10月8日  タイムカプセル(30)昭和59年(1984年)  タイム・カプセル

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この年、朝日新聞社と日劇の跡地に有楽町マリオンビルがオープン。

2つのデパート(阪急・西武)と5つの映画館が、銀座の新名所となった。


(映画)第57回アカデミー賞「アマデウス」
「ステイン・アライブ」「インディジョーンズ魔宮の伝説」

東宝「おはん」(吉永小百合石坂浩二大原麗子)ATG「お葬式」(山崎努) 「風の谷のナウシカ」 東宝「刑事物語3 潮騒の詩」(武田鉄矢星由里子沢口靖子


(音楽)第26回レコード大賞「
長良川艶歌五木ひろし

涙のリクエスト(チェッカーズ) 娘よ(芦屋雁之助) 桃色吐息(高橋真梨子)浪花節だよ人生は(細川たかし)飾りじゃないのよ涙は(中森明菜)恋 はじめまして(岡田有希子)星空のディスタンス(アルフィー)ワインレッドの心(安全地帯)もしも明日が(わらべ)

モニカ(吉川晃司)釜山港へ帰れ(渥美二郎)風の谷のナウシカ(安田成美)時間の国のアリス、ピンクのモーツァルト(松田聖子)つぐない(テレサ・テン)スリラー(マイケル・ジャクソン)Like A Virgin (マドンナ)


(テレビ)NHK「心はいつもラムネ色」(新藤栄作、美木良介、藤谷美和子)NHK「思い出トランプ(花の名前)」(浅丘ルリ子杉浦直樹)NHK「ミス・マープル」(山岡久乃、鈴木瑞穂、滝口順平)NHK「ハングル講座」TBS「不良少女とよばれて」(伊藤麻衣子、国広富之)NET「家政婦は見た! 」(市原悦子、野村昭子)NET「特捜最前線」(二谷英明、大滝秀治)フジ「女の暦」(京塚昌子、田村亮、大村崑、新珠三千代、宮崎美子、益田喜頓) フジ「地の骨」(田村正和、佐藤慶、峰岸徹、梶芽衣子)

フジ「時代劇スペシャル 子連れ狼」(萬屋錦之介、岡田二三、原田美枝子、三国連太郎)NET「必殺仕事人4」(藤田まこと、三田村邦彦、中条きよし)NET「必殺仕切人」(京マチ子、中条きよし)TBS「スクール・ウォーズ」(山下真司、岡田奈々)TBS「くれない族の反乱」(大原麗子田村正和、神田正輝)TBS「」(山村聡竹下景子)TBS「黒革の手帖」(大谷直子、大森暁美、谷啓)TBS「うちの子にかぎって…」(田村正和、森下愛子)TBS「金曜日の妻たちへII」(高橋恵子、伊武雅刀)




                            




(スポーツ)植村直巳、北米のマッキンリー冬季単独登頂に世界で初めて成功、その後消息を絶った。

(ファッション)イタリアン・カジュアル、デザイナーズ・ブランド
(流行語)ソープランド、普通のおばさん(都はるみ) 私はこれで会社を辞めました(アルマン、禁煙パイポ) イッキ、教官(堀ちえみ)ざんげ、だ埼玉

(社会)(社会)02/23「ロス疑惑」騒動。03/18江崎グリコ社長誘拐事件。07/23大手ミシンメーカー・リッカーが倒産。07/28第23回オリンピック大会がロサンゼルスで開催(〜08/12)10/06有楽町の日劇跡地にマリオンが建設。10/31ガンジー・インド首相暗殺される。11/01新日本銀行券(1万円、5千円、千円)発行。

(物故)植村直己、竹山逸郎、長谷川一夫、霧島昇、有吉佐和子、大川橋蔵、美濃部亮吉

(その他)菊池桃子、映画「パンツの穴」でデビュー。森進一、大原麗子と離婚。吉田拓郎浅田美代子と離婚。夏目雅子、伊集院静と結婚。沢口靖子、映画「刑事物語3・潮騒の詩」でデビュー。長山洋子、「春はSaRaSaRa」で歌手デビュー。佐久間良子平幹二朗と離婚。都はるみ引退宣言。

ドラゴンボール(週刊少年ジャンプ) FRIDAY(講談社)テレホンカード。 六甲のおいしい水。キャベツ人形。世界一の長寿国日本(男72.5歳・女74.9歳)トルコ人青年の訴えから「トルコ風呂」の名称変更「ソープランド」へ。



