ギリシア神話事典        あ行 か行 さ行 た行 な行 は行  ひ行  ふ行 へ行  ほ行 ま行 ら行


ヘイムダルHeimdall
「世界の光」と呼ばれ、神界アスガルド(Asgard)でアース神族(Aesir)の番人をしている。
アスガルドへ行くための橋ビフロスト(Bifrost 虹の橋)のたもとにいて、昼夜にかかわらず 100リーグ (約 500km) の先まで見える目と、
草の伸びる音や羊の毛の伸びる音まで聞える耳をもち、鳥よりも短い睡眠しかとらない。

「エッダ(Edda)」によると、海の女神ラン(Ran)の娘である9人の姉妹の息子で、彼の力強さは、大地の力と氷の海と猪の血から生み出されたものだという。
巨人や魔物に襲われて世界が滅びるとき、彼は神々に敵の接近を知らせるための角笛(Gjallarhorn)を吹き、神々とともに戦うが、ロキ(Roki)と相討ちになってしまう。
(The Encyclopedia Britannica)


ペイレーネの泉Peirene Fountain
コリントス遺跡。
レカイオン道(Lechaion)に面したプロピュライア門(Propylaia)の横に立つ水飲み場。
この泉は、後にベレロフォン(Bellerophon)がペガソスを馴らした場所として知られる。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)


ヘオスフォロスHeosphoros
「暁の明星」の意。曙(あけぼの)の女神エオスとアストライオス(Astraios ティタン神族)の子。
クレオボイア(Kleoboia アルゴス王クリアソス Kriasos の娘)との間に、ケユクス(Keyx)、ダイダリオン(Daidalion)のニ男とフィロニス(Philonis)、
テラウゲ(Telauge)のニ女を儲けた。


ペガソスPegasos
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有翼の神馬。ペガソスのひづめの跡には泉(ペーゲ Pege)が湧くという言い伝えからこう呼ばれる。

ポセイドンの種により妊娠していたゴルゴンのメドゥ-サが、ペルセウスに首を斬られ殺されたとき、
その傷口からクリュサオル(Chrysaor)とともに出生したという。

ペガソスは生まれるや、オリュンポスに行き、ゼウスの雷霆を運ぶ役をした。

コリントスのペイレーネの泉(Peirene)で水を飲んでいるときにベレロフォンに捕えられて彼の馬になり、
キマイラ退治をはじめ多くの手柄をあげさせた。

しかしおごったベレロフォンは、ペガソスに乗って昇天しようとしたため、ゼウスの雷霆に打たれ落馬して地上に転落した。

ペガソスはそのまま天に昇り、最後には星座になったとされる。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)

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ヘカテHecate
「最も遠きにある者」の意。ティタン神族のペルセス(Perses)とアステリア(Asteria コイオス Koios ティタン神族 の娘)の娘。
ゼウスから大いなる栄誉を与えられ、天と地と海における支配権を有する女神で、祈りを捧げる人間にあらゆる状況における幸運(安産、富、成功)をさずけるという。
しかし彼女はのちに地下の冥界と関係づけられて、夜、魔法、妖怪変化の支配者となり、松明を手にし、地獄の犬どもを従えて三つ辻に出没する恐ろしい女神と考えられた。
古代ギリシアでは、富裕な市民は毎月、三つ辻の交差点に、ヘカテに供物が供えられ、それは貧民の食となった。 → 三相一体
(The Encyclopedia Britannica)(ヘシオドス 411,414 アポロドロス 第一巻 2-4,6-2)


ヘカトンケイルHecatoncheir 百手巨人。
100の腕と50の頭を持つ巨人。奈落(タルタロス)の門を見張っている。
ガイアとウラノスの子のコットス(Kottos)、ギュエス(Gyes)、ブリアレオス(Briareos)の三体。
生まれたときから父ウラノスに憎まれて地下に縛られていたが、ゼウスに救われて味方となりティタン族と戦った。
ティタン族が破れてタルタロスに閉じこめられてからは、その牢の番人を務めた。
(ヘシオドス 149,617,713,734,817)


ヘカベHecabe
フリュギア王デュマス(Dymas)とエウノエ(Eunoe サンガリオス河神 Sangarios の娘。ナイアス Naias 水のニンフ)の娘。
トロイ王プリアモスの正妃。
ヘクトル、パリス、ポリュドロス(Polydoros)、デイフォボス(Deiphobos)、ポリュクセネ(Polyxene)、カッサンドラらの母。
トロイ落城の際、娘たちとともにギリシア軍の捕虜となり、彼女自身はオデュッセウスに分配された。
しかし落ち延びたはずの末子ポリュドロスがトラキア王ポリュメストル(Polymestor)の奸計により死体となって海岸に漂着したのを知り、ただちに復讐の決心をし、
ポリュメストルの目をえぐりぬき、また彼の二人の息子を殺した。
この罪を罰するため、ギリシア軍は彼女を石打ちの刑に処したが、そのあとで石の山を取りのけてみると彼女の死体は雌犬に変っていた。
別伝によれば、彼女はギリシアに連れていかれる航海の途中、船上で雌犬になり、海中に身を投げたともいう。
(エウリピデス Euripides 『ヘカベ Hecabe』)


ヘシオドスHesiodos [生没年未詳]
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前 700年頃のギリシアの叙事詩人。
小アジアのキュメ(Cyme)に生れ、父に連れられて中部ギリシアのボイオティア(Boiotia)のヘリコン山麓(Helikon)の村アスクラ(Ascra)に移住、牧人として育った。

ヘリコン山は、しばしばムーサ(Mousa 詩歌女神)崇拝の地であった。
『神統記(Theogonia)』によれば、ヘシオドスが羊を飼っているとき、突然にムーサが詩人としての才能をヘシオドスに与えたという。(ヘシオドス21-25)

『仕事と日々(Erga kai Hemerai)』によれば、弟との遺産相続をめぐる裁判に巻き込まれた。
地元の領主は弟からの賄賂を受け、遺産である筈の土地を没収して弟に与えてしまった。
このため、憤懣やるせなかった彼は旅に出て詩人として生活するようになった。

