ウラノスとガイアの娘。ティタン神族。
レトとアステリア(Asteria)の母。
2 太陽神ヘリオスとクリュメネ3の娘。
フォコスPhokos
アイギナ王アイアコスとプサマテ(Psamathe)(ネレイス Nereis 海のニンフ)の息子。
競技に優れていたため、異母兄弟のペレウスとテラモンは共謀しフォコスの頭部に円盤を投げて殺した。
二人はフォコスの死体を森に運び隠したが、追ってアイアコスに知れて国外追放となった。
(アポロドロス 第三巻 12-6,12-7)
フォモール族Fomorians
アイルランドの神話に登場する超自然的存在の種族。
「ダーナ神族(Dannan)」がマグ・トゥレド(Mag Tuired)の野で、フィル・ボルグ族(Firbolgs)らの先住諸族と戦って勝ち、アイルランドの支配権を掌握したあと、
彼らはフォモール族に属するブレス(Bres)を王に戴かねばならないはめに陥り、その圧政に苦しんだ。
結局、両種族の決戦は、再度マグ・トゥレドで行われることになり、恐ろしい視力の持主である一眼巨人バロル(Balor)に率いられたフォモール族(Fomorians)は、
最初のうち有利に戦っていたが、最後にバロルがダーナ神族の王ルー(Lugh)に打取られ、ブレスも捕虜にされて完敗し、アイルランドから追払われたという。
(The Encyclopedia Britannica)
フォルキュスPhorkys
海神。ガイアとポントスの子。
妹のケト(Keto)との間に、三姉妹の老魔女グライアイ(Graiai 別名 フォルキデス Phorkides フォルキスの娘たちの意)、見る者を石に変える三姉妹の女怪ゴルゴン(Gorgon)、
スキュラ(Skylla)、トオサ(Thoosa)、また西のはての楽園で黄金の林檎を守る竜ラドン(Ladon)を儲けた。
フォルキデス(Phorkides) → グライアイ
父権宗教Fatherhood Religion
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ローマ・カトリック教会は、地動説を提唱したガリレオ(Galileo)を有罪にした。
キリスト教が地動説を異端視したのは、単にそれが「聖書」の記述に反するからだけではない。
キリスト教は、母権宗教の克服により成立した父権宗教である。
カトリック教会は、母なる大地が自ら動き出し、それが父なる神を象徴する太陽を没落させるという地動説の含意が、自らの支配を危うくする母権宗教の復活と感じたからである。
ガリレオは、俗語でわかりやすく対話篇を書いたので、その自然に対する認識は大衆に広まっていた。
カトリック教会は、自然の真理に目覚めた大衆が自ら勝手に動き出し、それがカトリック教会の権威を失墜させることに大きな危機感を抱いたのである。
(永井俊哉ドットコム)
もともと農業と密接な関係にあった地中海沿岸の豊饒神信仰において崇拝されていた大地母神(女神)には、恵みをもたらすプラス面と凶作をひき起こすという
マイナス面の両方の側面があり、それゆえ尊敬の対象であったと同時に畏れの対象でもあった。
しかし、文字の発明と都市文明の発展により、王を頂点とする階級制度が固まるにつれて、宗教世界でも男神優勢になっていく。
母権宗教が、多神教的で、偶像崇拝、動物神崇拝を特徴とする自然宗教であるのに対して、父権宗教は、一神教で、偶像崇拝を禁止し、人格神を崇拝する理性宗教である。
こうした父権宗教社会では、その社会構造に由来する必然的な男尊女卑的傾向が見られ、女性は負の要素の象徴として、あるいはその元凶として描かれることが多い。
蛇の誘惑により神との約束を破り人類の「原罪」の原因となった女(イヴ)。
魔女狩りやペスト等で血祭りとなり、社会的地位も低くみなされてしまった。
蛇を神とみなす異宗教や当時一般的であった大地母神信仰を排除するための物語であったが、これが「産む」という人類存続の最重要任務を担う、
本来ならば崇められるべき女性を軽視・蔑視する男尊女卑の根拠となってしまった。
カトリック教会と領主が支配する中世封建社会のもとでは、結婚という制度も、現代に比べると大変に窮屈だったことは想像に難くない。
未婚の女性は、その父親の財産であり、幼い時からいいなずけが決められていて、とても自分の意志だけでは結婚することができなかった。
貴族ともなれば政略結婚や、家柄に見合った結婚相手がおのずと決められていた。
こうした事情は庶民も同じで、結婚には領主の許可が必要とされ、領主には初夜権(新妻の処女を奪う権利)が当然のように与えられた。
しかもカトリックのもとでは離婚は許されないのである。
中世のフランスを舞台としたアニメ映画「哀しみのベラドンナ」(Belladonna of Sadness)では、貧しい農夫が領主に貢物を納められなかったために、
妻の処女を奪われるというくだりがある。
