タイムカプセル 戦後編 (3) 昭和22年 (1947年)    タイム・カプセル

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この年、@国民主権、A基本的人権、B平和主義を三大原則とする日本国憲法が施行。
全国各地で祝典が催され、東京では約6年半ぶりに花電車が登場した。

皇居前広場で行われた記念式典には約1万人の群衆がつめかけ、吉田茂首相が「徹底した平和主義と
民主主義において世界に比類なき憲法である」という祝辞を読み上げた。(5.3)

(映画)第20回アカデミー賞 「紳士協定」(主演 グレゴリー・ペック
「殺人狂時代」(チャップリン)「ガス燈」(イングリッド・バーグマン)「荒野の決闘」(ヘンリー・フォンダ

東宝「今ひとたびの」(高峰三枝子)東宝「女優」(山田五十鈴)東宝「四つの恋の物語」(池部良、久我美子、志村喬、杉村春子)東宝「戦争と平和」(池部良、伊豆肇、岸旗江)東宝「銀嶺の果て」(志村喬三船敏郎、若山セツ子)松竹「安城家の舞踏会」(原節子、滝沢修、森雅之津島恵子)松竹「女優須磨子の恋」(田中絹代山村聡東野英治郎)大映「十三の眼」(片岡千恵蔵、喜多川千鶴、奈良光枝)新東宝「幸福への招待」(大河内伝次郎高峰秀子、花井蘭子)

(音楽)「東京ブギウギ」笠置シズ子「啼くな小鳩よ」岡晴夫「夜霧のブルース」ディック・ミネ「港が見える丘」平野愛子「とんがり帽子」川田正子 「
C'est Si Bon」Henri Betti
(ラジオ)NHK「のど自慢素人演芸会」(高橋圭三)/NHK「二十の扉」(藤倉修一)1947年(昭和22年)11月〜1960年(昭和35年)4月/NHK「鐘の鳴る丘」(小山源喜)1947年(昭和22年)7月〜1950年(昭和25年)12月/NHK「向う三軒両隣」(厳金四郎)1947年(昭和22年)〜1953年(昭和28年)



                 




(スポーツ)全日本選手権大会で、古橋広之進(日大)が、400m自由型競泳で世界新記録を樹立(8.9)

(流行語)「不逞の輩」「青空教室」「額縁ショー」「ご名答」(二十の扉)「こんな女に誰がした」「裏口営業」「土曜夫人」「斜陽族」

(社会)吉田首相が年頭の辞で労働運動指導者を「不逞の輩」と非難、問題化(1.1)八高線の高麗川駅付近で満員の買い出し列車が転覆。死者 174人、負傷者約800人(2.25)6・3制の義務教育始まる(4.1)日本国憲法施行(5.3)社会党委員長片山哲内閣成立(6.1)キャスリン台風により関東・東北で大水害(9.14)東京地裁の判事がヤミを拒否し配給食糧だけで生活し餓死(10.11)

(物価)ラーメン20円、カレーライス50円、映画館40円、週間朝日12円



(その他)久我美子、東宝「四つの恋の物語」でデビュー。津島恵子、松竹「安城家の舞踏会」でデビュー。関千恵子、大映「看護婦の日記」でデビュー。

新宿の帝都座でストリップの元祖「額縁ショー」始まる(1.15)有楽町にアメリカ映画ロードシヨー専門館「スバル座」が開館(3.25)ロッテがガムの製造開始。甘味料としてサッカリンを使用。甘味に飢えていたせいで飛ぶような売れ行き(4.1)結婚誌「希望」が多摩川畔で「集団見合い」開催。戦争で結婚チャンスを逃した男女が群がる。(11.10)森永製菓がGHQ放出のココアを原料に「ココアキャラメル」を生産(12.1)アメリカから脱脂粉乳の提供で学校給食開始。手塚治虫(19)「新宝島」(育英出版)ベストセラーに。「漫画少年」(学童社)創刊。「ひまわり」創刊。一等100万円宝くじ発売。



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           C'est Si Bon(Laura Fygi)         






傷痍軍人 (しょういぐんじん)