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                   「長良川艶歌」五木ひろし







ロス疑惑


1981年(昭和56年)11月、ロサンゼルス郊外で三浦和義氏の妻、一美さんが頭部を銃撃された。

その後、1984年(昭和59年)2月23日、三浦氏に1億5千万円の保険金が下りたことなどから

「週刊文春」誌がスクープ記事を発表。

警視庁も動き出し逮捕となったが、2003年最高裁で三浦氏の無罪が確定。


その後、2008年(平成20年)2月、三浦氏は旅行中のサイパンでロス市警に逮捕された。

容疑は、27年前の一美さん殺害事件の共謀罪によるものだという。

8か月後の2008年(平成20年)10月、三浦氏がロス市警の留置場で

Тシャツで首をつっているのが発見された。




たが、なぜ三浦氏が自殺したのか明確な理由は分かっていない。

三浦氏の弁護団が独自に依頼した病理学者が調べた結果、三浦氏の背中に殴られた傷があり

これは自分で首をつった自殺ではなく、他殺であると弁護団は主張している。


他殺であれば、考えられるのは、一美さん殺しの共犯者による口封じのための殺害だ。

だが、その共犯者が、どうやってロス市警の留置場まで侵入できたのかという問題が残る。


いずれにしても、三浦氏が裁判なしに死亡したことにより、真相は闇の中となってしまった。











     