これは一定の税金を納める事により初夜権を拒否できたということから「結婚税」(Formariage)の一種と考えられている。
悠久なる魔術(真野隆也)
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不思議の国のアリスAlice's Adventures in Wonderland
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「不思議の国のアリス」は、オックスフォード大学の数学教師であったルイス・キャロル(Lewis Carroll)が、
ある夏の日のピクニックで、学寮長リデル(Liddell)博士の3人の娘たちにせがまれ、
即興で語り聞かせた話がもとになっている。
キャロルはこの即興の物語を自作の本に仕立て、リデル家の次女アリス・リデル(Alice Liddel)に、
クリスマス・プレゼントとして贈った。
タイトルは「地底の国のアリス」(Alice's Adventures Under Ground)。
のちに新たなエピソードを加え、テニエル(John Tenniel)の挿絵を付して出版されたのが「不思議の国のアリス」である。
アマチュア写真家でもあったキャロルは、リデル博士の家族に撮影許可を貰った。
親としても、我が子の幼い肖像を手元に残せる貴重な機会だったはずである。
こうしてキャロルとリデル一家との交遊が始まった。
数学者であったキャロルにとっては、それまでの絵画にはない正確な視覚的イメージとして、
写真は心を惹きつけてやまないものだった。
キャロルの被写体は、もっぱらリデル家の幼い子供たちだった。
「地底の国のアリス」の最後のページにも、彼が撮影したアリス・リデルの写真が貼られている。
「不思議の国のアリス」でアリスの年齢は7歳、その続編ともいうべき「鏡の国のアリス」(Through the Looking Glass)
では7歳半に設定されている。
キャロルにとって7歳という年齢は少女友だちとして理想的な年齢だったと思われる。
「地底の国のアリス」をプレゼントしてから半年後、13歳の誕生日直前のアリス・リデルを見た彼は、
少女から大人へと変わりつつある彼女への失望をもらしている。
不思議の国のアリス
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双子(ふたご)座 → ポリュデウケス
不和のりんご
エリスのりんご。黄金のりんご。トロイ戦争の発端となる。ヘファイストス作。
プシュケPsyche
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霊魂の人格化で蝶の羽をつけた美少女。エロス(Eros)に愛された。
エロスは、美と愛の女神アフロディテの息子で、恋の使いである。
あるとき、エロスは、ある国の王女プシュケと出会い、二人はたちまち恋に落ちた。
エロスは、彼女を自分の宮殿に連れていき、夫婦の契りを結んだ。
「私の姿を見てはいけない」
エロスは、それさえ守れば生涯いつくしみ、愛し続けると約束した。
神と人間は、闇の中でしか、愛することができなかったからだ。
エロスとプシュケは、夜の闇の中で愛し合い、至福の時を過ごした。
しかし、プシュケは、嫉妬深い姉たちの言葉に惑わされた。
ある時、眠っているエロスをランプの光に照らしたのだ。
エロスはプシュケの前から消えた。プシュケには、後悔と絶望が残った。
(Apuleius, The Golden Ass 4. 28 - 6. 24 The tale of Cupid and Psyche)
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フティアPhthia
テッサリアの最南部、マリア湾とパガサイ湾とにはさまれ、オトリュス山(Othrys)の麓に位置する地名。
アイアコス(ゼウスとアイギナの子)によって建設された。
アイアコスの子がフティア王ペレウスであり、ペレウスとテティスの子がアキレウスである。
アイアコスの祈りによって生まれたミュルミドン人の故地とされ、彼らはアキレウスに率いられてトロイ戦争で活躍した。
(Cities and Locations of Ancient Greece by Bernard Suzanne)
ブラギBragi
北欧神話に登場する詩神。主神オーディン(Odin)の息子。豊穣の女神イドゥン(Idun)の夫。
黄金の竪琴を爪弾けば草花が咲き乱れ、冬を終らせ春を到来させる豊穣神の側面を持つ。
スカルド詩(Skald)を得意とし、多くの北欧の英雄譚は彼が語り継いだものだと言われる。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)
