8月27日   タイムカプセル(17)昭和46年 (1971年)   タイム・カプセル
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この年、7月20日、東京のど真ん中、銀座三越1階の銀座通りに「マクドナルド」1号店がオープン。

初日から2,000人以上の客がつめかけ、32秒ででき上がる1個80円のハンバーガーが飛ぶように売れた。
これを記念して、毎年7月20日は、ハンバーガーの日となった。

(映画)第44回アカデミー賞「フレンチ・コネクション」

ある愛の詩」「小さな恋のメロディ」「アラビアのロレンス」

東宝「いのちぼうにふろう」(仲代達矢酒井和歌子)ほるぷ映画「婉という女」(岩下志麻)ATG「儀式」(河原崎建三)


(音楽)第13回レコード大賞「
また逢う日まで」尾崎紀世彦

「水色の恋」天地真理「
悪魔がにくい平田隆夫とセルスターズ 「わたしの城下町」小柳ルミ子 「よこはま・たそがれ」五木ひろし「花嫁」はしだのりひことクライマックス「雨の御堂筋」欧陽菲菲

「おふくろさん」森進一「17才」南沙織デビュー。
「翼をください」赤い鳥「ちいさな恋のメロディ」Bee Gees 「
ある愛の詩」Andrew Williams

(テレビ)NHK「春の坂道」(中村錦之助山村聡)NHK「天下御免」(山口崇、林隆三、秋野太作)NHK「ゼロの焦点」(十朱幸代、奈良岡朋子、長山藍子)NTV「つくし誰の子」(池内淳子近藤正臣)NTV「2丁目3番地」(石坂浩二浅丘ルリ子津川雅彦)NTV「スター誕生」NET「きんぎょの夢」(若尾文子池部良杉村春子)NET「仮面ライダー」ABC「新婚さんいらっしゃい!」TBS「なんたって18歳」(岡崎友紀浜田光夫

テレ東「ワンパク番外地」(児島美ゆき、小林文彦、石立鉄男)NTV「おひかえあそばせ」(石立鉄男、大坂志郎、富士真奈美)NTV「気になる嫁さん」(榊原るみ、佐野周二、富士眞奈美、石立鉄男)YTV「ルパン三世




                  






(スポーツ)横綱大鵬(30)「体力の限界」と引退。優勝32回、横綱在位58場所。

(ファッション)ホットパンツ ワンポイントシャツ(ラコステ)アンノン族

(流行語)シラケ 脱サラ ガンバラなくっちゃ(新グロモント) フィーリング

(社会)連続女性誘拐殺人犯、大久保清を逮捕(5.14)マクドナルド日本1号店オープン(7.20)全日空機、自衛隊機と衝突(7.30)ニクソン大統領、ドル緊急防衛対策(ドルショック)(8.15)中国、国連加盟決定(10.25)映画会社の大映が倒産(11.29)

(物故)ルイ・アームストロング、左卜全、徳川夢声、志賀直哉、金田一京助

(物価)大卒初任給 43,000円

(その他)天地真理「時間ですよ」でデビュー。石坂浩二浅丘ルリ子と結婚。坂本九、柏木由紀子と結婚。高倉健江利チエミと離婚。ザ・タイガース解散、5年間続いたGSブームも下火に。

カップヌードル(日清食品) スプライト発売。(日本コカ・コーラ)ボンドアルファ(東亜合成)アメリカンクラッカー(アサヒ玩具)イザヤ・ペンダサン「日本人とユダヤ人」(山本書店) 庄司薫「白鳥の歌なんか聞こえない」(中央公論社)空手バカ一代(少年マガジン)ボウリングブーム



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                                      花嫁 (はしだのりひことクライマックス)