ボイオティアのアウリス(Aulis)で詩人ホメロス(Homer)と詩を競ったとされる。(フィロストラトス Philostratus 英雄 Heroicus 43-7)
戦争と武勇を讃える『イリアス(Iliad)』を歌うホメロスは聴衆の胸を熱くさせ、勝敗は決したかに見えた。
しかし、ヘシオドスが牧歌的な『仕事と日々』を歌った為、平和な詩を愛する時の王パニデス(Panides)は、真の勝利者たるものは農業と平和の勧めを説くものでなくてはならないとし、
ヘシオドスが勝利した。

『仕事と日々』は勤勉な労働をたたえるとともに、怠惰と不正な裁判を非難している。
また、同書の一部分が世界最初の農事暦であると考えられている。
『神統記』は神々の誕生と戦いを描き、ゼウスの王権の正当性を主張している。
(The Encyclopedia Britannica)

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ヘクトルHector
トロイ王プリアモスとヘカベの子。トロイ第一の勇将で、アポロンから贈られた兜を身につける。
枕詞は「きらめく兜の」。大アイアスと引き分け、またパトロクロスを討ったが、アキレウスとの一騎打ちに敗れた。
(アポロドロス 第三巻 12-5, E4-4-7)


ヘシオネHesione
トロイ王ラオメドンの娘。プリアモスの姉。
ポセイドンの怒りによって送られた海の怪物へのいけにえにされるため岩に縛られていたところをヘラクレスに助けられたが、父王は約束のゼウスから贈られた
二頭の馬をヘラクレスに与えなかったので、後年トロイは彼に攻略された。
彼女はこのおりヘラクレスに協力したテラモンに与えられ、その妻となって、テウクロス(Teukros)を生んだ。
また彼女は、幼い弟プリアモスを身請けし、彼の命を救ったという。
(The Encyclopedia of Myths)


ヘスティアHestia/ウェスタ(Vesta)  炉の女神。
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クロノスとレアの娘で ゼウスの長姉。

炉(かまど)は家の中心であり、家そのものの象徴でもあったため、ヘスティアは他の神々が外に出るときも、常に神殿の中心にとどまるとされた。

また、火にはあらゆる不浄なものを浄める働きがあるとされ、そのため、炉(かまど)は神聖で不可侵の場所でもあった。

ヘスティアもきわめて潔癖な精神を持つ処女神であった。

海神ポセイドンと太陽神アポロンが、彼女に求婚したこともあったが、ヘスティアはきっぱりと断り、ゼウスの頭に手を掛けて、いつまでも処女でいることを誓った。

ゼウスはこれを許し、彼女にオリュンポスにおける高い地位を与えた。

その結果、神々に与えられる供物の最初の一片は、必ずヘスティアに捧げられ、祭礼のときには、最初と最後の神酒が彼女に注がれたという。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)

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ヘスペリデスHesperides
夕べの娘たちの意。
エレボスとニュクスの娘。アイグレ(Aigle)、エリュテイア(Erytheia)、ヘスペラレトゥサ(Hesperarethusa)の三人。
美声をもち、世界の西のはてにあるへスペリデスの園 (The Garden of the Hesperides) で、竜のラドン(Ladon)とともに黄金のりんごのなる樹の番をしている。
この樹は、ガイアがヘラのために、ゼウスとの婚礼を祝って生え出させたものという。
(The Encyclopedia of Myths)


ヘスペリデスの黄金のりんごApples of the Hesperides
ガイアがゼウスと結婚したヘラに贈ったもの。
この世の果てのへスペリデスの園 (The Garden of the Hesperides) の庭に植えられており、ヘスペリデス(夕べの娘たち)と百の頭を持つ竜のラドンが守っている。
この黄金のりんごを取ってくるのが、ヘラクレスの11番目の難行となった。
(The Encyclopedia Mythica)


ペタソスPetasos
ヘルメスの有翼の帽子。
古代ギリシアで旅人たちが着用したつばの広い帽子だが、これにスピードの象徴である翼が付き、旅人の守り神ヘルメスのトレードマークのひとつとなった。
(The Ancient Greeks by Nicholas Sekunda)


ペネイオスPeneios
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テッサリア地方のペネイオス河(Peneios)河神。オケアノス(Okeanos)とテテュス(Tethys)子の一人。
水のニンフであるクレウサ(Creusa)との間に、ヒュプセウス(Hypseus)、スティルベ(Stilbe)、アンドレウス(Andreus)、
ダフネ(Daphne)、キューレーネー(Cyrene)をもうけた。
(The Encyclopedia Britannica)

ペイリトオスPirithous ペリトゥース。
ラピテース族(Lapithai)の王イクシーオーン(Ixion)とディーア(Dia)の子。

英雄テセウスの名声を聞いたペイリトオスは、テセウスを試そうとアッティカ(Attica)に侵入し、マラトンで家畜の牛の群れを追い払った。
すぐにテセウスが駆けつけてきてペイリトオスに立ち向かったが、二人はお互いの気高い容姿に惹かれ、家畜のことを忘れて友情を誓い合う仲となった。

ペイリトオスはテセウスの盟友として、アルゴ船遠征やカリュドンの猪狩りなど数々の苦難をともにした。
ペイリトオスは、アルゴス王アドラストス(Adrastos)の娘ヒッポダメイア2と結婚し、テセウスも花嫁の介添え役として結婚式に出席した。

祝宴にはオリュンポスの神々やケンタウロスたちが招かれた。
ケンタウロスはペイリトオスの父イクシーオーンの子孫で、従兄弟の間柄にあった。
しかし、ケンタウロスたちは葡萄酒を飲むのは初めてで、宴席でしたたかに酔って騒ぎ出した。

花嫁のヒッポダメイアが挨拶に来ると、ケンタウロスの一人がヒッポダメイア2をさらって犯そうとした。
他のケンタウロスたちも次々に近くの女たちに襲いかかった。
ペイリトオスはテセウスとともにケンタウロスらを殺し、ヒッポダメイア2を救い出した。

