タイムカプセル (59) 平成25年 (2013年)  タイム・カプセル

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この年、アメリカの国家安全保障局による大量の個人情報や電話通信記録の傍受問題が発覚(6.6)
内部告発したスノーデン元CIA職員はロシアに亡命した。

(映画)第86回アカデミー「それでも夜は明ける」
アナと雪の女王」「モンスターズ・ユニバーシティ」「ゼロ・グラビティ

東宝「風立ちぬ」(庵野秀明)東宝「真夏の方程式」(福山雅治、吉高由里子、北村一輝)東宝「映画 謎解きはディナーのあとで」(櫻井翔、北川景子、椎名桔平)東宝「清須会議」(役所広司妻夫木聡)東宝「プラチナデータ」(二宮和也、豊川悦司、鈴木保奈美)東宝「謝罪の王様」(阿部サダヲ、井上真央竹野内豊)東宝「ストロベリーナイト」(竹内結子、西島秀俊、大沢たかお)

(音楽)第55回日本レコード大賞「EXILEPRIDE~こんな世界を愛するため~」EXILE

「さよならクロール」「恋するフォーチュンクッキー」「ハート・エレキ」「So long !」AKB48「Calling/Breathless」 「Let it Go」「
生まれてはじめて」アナと雪の女王

(テレビ)NHK大河ドラマ「八重の桜」(綾瀬はるか、西島秀俊、西田敏行反町隆史)NHK「あまちゃん」(能年玲奈、小泉今日子、有村架純)TBS「半沢直樹」(堺雅人上戸彩、及川光博)テレ朝「Doctor-X ~外科医・大門未知子~」(米倉涼子、藤木直人、内田有紀)フジ「最高の離婚」(瑛太、尾野真千子、真木よう子)フジ「大空港2013」(竹内結子、香川照之、生瀬勝久、戸田恵梨香)フジ「ガリレオ2」(福山雅治吉高由里子)テレ朝「DOCTORS2 最強の名医」(沢村一樹、高嶋政伸)

TBS「空飛ぶ広報室」(新垣結衣、綾野剛)TBS「とんび」(内野聖陽、佐藤健、吹石一恵)TBS「安堂ロイド」(木村拓哉柴咲コウ、大島優子、桐谷健太、本田翼)フジ「ショムニ2013」(江角マキコ、ベッキー、本田翼)フジ「ラスト・シンデレラ」(篠原涼子、三浦春馬、藤木直人)フジ「救命病棟24時5」(松嶋菜々子、佐々木蔵之介)フジ「SUMMER NUDE」(山下智久、香里奈、戸田恵梨香)日テレ「Woman」(満島ひかり、田中裕子、小栗旬)日テレ「世界の果てまでイッテQ!」(内村光良)TBS「ぴったんこカン☆カン」(安住紳一郎)日テレ「踊る!さんま御殿!!」(明石家さんま



                           



(流行語)「今でしょ!」「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」「アベノミクス」「ご当地キャラ」「特定秘密保護法」「PM2.5」「ブラック企業」「ヘイトスピーチ」「ふなっしー」

(スポーツ)長嶋茂雄氏と松井秀喜氏が国民栄誉賞受賞(5.5)イチロー、日米通算4000安打(8.21)

(社会)中国の全国人民代表大会が国家主席と国家中央軍事委員会主席に習近平中国共産党総書記を選出(3.14) 安倍首相が2014年4月からの消費税8%実施を正式表明(10.1) 国家機密漏洩に罰則を課す特定秘密保護法が成立(12.6) 猪瀬直樹東京都知事が医療法人徳洲会グループからの5千万円受領問題で辞職表明(12.19)

(物故)大島渚、大鵬幸喜、坂口良子三国連太郎、田端義夫、佐野洋、牧伸二、夏八木勲、長門勇、藤圭子、山崎豊子、桜塚やっくん、川上哲治、本郷功次郎、島倉千代子、岩谷時子、ネルソン・マンデラ、マーガレット・サッチャー、パティ・ペイジ

