11月 13 日  タイムカプセル (40) 平成6年 (1994年)   タイム・カプセル

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この年、長野県松本市の住宅街で、有毒ガスのサリンが発生し、7人の死者と58人の重軽傷者が出た。
後、オウム真理教の犯行であることが明らかになった。

(映画)第67回アカデミー賞「フォレスト・ガンプ/一期一会」
フィスト・オブ・レジェンド

東映「藏」(浅野ゆう子、一色紗英)東宝「家なき子」(安達祐実、堂本光一)

(音楽)第36回レコード大賞「イノセントワールド」(Mr. CHILDREN)

「空と君の間に」「」(中島みゆき)「DOWN TOWN」(EPO)「シングルベッド」(シャ乱Q)「Boy Meets Girl」(TRF)「TRUE LOVE」(藤井フミヤ)「ロマンスの神様」(広瀬香美)「恋しさとせつなさと心強さと」(篠原涼子)「春よ、来い」「 Hello, my friend」(松任谷由実)「渡良瀬橋」(森高千里

(テレビ)ためしてガッテン(NHK)料理の鉄人(フジ)開運!なんでも鑑定団(テレ東 石坂浩二島田紳助家なき子(日テレ 安達祐実、保坂尚輝)新・女検事 霞夕子(日テレ 鷲尾いさ子、平田満)取調室(日テレ いかりや長介、西川忠志)妹よ(フジ 和久井映見、唐沢寿明)人間・失格〜たとえばぼくが死んだら〜(TBS 赤井英和、桜井幸子)長男の嫁(フジ 浅野ゆう子、石田純一)29歳のクリスマス(フジ 山口智子、柳葉敏郎、松下由樹)

結婚したい男(TBS 寺脇康文、藤田朋子)スウィート・ホーム(TBS 布施博、山口智子)女の言い分(TBS 八千草薫石坂浩二、長山藍子、山岡久乃、小川範子)再会(TBS 賀来千香子、別所哲也)お金がない!(フジ 織田裕二、財前直見)この世の果て(TBS 鈴木保奈美 、三上博史)プロポーズ記念日(TBS 斉藤慶子、渡辺いっけい)君といた夏(フジ 筒井道隆、いしだ壱成)グッドモーニング(フジ 浅野温子、中井貴一)警部補・古畑任三郎(フジ 田村正和、西村雅彦)法医学教室の事件ファイル(テレ朝 名取裕子、宅麻伸)新・赤かぶ検事奮戦記(テレ朝 橋爪功、藤田弓子)



                            




(スポーツ)イチロー1,200本安打達成。貴乃花が65人目の横綱に。

(流行語)「イチロー効果」 「ヤンママ」 「就職氷河期」「同情するなら金をくれ」

(社会)5/9ネルソン・マンデラ、南アフリカ大統領に就任。6/27松本サリン事件。6/30村山富市連立政権発足。7/8朝鮮民主主義共和国・金日成死去。9/4関西国際空港開港。10/13大江健三郎、ノーベル文学賞受賞。

(物故)東野英治郎(86歳)鳳啓助(71歳)

(物価)封書80円、はがき50円、タバコ(マイルドセブン)220円

(その他)神田うの、「オールナイトフジ」で司会デビュー。香坂みゆき、清水圭と結婚。中山エミリ、ドラマ「おれはO型・牡羊座」でデビュー。

「ジュリアナ東京」閉店。ネットスケープ・コミュニケーションズ。プレイステーション[ソニー] ファイナルファンタジーV(基礎知識編他全4冊) ガン再発す(逸見政孝) 携帯電話 カーナビゲーション「超」整理法。るろうに剣心(少年ジャンプ)名探偵コナン(少年サンデー)



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                          糸 (中島みゆき)