(The Encyclopedia Britannica)
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蛇Serpent
蛇は古来より、その生命力の強さや脱皮を繰り返す習性から「死と再生」を象徴する存在として神聖視されてきた。
ギリシア神話においても蛇は生命力の象徴で、杖に一匹の蛇の巻きついたモチーフは「アスクレピオスの杖(Rod of Asklepios)」と呼ばれ、
「治癒力・医術」の象徴として世界的に用いられている。

エジプト神話では、尾をくわえた蛇のデザイン(Uroboros)が始まりも終わりも無い「完全なもの」としての意味が持たされており
「輪廻転生・再誕と不滅」のシンボルとされている。
またインド、中国、日本における蛇神という存在は「脱皮を繰り返す・交尾の際に絡み合う・猛毒で他の生命を殺傷する」などの特性から
「死と再生・性のシンボル・神の使い」などとして崇拝と畏怖の対象とされた。

一方で、こうした特性のため、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教においては忌むべき邪悪な存在とみなしている。
「創世記」に登場する蛇は、エデンの園のイヴをそそのかし、知恵の木の実を食べさせた誘惑者であり「狡猾さのシンボル」として旧訳聖書の中では一貫している。
こうした蛇に対するとらえ方の違いはそのまま、蛇を天使とするか、悪魔とするかという価値観の違いにつながっている。

グノーシス派(Gnosticism)のキリスト教徒によれば、蛇は知恵と知識の象徴であり、人類を無知の状態に置こうとする神の意志に反して、
人類に知恵という「光」をもたらしたという理由から、エデンの園の蛇を聖なる啓蒙者として礼賛すべきであると主張している。
The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Barbara G. Walker)


ベヒモスBehemoth/ベヘモス
ベヒモスは、「旧約聖書」に登場する陸の怪物である。
象の頭に巨大な太鼓腹、たくましい手足を持つ怪物で、沼や川の葦の中に棲んでおり、その食欲は旺盛で、千もの山に生える草を食べたとされる。
自らが大食いなだけではなく、人々に暴飲暴食を奨励していることから、七つの大罪である「大食」を司っているとされる。
一説には豊穣のシンボルであり、また悪魔と見なされることもある。
またイスラム教の神話に登場する巨大魚バハムート (Bahamut) と同一視されることもある。
El libro de los seres imaginarios (Jorge Luis Borges&Margarita Guerrero)



ヘファイストスHephaistos/バルカン(Vulcan) 火と鍛冶の神。
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ヘファイストスの母親はヘラである。

彼女は誰とも交わらず、自力でヘファイストスを生んだが、あまりにも醜い我が子を見るや、
自分の犯した失態がほかの神々に見つからぬよう、生まれてすぐに下界に投げ落とした。

母に捨てられたヘファイストスは、海に落ちたが、テティス(ネレイス Nereis 海のニンフ)と
エウリュノメ(オケアニド Oceanid 海のニンフ)に助けられ、海底の洞窟に九年間滞在して、そこで鍛冶の技術を修得した。

成長したヘファイストスは、自分を捨てた母への復讐を誓う。
そこで、座ると目に見えない鎖に縛られ、身動きがとれなくなる玉座をつくり、ヘラに贈りつけた。
これを喜んだヘラは、玉座に座ったとたん身動きがとれなくなってしまう。

誰も彼女を開放することができず、困り果てた神々は、ヘファイストスを天界に迎え、
技術の神としてオリュンポスの神々の仲間入りをさせることを条件に、ヘラを自由にするよう依頼したのである。

ヘファイストスはヘラを解放し、この働きによって、ゼウスからアフロディテを妻として与えられたのであった。
ひどい醜男であるにもかかわらず、美の女神アフロディテを妻にめとったのだが、後にアレスらに間男される憂き目にあった。

古くは天上に仕事場をもつとされていたが、後にはシチリア島のエトナ火山の噴火口の中がその鍛冶場となった。
そこで彼はキュクロプスたちを助手にして、神々や英雄たちのため、さまざまな不思議な品をつくると信じられた。
(Theoi Greek Mythology)

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ヘファイストスの罠
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鍛冶の神ヘファイストスは女神アフロディテと結婚した。
彼は妻を熱愛し、彼女への美しい贈り物を作った。

彼女の聖鳥である鳩が引く金の馬車もそのひとつだ。
しかしアフロディテはしばしば夫を裏切った。

多くの浮気のなかでもっとも有名なのは軍神アレスとの情事だ。
この関係から4人の子供が生まれた。

最初のふたりは父親似で、あとのふたりは母親の性質を受け継いだ。
彼らの名はデイモス(恐怖)、フォボス(不安)、ハルモニア(調和)、そしていくつかの物語によればエロス(性愛)である。

妻が自分の兄弟であるアレスと密通していることに気づいたヘファイストスは、ふたりを笑いものにして復讐しようと決めた。

彼は金属加工の腕前を利用して青銅の針金で大きな網をこしらえ、密かにこれを恋人たちの寝台の上に吊るした。
ふたりが寝台に入ると、ヘファイストスは網を強く引っ張って彼らの上に落とし、ふたりを捕らえた。

それから神々を呼んで滑稽な光景を見せた。
Myths & Legends (Philip Wilkinson)
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ヘベHebe
ゼウスとヘラの娘。「青春」の女神で、ゼウスの酌係でもある。
ヘラクレスの死後にその妻となり、アレクシアレス(Alexiares)とアニケトス(Aniketos)を産んだ。


ペネロペPenelope
1 オデュッセウスの妻。イカリオス(Ikarios スパルタ王オイバロス Oibalos の子)とペリボイア5(Periboia)(ナイアス Naias 水のニンフ)との間に生まれた娘。
夫が不在の際、群がる求婚者たちに、舅の弔いの際の衣装と偽りながら、昼間は機を織っては、夜にそれをほどいていた。
その後ペネロペは、オデュッセウスが帰国してもまだ正体を明かさないうち、かつてイフィトス(Iphitos オイカリア王 Oichalia エウリュトス Eurytos の子)が
オデュッセウスに贈った弓を持ち出し、これを引くことができたものと結婚すると求婚者たちに言う。
乞食に身をやつしたオデュッセウスがその弓を取って求婚者たちを射殺する。