ヤン坊・マー坊天気予報


ヤンマーディーゼル一社提供によるアニメ「ヤン坊・マー坊天気予報」がスタート。


天気予報といえば、アナウンサーが情報を読み上げるだけだったという時代に、

歌とアニメによる天気予報は画期的だった。


「♪ ぼくの名前はヤン坊〜」で始まるイメージソング「ヤン坊・マー坊の歌」は

子供たちにも親しまれ、ヤン坊・マー坊は、日本でもっとも有名な兄弟になった。


番組は、2014年(平成26年)に全国での放送が終了し、55年の歴史に幕を閉じた。















一億総中流


国民生活意識調査(総理府)によると、国民の九割が自分の生活程度を「中流」と考えているという。

当時は、夫がサラリーマン、妻が専業主婦というのが「中流家庭」の典型であった。


サラリーマンの初任給格差は小さく、その後格差がつくものの、ほとんどのサラリーマンの収入が
上昇したので、ほとんどの人が結婚でき、平等意識を持てたのである。


ドラマ「金曜日の妻たちへ」(1983年)は、都会に住む団塊の世代の夫婦を描いたホームドラマ。




登場人物は、年齢が30代から40代前半の既婚男女らであり、生活程度は「中の上」で、東京郊外の新興住宅地に暮らしている。

彼らはしばしば互いの家を夫婦で訪問し合ったり、一緒に近くのレストランに出かける。

だが、一見平和で優雅に見える彼ら夫婦にも、やがて浮気、妻の自立で波風が立ち始める。


舞台になった東急田園都市線沿線の新興住宅街でのおしゃれな暮らしぶりが「金妻タウン」と話題となった。


また、旦那が留守のほうが気楽というCM「亭主、元気で留守がいい」は、1986年の流行語となった。












地の骨


私立大和大学の理事長・有田(佐藤慶)は、学内に東大出身の教授を増やし、

私大出身者を圧迫して、派閥を強大なものにしようと画策していた。


一方、次期教授を有田派の稲木(峰岸徹)と争う少数派の助教授・川西(田村正和)は、

稲木の試験問題紛失事件、さらには数億にのぼる有田の架空名義の隠し預金のからくり

などを暴いて、優位に立とうと図る。





そのため自分も裏口入学あっせんで三千万円を手にし、教授選にばらまいたのだが…。



松本清張原作。私大内部の腐敗構造を、教授の椅子を狙う助教授の野望と挫折を通して描く。


試験問題紛失、理事長の隠し金操作、裏口入学あっせん、教授選に動く金など、大学内の

汚濁の実態を具体的にえぐり出してゆくあたり、松本清張ならではの面白さだ。


主演の田村正和は、これまで静かな男という役どころが多かったが、今回は学内の実力者と

闘う野心的な助教授役で、とうとうとアジ演説も行い、新たな芸域の一端を披露している。

佐藤慶らのベテラン陣も主役を盛り立て、二時間をあきさせない見どころのあるドラマとなった。














黒革の手帖


元子(大谷直子)は、東和銀行の預金係を務めるベテラン行員。

平凡な職場で何となく婚期を逃してしまった元子だが、そんな変りばえのしない

生活から脱出するため、元子はある賭けに出た。


銀行には、医者など多くの資産家が、脱税のために架空名義の預金をしている。

元子は彼らの本名や預金高を黒革の手帳に克明に写し取っていた。





あるとき、彼女はそれらの架空名義口座から一億円の預金を勝手に引き出し、

それで銀座にバーを開店したのである。

まさに順風満帆の船出のように見えたのだが…。



行金横領、バー開店、金品強要 … 架空名義の預金者リストを武器に、

自らの野望を遂げてゆく女の姿を大谷直子主演で描く。


大谷直子は、松本清張ドラマには今回で四作目の出演になる。

1978年にNHKで放映された「天城越え」での演技が絶賛を浴び、これをきっかけに

松本清張氏から目をかけられ、その後も立て続けに清張ドラマに出演。


本作で大谷演じる元子は、上司の信頼を利用して行金横領に成功し、銀座にバーを開店、

平凡なOLからバーのマダムへと華麗な変身ぶりを見せている。














日本画家・木庭秀豊(山村聡)は散歩の途中、池のほとりで澄子(竹下景子)に出会った。


澄子に暗い影を見た秀豊は、彼女を家まで連れて帰った。


秀豊の家で半年ほど暮らすうち、澄子は見違えるほど明るくなった。

以前からいるばあやのハル(杉山とく子)とも、すっかり打ち解けていた。


だが、澄子は過去のことは一切話さなかった。

やがて秀豊は、澄子をモデルに絵筆をとるようになった。





1969年「小説新潮」に掲載された芥川賞作家・芝木好子の短編小説「二人の縁」のドラマ化。

男に裏切られ、自殺を思いつめた女が、池のほとりで老画家と出会い、不思議な縁が生まれる。



秀豊には、嫁いだ娘と別居している息子とがいたが、娘や息子は、秀豊と澄子が世間に

恥ずかしい仲にならないうちにと、澄子を嫁にやろうとしたりした。

だが、澄子は嫌がり、また秀豊も彼女を手放したくはなかった。


秀豊は、澄子を可愛いと思い、澄子も父親のような秀豊を尊敬し、頼もしく思っていた。


澄子を可愛いと思うのは、彼女が若いからではない。

正直で飾らず、老画家への好意を隠さない、その純情が可愛いのである。