ブーリBuri
北欧神話において最初に生まれたとされる神。
彼は、ボル(Borr)の父であり、オーディン(Odin)の祖父である。
ブーリは、原初の深淵、ギンヌンガガプ(Ginnungagap)の中に貯まった塩分を含む氷を舐め続けた雌牛のアウズンブラ(Audumbla)によって作り出された。
(Wikipedia, the free encyclopedia)
プリアモスPriamos
トロイ王ラオメドン(Laomedon)とストリュモ(Strymo スカマンドロス河神の娘。ナイアス Naias 水のニンフ)の子。
トロイがヘラクレスに攻略されたとき、父王らは殺されたが、彼は幼かったために命拾いをし、のち王位を継承した。
最初、アリスベ(Arisbe トロイの予言者メロプス Merops の娘)を妻としたが、のちヘカベを妃に迎え、彼女との間にヘクトル、パリス、ポリュドロス(Polydoros)、
デイフォボス(Deiphobos)、ポリュクセネ(Polyxene)、カッサンドラらをもうけた。
トロイ戦争ではヘクトルをはじめ息子たちの戦死にあい、みずからは落城の際、アキレウスの息子ネオプトレモス(Neoptolemos)に殺され、
妻や娘たちは捕虜としてギリシア方に連れ去られた。
(アポロドロス 第三巻 12-5, E5-21)
ブリアレオスBriareos
ガイアとウラノスの間に生まれたヘカトンケイルのうちの一人。50の首と100の手を持つ。
生まれたときから父ウラノスに憎まれて地下に縛られていたが、ゼウスに救われて味方となり、ティタン族と戦った。
のちにポセイドンの養子となり、彼の娘のキュモポレイア(Cymopoleia)を娶った。
(ヘシオドス 149,617,713,734,817)
プリセイスBriseis
トロイの女神官。カリア王(Karia)ブリセウス(Briseus)の娘。
ミュシアのテーベ(Thebe)の街で捕まりアキレウスの妾になる。
(イリアス 第ニ歌 688)
フリッグFrigg
ゲルマン神話の女神。神々の王オーディン(Odin)の妻で、結婚と家庭内における主婦の地位の守護女神。
帯にこの機能を象徴する鍵の束を下げ、フッラ女神(Fulla)をはじめ多くの侍女たちを指揮しながら、フェンサリル(Fensalir)と呼ばれる壮麗な宮殿に住み、
そこに地上で正しい生活をおくった夫婦たちを死後迎え幸福に暮させる。
バルデル(Balder)、ホズル(Hodur)、ヘルモド(Hermod)らの諸神の母親。
金曜日を意味する英語 Fridayは、元来はフリッグの日を意味した。
(The Encyclopedia Britannica)
フリーメイソン(Freemasonry) → イルミナティ
フリュギアPhrygia
古代アナトリア(Anatolia 現トルコ)中西部の地域名・王国名。
フリュネPhryne
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BC4世紀アテネの娼婦。ボイオティア地方テスピアイ(Thespiae)のエピクレス(Epicles)の娘。
神に対する冒涜を理由に裁判にかけられたことで著名。
愛人であった彫刻家プラクシテレス(Praxiteles)の代表作「クニドスのアフロディテ Aphrodite of Knidos」
のモデルとしても知られる。
フリュネは、アフロディテのモデルになったことで冒涜罪に問われてしまった。
雄弁家ピュペリデス(Hypereides)に弁護を頼んだが、頑迷な裁判官たちを納得させる事は出来なかった。
そこでフリュネは、非常手段に出た。法廷の衆人環視の中でさっと服を脱ぎ捨て、全裸になったのだ。
裁判官らはフリュネの体を見て驚嘆し、無罪を宣告した。(美人は無罪)
こんな神々しい体を持つ女が神を冒涜するはずがないと思ったのだった。
古代ギリシア人は、人間の肉体を神の創った美しい作品として捉えてきた。
だからアフロディテやアポロンなどの裸体を肉体美の理想として彫刻としたのである。
(プルタルコス「デ・ピティアエ・オラキュリス」14 De Pythiae oraculis 14 by Plutarch)
(アテナイオス「食卓の賢人たち」590–591 Deipnosophistae 590–591 by Athenaeus)
(パウサニアス 第十巻 15-1)
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ブリュンヒルド(Brunhild/Brynhildr)/ブリュンヒルデ(Brunhilde)
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山に眠るブリュンヒルドは鎧を着たヴァルキュリー(女戦士)であった。