2 キュレネ山(Kyllene)のオークの木のニンフ。(ドリュアス Dryas 木のニンフ)


ヘメラHemera
昼を表す女神。ヘシオドスによれば、彼女はエレボス(闇)とニュクス(夜)の娘でアイテル(光)の姉妹。


ヘラHera/ジュノー(Juno) 婚姻の女神。
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クロノスとレアの娘。ゼウスの姉にして正妻。

変幻自在のゼウスは、女神ヘラに求婚するためカッコウに変身した。
ヘラは寒さに震えていたカッコウを抱いて温めた。
すると突然、カッコウがゼウスになり、ヘラを口説き始めた。

ヘラは貞淑な女神だったので、最初は拒んでいたが、ゼウスが正妻にすると約束したので、ついに承諾した。
ヘラはゼウスの正妻となり、結婚と子供、性生活の守護神として、オリュンポスの女王となって君臨した。
ゼウスとの間にヘベ、アレス、エイレイテュイア(Eileithyia)を産み、また独自にヘファイストスを産む。


ヘラはゼウス、ポセイドン、ハデスが宇宙を分け合った際に無視されていた。
ゆえにゼウスと結婚し、彼の配偶者として天界を支配することで、自分が享受できなかった力を手に入れた。

ヘラが登場する話の多くは、夫の情事に対する彼女の嫉妬や、ライバルへの復讐がからんだものである。
イオが雌牛に姿を変えられた際には、ヘラはアブを送り込んで絶え間なく彼女を刺させ、発狂させた。
女神レトがゼウスの子をみごもったときには、彼女がいかなる陸地でも出産できないようにした。

また、セメレをだましてゼウスが本来の姿で現れるように願わせた。
彼はしぶしぶ承諾したが、セメレは彼の強烈な雷電によって焼かれ灰になってしまった。

ヘラはゼウスの浮気相手の子をも迫害した。
ディオニュソスやヘラクレスもそのひとりである。
彼女はヘラクレスを発狂させ、自らの手で妻子を殺すよう仕向けた。
しかし犠牲者に対するヘラの嫌がらせが永続することはまれであった。

ヘラ神殿遺跡は、ペロポネソス半島北西部オリュンピア、エーゲ海南東部サモス島の二か所に見られる。

Myths&Legends (Philip Wilkinson)

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ヘラクレスHerakles/ハーキュリース(Hercules)
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「ヘラの栄光」の意。
ゼウスがアルクメネ(ミュケナイ王エレクトリュオン Elektryon の娘)と、彼女の夫アムフィトリュオン(Amphitryon)の
留守中にその姿をかりて交わってもうけた子。

ヘラクレスが赤子のとき、アルクメネに嫉妬したヘラは、ゆりかごで寝ていたヘラクレスに二匹の毒蛇を送り込んだ。
ところがヘラクレスは、その蛇を両手であっさりと絞め殺してしまう。

その非凡さから、ヘラクレスが神の子であると気づいたアムフィトリュオンは、彼に大勢の教師をつけ、武術や戦術を学ばせる。

ヘルメスから剣、アポロンから弓矢、ヘファイストスから黄金の胸あて、アテナから長衣(ペプロス Peplos)を贈られた。
また、アウトリュコス(Autolykos ヘルメスの子)には相撲を、エウリュトス(Eurytos オイカリア王 Oichalia)に弓術を、
カストル(Kastor ゼウスの子)に武器の使い方を、そしてリノス(Linos アポロンの子)から竪琴を習った。

たくましく成長したヘラクレスは、当時オルコメノス国(Orchomenos)に隷属していたテバイの民を率い、
オルコメノス軍と戦い、これを打ち負かす。
この功績により、テバイ王クレオン(Kreon)から娘メガラ(Megara)を与えられ、テリマコス(Therimachos)、
クレオンティアデス(Kreontiades)、デイコオン(Deikoon)を儲ける。

しかし、執拗なヘラの嫉妬により気を狂わされ、我が子を炎に投げ込んで殺してしまい、これを悲しんだ妻メガラも自殺した。
ヘラクレスは、息子たちを殺してしまった罪を感じて自らを追放する。
デルフォイに着いた際、自分はどこへ行くべきかを神託に問う。
そのときに初めて巫女から「ヘラクレス」と呼ばれ、また、ティリュンス(Tiryns)のエウリュステウス王(Eurystheus)
が命じる課題をすべて終えたときに罪が贖われると告げられる。 

しかし、臆病者のエウリュステウス王は英雄であるヘラクレスを恐れており、難行にかこつけてヘラクレスを殺してしまおうと考えていた。


ヘラクレス



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ヘラスHellas
ギリシアの古名。現在でもギリシアの意味で文語として用いられる。 → ヘレネス


ペリアスPelias
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イオルコス王。ポセイドンとテュロ(Tyro)の子。
エリス王サルモネウス(Salmoneus)とアルキディケ(Alkidike アルカディアのテゲア王 tegea アレオス Aleos の娘)の娘テュロは、母を早く亡くし、
サルモネウスの後妻となったシデロ(Sidero)に虐待を受けた。

テュロは河神エニペウス(Enipeus)に恋し、いつもエニペウス河のそばで悲嘆の心を訴えていた。
これを見たポセイドンはエニペウスに化けてテュロと交わり、やがてテュロは密かに双子を産んだが、シデロに見つかることを恐れてこれを捨てた。
テュロは内部をくり抜いた木の箱に赤子を入れて河に流したのである。

双子の赤ん坊は、馬飼いたちに拾われ、養育された。
その際、馬のひずめが赤ん坊のひとりに当たって顔に痣(pelion ペリオン)ができた。
馬飼いは痣のついた方をペリアス、もうひとりをネレウス(Neleus)と名付けた。

二人の兄弟は成人すると、母親が虐待されたことを知り、シデロを襲った。
シデロはヘラの神域に逃れたが、ペリアスはヘラの祭壇の上で彼女を斬り殺した。
この不敬によって、ペリアスはヘラの怒りを買い、のちにヘラの保護を受けた甥のイアソンに滅ぼされることになる。

