桃源郷
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晋の太元年間、湖南省の武陵の地に漁師の男がいた。
ある日、山奥へ谷川に沿って船を漕いで遡って行った。
突如、桃の木だけが生え、桃の花が一面に咲き乱れる林が両岸に広がった。
その香り、美しさ、花びらが舞う様子に心を魅かれた。
男は、その水源を探ろうと、さらに桃の花の中を遡り、ついにその水源に行き当たった。
そこは山になっていて、山腹に人が一人通り抜けられるかどうかの穴があった。
その穴の奥から光が見えたので、男は穴の中に入っていった。
穴を抜けると突然、視界が開けて目の前に大地が出現した。
桃の花が咲き乱れ、小鳥はさえずり、清い流れがわき、木々が繁っていた。
手入れの行き届いた田畑や美しい池、堂々とした家並み、あちこちの庭先からは犬や鶏の鳴き声が聞こえてくる。
行き交う人々は異国人のような装いで、みな微笑みを絶やさず働いていた。
人々は漁師を温かく迎えてくれたので、夢のような日々を過ごした。
この村の人たちの話では、「秦の時代に乱を逃れて、一族郎党を率いてこの地にやってきた。
それ以来ここから外へ出たことがなく、外の世界とは断絶して暮らしてきた。 今がどんな時代かも知らない」 という。
その後、漢の時代があったことも知らなければ、魏や晋のことも何も知らなかった。
漁師がその後のことを聞かせてやると、みな一様に驚くばかりだった。
男は、数日間、村の家々を回り、いよいよ自分の家に帰ることにして別れを告げた。
村人たちは 「ここのことはあまり外の世界では話さないでほしい」 と言って男を見送った。
穴から出た男は自分の船を見つけ、目印をつけながら川を下って家に戻った。
自分の村に帰った漁師は、あの美しい平和な村のことをどうしても忘れることができない。
そしてとうとう、友だちと酒を飲みながら、ついあの村のことをしゃべってしまった。
するとその友だちが次々としゃべってしまい、桃源郷のうわさは、役人にまで知られてしまったのである。
役人は 「お前は桃源郷という所に行ったそうだな。私達もそこに案内しろ!」 と要求した。
役人は捜索隊を出し、漁師の目印を手掛かりに川を遡ったが、ついにあの村の入り口である水源も桃の林も見付けることはできなかった。
桃花源記(陶淵明)
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トゥアサ・デ・ダナンTuatha De Danann → ダーナ神族(Dannan)
陶片追放Ostracism
古代アテネで、僭主(tyrant 独裁者)の出現を防ぐために、市民がその恐れのある人物を投票により国外追放にした制度。
BC5世紀頃から施行され、市民は陶片 (Ostrakon) に追放すべき者の名を刻み、アゴラ (広場) で投票した。
(The Encyclopedia Britannica)
常若の国Tir na nog (ケルト神話)
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エリン(Erin)島というのは現在のアイルランド共和国である。
ここに伝わるケルト人の楽園「常若(とこわか=永遠の青春)の国」の話は、長いあいだ、吟遊詩人によって語りつがれた物語である。
3世紀ごろ、この地にはフィン・マクール王がひきいるフィアナ騎士団という名高い軍団があった。
ある日、フィン王は息子のオイシンや部下の騎士たちをともなって、ある森に狩りにでかけた。
そこに、この世の者とは思われないほど美しい娘が白馬に乗って現れた。
オイシン王子はひと目でこの娘に恋してしまった。
常若の国
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ドゥルガーDurga/カーリーKali/パールヴァティParvathi
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ドゥルガー(得がたい者)と呼ばれるヒンドゥー(Hindu)の女神は、外見は優美で美しいが、実際は恐るべき戦いの女神である。
彼女は宇宙におけるすべての戦争のエネルギーを具現し、かつ集結して、仲間の神々を脅かす者にとっての無敵の存在になることができた。
彼女は宇宙の秩序を脅かす悪魔の敵として名高い。
彼女の配偶者シヴァと同じく、ドゥルガーの性格も複雑だ。
基本的には破壊者として作られたものの、彼女がとる姿によっては養育する神になることもできる。
あるとき、マヒシャースラ(Mahisasura)と呼ばれる水牛の悪魔がつらい苦行の末、大きな力を得た。
彼はブラフマー(Brahma)に不死身にしてほしいと頼んだが拒否されると、女性以外には殺されないようにしてほしいと傲慢にも要求した。