彼女の美しさもまた、その気立てによって更に輝き、画家の創作意欲を刺激するのだ。

68歳の老画家と、22歳の娘。年齢は離れていても、心はすぐ近くにあるのだった。












心はいつもラムネ色


文平(新藤栄作)は、大阪の下町、通天閣が見えるたばこ屋の一人息子。

その文平の家に友人の良輔(美木良介)が旅支度を整えてやって来た。


帝大へ合格した二人は、これから列車で東京へ行くのだ。

が、文平の母のぶ(野川由美子)には寝耳に水の話だった。


引き留めようとするのぶに、文平は「キリンを探しに行くんや」と言った。

キリンとは、一生かけて追う夢のことである。




文平と良輔は、東京へ漫才師たちを売り込みに行く興行師・ゆきの(真野あずさ)一行と乗り合わせた。

良輔は目ざとく、美人の彼女に注目する。


転げて来たおにぎりを拾ってあげた文平は、米子なまりの娘・賀津(藤谷美和子)と知り合う。



漫才作家・秋田実をヒントに、笑いを追求した男の生涯を軸に、昭和の時代と笑いの変遷を描く。


昭和三年の春、主人公の文平が友人の良輔と帝大に合格して上京するところから物語は始まる。


主役二人を演じた新藤栄作と美木良介の両新人の演技は、ややぎこちないが、それを補って

余りあるのが、文平の両親役の中村嘉葎雄と野川由美子の味のある演技。


第一回目からしばらくは、ベテラン陣がドラマを引っ張っていく形になっている。


東京に向かう同じ列車に乗り合わせた二人の女性がいた。

一人は、文平たちの下宿先へ奉公する16歳の娘・賀津。


もう一人は、大阪に寄席を持つ美人興行師・ゆきのである。

この二人の女性は、やがて文平や良輔の人生に大きく関わることになる。












スクール・ウォーズ


滝沢賢治(山下真司)は、川浜高校の体育教師でラグビー部の監督をしている。


彼は、かつて全日本ラグビー界で一世を風靡したのだが、ケガのため引退。

その後、校内暴力で荒れる川浜高校の校長に請われ、教師として着任したのだった。


当時の川浜高校は、学生による器物損壊、カツアゲなど校内暴力が深刻化していた。

滝沢は、ラグビーを通じて荒廃した学生たちを更生させようと日夜奮闘を続ける。




そして監督に就任して半年後、高校ラグビー県大会で強豪・相模一高と対戦した。

結果、相模一高にワンサイドで攻められた川浜高校は、109対0で完敗してしまう。

滝沢は悔しさのあまり泣き、部員たちにも悔しくないのかと問いただすのだった。



熱血教師が、数々の苦難を乗り越え、無名のラグビー部を全国優勝に導くまでの軌跡を描く。


相模一高に大敗を喫したことをきっかけに、川浜高校ラグビー部は生まれ変わった。
翌日から、誰に強制されるわけでもなく「打倒相模一高」を目標に猛練習を開始する。


あるとき、部員の一人が倒れたため、滝沢の練習方針が厳しすぎるという批判が高まる。
だが、部員たちは、自分たち自らの意思で猛練習に耐えていることを自覚していた。

やがて、滝沢の母校・東都体育大学との練習試合に挑んだ川浜高校ラグビー部は、
格が違う相手ながら、以前とは見違えるような試合振りを見せた。


青春スポ根ドラマの金字塔ともいわれ、109対0という大敗後の控室で、悔しいと吐露する
部員たちと、彼らを殴る滝沢の歴史的シーンは、ドラマを象徴するものとなった。

部員たちの、それぞれのドラマが感動を呼び、これを見てラグビーを始めた人も多いという。










     



くれない族の反乱


中野和子(大原麗子)は、結婚11年目の専業主婦。

夫は単身赴任、気の合わない姑にわがままな娘、家庭は不満だらけだ。


そんなおり、知人の紹介で、和子はデパートの食品売り場で働き始める。


初出勤の日、和子が乗ろうとしたタクシーに男が飛び乗ってきた。

彼は、なんとデパート食品売り場のチーフ佐伯(田村正和)だった。


これがきっかけで知り合った二人は、やがて互いに惹かれ合っていく。




佐伯は、妻子がいるが、折り合いが悪く、今は別居生活を送っている。

和子は、いけないと思いながらも、心はときめいてしまうのだった。



マンネリ化した日常に不満をもつ専業主婦の揺れ動く心情を描く。


「くれない族」とは「夫がかまってくれない」「子供が言うことをきかない」
といった不満症候群に陥った主婦たちのこと。

30代主婦の別称にもなり、このタイトルは、そのまま流行語になった。


和子の夫は、手取り30万円。東京近郊に建売住宅を買い、月々の返済は10万円。

だが、夫は甲府へ単身赴任となり、二重生活は貯金を食いつぶすばかりだった。


家庭の不満に、経済的ピンチが拍車をかけ、和子はデパ地下のパートを始める。

やがて、仕事を通じて出会った上司から、和子は思いを寄せられるようになる。


こうした身近にありそうな舞台設定が、主婦層の共感を呼び、高視聴率を記録した。


主婦の浮気は働いている人の方が多いという。職場には出会いが多いからだ。

夫婦共働きの時代を迎え、女性も強くなり、離婚も気軽に出来るようになった。

放送日の夜、この番組を見るために、家路を急ぐ男性も少なからずいたという。










     



家政婦は見た!