テュロは、サルモネウスの兄弟でイオルコスの王クレテウス(Kretheus)の妻となり、アイソン(Aison)、アミュタオン(Amythaon)、フェレス(Pheres)を生んだ。
ペリアスとネレウスはクレテウスの養子に迎えられた。

クレテウスが死ぬと、ペリアスはネレウスを追放してイオルコスの王座を継いだ。
このとき、クレテウスの実子アイソンを捕らえて妻子ともに監禁したともいう。
追放されたネレウスはメッセネ(Messene)に来てピュロス(Pylos)を建設した。
(アポロドロス 第一巻 9-8,9-9)

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ヘリアデスHeliades
「太陽の娘たち」の意。ヘリオスの娘たち。
ヘリオスは、クリュメネ3との間に、メロペ(Merope)、ヘリエ(Helie)、アイテリエ(Aitherie)、フォイベ2(Phoibe)、
ディオクシッペ(Dioxippe)の五女と息子ファエトン(Phaethon)を儲けた。
太陽の馬車の暴走を止めるためにゼウスが投げた雷霆によって弟ファエトンが死んだため、ヘリアデスは嘆き悲しみポプラの木に姿を変え、またその涙は琥珀になったという。
(オウィディウス 『変身譚 Metamorphoses』 巻ニ)


ヘリオスHelios
太陽神。ヒュペリオン(Hyperion ティタン神族)とテイア(ティタン神族)の子。
月の女神セレネおよび曙(あけぼの)の女神エオスの兄弟。
オケアノスとテテュスの娘ペルセイス(Perseis)と結婚し、二人の息子、アイエテスとペルセス(Perses)、また二人の娘、キルケ、パシファエをもうけた。
またクリュメネ3との間に、メロペ(Merope)、ヘリエ(Helie)、アイテリエ(Aitherie)、フォイベ2(Phoibe)、ディオクシッペ(Dioxippe)
の五女(ヘリアデス Heliades ヘリオスの娘たちの意)とファエトン(Phaethon)を儲けた。
さらにポセイドンとアムフィトリテ(Amphitrite)の娘ロデ(Rhode)との間に、ロドス島民の始祖となった九人の息子(ヘリアダイ Heliadai ヘリオスの息子たちの意)、
テナゲス(Tenages)、マカレウス(Macareus)、アクティス(Actis)、トリオパス(Triopas)、カンダロス(Candalus)、オキモス(Ochimus)、
ケルカフォス(Cercaphus)、アウゲス(Auges)、トリナクス(Thrinax)を儲けた。
四頭の馬に黄金の戦車を引かせ、日ごと空を東から西に横切り、日没時にオケアノスに入り、
世界を取巻くこの大河の流れの上を馬車ごと黄金の巨大な盃に乗って航行し、また東に戻るとされた。
(Theoi Greek Mythology)


ヘリオスの島→ トリナキエ島


ペリオン山Pelion
ギリシア東部テッサリア地方にそびえる山。1,610 m
半人半馬のケンタウロス族が住む山として知られる。
(Prefecture of Magnesia, capital city of Volos, and Mt. Pelion)


ヘリコン山Helikon
ギリシア中央部ボイオティアに地方にそびえる山。1,748m
北西のパルナッソス山から続く山地で、アテネの西北西約 80kmに位置する。
古代には聖山とされ、ムーサの山として知られたほか、山中には天馬ペガソスが足で蹴って湧出させたという泉がある。
(Who's Who in Classical Mythology by Michael Grant and John Hazel)


ペリクレスPericles(BC490~BC429)
アテネ民主政治全盛期の指導者。BC461年、執政官(指導者の意)として政権を掌握。民主政治を徹底させ、
土木・建築・学芸にも功績を挙げ、アテネにペリクレス時代と呼ばれる黄金時代を実現した。
(The Encyclopedia Britannica)


ペリボイアPeriboia
1 オレノス王(Olenos)ヒッポノオス(Hipponoos)の娘。
カリュドン王オイネウス(Oineus)の後妻。
アルタイア(Althaia)の死後オイネウスの妻となった。

2 ペロプスの子アルカトオス(Alkathoos)の娘。
テラモンの妻。アイアスの母。

3 コリントス王ポリュボス(Polybos)の妻。オイディプスの養母。

4 ギガンテスの王エウリュメドン(Eurymedon)の末娘。
ポセイドンと交わり、バイアケス人の初代の王ナウシトオス(Nausithoos)を生んだ。

5 ラコニアの水のニンフ。ゴルゴフォネ(Gorgophone)の子イカリオス(Ikarios)の妻。ペネロペの母。


ヘルHel
北欧神話の冥界の女王、ロキ(Roki)と女巨人アングルボダ(Angrboda)を父母として生れた、恐ろしい怪物で、生れつき身体の半分が黒く、半分は白い。
オーディン(Odin)によって追放され、ヘルヘイム(Helheim)と呼ばれる病気や老齢によって死んだ死者たちの行かねばならない暗黒の冥府を支配することになった。
彼女の住む広大な館はエリュドニル(Eljudnir)と呼ばれ、その入口を守る番犬はガルム(Garm)である。
(The Encyclopedia Britannica)


ペルシア戦争Greco-Persian War
BC500年~BC449年、アケメネス朝ペルシア帝国(Achaemenid Empire)のギリシア遠征。一時ペルシアはアテネを占領したが、
BC480年のサラミスの海戦(Battle of Salamis)、翌年のプラタイアの戦い(Battle of Plataea)で敗北。最終的な平和条約はBC449年に結ばれた。
(The Encyclopedia Britannica)


ペルセイスPerseis
オケアノスとテテュスの娘。(オケアニド Oceanid 海のニンフ)
太陽神ヘリオスとのあいだに、二人の息子、アイエテス(Aietes)とペルセス(Perses)、また二人の娘、キルケ、パシファエをもうけた。


ペルセウスPerseus
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1 ゼウスとダナエ(アルゴス王アクリシオスの娘)の子。
妻アンドロメダとの間にペルセウス2、アルカイオス(Alkaios)、ステネロス(Sthenelos)、ヘレイオス(Heleios)、メストル(Mestor)、
エレクトリュオン(Elektryon)、ゴルゴフォネ(Gorgophone)を儲けた。