はば無敵であることが保証されたマヒシャースラは暴れ続け、神々を攻撃した。
ブラフマーの恩恵に守られたマヒシャースラに勝てる神はいないとわかり、全能の3神であるブラフマー、ヴイシュヌ(Vishnu)、
シヴァ(Shiva)は、彼らの神力を結集し、女性の力の典型である女神ドゥルガーを生み出した。
10本の腕をもつドゥルガーは神々から特別な武器を授かり、ライオンにまたがって、マヒシャースラ率いる悪魔軍との対決しに向かった。
女神は恐れる様子もなく、その顔は恐ろしい力を発していた。
悪魔はドゥルガーを見ると一斉に飛びかかってきたが、彼女にどんどん切り捨てられていった。
彼女は幾人かを棍棒で、他のものたちを三叉の矛と剣で始末し、また幾人かを輪縄で捕らえた。
それから頭蓋骨の首飾りと切断された腕のスカートをつけた恐ろしいカーリーの姿になって、敵と戦った。
この戦いで数百の悪魔が殺されたが、彼らの首領であるマヒシャースラは相変わらず無敵で倣慢なままだった。
ドゥルガー
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ドッペルゲンガーDoppelgenger
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自分自身と全く同じ姿をした分身と遭遇する現象を指す言葉として用いられる。
「二重に歩む者」を意味するドイツ語に由来する。医学の世界では自己像幻視(Autoscopy)と呼称している。
ドッペルゲンガーは、本人に何らかの関わりがある場所に出現する事が多く、また、基本的に周囲の人間と会話をしないと言われている。
また「自分のドッペルゲンガーに出会うと死ぬ」とも言われており、実際にリンカーンや三島由紀夫、芥川龍之介などが自身のドッペルゲンガーを見たと言う記録も残されている。
しかしこれらの人物は目撃した際、精神的に不安定な状態であったという。
従って、ドッペルゲンガーはただの幻覚、もしくは思い込みにすぎないのかもしれない。
対処法としては、もし、自分のドッペルゲンガーと遭遇してしまった場合、とにかく何でもいいので罵倒すれば良いとされている。
(PIXIV 百科事典)
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トトThoth
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古代エジプトの神。知恵の神。書記の守護者。暦の神。
ヒエログリフ(hieroglyph)を人に伝えたものとされ、書記たちの統率者。
また、ピラミッドの建造方法などを与えたのもトトとされている。
このことから分るように、ヒエログリフが成立した初期王朝時代には既に存在していた古い神と考えられる。
知識人に「トト」の名を持つ人名が多いのは、この神にあやかってのこと。
また書記は自分の記載したものに「この書物を改ざんするものはトト神を罰を受けよ」とか、「トト神に誓って私は真実を記録しました」などと付け足すことがあった。
トトは、暦の神としてエジプト暦 1月をトトの月とし,1年を3つの季節に分けた。
月と勝負して「閏日」を勝ち取り、ヌト(Nut)の子らが生まれる日を作り出したのも彼である。
トトは、オシリス(Osiris)の宰相として彼のアジア遠征に随行し、殺されたオシリスの復活にも尽し、その子ホルス(Horus)を守ったという。
オシリスの「裁きの間」で正義の秤の示す審判を記すのはトトの役目であった。
妻は正義の神マアト(Maat)とされる。
(The Encyclopedia Britannica)
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ドドナDodona
エペイロス地方(Epeiros)にあったゼウスの神託所。
ギリシア最古の神託所であり、デルフォイとともに多くの神託伺の人々を集めた。
樫の神木の葉の風にそよぐ音で神託がくだされ、セロイ(Selloi)と呼ばれる男たちによって伝えられたことになっているが、
古典期にはハト(Dove)と呼ばれる七人の巫女たちによって伝えられた。
神託伺の人々は鉛板に質問を記し、巫女にゆだねたといわれ、その鉛板多数が出土している。
(The Encyclopedia Britannica)
トトメス2世ThutmoseII [生没年未詳]
古代エジプト第18王朝4代の王(在位前1512〜前1504)。
トトメス1世の子。異母妹ハトシェプスト(Hatshepsut)と結婚。
北部クシュ(Kush)の反乱を鎮圧。