派遣先の家庭の秘密を覗き見ることが趣味の家政婦・石崎秋子(市原悦子)は、

代議士秘書・仙波昭夫(前田吟)宅で働くことになった。


代議士の氏家壮介(鈴木瑞穂)は、脳卒中を患ってしまい、次の選挙には

秘書である仙波が出馬する予定で、仙波家は多忙をきわめていた。


仙波には献身的に尽くす妻の房子(松原智恵子)と十八歳の娘・弓子、

そして、生後間もない長男の雷太がいる。


好奇心旺盛な秋子が初日から聞き耳を立てているところを、出入りしている

新聞記者の邦枝マキ(長谷直美)に見つかってしまう。


マキは買い物に出かけた秋子を捕まえると強引に喫茶店に誘ってきた。


マキは仙波と房子が長らく夜の関係がご無沙汰であることを持ち出し、

姉の弓子とは、かなり年が離れた長男の雷太が、実は氏家の子供ではないかと

疑っており、秋子に雷太の血液型を調べて欲しいと依頼するのだった。




人情もろく正義感も強いが、よその家庭の秘密を探るのが何よりも好きという

家政婦・石崎秋子を市原悦子が演じる人気シリーズドラマ。


秋子は、家政婦紹介所の一室で猫と暮らす独り身の家政婦。


会社社長、代議士、高級クラブ経営者など、秋子が派遣される上流家庭は、

何かしら問題を抱えており、秋子の「詮索趣味」を刺激する。


一見恵まれた上流家庭の恥部を暴く秋子の活躍に、視聴者は胸のすく思いだ。


また、紹介所に寝泊りしている家政婦たちが、ちゃぶ台を囲んでの食事の際に、

雇い主たちの秘密をサカナに盛り上がるシーンが、毎回の定番となっている。













女の暦


東京下町でおでん屋を営む立川昭子(京塚昌子)は、15年前に夫に先立たれ、既に50歳になる。

今更、惚れたハレたの年でもないし、といって女であることを忘れてしまえる年でもない。


女手ひとつで育ててきた一人息子の昌志(田村亮)は、老舗料亭の板前として奮闘しているし、

仕事のおでん屋の方もまずまず順調。


とりあえず幸せな毎日なのだが、このまま老いてしまうと思ったりすると、心の底にぽっかりと

小さな穴があいたような気持ちになるのは否めない。





そんなある日、息子の昌志が真剣な顔で「おでん屋をたたんでほしい」と切り出した。

理由を聞いてみると、息子は「おふくろに少しでも楽をしてもらいたいのだ」と言う。


昭子の店は、味が評判を呼んで繁盛しているが、息子の意見を聞いて、思い切りよく廃業してしまう。

かといって息子の世話にはなりたくない。また経済的に不自由をしているわけでもない。


なんかこう、一人の女として、心がときめくような新しい人生を見つけたいのだ。

そんなある日、昭子は偶然にも初恋の男・久之助(大村崑)とばったり出会う。



第二の青春を夢見る中年ヒロインを京塚昌子が好演。彼女と彼女をとりまく人間模様を描く。


本作は、中年の女が初恋の男と会って心ときめくが、結局何事も起らないという単純な内容を

女心と男心をうまくからませて面白く見せている。京塚の可愛い女ぶりがいい。


妻子持ちの初恋の男を演じる大村崑も巧いが、浮気が家族にばれて大騒動になってしまう。

一歩間違えば家庭争議にもなりかねない筋だが、登場人物は、いずれも善意の人物ばかりで、

終始笑って見ていられる。


久之助(大村崑)の妻で、割烹の女将に扮した新珠三千代、板前の高橋昌也、割烹の常連で

元・飲食店主の益田喜頓など、個性豊かな脇役陣の存在も際立っている。














思い出トランプ(花の名前)


常子(浅丘ルリ子)と、夫の松男(杉浦直樹)は結婚25年。

見合いの時、常子は松男が花の名前をまるっきり知らない事を知り、縁談を断りかけた。

面白みのない男だと思ったからだ。


しかし、松男から「結婚したら、花の名前を教えて下さい」と頼まれる。

二人は結局、結婚することになった。


その後は、常子が松男に花の名前や生活の細事をあれこれ教え、松男がそれに感嘆する日々。

常子は、妻としての自分に誇りを持つが、そんな日々に終わりが来た。





ある日、ふいに掛かってきた一本の電話をきっかけに、夫のそばに、つわ子(三好美智子)