アルゴス王アクリシオス(Akrisios)には娘ダナエ(Danae)がいたが、男の子がおらず、息子を望んだアクリシオスは使者を使わして神託を求めた。
神託は「息子は生まれず、アクリシオスは彼の孫によって殺される」という恐るべき内容だったため、アクリシオスはダナエを青銅の塔に幽閉した。

そこへゼウスが黄金の雨に身を変えて忍び込み、ダナエはペルセウスを産んだ。
これを知ったアクリシオスは、娘とその子を手にかけるにしのびず、二人を木箱に閉じこめて河に流した。

ダナエ親子はセリフォス島(Seriphos)の漁師ディクテュス(Diktys)によって救出され、島の人々の好意でこの島で暮らすことになる。

やがてペルセウスはセリフォス島きっての勇敢な若者へと成長した。

セリフォス島の王ポリュデクテス(Polydektes)は母ダナエの美しさに惹かれ、何とか自分の物にしようと口説くがダナエはなかなかなびかない。
そこで一計を案じたポリュデクテスは、ある日ペルセウスを王宮に呼び出す。

そのころセリフォス島には、髪の毛の一本一本が蛇で、その顔を見た者はたちまち石になってしまうという
恐ろしい不死身の怪物ゴルゴン三姉妹(Gorgon)がすんでいて、たくさんの人々が石に変えられていた。

すみかはセリフォス島の果てにある洞窟で、その場所を知っているのはグライアイ(Graiai)と呼ばれる三姉妹の老婆だけだという。


ペルセウス


2 ペルセウスとアンドロメダの子。ニ人がまだエチオピアにいるときに生まれた子で、祖父の地に残ってペルシャ人の祖となった。

3 ピュロス王ネストル(Nestor)とアナクシビア(Anaxibia ピュロスの王族クラティエウス Kratieus の娘)の子。

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ペルセスPerses
1 ティタンの一人クレイオス(Kreios)とポントスの娘エウリュビア(Eurybia)の子。
アストライオス(Astraios)、パラス(Pallas)と兄弟。
コイオス(Koios)とフォイベ(Phoibe)の娘アステリア(Asteria)を妻とし、ヘカテ(Hekate)をもうけた。

2 タウリス王(Tauris)。
太陽神ヘリオスとオケアノスとテテュスの娘ペルセイス(Perseis)の子。
アイエテス、キルケ、パシファエと兄弟。
アイエテスからコルキスを奪って、その王となったが、アイエテスの娘メディアに殺害された。


ペルセフォネPersephone/プロセルピナ(Proserpina)/コレー(Kore)
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ゼウスとデメテルの娘。単にコレー(Kore 乙女)とも呼ばれる。
ハデスに誘拐されて、その妻となる。
(一説では、ゼウスとステュクスの娘。アポロドロス 第一巻 3-1)

ゼウスに命じられたヘルメスに迎えられ母親のもとに帰ろうとするが、冥界の食物であるザクロをハデスに食べさせられ、
一年のうちの三分の一を冥界で過ごさなくてはならなくなる。


あるとき、ペルセフォネは、シチリアの野原で、キュアネたち(Cyane 水のニンフ)と供に花を摘んでいた。

ペルセフォネに想いを寄せていた冥界の王ハデスは、彼女が花摘みに夢中になっている隙に、強引に冥界へつれ去ってしまう。

母親のデメテルは娘を捜しまわったが、ハデスがさらって妃にしてしまったと聞くと、エンナ谷(Enna)の洞穴に閉じ込もってしまった。
このため、地上の草木は枯れ、実を実らせることが無くなった。

ゼウスは「このままではあらゆる者が、死に絶えてしまう」と恐れ、ハデスに対して娘をデメテルの元に返すよう説得した。
ハデスは仕方なく娘を地上に戻したが、その際、ザクロの実を与えた。

実はこれはハデスの策略で、死者の国の食物を口にした者は、冥界から出られなくなる掟があり、食べたザクロの数の期間だけ、
再び冥界で暮さなければならなくなった。

こうしてペルセフォネは地上に八カ月、冥界に四カ月生活するようになった。

ペルセフォネが冥界に行っている間、デメテルは洞穴にこもってしまうので、その期間が冬になり、世界に四季が始まったとされる。
(The Encyclopedia of Myths)

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ベルゼブブBeelzebub
悪霊(デーモン Demon)の君主の一人である。
ギリシア語形ベルゼブル (Beelzebul) の名で新約聖書「マタイ福音書」などにあらわれる。
旧約聖書「列王紀」に登場する、ペリシテ人(Philistines)の町であるエクロン(Ekron)の神バアル・ゼブル(Baal Zebul)と同一とされる。
「蠅の王」の異名を持ち、地獄の世界でサタンに次ぐ実力者とされている。
強大な魔力を持っており、人間を悪魔憑きにする存在である。
Alchemical Studies (C. G. Jung)


ヘルハウンド (Hellhound) → ケルベロス


ヘルヘイムHelheim
世界を構成する九つの国のひとつ。
病気や老齢によって死んだ死者たちの行かねばならない暗黒の冥府で、女王ヘル(Hel)が支配者となっている。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)


ヘルミオネHermione
メネラオスとヘレネの娘。アガメムノンの息子オレステス(Orestes)の妻。


ヘルメスHermes/マーキュリー(Mercury)
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ゼウスが、アトラスの娘でプレイアデス(Pleiades)の一人マイア(Maia)と交わってもうけた子。

つば広の帽子ペタソス(Petasos)をかぶり、有翼のサンダル、タラリア(Talaria)をはき、
手に伝令の杖ケリュケイオン(kerykeion)を持った美青年の姿に表わされる。

アルカディアのキュレネ山中(Kyllene)の岩屋で生れ、その日のうちに早くも盗みの才能を発揮し、
テッサリアからアポロンの飼っていた牛の群れの一部をさらってきた。

盗みが発覚すると、自分の発明した竪琴をアポロンに与え、代りにアポロンから伝令の杖ケリュケイオン(kerykeion)をもらって、
この二神は大の仲よしになったという。