屋上遊園地


昭和30年代から40年代にかけて、デパートの屋上遊園地が全盛期だった。


屋上に小型の観覧車や動物型の乗り物などを備えた施設が増加。

ヒーローショーほか、子供向けのイベントも盛んに開かれた。


娯楽が乏しかった当時の子供たちにとって、まさに楽園的な場所になった。


日曜日ともなると、家族揃って半日から1日がかりでデパートで過ごすことは、
行楽行事の一つになり、子供たちはその日を楽しみに待ち望んだ。





だがその後1970年代に、デパートやホテルでの大規模な火災が相次いだため、
消防法が改正され、屋上に避難場所を確保することが義務づけられた。

そのため、大型の遊具施設を設置することが困難となり、屋上遊園地は
次第に姿を消してしまった。


もうひとつ、デパートの屋上から消えたものとして、空に浮かぶアドバルーンがある。

平成に入ってから、各地の大都市では、野外広告条例が厳しくなり、しかも高層建築が
増えた結果、目立たなくなったアドバルーンは廃れていった。 









     



おひかえあそばせ


男手ひとつで娘6人を育て上げた池西猪太郎(大坂志郎)は、ついに定年を迎えた。


退職の日に、狭い団地から大きな家に引っ越そうと、格安な家を退職金で購入する。


格安には、ひとつの条件があった。

それは、売り主の子供である薫の部屋だけは、そのまま残しておくという条件だった。


猪太郎は、薫を女とばかり思い込んでいた。

だが、じつは身だしなみには無頓着のむさ苦しい男性カメラマン(石立鉄男)だった。


池西家の6人の娘たちと薫との間に、早くも対立の火花が散りはじめるのだった。




退職金をはたいて買ったマイホームは、若い男の下宿人付きだった。

父親と娘ばかり6人の家族と、独身のカメラマンが突然同居することになり、
次々に騒動が巻き起こる、というドタバタ・ホームコメディ。


本作は「おくさまは18歳」で、石立鉄男がブレイクした直後の作品で、彼のトレードマークの
「もじゃもじゃ頭」も控えめで、二枚目寄りの二枚目半といった役作りになっている。


父親役の大坂志郎は、多くの作品に出演している名脇役だが、とりわけ、この作品のような
「お人好しのお父さん」は、まさにハマり役といえるほどの絶妙な味を醸し出している。


6人娘では、次女・梅子(宮本信子)と四女・菊枝(岡田可愛)がWヒロインとなっている。

梅子役の宮本は、仕事に生きる自立した女性ながら、こと恋愛にかけては、自らの思いを
秘めて身を引こうとする貞淑な「やまとなでしこ」を演じている。


菊枝役の岡田は、すでにスポ根ドラマ「サインはV」に出演し、国民的人気者となっていたが、
本作では、男たちを手玉に取るような奔放で移り気な現代娘を演じている。


ドラマは、娘たちと石立のいがみ合いというバトルが横軸に置かれ、やがて少しずつ発展する
恋模様と言う縦軸が加わり、ドラマの流れが微妙に変化していくのが見どころとなっている。












気になる嫁さん


両親を早くに亡くしためぐみ(榊原るみ)は、開業医をしている叔母の家に住みながら
カメラのきむらで働いている。


お店では店主からセクハラを受ける日々が続きうんざりだが、彼女には大学三年生で
やさしい清水純(関口守)という恋人がいてとても幸せだった。


ある日、めぐみと純は結婚を決意。めぐみの叔母も、純のことを気に入ってくれた。

しかし、問題は純の家族だった。





純の母は、彼が幼い頃すぐに亡くなっているが、清水家は、純の父親以下、
4男1女の兄弟というかなりの大所帯。


さらに困ったことに、大学生である純は、二年間のアメリカ留学が決定し、
めぐみは一人取り残される羽目になってしまう。


純は、留学の件をめぐみに打ち明けて、結婚を二年間待ってもらうことにした。

その間、めぐみは清水家に入り、純の家族たちと暮らしてもらうと告げる。


これには清水家一同ビックリ!