家なき子


小学6年の相沢すず(安達祐実)は、金に対し異常な執着を見せていた。

その貧しい家庭環境のせいか、嘘泣きを武器に、教室内でも校外でも金を盗みまくる。

すずが盗みに手を染めたのは、心臓に持病を持つ母親の治療費を捻出するためだった。


担任の片島智之(保坂尚輝)は、なんとかすずを立ち直らせようと一生懸命だ。

そんなある日、すずの母・陽子(田中好子)が酒乱の夫に殴られて緊急入院する。

すずは自宅に放火し、その罪を母親を殴った父・悟志(内藤剛志)になすりつけた。




安達祐実主演で社会現象を巻き起こした90年代を代表する大ヒットドラマ。

「同情するならカネをくれ!」と叫ぶ主人公・すずのセリフは流行語になった。


主人公に過酷な運命を課し、その後に幸福を与えるのは、これまでの大衆ドラマの常道だった。

このドラマも当初、視聴者の目には、そうした結末が用意されているように見えた。

しかし、そこには不幸の後の幸福という物語の展開は存在していなかった。

その衝撃的な結末は、まさに未来の見えない90年代を象徴するかのようであった。













警部補・古畑任三郎


古畑任三郎(田村正和)は、警視庁捜査一課のベテラン刑事である。


ある晩、古畑は、長野から東京へ向かう途中、車がガス欠で立ち往生してしまう。

近くに古い洋館があることに気づいた古畑は、電話を借りるために洋館を訪れた。


彼を招き入れたのは、コミック作家の小石川ちなみ(中森明菜)だった。

彼女は古畑に、洋館の地下金庫で、男が窒息死していることを伝える。

警察に通報したが、大雨による土砂崩れで、すぐに来られないという。




金庫室内に入った古畑は、一人の男が酸欠で倒れている事を確認する。

被害者は、雑誌編集者の畑野という男で、彼女が死体の第一発見者だった。


現場検証をした古畑は、被害者の頭部に打撲痕を見つけ、殺人事件だと断定する。

男は、コミック漫画の原稿用紙とペンを握りしめた状態で死亡していたが、
犯人に繋がるメッセージらしきものは記されていなかった。



警部補の古畑が、その独自の推理で事件を解決するライト感覚の連続ミステリー。


通常、推理ドラマは、犯罪の背後の複雑な人間関係や心理に焦点を当てる。

だが、このドラマは、あらかじめ犯行場面が描写されるため、視聴者は、犯人が
分かっており、古畑がいかに犯人のトリックを見破るかが見どころとなっている。


古畑と犯人とのやり取りを軸に、室内劇が展開される一方、視聴者もゲーム感覚で
謎解きに参加して楽しむことができる。


本作のもう一つの魅力は、毎回登場する犯人役に扮する大物ゲストの顔ぶれである。

人気コミック作家の小石川ちなみ(中森明菜)、歌舞伎役者の中村右近(堺正章)、
敏腕弁護士の小清水(明石家さんま)など、豪華ゲストが多数登場している。


なお、第1話の劇中で、中森明菜演じる犯人が「あんな男のためにどうして私の人生、
棒に振らなくちゃいけないの」という、意味深なセリフも話題になった。












     



再会


望月礼子(賀来千香子)は、化粧品会社に勤める29歳のキャリアウーマン。

美人で明るい性格だが、恋愛に関しては、いつも恋を実らせることができない。

中学生の時のボーイフレンドのことが、心のどこかで引っかかっているのだ。


そんなある日、礼子の前に、北海道支社から転勤してきた白川(別所哲也)が現れる。

初対面のはずなのに、彼は礼子のことをよく知っており、礼子を食事に誘った。

不安な気持ちで交際を始めた礼子だが、次第に誠実な白川に惹かれていくのだった。



東京を舞台に、不思議なめぐり逢いで出会った男女の恋物語をメルヘンチックに描いた佳篇。


賀来千香子は、1992年「ずっとあなたが好きだった」で、マザコン男と見合い結婚して
苦悩する若妻を演じ、社会現象になるほどの高視聴率をマーク。


翌年には、その続篇「誰にも言えない」に出演し、同じく一途に耐え忍ぶヒロインを
演じたが、今回は一転して、爽やかでユーモアのある礼子役をのびのびと演じている。


また本作では、恋愛にツキのない女性を演じた彼女だが、この年の1月に俳優の宅麻伸と
めでたくゴールインした。














お金がない!