シリアに遠征したりしたが、病弱で、政治方針は主として内政に向けられ、平和外交や神殿の造営修築に力を注いだ。
(The Encyclopedia Britannica)
トネリコAsh
豊穣の女神イドゥン(Idun)は、収穫したリンゴをトネリコの樹から作った木箱の中に入れていたといわれている。
このトネリコという樹は北欧神話で非常に重要な樹木である。
神話の創世の部分では、この世で最初の人間の男はトネリコの流木で神々が作ったと記されている。
また、北欧神話の九つの世界を支える世界樹ユグドラシル (Yggdrasil)は、巨大なトネリコの樹であるという説もあるほか、
ルーン文字(Rune)はこのトネリコに秘められていた魔法の文字である。
イドゥンがリンゴを保管する木箱になぜトネリコが使われていたのか、詳しくはわかっていない。
しかし、トネリコは建築資材や家具、楽器などによく使われ、人々の生活に密接に関わってきた。
古代ヨーロッパでは、トネリコは知恵、生命力、治癒、魔除けなどのシンボルであり、魔法の杖にも使われていた。
人間にとって役に立つ、聖なる樹木としてトネリコは選ばれたのかも知れない。
ゲーム制作者のための北欧神話事典(松之木大将)
トマス・ブルフィンチThomas Bulfinch
[1796/07/15 - 1867/05/27]
アメリカの作家。神話・民間伝承に関する研究・著作で知られる。
代表作は、『The Age of Fable (伝説の時代)』
ギリシア・北欧神話をはじめとする各種の神話の知識が体系立てて、平易な文章でまとめられている。
(The Encyclopedia Britannica)
トライデントtrident
三叉の矛。ポセイドンの武器。キュクロプス製。
フォークのような形状をしており、穂先に刃が三本付いている。
一突きで巨岩を砕き大地を震撼させる威力を持つ。
水を支配する力を秘めており、海を引っ掻き回して津波を起こしたり、何もないところに泉を湧き出させたりする。
(Apollodorus Library book1 chapter2 by Sir James George Frazer)
ドラウプニルDraupnir
主神オーディン(Odin)の持つ指輪。
小人族のシンドリ (Sindri) が弟ブロック(Brokk)に手伝わせて作った黄金の腕輪。
9夜ごとに同じ重さの腕輪8個を滴り落とす魔力があといわれる。
Teutonic Myth&Legend (Donald A. Mackenzie)
トラキアThracia
バルカン半島の東側、ほぼ現在のブルガリアにあたる地域の古代名。
インド・ヨーロッパ語族に属するトラキア人(Thracians)が住んでおり、独自の文化が栄えていた。
BC6世紀から黒海沿岸にギリシア人が植民市を建設、その後ペルシア(BC512)、マケドニア(BC330)、ローマ帝国(46年)、
東ローマ帝国(1018年)などの支配下に入り、のちオスマン帝国領(1393年)となった。
(The Encyclopedia Britannica)
取り替え子Changeling
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ヨーロッパの民間伝承では、妖精は自分たちの病弱で醜い子の代わりに、美しく元気でよく太った人間の子供を欲しがるとされた。
そのため、妖精は洗礼前の人間の子供を盗み、その場所に彼らの取り換え子(エルフ・トロールなどの子)を置いていくのである。
取り換え子は、しなびて醜いだけでなく、正常な発達をしておらず、見かけの年齢よりも早熟であることが多いため、すぐに見分けがついた。
シェイクスピアの「真夏の夜の夢 (A Midsummer Night's Dream)」では、さらってきた子をめぐって
妖精王オベロン (Oberon) と女王ティターニア (Titania) が仲たがいをする場面がある。
イングランドでは、ヴィクトリア朝時代まで、子供を妖精にさらわれないように、赤ん坊をベビーベッドにくくりつける風習の地方もあったという。
Spirits, Fairies, Gnomes, and Goblins (Carol Rose)
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トリトンTriton
ポセイドンとアムフィトリテ(Amphitrite)の子。
半人半魚の姿をした海神。波を立てたり鎮めたりする法螺貝(ほらがい)を所有する。
ギリシア全土を大洪水が襲った時、法螺貝を吹いて水を引かせ、デウカリオンとその妻を助けた。
(オウィディウス Ovidius『変形譚 Metamorphoses』巻一)
トリナキエ島Thrinakie