しかし、幸せそうな二人を前にして、誰も反対することは出来ずじまいだった。




父親以下、4男1女、それぞれ風変わりな個性を自由に発揮し合って生活している清水家を舞台に、
この家庭に入り込んだ可愛い花嫁の笑いと涙の奮闘ぶりを描くホームドラマ。


1970年代に一世を風靡した、石立鉄男のホームコメディの一本。
ヒロインの榊原るみは、当時アイドル的な人気があり、可愛いお嫁さんを演じている。


メインキャストには佐野周二、杉葉子、浦辺粂子など映画出身の大スターのほか、山田吾一、
冨士眞奈美、山本紀彦など石立ドラマおなじみの芸達者なメンバーが脇を固めている。














つくし誰の子


夏目遊(池内淳子)は、下町にある小さな弁当屋を切り盛りする女主人。


しっかり者の彼女には、血のつながっていない四人の子供がいる。

彼女は、義理の母として、孤児だった子供たちを引き取ったのだった。


今から十数年前、遊は一人の青年と愛しあい、子供まで生まれた。

だが、相手の両親が結婚を許さず、二人は別れ別れになってしまった。





生まれた子供は、他所へ貰い子として預けられ、それっきりになっていた。

その償いの意味で、遊は四人の子供を引き取り、献身的に育ててきたのだった。



下町の弁当屋を舞台に、義理の母と子供たちとの心のふれあいを描いた人情ドラマ。


血のつながりのない寄せ木細工のような一家に「家族愛」は芽生えるかどうかが

本作のテーマだった。


過去に産んだ子供を手放さねばならなかった贖罪感から、身寄りのない子供四人を

引き取り、養子にしたのだが、やがて実の子以上に愛情を注ぐようになる。



当時は、親子や世代間の断絶といった言葉が流行していたが、そんな時代にあって

血縁を超えた母子の心の通い合う姿は、視聴者の共感を大いに呼び起こした。


本作は好評を博し、その後も舞台を手芸店や旅館に変えて、シリーズ化された。













2丁目3番地


石上平吉(石坂浩二)は、テレビ局に勤務するしがないディレクターだ。


妻の冴子(浅丘ルリ子)そして生後三ヶ月の息子とともに、妻の実家である

東京・四ツ谷の美容院「たんぽぽ」に間借りしている。


あまり生活力のない平吉をしり目に、冴子はがぜん、美容師としてはりきりだす。


やがて夫婦の力関係は逆転、おしめをかえたり、おんぶしたり抱っこしたり、

子育てはもっぱら平吉が担当することに。





当時、最も洗練された女優といわれた浅丘ルリ子と、最もスマートな二枚目俳優、

石坂浩二が共演するということで、話題を集めたドラマ。


だが実際の内容は、浅丘が美容院を切り盛りする女上位型の妻。

一方、石坂は、生活力ゼロの冴えないテレビディレクターの夫。

つまり昭和版「髪結いの亭主」という、意表をついた設定で、お茶の間をあっと驚かせた。


本作は、やり手の妻の尻に敷かれる亭主の悲哀を描いた作品であり、いわゆる亭主関白と

貞淑な妻ばかりが登場する従来のホームドラマとは一線を画している。


当時流行していたウーマン・リブを背景にした、強い妻と弱い夫の子育て奮闘記は

多くの同世代の視聴者の共感を呼び起こすことになった。


共演の石坂と浅丘は、意気投合してコミカルな夫婦を演じていたが、実生活でも恋に落ちて

番組の収録中に婚約を発表。番組終了後の5月にゴールインした。












きんぎょの夢