萩原健太郎(織田裕二)は、幼い二人の弟を養いながら、小さな町工場で働いている。

借金を抱え、貧乏だったが、弟やあたたかい友人達に囲まれ、楽しく暮らしていた。


ところが、待ちに待った給料日に突然工場が倒産してしまい、途方に暮れる。

幸いに、幼馴染み・美智子(財前直見)の口利きで、ビル管理会社に再就職する。


ビルの清掃員として働く健太郎は、ある日偶然、大手保険会社の重要書類を拾う。




これがきっかけで、保険営業マン・大沢一郎(東幹久)と出会い、意気投合する。

健太郎は、営業成績の悪い大沢に協力して、ある大口の保険契約を成立させた。

それが運よく社長の目にとまり、健太郎は晴れて保険会社の社員として採用される。



お金がない!仕事がない!運もない!希望もない! そんな男に訪れた人生の転機!

借金と幼い弟二人を抱えた究極の貧困男が繰り広げる、不景気をブッとばすサクセスストーリー。



貧乏青年・健太郎は、ひょんなことから一流の生命保険会社に就職する。

バブルがハジけ、世は年功序列から実力主義の時代。

健太郎が入社した会社は完全実力主義、結果を出さなければ生き残れない。


持ち前の明るさとバイタリティーを武器に、次々と問題に立ち向かい、成功を掴み取っていく。

やがてエリートサラリーマンとなった健太郎。
以前の面影はなく、運転手付きでスーツもビシっと着こなしてクールな男になっていた。


だが、全てを手に入れ、満ち足りた生活だが、今までと違い家族の絆が希薄になってしまった。

幸せなはずなのに、どうも幸せじゃない。
出世と引き換えに大事な何かを忘れてしまったのだろうか。


結局、健太郎は、今の会社を退職し、プレハブ小屋からたった一人の会社を立ち上げる。

狭いおんぼろアパートで魚を焼く健太郎の弟達。笑顔で朝食を食べる健太郎と弟達。

翌朝、おんぼろプレハブの事務所から、自転車で営業に出る健太郎の姿があった。


金があっても無くても、人生で本当に大切なものは何か。本作は、それに気づかせてくれる作品である。









     