戦地で負傷して働けなくなった復員兵は、傷痍軍人と呼ばれた。

彼らは街角に立ち、ギター、ハーモニカ、アコーディオンなどを演奏し
通行人から金銭を貰って生活していた。


彼らの姿は、浅草などの仏閣、初詣などで賑わう神社でよく見かけられた。

軍帽に木綿の白衣(陸海軍の病院服)を着た元兵士たちが、アコーディオンを
奏でながら軍歌や「岸壁の母」などを演奏する。

彼らは片足がなく、松葉杖をつき、目が悪いため、黒いメガネをつける者もいた。
多くの人がその光景を見て、金銭を置いていった。


たがこれが儲かると知った軍人以外の失業者たちも、どっと参入した。

木綿の白衣さえあれば、生活費を稼げると思い、一時は新橋や新宿のガード下
などに傷痍軍人があふれかえるという光景も見られた。












                                   鐘の鳴る丘





NHKラジオで連続放送劇「鐘の鳴る丘」(原作:菊田一夫)が放送開始。


戦争孤児(浮浪児)を扱ったドラマで当時は青少年不良防止のための企画だった。

1949年(昭和24年)には松竹で映画化もされた。

主題歌「とんがり帽子」(作詞:菊田一夫、作曲:古関裕而)も大流行した。



(制作)NHKラジオ、1947年(昭和22年)7月5日から1950年(昭和25年)12月29日まで












                                      二十の扉





アメリカの人気クイズ番組「トウェンティ・クエスチョンズ」の日本版。


出題は聴取者から募集した。「それは動物ですか、植物ですか、鉱物ですか」と

日本中で大変なクイズ人気を集めた。

司会者が使うフレーズ「ご名答」は流行語となった。



(制作)NHKラジオ、1947年(昭和22年)11月1日から1960年(昭和35年)4月2日まで毎週土曜日の19時30分から30分間

















華族制度


華族は、明治政府発足時、天皇の側近として仕えていた家柄の役人を指す。

1869年(明治2年)華族の身分を与えられたのは約400家(2800人)であった。


華族は宮内庁職員や貴族院議員として国政に参画し、国庫から公費が支給されていた。


1883年(明治16年)華族と在日外国人の社交場として、日比谷に「鹿鳴館」が落成。

鹿鳴館は、煉瓦造りの洋風建築物で、国内外の上流階級の舞踏会などが開かれた。


1947年(昭和22年)法の下の平等(14条1項)を定めた日本国憲法の施行により、
華族制度は廃止されてしまった。





映画「安城家の舞踏会」は、名門華族であった安城家最後の舞踏会の様子が描かれる。


戦後の崩れゆく華族制度の中、最後に残った屋敷も借金のかたに手放すことになり、
安城家の当主は、華族階級との決別の意を込め、最後の舞踏会を開催する。


映画は、華族を象徴する舞踏会を背景に、舞踏会に集まる人々の人生の悲哀が綴られる。












     



夜霧のブルース


1947年 (昭和22年)2月に発表されたディック・ミネの曲。(作詞:島田磬也、作曲:大久保徳二郎)

「青い夜霧に 灯影(ほかげ)が紅い」で始まるこの曲は、彼の独特な歌唱で哀感をうまく表現している。


この曲は、戦時中の敵性音楽追放などといった日本政府の政策により、芸能活動の場を失っていた

ディック・ミネ自身にとっても復活を果たした曲でもあり、彼の代表曲ともなった。


歌詞の四馬路 (スマロ) とは、四番街という意味で、戦前の上海にあった歓楽街だが、

現在は福州路という名前に変っている。


また虹口 (ホンキュ) は、蘇州河という川を挟んで、その対岸にあった日本人街だった。


歌詞の 「青い夜霧に」 は、黄浦江の河口に租界 (上海バンド) があり、霧のロンドンのように

霧が出やすく、そこに歓楽街の紅い灯、青い灯が映って冒頭の表現となっている。




















今ひとたびの  (東宝映画)


診療所に働く医師の野上(龍崎一郎)は、ある日、友人の招きで出かけた劇場で
暁子(高峰三枝子)と知り合い、やがて二人は、互いに恋い慕うようになる。

だがある時、野上は、左翼の危険分子として逮捕されてしまう。


刑期を終えて出所した野上は、暁子が親の決めた相手と結婚していることを知り、
自らは僻地の診療所に身をひく。


暁子の夫が事故死したあと、野上は暁子との再会を果たすが、しかしその喜びも
束の間、野上は召集令状を受けて戦場へ。





1946年(昭和21年)月刊誌「婦人朝日」に連載された高見順の同名小説の映画化。


愛し合う二人を相隔てて幾年月、戦争は遂に終戦を迎えた。焦土と化した東京の街にも
柔らかい平和の陽射しが、さんさんと降りそそいでいた。

復員した野上は、旅装も解かずに「日曜日の午後四時、きっとお待ちしてますわ」
暁子の四年前の別れの言葉を胸に抱いて、約束の場所に駈けつけるのだった。


本作は、戦時中の左翼弾圧や軍隊召集によって阻まれた若い医師と令嬢の恋が、
平和になった四年後に実を結ぶという、高見順原作の叙情豊かな作品。

高峰三枝子は、労働運動家で医師の青年が、一生をかけて恋こがれる令嬢に相応しく
しっとりと落ち着いた美しさを見せている。


ヒロイン暁子が、再会を約した場所である東京・お茶の水のニコライ堂は、その後、
若者たちのデート待ち合わせの名所となった。















      ガス燈(GASLIGHT)1944年(米)

ロンドンで女性歌手が殺害され、姪のポーラ(バーグマン)が莫大な遺産を受け継ぐ。
ポーラは、音楽家のグレゴリー(ボワイエ)と結婚。夫との幸せな日々を送ることに。

だがやがて不審な出来事が相次いで起こる。高価なネックレスの紛失、不意に暗くなる邸内のガス燈、
天井裏から聞こえる異常な物音。恐怖に慄くポーラに、夫は気のせいだと言ってとりあわない。

財産目当ての夫は、真綿で首を絞めるように妻を追い詰めていく。強迫観念に苛まれ、やつれていく
ポーラ役のバーグマンは、それでもうっとりするくらいに美しい。

(監督)ジョージ・キューカー(GEORGE CUKOR)
(出演)イングリッド・バーグマン(INGRID BERGMAN)
シャルル・ボワイエ(CHARLES BOYER)ジョゼフ・コットン(JOSEPH COTTEN)