彼女は、主神オーディン(Odin)に逆らったために魔法をかけられ、
炎で囲まれた山城で深い眠りについていた。
その炎の勢いは凄まじく、近づけるのは最も勇敢な戦士のみだった。
そこに現れたのが英雄ジグルド(Sigurd)だ。
彼は、燃えさかる炎の輪をいとも簡単に飛び越え、ブリュンヒルドを助けた。
そしてジグルドは眠りの魔法を解き、二人は恋に落ちる。
だが、ジグルドは旅に出なければならなかった。
彼は、竜から奪った黄金の指輪をブリュンヒルドに贈った。
しかし、この指輪が二人に悲劇をもたらす。実は指輪は呪われていたのだった。
ジグルドは「必ず戻って来る。そうしたら一緒になろう」と誓った。
旅だったジグルドは、旅路でブルグント国のギューキ王(Gjuki)の世話になった。
王はシグルドを、自分の娘グドルン(Gudrun)と結婚させようと画策する。
シグルドは忘れ薬をもられ、ブリュンヒルドのことをすっかり忘れてしまう。
すべてを忘れたシグルドは、グドルンとの結婚を承諾する。
ジグルドの裏切りを知ったブリュンヒルドは、捨てられたと嘆き悲しむ。
その果てに殺意の炎を抱き、愛したシグルドを謀殺。
そして、自分も後を追うかのように、我が身を灼き尽くして命を絶つのだった。
彼女の指には、ジグルドからもらった竜の指輪がしっかりとはめられていたという。
ヴォルスンガ・サガ(Volsunga Saga)
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プルトPluto
オケアノスとテテュスの娘。(オケアニド Oceanid 海のニンフ)
ゼウスとのあいだにタンタロスを儲けた。
プルート(Pluto) → ハデス
フルングニルHrungnir
巨人族の中で最も力の強い石の巨人。
オーディン(Odin)の誘いに乗り、馬で追いかけ、知らぬうちにアスガルド(Asgard)に入ってしまう。
ここで雷神トール(Thor)の怒りにあい、巨人の領域の島で決闘をすることになり、巨人はトールの鎚で頭を割られる。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)
フレイFrey
もともとは豊穣神族ヴァン神族(Vanir)に属するが、ヴァン神族がアース神族(Aesir)と戦った末に人質を交換したとき、
フレイも父ニヨルド(Njord)と妹フレイヤとともにアスガルド (Asgard)に人質として行き、アース神族の仲間入りをした。
豊穣神である父ニヨルドと同じく豊作と生殖と平和の神であり、また雨と太陽の神でもある。小人ブロック(Brokk)からもらった金色のいのししに
乗って天を駆けめぐりながら、花や果物を地上にまく。世界滅亡のときにはスルト(Surt)と戦って死ぬとされる。
(The Encyclopedia Britannica)
フレイヤFreyja
北欧神話の女神。すべての女神のなかで最も美しく、美、愛欲、豊穣などを司る。
海神ニヨルド(Njord)の娘で、フレイ(Frey)の妹であり、ヴァン神族(Vanir)に属するが、アース神族(Aesir)と
ヴァン神族が戦いのあとで和睦したときからニヨルドおよびフレイとともに主神格の一人としてアスガルド (Asgard)に迎えられ、
セスルムニル(Sessrumnir)という美しい館に住むことになった。
雌豚を意味するシル(Syr)というあだ名をもち、小人によってつくられたヒルディスビニ(Hildisvini)
という黄金の毛の猪に乗るが、また猫の引く車も愛用する。
彼女の夫はオードル(Odr)で、この神があるとき突然行方不明になると、フレイヤは黄金の涙を流して
泣きながらその行くえをたずねて、世界中をへめぐったといわれるが、愛欲の神にふさわしく、
彼女は決して貞節ではなく、兄のフレイとも関係をもち、またブリージンガメン(Brisingamen)と呼ばれる
貴重な首飾りを手に入れるため小人たちにも体を許したとされる。
彼女の美しさの評判はヨトゥンヘイム (Jotunheimr)の巨人たちの間にも鳴り響き、
何人かの巨人がフレイヤを妻に得ようとして失敗したと物語られている。
(The Encyclopedia Britannica)
プレイアデスPleiades (単数は、プレイアス Pleias)
アトラスとプレイオネ(Pleione)(オケアニド Oceanid 海のニンフ)の間に生まれた七人の娘たち。
アルキュオネ(Alkyone)、メロペ2(Merope)、ケライノ(Kelaino)、エレクトラ3(Electra)、ステロペ(Sterope)、
タユゲテ(Taygete)、マイア(Maia)を指す。
彼女たちは、アルテミスの侍女として仕えていたが、ある時、ボイオティアの森の中で、狩人のオリオンに追い回され、
しまいにハトになって空に舞い上がり、プレイアデス星団になったという。