プロポーズ記念日


美代子(斉藤慶子)と哲夫(渡辺いっけい)は、子供のいない共働き夫婦だ。

ある晩帰宅した哲夫は、台所の食器だなの引出しから真っ白の離婚届を見つける。


その直後、酒に酔った妻の美代子が、会社のハンサムな部下に送られて帰ってきた。

この離婚届はどういう意味だ、などと問いただすこともできず悶々とする哲夫。


結婚記念日に二人の思い出の店でデートをすれば、と妹夫婦が哲夫に勧める。

早速美代子を誘い出すが、忘れっぽい哲夫は「思い出の店」の場所を勘違いし、

彼女を大幅に待たせてしまうのだった。



妻にいつ離婚を切り出されるか、不安な日々を過ごす小心者の夫の悲哀を描く。


結婚して七年目、子供のいない共働き夫婦を主人公に、妻が隠していた離婚届の用紙を
見つけてしまった夫の戸惑いと混乱を、渡辺いっけいがコミカルに演じている。


渡辺いっけいは、こうした情けない、腑抜けな中年男を演じさせるとサマになる役者だ。
だが彼は、二枚目から三枚目、善人から悪役まで幅広くこなせる絶品の俳優でもある。


1992年、NHK朝ドラ「ひらり」では、ヒロインのひらり(石田ひかり)が、ほのかな恋心
を寄せる医師・安藤竜太を演じて、お茶の間の好評を博している。
















この世の果て


砂田まりあ(鈴木保奈美)は、昼は郵便局で働き、夜はクラブのホステスをしている。

それは、目の不自由な妹・なな(桜井幸子)の手術費用を稼ぐためだった。


まりあはある日、目の前でひき逃げに遭い負傷した男・高村士郎(三上博史)を助ける。

士郎は世界的に有名なピアニストだった。


だが彼は、自分を「ピアノを弾く機械」のようだと感じ、現状に不満を持っていた。

そして記憶喪失になったふりをしてまりあと暮らし始める。




やがて、士郎の家族が居場所を突き止め、迎えに来る。

だが、まりあと離れたくない彼は、自分の手を傷つけ、自らピアニスト生命を断ってしまう。



天才ピアニストの士郎は、連れ戻しに来た妻の前で、自ら片手を切り裂きピアニスト生命を断つ。

だが、ピアノを弾くしか能のない男にロクな仕事はなく、自分に苛立ち、荒んでいく日々が続く。

やがて彼は、覚醒剤中毒となり、しまいにはヤクザに追われる身になってしまう。


一方、ヒロイン・まりあは、視力を失った妹・ななの手術代を捻出するために働いている。

失明したのは、自分を愛してくれない父を殺害するために、まりあが起こした火事が原因だった。



本作は「贖罪」をテーマとした作品である。

冷淡で投げやり、ときにひどく激情的になるまりあだが、妹にだけはやさしい表情を見せる。


まりあは、幼い頃自ら背負った罪の意識から、過剰なまでの献身ぶりを発揮してしまうのだ。

士郎に対しても、明るく気丈で献身的に振る舞うのは、罪悪感の清算の想いが含まれている。


こうした過去のトラウマが、その後の人生に影響するという設定は、登場人物の大半に及んでいる。

ドラマには、二度も夫を失い、虚無的な毎日を送り続ける母親、妾の子という生い立ちゆえに、
女を憎み続ける実業家、幼い頃レイプされ、破滅的な人生を生きるホステス、などが登場する。


そして、まりあは、そんな人々の心の傷を抱きしめる、まさに聖母のような存在として描かれる。


こうした、まりあの一途な献身や自己犠牲の行動は、観る者の心を打つのだが、後悔と贖罪のみに
費やされる彼女の人生の果てに、幸せが訪れることはなかったのである。












新・女検事 霞夕子


霞夕子(鷲尾いさ子)は、横浜地検に勤務する駆け出しの検事。


母親(朝丘雪路)と寺の住職の夫(村田雄浩)と三人で暮らしている。

仕事はバリバリこなす夕子だが、家事は苦手のダメ主婦である。


そんなある日、田園調布の路上で殺人事件が発生。

路上に止めてあった車の中で、大手デパートの重役夫人が絞殺されていた。





助手席からは、犯人の手がかりとなる一本の金髪が見つかった。

捜査線上に、被害者と交流のあった某国の大使館員の存在が浮かび上がる。

だが数日後、その大使館員は、外交官の特権を盾に出国してしまう。




1989年「文芸春秋」に連載された夏樹静子の短編小説「ペルソナ・ノン・グラータ」のドラマ化。

ペルソナ・ノン・グラータ(persona non grata)とは、外交用語で、好ましくない人物の意。


国際法上、外国の大使や領事など、外交官が自国にとって好ましくない人物と判断した場合、
理由を示さず、単にペルソナ・ノン・グラータであるとして、国外退去を求めることができる。


これは、外交官が犯罪を犯しても、治外法権などの外交特権により、自国では逮捕できないため、
対抗措置として、外交官の国外追放が認められているのである。


本作は、この外交特権を巧みに利用した犯罪を題材としたものだが、あらかじめ犯行場面が
描写されるため、視聴者は犯人が分かった状態で物語が進行する。


その上で、主人公の霞夕子が、犯人のトリックを解き明かしていく過程や、犯罪の背後に潜む
複雑な人間ドラマの描写が見どころとなっている。


本作は、鷲尾いさ子が情感のこもった演技で、霞夕子役を好演。

おっとりとした外見からは想像できない鋭い観察眼、推理力に長けた敏腕検事である。


ところが家に帰ると、肩の力が抜けてダメ主婦に早変わり。そんな落差が人気の要因となり、
1994年から2003年まで9年間、全20作ものロングラン・シリーズとなった。