オリュンポスの神々の仲間入りをして神々の伝令役をつとめることになり、同時に盗み、商売、交通、道路、牧畜などの守護神とされた。

ヘルメスの才能を認めたゼウスは、彼をゼウスの使者として、また冥界の王でありゼウスの兄であるハデスとペルセフォネの使者として、
死者の魂を冥界へ導く任務を与えたという。

またゼウスの命令により、その愛人イオ(アルゴス王イナコス河神 Inakhos の娘)の見張りをしていた百眼巨人アルゴスを退治したことから、
「アルゴス殺しの」 という枕詞がついた。
(The Encyclopedia Mythica)

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ヘルメス学 → ヘルメス・トリスメギストス


ヘルメス・トリスメギストスHermes Trismegistos
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ギリシア語で「3倍も偉大なるヘルメス」の意。
プロティノス(Plotinus)を祖とする新プラトン派の哲学者たちがエジプトの文字、数字の発明者、学問、知恵、魔術の神トト(Thoth)に与えた名称。

「ヘルメス文書」(Hermetica) と呼ばれる、1~3世紀頃に成立した占星術、錬金術、魔術ならびに哲学、神学などに関する一群の書物は、
このヘルメス・トリスメギストスの啓示によるものとされた。

「ヘルメス文書」では、古代ギリシアの医神であるアスクレピオス(Asklepios)が、子であるトトと対話し、世界の真実を教えるという体裁を取っている。

「ヘルメス文書」の思想に「全は一であり、一は全である」という世の本質を示す言葉がある。

すなわち、マクロコスモス(宇宙)は神の加護のもとにあり、生命を有し、力に満ちた単一の有機体(生き物)で、ミクロコスモス(人間)もまた神に準ずる有機体として
天界の力を受けて生きているのであり、知識と技術をもって事物に働きかけるのである。

人間は欲することにより一切を認識し万物に君臨しうる、あるいは自然の主人にして支配者になりうるというこの思想は、中世における「人間は罪深き者」
という神と人間の関係を根本的に改めるものであった。
とするならば、神には許されていた奇蹟を人間が行使することも許されるであろうが、それはまさしく魔術である。

キリスト教の支配が確立する過程で魔術は異端とされ抑圧されてきたが、ヘルメスのこの人間中心説は、古代文化復興のルネサンス期と時を同じくして、
魔術の復権をもたらしたのである。
魔術と錬金術(澤井繁男)
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ペレウスPeleus
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アイギナの王アイアコスとエンデイス(Endeis)(オレアド Oread ペリオン山 Pelion のニンフ)の息子。
異母兄弟フォコス(Phokos)が競技に優れていたため、テラモン(Telamon)と共に謀って彼を殺害、罪を問われアイギナ島から追放された。

フティア(Phthia)に逃れエウリュティオン王(Eurytion)によって罪を潔められ、王女アンティゴネ2(Antigone)と領地の一部を与えられて王とされた。
その後アルゴ号にも乗船。

カリュドン(Kalydon)の猪狩りでは、誤ってエウリュティオン王を殺してしまい、イオルコスのアカストス王(Akastos)の元に逃れ罪を潔められた。

アカストス(Akastos)の妻アステュダメイア(Astydameia)がペレウスに恋したが拒絶したため、妻アンティゴネはアステュダメイアの虚言で自殺し、
同じく虚言を信じたアカストスにペリオン山(Pelion)に狩に行かされ、武器を隠され放置されたがケイロン(Cheiron)によって助けられる。
後にペレウスはゼウスの計らいによって海のニンフ、テティスを娶った。

(ペレウスとテティス)
テティスはネレウスとドリスの娘たちの中で最も美しい海のニンフであった。
美人と見れば放っておかれないのがゼウスの性質である。
当然のごとくテティスに言いよろうとした。
今回はポセイドンもこれに加わった。

しかしテティスはゼウスにもポセイドンにもなびかなかった。
だが、たとえ相手がなびかなくてもものにしてしまうのがゼウスである。
ところが、今回ばかりは色男神のゼウスも諦めざるを得なかった。

神託によれば、テティスから生まれる子どもは必ず父親よりも偉大になるであろう、とのことだった。
父親であるクロノスを倒してオリュンポスの覇権を握ったゼウスとしては、自分がクロノスの二の舞になることを怖れたからである。
ゼウスはテティスを大した事が無い人間の男と結婚させようと考えた。
そこで選ばれたのがフティア王ペレウスだった。

テティスは寿命に限りのある、どこの誰ともしれない人間との結婚に納得せず、ペレウスから逃げ回った。
しかし洞窟へと追い詰められて捕まえられる。
そこでテティスは猛獣や怪物、炎や水に変身してペレウスから逃げようとする。

予めケイロンの助言を受けていたペレウスは最後までテティスを離さず、ついに二人は結婚する事になった。
ペレウスとテティスの結婚式はオリュンポス山で行われた最も盛大な祝祭であった。
(アポロドロス 第三巻 12-6,13-1-6)

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ヘレスポントス Hellespontos
ヨーロッパとアジアの間、エーゲ海とマルマラ海を結ぶダーダネルス海峡の古称。
(The Encyclopedia Britannica)


ヘレニズム文化Hellenism
一般にギリシア文化とその模倣をいう。
古代ではギリシア語を話し、ギリシア的生活をする人々を意味した。
ヘレニズム時代はギリシア文化を仲介に東洋と西洋が混合した時代で、およそ3期に分けることができる。

(1) 前323~280年、アレクサンドロス(Alexander)の死後、大帝国がマケドニア、エジプト (プトレマイオス朝)、
シリア (セレウコス朝) などに分裂した時代。
(2) 前280~160年、各国の勢力均衡のためにギリシア的生活が普及し、科学、哲学が栄えた時代。
(3) 前160~30年、ローマの影響で各国の勢力が衰え、非合理性、宗教が盛んになり、エジプトがローマに併合されるまでの時代。