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太陽神ヘリオスが自分の家畜を飼っていた島。シチリア島であるといわれる。
オデュッセウスとその部下たちが太陽神ヘリオスに捧げられたトリナキエ島に上陸したとき、
オデュッセウスはその土地で草を食んでいるヘリオスの牛や羊には手を出さないようにと警告した。
しかし、オデュッセウスが不在の間に、彼らはこの警告を無視して、動物たちを虐殺してしまう。
太陽神ヘリオスは、この悪行を知り、すぐにゼウスに訴えた。ゼウスは復讐を約束した。
七日目、ようやく嵐も収まったので彼らは出帆する事ができた。
しかし島を離れるとすぐに暗雲が空一面を覆った。激しい西風が吹き荒れ、帆柱は二つに裂けた。
船は微塵に砕け散り、皆海に投げ出された。
彼らは荒れ狂う大波に飲み込まれ、一人また一人と海中へ飲み込まれていった。
オデュッセウスは、砕けた船の破片の上に乗って漂った。漂流は、九日九晩つづいた。
(オデュッセイア 第11歌 107,第12歌 127-141,第19歌 275)
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ドリュアデスDryades/ハマドリュアデス(Hamadryades)
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ドリュアスDryas(単数)木のニンフ。
狩猟の女神アルテミスの従者で、ドリュアデスを見ると不運にあうとされる。
しかし、牛乳、蜂蜜、油を捧げ、ご機嫌をとれるという。
ドリュアスは緑色の髪をした美しい娘の姿をしており、気に入った男を木の中に引きずり込む事がある。
そこで一日を過ごしただけで外では何十年、何百年の時が経過してしまうという竜宮城方式になっている。
彼女たちは自らの宿る木と共に生き、その木が枯れた時に死ぬ。
このため木を敬意の念なく傷つける者をこらしめるという。
おもなドリュアスに、アムプラス(Ampelus ブドウの木)、エゲイラス(Aegeirus ポプラ)、カリュア(Karya クルミ)、クラネイア(Kraneia
ハナミズキ )、
サイク(Syce イチジク)、バラヌス(Balanus オーク)、プテレア(Ptelea ニレ)、メリアス(Melias トネリコ)、モレア(Morea
クワ)がいる。
(THEOI Greek Mythology Encyclopedia, THE CLASSES OF NYMPH)
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トリスタンとイゾルデTristan and Isolde
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中世に宮廷詩人たちが広く語り伝えた恋愛物語。
勇敢な騎士トリスタンは伯父のコーンウォール(Cornwall)王マルク(Mark)の妃になるべきアイルランド王女イゾルデを迎えに行くが、
誤って飲んだ秘薬の魔力で二人はひかれあい、多くの試練や悔恨を退けて愛を貫き、苦しみつつ、死ぬまで貞節を守りとおす。
起源はケルトの説話であり、12世紀の中世フランスで物語としてまとめられた。
元々は独立した文学であったが、まもなくアーサー王(King Arthur)物語に組み込まれる。
トリスタンは円卓の騎士の一人に数えられ、ランスロット(Lancelot)と並ぶ武勇を誇る騎士とされた。
「トリスタンとイゾルデ」は中世末まで各国語に書き改められ、ヨーロッパ共有の文化となった。
ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」(1865)はその一例である。
前奏曲の冒頭と終わりにみられる特異な和音が、半音階的な変化音を多く含むことから「トリスタン和音(Tristan chord)」
という名称がつけられた。
また、ウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)」は、
この悲恋の物語に影響を受けて書き上げられたと言われている。
(Wikipedia, the free encyclopedia)
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トールThor
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古代ゲルマン人の神。北欧で古くから崇拝された雷神。妻はシフ(Sif)。
オーディン(Odin)の子あるいは弟といわれ、非常に力の強い大男で神々第一の勇士。