     



結婚したい男


一流商社に勤める神林弘一(寺脇康文)は、同僚のほとんどが既婚者となり、焦りを感じ始めていた。

ある日、独身の同僚が同じ会社の香(藤田朋子)と婚約したと言い出す。香は弘一の恋人だった。


慌てて香に問いただす弘一だったが、はじめから結婚相手とは思っていなかったと言われてしまう。

腹を立てた弘一は、香の結婚式までに理想の相手を見つけようと決意するのだった。



商社マンの弘一は、恋人の香に「恋人には最高だが結婚向きじゃない」と見放されてしまう。

イケメンで恋愛対象にはなるが、貯金ゼロなので結婚相手としては考えられないということだ。


それに比べて、彼女が婚約した相手の男は、なんと一千万円以上の財形貯蓄をしているという。

最近の独身OLは「結婚は金」の問題であり、男の経済力を結婚の必須条件としているのだ。


ヒロインの香を藤田朋子、その香にフラれてしまい、それならば結婚相談所で相手を見つけようと
躍起になる主人公の弘一を寺脇康文が好演している。


寺脇康文は、もと舞台俳優だが、演技力を買われ1991年、ドラマ「ヴァンサンカン・結婚」に出演。
ヒロイン菊池桃子の恋人役を演じ、一気にその名が知られることになった。
