柿沢砂子(若尾文子)は、有楽町の裏通りの一角で、おでん屋をやっている。

OLを辞めて、この商売を始めて、かれこれ七年になる。


手伝いは、ポンちゃん(高山ナツキ)という若い女の子が一人。

買い出しから仕込み、客の相手まで、砂子がほとんどこなしている。


店の常連客に、週刊誌の記者をやっている殿村良介(池部良)という男がいた。

砂子は、この家庭のある殿村と不倫関係にあった。





自分のことを愛し、離婚を約束してくれている殿村と幸せな時間を過ごす砂子。

だが殿村は、妻のみつ子(杉村春子)にはまだ離婚のことを言い出せないでいた。


そんな中、砂子の店にみつ子から、ひとりで来店するという予約の電話が入る…。




おでん屋を営む女性が、妻子持ちの男との失恋を経て、幸せを見つけるまでを描く。


母を早くに亡くし、二人の妹の母親代わりをつとめて来た砂子。父も勤務中に倒れ、

やむなく始めたおでん屋で、妻のある常連客・殿村と恋に落ちてしまう。


ある日、殿村の妻が店にやって来て、女同士の火花が散る。

結婚を夢見ながらも、厳しい現実に近づく砂子。


その道ならぬ恋の顛末を、作者は、童謡「金魚の昼寝」を用いて表現している。

「♪ 赤い金魚は あぶくを一つ 昼寝うとうと 夢からさめた」


ヒロイン砂子の見た夢は、まさに金魚の吐くあぶくのように、はかないものであった。











天下御免


平賀源内(山口崇)は、日本のレオナルド・ダ・ヴィンチと言われるマルチな天才発明家である。


あるとき源内は、高松藩の城主に呼ばれ、サトウキビ栽培ができるか問われる。


だが源内は足軽という下層の身分。畏れ多くも城主様に直接言上は許されない。

そこで、城主の両脇にずらり居並ぶお歴々が、伝言ゲームのように順番に耳打ちして
源内の言を城主に伝えるのであった。


やがてサトウキビ栽培に成功した源内は、褒美に長崎留学をせしめる。

だが源内には、女好きだが凄腕の剣士・右京之介(林隆三)がお目付役として張り付く。

そのほか留学に同行するのは、源内の婚約者・紅(中野良子)と、その弟・八万(山田隆夫)。




一行は、高松をあとにして長崎に入るのだが、その入口の関所で踏み絵をさせられる。

だがマリア様が女性なので、右京之介が踏むのをしぶる。

そのため、源内ら一行は、キリシタンと間違われて牢屋に投獄されてしまう。


源内の提案で改宗すれば釈放されるはずと、役人に「おーい転ぶぞ」と叫んでみる。

日本の神々に誓うことになるが、いい加減な誓いをして、ますます役人を怒らせてしまう。

結局身元引受人の商人(犬塚弘)に助けられるのだが、この商人には大変な秘密が…。




天才発明家・平賀源内を主人公に、江戸時代のゴミ問題や公害問題、受験戦争等を
風刺しながら取り上げて難事件を解決してゆく痛快時代劇。


映像を早送りしながらの伝言ゲームや、新幹線の登場など、時代考証を度外視した
斬新な演出が大きな話題を呼び、平均30%に迫る視聴率を獲得した。


「白髪の源内ではつまらない」と、若者の設定にして山口崇が演じ、小野右京之介役の
林隆三と、稲葉小僧役の秋野太作でトリオを結成。

ヒロインの武家娘・紅は、NHK初出演の新人・中野良子が演じ、華やかな色を添えた。


源内たちの江戸入りシーンでは、始まって間もない銀座の歩行者天国でロケを行い、
江戸時代のスタイルで闊歩する源内たちに驚く通行人の様子もそのまま撮影。