神界アスガルド (Asgard)の巨大な館ビルスキルニル (Bilskirnir)(540階建て) に住み、ミョルニル(Mjolnir)の鎚という、
どんな巨人でも一撃で倒せて、しかも投げたのちひとりでに手に戻る鎚をもっていた。
この鎚を彼が激しくふるうと雷が起るといわれた。
雄やぎの引く車に乗り巨人族を征伐したが、逆に巨人の策略にひっかかったこともあったという。
世界滅亡のときには、ミズガルド蛇(Jormungand ヨルムンガンド)と相討ちになる。
オーディンが貴族や武人の神であったのに対し、トールは農民の守り神とされる。
結婚を祝福し、大地を豊かにする神でもある。
ラテン語の木曜日 Jovisdies (ユピテル Juppiter の日) にあたる英語は Thursday (トールの日) であり、
ローマ人はトールをヘラクレス、のちにユピテルに擬している。
(The Encyclopedia Britannica)
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ドルイドDruid
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ドルイドは、古代ケルト人(Celts)の宗教指導者であった。
彼らは王の政治顧問として、ケルト社会の最上位を占める階級をなし、、
宗教と占星術のほか、裁判や若者の教育、病気の治療などにあたった。
世襲制ではなく、ドルイドを志願する若者は、長期の修練の期間を経て、
伝承された秘儀的知識を習得しなければならなかった。
古代、イギリスの地はブリタニア(Britannia)と呼ばれ、ケルト人が居住していた。
彼らの話す言語(ケルト語 Celtic)から、原住地は黒海沿岸の草原地帯と推定される。
ケルト人は、紀元前700年頃にはブリタニアに定住を完了し、主として農業を生活手段とし、
神事をつかさどる司祭(ドルイド)、戦士、農民による階層社会を形成していた。
彼らは自然物を神々として崇め、崇拝の対象は、泉や森、岩山にまで及び、それらが聖地とされた。
ブリタニア南部に見られるストーンヘンジは、精緻な天体観測に基づいて建てられた太陽神殿である。
ドルイド祭司たちは、驚異的な精度で天体の運行規則を把握しており、太陽暦を使用し、また閏日の
存在も認識していた。
さらに、日食、月食がいつ起こるかすらも、観測から割り出していたのである。
(The Encyclopedia Britannica)
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トロアスTroas
小アジア北西部、現在のトルコに属するチャナッカレ県(Canakkale Province)の古称。
北西はヘレスポントス(ダーダネルス海峡)と、西はエーゲ海とそれぞれ接し、
小アジアの他の地域とはイデ山(Ide)の山塊で隔てられていた。
スカマンドロス河(Skamandros)、シモエイス河(Simoeis)という二つの主となる川が流れ、
トロイ遺跡のある地域で合流していた。
トロイTroy
小アジア北西部の古代都市。別名イリオン(Ilion)
BC3000年頃から集落ができ、BC2500年からBC2000年頃にかけて地中海交易の拠点として栄えたが、
やがてトロイ戦争(BC1200年頃)が起こり衰退。
伝説上のトロイの都が実在すると信じたシュリーマンが、1871年はじめて手をつけ、
以来4回の発掘によって、宮殿、城壁、財宝を発見し、その信念を実証した。
トロイ文明Trojan civilization
BC3000年からBC2000年頃まで、小アジア北西部にトロイ古代都市が繁栄を誇った。
敵対するミュケナイ/ギリシアとの争いが多く、ミュケナイの最盛期のBC1200年頃の争い(トロイ戦争)
がホメロスの叙事詩に記されて、これを信じたシュリーマンが発掘した。
遺跡は9層よりなり、第6層(前1700〜前1250年)がトロイの遺跡として有力である。
(The Encyclopedia Britannica)
トロイゼンTroizen
ペロポネソス半島北東部の都市国家。英雄テセウス出生の地と伝えられる。
トロイ戦争Trojan War
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ギリシアの数学者エラトステネス(Eratosthenes BC275〜BC194)の計算によれば、
BC1194年からBC1183年まで10年間に渡って戦われたギリシアとトロイとの戦争である。
またキュプロス(Cyprus)の詩人スタシナス(Stasinus BC7世紀)が描いた叙事詩
『キュプリア The Cypria』によれば、トロイ戦争の起因は以下の通りである。