という若い女がいることが判明。夫婦の平穏な日常は静かに崩れていくのだった。




1980年「小説新潮」に掲載された向田邦子の短編小説「花の名前」のドラマ化。


本作は、結婚して25年になる夫婦の変わりゆく関係が描かれる。

夫の松男は、理系学問一筋の無粋な男で、妻の常子が日常の細々したことを教えると、
そのつど聞き入り、感謝するようなところがあった。


ところが、流産を機に、二人の間に微妙な空気が流れ始める。
常子のほうは、習慣のように夫にあれこれ教えるのだが、松男は話半分にしか聞いていない。


ある日、常子が電話を取ると、夫の愛人からだった。釈然としないまま、遠回しに夫を責める。
その常子に、松男は「それがどうした」と冷たく切り返した。


夫にとって役に立ついい妻だと自惚れていたのは自分だけだったのか、と常子は悟る。
常子は取り残されたような気持ちで、夫を見つめるのだった。



生真面目一方だった夫が、いつのまにか狡猾で強かな男に変貌してしまう。

これを向田邦子は「女の物差しは、25年たっても変わらないが、男の目盛りは大きくなる」
という印象的な言葉で表現している。


妻にいろいろ教わって、男の世界が広がったというのも確かに真実だが、その一方では
「わずらわしいな」とも思っている。


そんなことなしに気楽に話せるところに行きたい、とも思っている。
何でも知っていて亭主を教育する妻と、知っているのに、何も知りませんと言う不倫相手がいる。


男はその間で揺れる。賢く何でも知っていて男を操縦するような女は、どうも窮屈だ。


その一方、知っているのに知らないふりができる女、作者は、そんな女性を一つの理想としていて、

そんな女性には、男はかなわないというのが、本作のテーマとして、描かれているように思われる。











   
   


ミス・マープル (第9話 パディントン発4時50分)


パディントン発の列車の座席でふと目をさましたマギリカディ夫人は

窓から見えた風景に、あっと驚いた。


並んで走る別の列車の中で、いままさに背中を見せた男が

女を締め殺すところだったのだ。


マギリカディ夫人は列車を降りると駅員や警官に事情を話すが、

鉄道からも沿線からも事件らしき情報は何も無い。

だが、好奇心旺盛なミス・マープルだけは別だった。
              





パディントン駅で列車に乗り込んだミス・マープルの友人は、並走する別の列車内での

殺人事件を目撃する。検札にきた車掌に、彼女はそのことを話すが、信じてもらえない。


ミス・マープルだけは興味を示すが、翌日の朝刊には何も掲載されていなかった。

マープルは自ら確かめるべく、同じパディントン発の列車に乗り込む。


死体を投げ捨てたとみられる沿線の周辺に大邸宅があることを発見したマープルは、

その邸宅に知り合いの家政婦ルーシーを送り込むのだった。



本作は、イギリスの片田舎に住む、しろうと探偵のミス・マープルが活躍する物語。


しろうと探偵といっても、人間観察の豊かな経験から、多くの事件を解決に導き、

警察からも一目置かれている存在である。


今回の「死体が発見されない」鉄道ミステリー事件も、家政婦ルーシーに指示を出しながら

事件の謎を解明し、真犯人を見つけ出すことに成功する。


ところで、実際にはパディントン駅を出て、並走する路線は存在しないという。

あくまでミステリー小説の中での架空の設定である。


ちなみに、児童文学に登場する「熊のパディントン君」は、作者がパディントン駅の周辺に

住んでいたことから命名されたという。















ソープランド


「ソープランド」という呼称は、1984年から採用された。

「清潔で明るいイメージがある」というのが選ばれた理由だ。

「トルコとトルコ風呂は何の関係もない。変なイメージを持たれて不愉快」

というトルコ人留学生のクレームから名称変更となったのである。



トルコ風呂の歴史は、1958年(昭和33年)に施行された売春防止法にはじまる。

生き残りをかけた赤線業者が「浴場」として営業届を出し「トルコ風呂」
と銘打って転業したのである。





1969年に「泡おどり」と称する、全身泡まみれになっての密着プレーが発案されると、
評判は、またたく間に全国に広がった。

似たような店が雨後のタケノコのごとく増え、サービスはどんどん過激になり、
「泡おどり」は、一躍トルコ風呂の代名詞となった。


そんなさなかにトルコ人留学生からのクレームがあったのだが、この苦情を受けて
名称変更に尽力したのが、当時NTVのニュースキャスターだった小池百合子である。

彼女は、トルコの名称が軽蔑的な使われ方をしているとテレビで大々的に報道。


これが大きなニュースとなり世間を騒がせたため、トルコ風呂業者たちもやむなく
名称変更に同意し「トルコ」の文字を店の看板から外すことになったのである。