歴史上では獄死したとされる源内だが、最終回では気球に乗ってフランスに亡命、
最後まで予想のつかない展開で、自由人の源内を描き切った。











仮面ライダー


世界征服をたくらむ秘密結社・ショッカーと、改造人間の本郷猛(藤岡弘)との闘いを描く特撮怪奇ドラマ。

無敵の仮面ライダーの活躍は、子供たちを魅了し「変身ごっこ」と様々な「ライダーグッズ」を流行らせた。


とりわけ、ポピー(現バンダイ)から発売された「なりきり変身ベルト」(1500円)は、大ヒット商品となった。


さらに、1987年に発売された「テレビパワーDX変身ベルト」は、画期的な仕様で話題になった。

なんと、テレビの変身シーンになると、TV画面から信号が送られ、連動して光って回るのである。

当時の子供たちは、テレビの前で、ワクワクしながら、ヒーローとともに「変身!」と叫んでいたのだった。


その後も、歴代仮面ライダーの「なりきり変身ベルト」は、すっかり定番となり、次々に発売されたのである。




藤岡弘は当時、無名の新人だったが、空手初段、柔道二段の経歴が決めてとなり、主人公・本郷猛に抜擢され、一躍スターダムに駆け上がった。

















ルパン三世


俺の名はルパン三世。かの名高き、怪盗ルパンの孫だ。

世界中の警察が俺に血眼。ところがこれが捕まらないんだな。


自分で言うのも何だが、狙った獲物は必ず奪う、

神出鬼没の大泥棒だ。

それがこの俺様、ルパン三世だ。





自称、アルセーヌ・ルパンの孫。ダンディだがとぼけたところがある。


仲間のガンマン・次元大介、剣客・石川五衛門とともに、奇想天外な

策略を用いて名品を盗む一方、巨悪をやっつける。


美人盗賊の峰不二子は、ライバルだが助け助けられる仲。

そして、ルパンを執拗に追う銭形警部。


ユニークなキャラクターに加えて、吹き替えの声優もかなり個性的。


天衣無縫のアクションアニメとしてシリーズ化され、1971年から14年間、

全252話が放映されるという長寿番組となった。


また映画化も6作、他にもゲームソフト、パチンコの機種にも採用され、

幅広い世代から支持を受ける人気作品となっている。












スター誕生


1971年(昭和46年)テレビは斜陽の映画に代わって娯楽の中心となっていた。

スター誕生は、テレビ時代のタレントを発掘・育成するために立ち上げた番組だった。


もうひとつ、この番組が企画された背景には、大手芸能事務所「渡辺プロダクション」
の芸能界独占状態を揺るがすというテレビ局側の目論見があった。





当時の芸能界は、沢田研二や森進一、小柳ルミ子、天地真理ら人気スターを多く擁する
渡辺プロ抜きには歌番組が成立しないという状態が長く続いていたからである。


この企画は当たり、視聴者参加のオーディション番組「スタ誕」には、スターを夢見る
約200万人が応募。テレビ予選には5500人が参加、423人が決勝大会に出場した。

プロダクション、レコード会社がスカウトする形で札を上げ、桜田淳子には25社、
山口百恵に20社、森昌子は13社が名乗りでた。


その結果、渡辺プロの一強が崩れ、スター歌手は中小の芸能プロからも生まれていった。

中森明菜、早見優、小泉今日子、堀ちえみなど「花の82年組」を始めとする80年代前半の
アイドル百花繚乱の背景には、このような時代の経緯があったのである。












新婚さんいらっしゃい!