ギリシア北部の小国フティア(Phthia)の王ペレウス(Peleus)は、海の女神テティスを恋するようになった。
テティスは寿命に限りのある、どこの誰ともしれない人間との結婚に納得せず、
猛獣や怪物、炎や水に変身してペレウスから逃げ回った。
しかし洞窟へと追い詰められて捕まえられ、ついにペレウスの妻になることを承知した。
テティスは、後にも先にも、人間と結婚した、ただひとりの女神となった。
トロイ戦争
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トロイの木馬The Trojan Horse
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トロイ戦争の戦況は一進一退を繰り返し、10年の長きに渡って続けられた。
10年目のある日、オデュッセウスが巨大な木馬を造り、その内部に兵を潜ませるという作戦を考案した。
翌朝、ギリシア軍はもぬけの殻となっており、代わりに大きな木馬が置かれてあった。
トロイ軍はギリシア軍が敗走した証だと思い、木馬を城内に引き入れようとする。
トロイの神官ラオコーン (Laokoon) は、不審に思い、木馬を城内に引き入れることに反対する。
だがその直後、ラオコーンはポセイドンの策略で海蛇に絞め殺されてしまう。
トロイ軍は木馬を戦利品として城内に運び入れる。
トロイ軍の兵士達が勝利の美酒に酔い、眠りこけたとき、木馬に潜んでいた兵士は、トロイの町に火を放った。
同時に、軍船から上陸したギリシア軍は一気にトロイの町を攻め滅ぼし、かくてトロイは滅亡する。
(ウェルギリウス 『アエネーイス』 Aeneid by Vergilius)
(オデュッセイア 第四歌 274-289)
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トロスTros
ダルダニア王エリクトニオス(Erichthonios)とアステュオケ(Astyoche ナイアス Naias 水のニンフ)の子。
スカマンドロス河神の娘カリロエ3(Kallirrhoe)を娶り、イロス2(Ilos)、アッサラコス(Assarakos)、ガニュメデス、クレオパトラ(Kleopatra)の三男一女を儲けた。
(アポロドロス 第三巻 12-2)
トロールTroll
北欧神話に登場する奥深い森の中に住む妖精。
背中にこぶがあり、大きな鉤鼻をしていて、灰色のジャケットと尖った赤い帽子をつけている。
彼らは金属細工に秀で、薬草や魔法を使った治療法に詳しいとされている。
しかし日の光に当たると石に変わってしまうので、夕暮れから明け方までの間にしか姿を見せない。
ノルウェーの童話「三匹のヤギ」に登場する橋の下に棲むトロールは、橋を渡るヤギたちに悪さをする厄介者として描かれている。
またトールキン「ホビットの冒険」や、ローリング「ハリー・ポッターシリーズ」にも邪悪な存在として登場している。
Spirits, Fairies, Gnomes, and Goblins (Carol Rose)
ドワーフDwarf
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ドイツ、スイス、スカンジナビアなどの山地に棲む妖精。
ドワーフ(Dwarf)は、英語読みであり、ドイツでは、ツヴェルク(Zwerg)、北欧では、ドヴェルグ(Dvergr)と呼ばれている。
身長は1メートル前後で、男のドワーフも女のドワーフも毛深く、どちらも長いあごひげを生やしている。
男のドワーフは老人のような顔をしているが、体はとても丈夫で力持ち。男女とも寿命は 200歳以上もある。
ドワーフたちは太陽の光を嫌い、地下に穴をほって都市をつくり生活している。
太陽の光をあびると、ドワーフは石になってしまうため、地下で生活するのだという説もある。
暗闇でも眼が利くため、一日の大半を地下で過ごす。
鍛冶や石工が得意な妖精で、地下の作業場で精巧な道具を毎日作り続けていてる。
出来上がった物に魔力を入れ込み、最終的に不思議な力を持つ武器や民芸品として完成させる。
働き者の妖精ではあるが、敵対する妖精や怪物が近づくと、戦士となって戦うとされている。
トールキンの「ホビットの冒険」「指輪物語」では、矮躯でありながら屈強、実直で義理堅い種族として描かれている。
また、グリム童話「白雪姫」に登場するドワーフたちは、大いに酒を飲み、歌い踊りながら暮らしている、非常に陽気な性格の種族として描かれている。
Spirits, Fairies, Gnomes, and Goblins (Carol Rose)
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