(THEOI Greek Mythology Encyclopedia, THE CLASSES OF NYMPH)
プロクルステスProcrustes
本名をダマステス(Damastes)またはポリュペモン(Polypemon)という追いはぎのあだ名。
メガラ(Megara)からアテネに通じる道の途中にいて、大小ニつの寝台をもち、旅人を捕えると、大きい者は小さいほうの寝台に、
小さい者は大きいほうの寝台に寝かせ、寝台の大きさに合せて足を切ったり引き伸ばしたりして殺していたが、テセウスに退治された。
(The Encyclopedia Britannica)
プロセルピナ(Proserpina) → ペルセフォネ
プロテウスProteus
1 ポセイドンの従者で、「海の翁」とも呼ばれるエジプトの海神。ポセイドンに仕える。
2 アイギュプトス(Aigyptos)とアルギュフィエ(Argyphie)の子。ダナオス(Danaos)の娘ゴルゴフォネ2(Gorgophone)
を娶ったが、眠っている間に短刀で殺された。
3 エジプト王。ディオニュソスが訪ねてきたときに歓待した。プサマテ(Psamathe)(ネレイス Nereis 海のニンフ)
との間にテオクリュメノス(Theoklymenos)とテオノエ(Theonoe)を儲けた。
プロトゲネイアProtogeneia
1 デウカリオンとピュラ(Pyrrha パンドラの娘)の娘。
ゼウスとのあいだにアエトリオス(Aethlios)とオプス(Opus)を儲けた。
2 カリュドン(Kalydon エリス王アイトロス Aitolos の子)とアイオリア(Aiolia イオルコス王クレテウス Kretheus の娘)の娘。
プロポンティス海Propontis
現在のトルコ北西部の内海であるマルマラ海(Marmara)の古称。ボスポラス海峡(Bosporus)
とヘレスポントス (Hellespontos 現在のダーダネルス海峡)に挟まれた小内海で、
ヘレスポントスでエーゲ海に、ボスポラス海峡で黒海に通じる。
(The Encyclopedia Britannica)
プロメテウスPrometheus
ティタンのイアペトス(Iapetos)とオケアノスの娘クリュメネ(Klymene)の子で、アトラスやエピメテウスらの兄弟。
(アポロドロスによれば、イアペトスとアシア Asia オケアニド Oceanid 海のニンフ の子。アポロドロス 第一巻 2-3)
「先に考える者」を意味するその名のとおり、非常な知恵者で、ティタンたちとオリュンポスの神々の戦いのおりには、
いち早く後者の側の勝利を予見し、ティタン神族に属していたにもかかわらずゼウスの味方になり、
必勝の策略を教え、その勝利に不可欠な貢献をした。
一説によれば、プロメテウスは、彼が創造した人類のために、ゼウスが与えることを拒んだ天上の火を盗み出してきてやったため、
ゼウスの怒りを買い、ゼウスはこの罪を罰するため、ヘファイストスに命じてつくらせた最初の女性パンドラを、
エピメテウスに花嫁として贈り、
これによって人類を不幸に陥れる一方で、プロメテウスをコーカサスの岩山の頂にはりつけにし、
昼間の間中、大鷲に肝臓を食わせるという極刑に処した。
しかし最後には、彼は大鷲を退治したゼウスの息子ヘラクレスによってこの苦患から解放されてゼウスと和解した。
(アポロドロス 第一巻 7-1)
フローラFlora
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豊穣と春の女神。エリュシオンのクロリス(Chloris)(オケアニド Oceanid 海のニンフ)と同一視されている。
西風の神ゼフュロス(Zephyros)はフローラに恋し、彼女をさらってしまう。
その強引な愛の償いとして、ゼフュロスはフローラを神の地位に押し上げ、これによって大地に春の訪れを告げる女神が誕生した。
二人は結婚し、ゼフュロスは、フローラの住家として花園を贈った。
フローラは色とりどりの花をまき散らし、人間に蜂蜜や、あらゆる花の種を与え豊穣を約束した。
フローラの花園には、死後に花に変えられた者たちが住んでいた。
アイリスになったアイアス、ヒマワリに変じたクリュティエ、
水仙になったナルキッソス、ヒアシンスとなったヒュアキントス、
アプロディテの恋人アドニスもアネモネの花としてフローラの花園の住人となっている。
(The Encyclopedia Mythica)
フローラとゼフュロス(Flora And Zephyros)
ウィリアム・ブーグロー(William Bouguereau)1875年
色とりどりの花に囲まれるフローラを抱き、春の訪れを告げているゼフュロス。
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