新婚カップルを招いて、なれそめから日常生活や新婚の「夜の話」まで告白する
視聴者参加型トーク番組。

初代司会の月亭可朝は、参院選出馬のため、四か月で桂三枝に交替した。


トークの最中、夫婦の奇妙な発言に対して、司会の三枝が椅子から転げ落ちる
というリアクションが受けて、またたく間に人気番組となった。


その後、51年間に渡り司会を務めた三枝だが、2022年(令和4年)3月をもって降板、
後任の司会は藤井隆が受け継いだ。















貴ノ花


1971年(昭和46年)5月場所、この年の1月場所で32回目の優勝を飾った横綱大鵬に
果敢に挑んだのが「角界のプリンス」と謳われた貴ノ花である。


小柄ながら強靭な足腰の強さで、何度となく奇跡のような逆転勝ちを収めていた。

この日も、その粘りの相撲で、大鵬に土をつけた。この試合が、大鵬最後の土俵となった。


あまりに強すぎた大鵬時代が続き、相撲人気は低落していた。
そこに台頭した貴ノ花は、再び相撲人気に火を付け、一大ブームを呼び起こす。




自分よりも大きな相手に真っ向からぶつかっていく姿に、観客は悲鳴にも似た声援を送った。

1975年(昭和50年)横綱北の湖を破っての初優勝の瞬間は、まさに狂乱の極みだった。


そんな貴ノ花にも、やがて影が忍び寄る。
1980年(昭和55年)躍進著しかった若手の千代の富士になすすべもなく負けると、やがて引退を迎えることになった。


11年後、歴史に名を刻む大横綱となっていたその千代の富士を破り、彼に引退を決意させたのは、
貴ノ花の息子・貴花田だった。













      ある愛の詩(うた)(Love Story)1970年(米)

一人はハーバード大学に通う富豪の息子オリバー。もう一人は音楽留学を夢見て苦学する娘ジェニー。

二人は愛し合っていたが、オリバーの父親は、身分の違いを理由に、二人の交際に反対する。
オリバーは父親に勘当を告げ、ジェニーと結婚する。だが彼女は、突然の病魔に襲われてしまう…。

家族を捨て、愛する人との生活を選んだオリバー。成し遂げたかった留学の夢を捨て、愛する人との
生活を選んだジェニー。大切な何かを得るために、もう一方の大切な何かを捨てる。

「愛とは決して後悔しないこと」の名文句と共に、フランシス・レイの美しく切ない主題歌が耳に残る。

(監督)アーサー・ヒラー(Arthur Hiller)
(出演)ライアン・オニール(Ryan O'Neal)アリ・マッグロー(Ali MacGraw)
 
       
                                  Love Story(Andrew Williams)















春の坂道


柳生新陰流を創始した柳生石舟斎の剣の極意は「無刀取り」であった。


素手で相手の剣を奪うという、世にいわれる「真剣白刃取り」である。


石舟斎と立ち会った徳川家康は、無刀取りで刀を難なく奪われてしまった。

石舟斎は家康に剣術師範代を請われたが、固辞して五男の宗矩を推挙した。


宗矩は家康、秀忠、家光の3代の将軍の剣術指南を務め、その活人剣の極意は

徳川幕府を確たるものとする礎となった。






正保3年(1646年)正月、柳生宗矩は76歳の春を病床で迎えた。


将軍・家光は太閤・秀吉以来の明国出兵という大問題を抱えた上に、

宗矩の病気が重なり、焦っていた。


「大事な時に倒れおって……」家光は自ら宗矩の家を訪ねた。

だが宗矩の口から出たのは、明に派兵しようとする家光を諌める厳しい言葉。


「明国の窮状を救う正義の出兵じゃ」と主張する家光。

「いつの世でも正義は常に戦の道具でございました」宗矩は反論する。


抜刀する家光。雷鳴が轟き、閃光が走る。激しい雨となった。


振り下ろした家光の剣を無刀取りで受け止めた宗矩は、戦を知らぬ家光に向かって言う。

「いかなる戦いも戦と名が付く以上、悪といわねばなりませぬ!」


家光に、明への派兵を死を賭して断念させた宗矩は、その後まもなく不帰の人となった。

武人として、また政治家として、ひたすら太平の世を求め続けた生涯であった。




原作は、1971年(昭和46年)大河ドラマの原作として、山岡荘八が書き下ろした歴史小説。

NHK出版から発売された小説は、半年で50万部を超すベストセラーとなった。


徳川家康、秀忠、家光三代の将軍に仕えた武人政治家・柳生宗矩の生涯を描いたドラマで、

山岡荘八氏のたっての指名によって、東映の中村錦之助が柳生宗矩役に抜擢された。


錦之助は、柳生ゆかりの師範から新陰流の剣を叩き込まれ、毎朝4キロのマラソンを欠かさず、

スタジオには野菜だけの弁当を持参して、この役と取り組んだという。


また山岡氏が、柳生家屋敷を保存のために買い取ったことも話題になり、ロケ地となった

奈良県柳生町は、一躍脚光を浴びて観光地になった。