(その他)矢部浩之(41)元TBSアナの青木裕子(30)と結婚(3.27)堺雅人(39)女優の菅野美穂(35)と結婚(4.2)広瀬すず、KTV「幽かな彼女」でデビュー(4.9)松浦亜弥(27)winds の橘慶太(27)と結婚(8.4)「医者に殺されない47の心得」(近藤誠)「海賊とよばれた男」(百田尚樹)「ロスジェネの逆襲」(池井戸潤)「4Kテレビ」「3Dプリンター」



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                   生まれてはじめて(アナと雪の女王)









あまちゃん


天野春子(小泉今日子)は、東京・世田谷で、娘のアキ(能年玲奈)と母一人子一人で暮らしている。


春子は若いころ、郷里の三陸を離れ、アイドルを目指して上京するが夢は叶わず、その後結婚する。

夫は個人タクシーの運転手だが、春子とは性格があわず、現在別居中だった。


ある日、春子のもとへ母親の夏(宮本信子)が倒れて危篤とのメールが届く。

24年ぶりに娘を連れて故郷に戻ってきた春子だが、実家には母の姿はなかった。

鍋に火がかけられているのを見た春子は、母がワカメを取りに行っているのではと疑う。




春子に海を見てくるように言われた娘のアキは、そこで海から上がってきた祖母に出会う。

アキは、危篤のはずの祖母が、現役の海女だと知って衝撃を受けるのだった。



岩手県の三陸を舞台に、東京からやってきた一人の少女が海女を目指す成長物語。


高校2年の夏休み、母に連れられ三陸にやって来たアキは初めて祖母と出会う。

現役の海女を続ける祖母の夏は、人生で初めて「カッコいい!」と思える女性だった。


東京では、引きこもりがちだったアキには、田舎町の暮らしの何もかもが新鮮に映る。
そして祖母に弟子入りしたアキは、三陸の海で海女になるために奮闘するのだった。


やがてアキは、地元の海女アイドルとして思いがけず人気を得てしまう。

あるとき、東京の芸能事務所からの誘いを受け、アキは東京へ行ってアイドルに
なりたいという夢を抱くようになる。


それを聞いた母の春子は、アキの芸能界デビューに反対する。

春子もかつてアイドルを目指して上京し、挫折した過去があるからだった。

だが一転、上京を許すことにした。それは果たせなかった自分の夢を娘に託したのだった。



本作は、三陸の街並みなど景観面の美しさだけでなく、海女、三陸鉄道、久慈の琥珀など、
地元の特色や特産をふんだんに盛り込んだ「ご当地感」あふれる作品となっている。


放送終了後、寂しさで落ち込む人が続出し「あまロス症候群」なる言葉まで生まれ、
一種の社会現象ともいえる反響を呼び起こした。

また作品中の独特の方言「じぇじぇじぇ」は、2013年度の流行語大賞を受賞した。














半沢直樹 (はんざわなおき)