取調室


佐賀のホテルで大学生の撲殺体が発見された。


状況証拠から、息子を残し宿を出た大学教授の父・小田垣(田村高広)に容疑が向けられる。

数日後、小田垣は仙台で逮捕された。


取調官は「落としの達人」の異名を持つ水木正一郎警部補(いかりや長介)だった。


だが小田垣は、完璧なアリバイを盾に、よどみなく証言を繰り返すばかり。




長期戦を覚悟した水木だが、拘留期限が刻一刻と迫る。



1993年「小説宝石」に連載された笹沢左保の同名小説のドラマ化。


いかりや長介演じる主人公の水木正一郎は、定年間際のベテラン刑事。

熊本の私立大学卒業後、佐賀県警に奉職。一貫して捜査畑で働いてきた叩き上げだ。


取調室という密室の中で、この老刑事・水木が被疑者を追い込んでいく。

老刑事は、机を強く叩いたり、無理やり自白に追い込むことはない。


取調室での会話は世間話のごとく穏やかであり、まさに肚の探り合いである。

その緊張感に満ちた会話の駆け引きが、本作の最大の見どころとなっている。


そんな密室の会話劇が人気の要因となり、本作は1994年から2003年まで9年間、
全19作ものロングラン・シリーズとなった。


なお、原作者の笹沢左保は、いかりや長介の迫真の演技に感動し、途中からは
原作もいかりやをイメージして書くようになったという。


また、1998年「取調室9」では、笹沢左保が本人役としてドラマに登場。

念願だったいかりや長介との共演を果たしている。











法医学教室の事件ファイル


港南医大・准教授の二宮早紀(名取裕子)は、神奈川県警から監察医を委託されている。

夫の一馬(宅麻伸)は横浜東署の刑事で、二人の間には小学生の一人息子がいる。


ある日、神奈川県警から横浜埠頭で水死体が見つかったと連絡があった。

早紀と一馬が現場へ行くと、水死体は、地元の国会議員の娘・涼子(可愛かずみ)だった。


議員秘書の田代(寺泉憲)の話では、離婚を苦にした自殺ではないかという。

死体を解剖した早紀は、死因は溺死で、死後五日と判定する。




だが、四日前に殺害された涼子の元夫の別荘で、涼子を見たという目撃者が現れる。

なんと死んでいたはずの涼子に殺害容疑が…。



二宮早紀は、死因がはっきりしない遺体の検死・解剖を行う法医学専門の医師である。

法医学の知識、そして、女性ならではの視点と情熱で、毎回難事件の真相解明に挑む。


彼女の夫・一馬は、横浜東署の刑事。正義感の強い熱血刑事で、猪突猛進するタイプだ。

時には、上層部と衝突するし、最愛の妻・早紀とも事件の事でやり合う場面も多々ある。


一馬は、早紀が事件にあまり首を突っ込む事を良く思わないので、よく説教をしたりする。

だが結局、早紀の推理により、事件が解決するのが、お決まりのパターンとなっている。


そんな愛すべきスレ違い夫婦の涙あり、笑いありの生活をコミカルに描いたホームドラマ
としても楽しめるのが本シリーズのもう一つの魅力である。


この「法医学者の妻と刑事の夫」という設定が人気の要因となり、1994年から2020年まで
26年間、全47作もの超ロングラン・シリーズとなった。











新・赤かぶ検事奮戦記


柊茂(橋爪功)は、岐阜地検・高山支部に勤務する検事である。

検事は検事でも、事務官の経験を積み、検事に昇格した叩き上げだ。


あるとき、久しぶりに休暇を取った柊は、妻の春子と一緒に大牧温泉へ向かう。

秘湯でゆっくりくつろいでいた柊に、祭りで賑わう高山から緊急電話が入った。


飛騨高山の小糸坂近くの旅館の中庭から白骨死体が発見されたという。

到着したばかりで妻・春子の機嫌も悪いが、柊は現場に向かう。




鑑識の結果、白骨死体は死後20年以上経過しているとみられた。

つまり、殺人であっても15年の時効はすでに成立してしまっている。

だが柊検事は、死後15年以内である可能性に着目し、捜査を開始する。



1976年「角川文庫」から出版された和久峻三の法廷推理小説「赤かぶ検事奮戦記」のドラマ化。


主人公の柊は、飛騨の赤かぶ漬けが大好きで、あるとき法廷にまで持ち込んでしまったことから、
赤かぶ検事というあだ名をつけられてしまった。


また、彼と妻の春子(藤田弓子)は、名古屋出身で「おみゃ―さん」「にゃーずらよ」など
味のあるコテコテの方言を話す。

そんな名古屋弁まるだしの庶民派検事が、苦節何十年の経験と知識を駆使して事件を解決していく
さまが、毎回一話完結でテンポよく展開され、納得がいく面白さとなっている。