世界市民主義的生き方、個人主義的哲学などにみられるように、ポリスの強力な個人への支配が薄れたことから生れた文化で、
アテネ、エジプトのアレクサンドリア(Alexandria)、小アジアのペルガモン(Pergamon)などがその中心であった。
建築ではコリント式が この時代に流行した。
美術では、1820年にミロ島で発見された「ミロのヴィーナス」、 ギリシア神話に題材を取った「ラオコーン」(Laocoön)が有名である。
(The Encyclopedia Britannica)


ヘレネHelene
ゼウスとレダの娘。
12歳のとき、テセウスにさらわれてアッティカ地方のアフィドナイ(Aphidnai)に連れて行かれた。
しかし、テセウスが冥界にいるあいだに、アフィドナイを攻略したカストルとポリュデウケスに救われる。
ヘレネは成長して絶世の美女となった。

彼女の求婚者として、ギリシア中の王や英雄たちが数知れず集まった。
育ての親であるスパルタ王テュンダレオス(Tyndareos)は、この中の一人を選べば、争いが起こりはしまいかと心配し、
求婚者の一人であるオデュッセウスに助言を求めた。

オデュッセウスは、テュンダレオスに、求婚者たちが争わずにすむ方法を提案。
すなわち、すべての求婚者たちに、ヘレネが夫の選択をすることを受諾させ、この結婚に関して、
夫が誰かに害を蒙った場合には、求婚者たちはすべて彼に助力すると宣言させたのである。

結果、ヘレネはメネラオスを夫に選び、二人の間にはヘルミオネ(Hermione)が生まれた。
その後、ヘレネはパリスによってトロイに誘拐され、トロイ戦争の発端となった。
(エウリピデス Euripides 『ヘレネ Helene』)


ヘレネスHellenes
前7世紀頃からギリシア人が自己の民族を異邦人 (barbaroi バルバロイ) に対して呼んだ総称。
もと南テッサリア(Thessaly)のヘラス(Hellas)を中心に定着したギリシア人の一種族名で、彼らは伝説上の英雄ヘレン(Hellen)をみずからの祖と称していた。
(The Encyclopedia Britannica)


ヘレンHellen
デウカリオンの子。
オルセイス(Orseis オレアド Oread テッサリア Thessaly の山のニンフ)を娶り、ドロス(Doros)、クストス(Xuthos)、アイオロス2の父となった。
彼らはドリス人、イオニア人、アイオリス人の祖となった。


ベレロフォンBellerophon
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コリントス王シシュフォス(Sisyphos)の息子グラウコス2を父としてコリントスで生れた。

殺人罪を犯してティリュンス(Tiryns)のプロイトス王(Proitos)のもとに亡命したが、けがれを清めてくれたこの王の妃ステネボイア(Stheneboia)に
求愛され拒否したところ、彼女は逆に彼に言い寄られたといって夫に訴えた。

そこでプロイトスは、ベレロフォンを殺してほしいという手紙を持たせ、彼を義父のリュキア(Lykia)のイオバテス王(Iobates)の宮廷に行かせた。

そこでベレロフォンはイオバテスから、恐ろしい怪物キマイラを退治することを命じられるが、アテナの助けで手に入れた有翼の神馬ペガソスに乗ってこの難事を果したうえ、
アマゾンの女軍との戦いにも勝つなど、多くのめざましい手柄を立てたので、イオバテスは彼に娘を妻として与え、自分の後継者にした。

その後、リュキア王となったベレロフォンはおごりに取りつかれ、ペガソスに乗って昇天して神々の仲間入りをしようと企てたためゼウスの雷霆に打たれ、
落馬して地上に落ち、死んだとも、また不具になって放浪したともいわれる。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)

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ヘロドトスHerodotos [生没年未詳]
前五世紀のギリシアの歴史家。「歴史の父」と呼ばれる。
小アジアのハリカルナッソス(Halicarnassus)の出身。
若い頃国を追われ、エジプトやリビア、シリア、バビロニア、トラキアなどの各地を歴訪。
アテネでソフォクレスとペリクレスを知り、南イタリアのギリシア植民都市トゥリオイ(Thurioi)の建設に参加、のちアテネに戻った。
過去の出来事を詩歌ではなく実証的学問の対象にした最初のギリシア人で、ペルシア戦争とその背景を主題とする『歴史』 Historiai (九巻) はギリシア散文史上最初の傑作とされる。
(The Encyclopedia Britannica)


ペロプスPelops
ペロポネソス半島の呼び名のもととなった英雄。
リュディア(Lydia)の王であったタンタロスの息子で、父によりこまぎれに料理されて神々に供されたが、娘ペルセフォネ(Persephone)を失った悲嘆のあまり、
気づかずに肩の部分を食べてしまったデメテル以外の神々は、このごちそうの正体を見抜き、肉片を集めてまたペロプスを復活させ、なくなった肩の代りには、
象牙製の肩をつくってやった。
このあとペロプスは、ポセイドンに愛され、天上にさらわれてその酌童をつとめ、報酬に神から有翼の馬を与えられ、そのおかげでピサのオイノマオス王(Oinomaos)
との命がけの戦車競争に勝ち、ヒッポダメイア(Hippodameia)を妻に得ることができた。
ミュケナイを舞台に、兄弟同士で残酷無比な争いを演じたアトレウス(Atreus)とテュエステス(Thyests)は、この夫婦の子である。
(ヒュギヌス Hyginus, 神話集 Fabulae, 83: Pelops)


ペロポネソス同盟Peloponnesian League
(BC6C~BC366)古代ギリシアのスパルタを盟主とするペロポネソス半島の諸ポリスからなる同盟。
スパルタは同盟会議を招集、主宰し、戦争期間中は軍事指揮権をもった。
アテネ中心のデロス同盟と対立し、ペロポネソス戦争に発展した。
スパルタは戦争の勝者とはなったものの、BC371年、レウクトラの戦い(Battle of Leuctra)でテバイ(Thebai)に敗れたのち、ほどなく同盟は解体した。
(The Encyclopedia Britannica)


ペンテシレイアPenthesileia
アマゾン族の女王。
ヘクトルの死後トロイに助勢にいって奮戦するが、アキレウスに殺された。
アキレウスはその美貌に感じ入り、死を嘆いたという。
(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology by William Smith)




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