ドラマ「半沢直樹」のテーマは「かたき討ち」である。

堺雅人演じる半沢は、メガバンク東京中央銀行に就職する。


その目的は、父親の会社を助けてくれず、自殺に追い込んだ
当時の担当者、大和田(香川照之)に復讐するためであった。

親のかたき討ちのために、半沢は剣術も習得し、有段者の腕前だ。




だが、かたき討ちといっても、相手の首を打ち取るわけにはいかない。

現代社会では、かたき討ちは法律で認められていないからだ。


ではどうするか。半沢は冷酷非道な大和田を「土下座」させることを誓う。

土下座によって、父親の屈辱を大和田にも味合わせようとしたのである。



ドラマの後半、大和田の策略で、半沢は出向という名の島流しに遭うかどうかの
ピンチに追い込まれてしまう。

だが取締役会で形勢逆転、大和田の不正を暴いて土下座させることに成功した。


この土下座によって、ドラマの視聴者も溜飲を下げることができた。

最終話の土下座のシーンは、なんと最高視聴率42.2%を記録したのである。


この「悪い奴をやっつけて、溜飲を下げる」という構図は、時代劇「水戸黄門」で
悪人一味が、黄門様の前に土下座して平伏する場面に通ずるところがある。


日本人の好きな「水戸黄門」「遠山の金さん」「暴れん坊将軍」などの時代劇は、
見る者を安心させる要素が共通にある。

絶対に「悪い者は成敗される」という勧善懲悪の世界だからだ。


「半沢直樹」に視聴者からの大きな反響が集まったのは、こういった時代劇の要素を
存分に盛り込んだドラマだからこそであろう。













最高の離婚


濱崎光生(瑛太)は、自動販売機の設置会社で働く営業マン。

苦手な営業に加え、飲み会も多く、実際、体のあちこちが調子悪かった。


そんな光生にとって、何よりも辛いのは、妻・結夏(尾野真千子)の存在だ。

結夏とは二年前に成り行きで結婚した。だが、愛しているのか…分からない。


とにかくおおらかで大雑把な結夏とは、全てが噛み合わないのだ。


そんなある日、光生は、大学時代の恋人・灯里(真木よう子)と再会する。




偶然の再会に、光生は、なんとなく浮かれてしまう。

だが、灯里には、美大で助手をしている夫・上原諒(綾野剛)がいた。



たとえ結婚していても、元カノと元のサヤに戻りたいというのは、大方の男性の願望だろう。

それが偶然出会ったり、再び親しく食事をしたりすると、なおさら期待感は強まる。


元カノが結婚していてもそうだし、していなければ余計にそうだと思ったりする。

そういう誰もが持つ願望を、ドラマは疑似体験させてくれるのだ。




本作は、30歳という転換点に立つ四人の登場人物を軸に描かれる。

主人公・光生は、神経質で口うるさくて面倒くさい男である。


そんな性格が災いして、妻・結夏から三行半をつきつけられてしまう。

だが実は、他の三人も、かなり面倒くさい人間ばかりだった。


妻・結夏は、よく言えばおおらかだが、夫の光生からすれば大雑把でガサツな女だ。

元カノ・灯里は、寂しがり屋を装っているが、実は暗くて些細な事を根に持つ性格だ。


その夫・諒は、飄々としたモテ男に見えるが、実は女にだらしない浮気男である。

ドラマでは、そんな面倒くさい四人が、いろいろな場面で衝突するシーンが描かれる。



脚本の坂元裕二の作品の中には、面倒くさい性格のキャラクターが数多く登場する。

そんな人間同士が、お互いに結婚生活を共にするのは、きっと大変な事なのだろう。


だが、その面倒くささが「その人らしさ」でもあり、それゆえ愛すべきキャラクターとも映る。

大事なことはいつだって、別れて初めて気がつくものである。


本作は、四人が、お互いを見つめなおしながら、それぞれ掛け替えのない相手の存在に気づき、
ハッピーエンドを迎えるまでの物語である。














Woman(ウーマン)