またシリーズ中盤で、司法修習生から弁護士に昇格した柊の娘・葉子との法廷親子対決も
本作の見どころの一つとなっている。














女の言い分


太郎(石坂浩二)と愛(八千草薫)は、結婚して25年。

ようやく東京にマイホームを持ったが、太郎に札幌転勤の話が。


同じ頃、太郎の弟の次郎(角野卓造)も札幌に転勤に。

次郎の妻で保険会社勤務の夢(長山藍子)は「単身赴任したら」とそっけない。

太郎に、気がきかないなどと言われ続けてきた専業主婦の愛とは大違いだ。





だが引っ越しの作業も何もかも押し付けられた愛は、太郎のあまりの身勝手さに

「離婚します」と東京に残る。こうして二組の別居生活が始まったのである。



結婚して25 年、ワンマン亭主にひたすら仕え、耐え続けてきた妻の反乱を描く。


大喧嘩をして後から仲良くなるというのは、ドラマではよくあるパターン。
喧嘩をすることで「女の言い分」「男の言い分」を包み隠さず伝えられるからだ。


口に出して言わなきゃ分からないことは、意外と多いものである。
我慢せずにお互いの考えを言い合える関係が、長続きするコツなのかも知れない。


八千草薫といえば、清楚で優しく美しい、まさに日本女性の鑑のような女優だ。

そんな彼女が、近所に聞こえる大声で夫をののしり、三行半を叩きつけるというのも、
ドラマの面白みを倍増させている。















開運!なんでも鑑定団


古美術から玩具、がらくたの類まで、視聴者から寄せられた秘蔵の品を、
それぞれの専門家が鑑定し、値段をつける視聴者参加バラエティ。


依頼人が持参するお宝とその値打ちへの興味、依頼人の喜びや落胆への
情緒的関心、鑑定人のうんちく、などなど。

司会の島田紳助の庶民性と石坂浩二の軽い教養性が、そうした多様な
楽しみを刺激して、人気番組となった。

鑑定される物、鑑定する人、そして司会者陣が一様にかもし出す、
ある種の胡散臭さも魅力のひとつだった。













真実の仏陀の教えはこうだ!


麻原彰晃氏は、1987年(昭和62年)「オウム真理教」を立ち上げた。

その前年1986年には、大川隆法氏が「幸福の科学」を設立している。

ほぼ同時期に設立されたこの二つの宗教団体は、互いに商売敵となった。



1991年10月に出版された本作は、大川氏の「幸福の科学」の教えに対して、
一つ一つ反論と批判を加えたものである。


1990年、大川氏が自分は「仏陀の再誕」であると宣言した件について。
(1990年10月、大川隆法氏の幕張メッセでの講演会)




麻原氏は、大川氏が仏陀(悟りを得た人)を名乗ることについては
何ら問題はないとしている。

だが、2500年前の釈迦の生まれ変わりと称することについては、
疑問を呈している。(永遠の仏陀 幸福の科学出版 1991年7月)



麻原氏によれば、釈迦は2500年もの間、一度も生まれ変わらなかったのに、
なぜ今、仏陀として生まれ変わるのか。

つまり輪廻転生は、本来連続するものであり、そのあいだの2500年間は
一体どこで何をしていたのか、ということらしい。(第2章−3 前世の記憶がない仏陀)



ちなみに麻原氏は、自分は「キリストの再誕」であると宣言している。
(キリスト宣言 オウム出版 1991年12月)

するとキリストは2000年前の歴史的人物だから、麻原氏自身の説によれば、
そのあいだの2000年間は一体どこで何をしていたのか、ということになる。












視聴率


12年にわたり年間視聴率の「三冠王(全日、ゴールデン、プライム)」を続けていた
フジテレビを抜いて、日本テレビが、1994年、年間視聴率の「三冠王」を獲得した。

視聴率は、年間1.8兆円(2021年)に上るテレビ広告費を左右する指標となっている。


ところで、視聴率調査と言えば、それなりに客観的なデータなのかと思ってしまうが、
調査を行っているのは「ビデオリサーチ」という会社一社だけである。





このビデオリサーチという会社は、電通が34%を出資しており、社長は電通からの天下り。
取締役には、各民放の社長がズラリ、という業界の身内だけで固めた会社だ。



だが、2000年までは「ニールセン」という企業も視聴率の調査を行っていた。

長らく並存していた2社だったが、1997年から、個人視聴率の調査に取り組んだ。

それまでは、テレビをつけたままにしていれば、人が見ていなくても視聴率が計測されてしまっていた。

そこで、ニールセンは「家族の誰が見ているのか」ということまでチェックして算出しようと試みたのである。


すると各テレビ局は、続々とニールセンとの契約を解除し、3年後、ニールセンは視聴率調査から撤退を余儀なくされてしまった。



うがった見方をすれば、個人視聴率調査によって視聴率操作の発覚を恐れた電通および民放が、
ニールセンとの契約を打ち切って、撤退に追い込んでいったとも考えられる。

こうして視聴率測定はビデオリサーチのみという独占状態になった現在では、視聴率を利用しようとしたら、いくらでも操作が可能だろう。


一般の視聴者は、視聴率の信憑性よりも、出てくる数字のみが関心の対象となっている。

だが、名だたる大企業が支払っている高額の広告料金は、われわれが支払う商品価格に転嫁されているのである。

ここはやはり、是非を始めとした視聴率の中身に踏み込んだ議論をすべき時に来ているのではないだろうか。