青柳小春(満島ひかり)は、夫を事故で亡くし、二人の子供を抱えるシングルマザー。

仕事を掛け持ちして必死で働くものの、家計は苦しく、生活は困窮する。


追い詰められた小春は、生活保護を受けようと役所に行く。

だが、申請をすると却下されてしまう。

理由は20年会ってない母親が援助を申し出たからだという。

自分を捨てた母がそんなことを言うはずがない、と信じられない小春。

彼女は、実家に戻って、母親に理由を問い詰めようとするが…。



シングルマザーは強い。なぜなら、覚悟が違うからだ。

彼女たちは「自分が頑張って子供たちを食べさせていく」と決意した女性たちだ。


そこに母親としての矜持があり、尊厳がある。

だがドラマは、彼女たちへの容赦ない仕打ちがこれでもかと描かれる。


不安定な雇用、親子の確執、周囲の冷たい視線、そして栄養不良からくる自身の病気。

我が子を心から愛し、自らを犠牲にしてでも彼らを守ろうとするヒロインの懸命に生きる姿、
そして現実社会の生きづらさが観る者の胸に迫る。



ヒロイン・小春の周囲には、だらしがなく、情けない男たちが次々と登場する。

稼ぐ能力もなくひたすら小説を書き、DVに走る父親、生活を妻に委ねて働かない怠け者の義父、
妻を気遣うフリをするが、家事も子育ても手伝わない役所勤めの夫。


このどうしようもなく情けない男たちとの対比で、強く生き抜くヒロインの姿が際立っている。



劇中でヒロインが、生活に行き詰まり、生活保護を申請に福祉事務所を訪れる場面がある。

すると、窓口で「誰か援助してくれる親族はいないのか」としつこく聞かれる。


このあたりは、昨今の新聞をにぎわしている、生活保護に対する締め付けや、福祉の削減、
家族の扶養責任を強調する現場の実態を反映している。


さらに、母親の帰りを待つ子供たちが、児童相談所の職員に施設に連れて行かれそうになるなど、
本来住民を守る立場の行政からの様々な仕打ちがあからさまに描かれている。


こういった幾度もヒロインを襲う絶望感と孤独のシーンは、まさに作者の意図する所であろう。

本作は、困窮の生活のなかで、懸命に生き抜くヒロインの悲惨な状況を一方的に描くことで、
その背景にある、弱者を置き去りにする「政治的貧困」をシニカルに示唆しているのである。













大空港2013


大河内千草(竹内結子)は、松本空港に勤務する空港職員。

昨年まで羽田空港で働いていたが、社内恋愛がこじれて退職した。


今の職場では、社内恋愛は絶対しないことを心に決めている。

ところが、好きでもない上司から、しつこくプロポーズされてしまう。


そんなとき、相談する親友は、案内係のかおる(青木さやか)だった。





そんなある日、天候不良のため、飛行機が松本空港に緊急着陸した。

乗客の誘導をすることになった千草だが、面倒な客に遭遇してしまう。



佐賀での親族の葬儀を終えた田野倉一家は、帰京の途上、天候不良で足止めを食う。

彼らは一見、ごく平凡な家庭に見えるが、実は家族の誰もが、それぞれ隠し事や不満を
抱えており、それらを隠したり、我慢しながら一緒に暮らしている。


小さな田舎の空港を舞台に、空港職員と、乗客の訳あり家族が繰り広げるドタバタコメディ。



早朝の松本空港を丸ごとチャーターして撮影された本作は、完全ワンカット・ドラマと呼ばれる。

ワンカットとは、始まりから終わりまで、一台のカメラでノンストップに撮り続ける手法だ。


非常に難易度の高い撮影手法であり、当然ながら、演技やセリフのNGは許されない作品である。

こうした撮影時の緊張感がもたらす効果は、観る者に「臨場感」や「同時体験」を与える。


視聴者は茶の間にいながら、意識の上では、演技者の視点でドラマを疑似体験できるのである。












      ゼロ・グラビティ(Gravity)2013年(米)

スペースシャトルの船外で修理作業を行なっていた技師のライアン(サンドラ・ブロック)
突如、膨大な量の宇宙ゴミが接近し、シャトルが大破するという想定外の事故が発生する。
その衝撃によって彼女は、漆黒の宇宙空間へと放り出されてしまう。

もし宇宙空間に一人だけ置き去りにされたら、という恐怖をこれほどリアリティを持って
描き出した映画は少ないだろう。果てしなく続く浮遊感や漆黒の闇に漂う緊張感など、
観客も実際に宇宙空間にいるような臨場感溢れる映像が話題となって本作は大ヒットした。

(監督)アルフォンソ・キュアロン(Alfonso Cuaron)
(出演)サンドラ・ブロック(Sandra Bullock)ジョージ・クルーニー(George Clooney)