8月28日 タイムカプセル(18)昭和47年 (1972年) タイム・カプセル |
この年、札幌冬季オリンピック(第11回)が開催され、スキー、スケート等の6競技、35種目が実施された。
フィギュアスケート女子シングルに出場したジャネット・リンは、銅メダルにとどまったが、人気度ではまさに金メダル。
自由演技では勢いあまって転倒したものの、抜群の表現力で観客を魅了した。
70メートルジャンプでは笠谷幸生が、冬季五輪初の金メダルをもたらした。
(映画)第45回アカデミー賞「ゴッドファーザー」
「死刑台のメロディー」
松竹「あゝ声なき友」(渥美清、小川真由美、財津一郎、倍賞千恵子、松村達雄)松竹「男はつらいよ 柴又慕情」(渥美清、倍賞千恵子、吉永小百合)松竹「男はつらいよ 寅次郎夢枕」(渥美清、倍賞千恵子、八千草薫)東宝「忍ぶ川」(栗原小巻、加藤剛)
東宝「軍旗はためく下に」(丹波哲郎、左幸子)東宝「子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる」(若山富三郎、富川晶宏)松竹「故郷」(井川比佐志、倍賞千恵子)
(音楽)第14回レコード大賞「喝采」ちあきなおみ
「学生街の喫茶店」ガロ 「ひなげしの花」アグネス・チャン 「そして神戸」内山田洋とクール・ファイブ 「空飛ぶくじら」大瀧詠一
「虹と雪のバラード」トワ・エ・モア 「太陽がくれた季節」青い三角定規「瀬戸の花嫁」
小柳ルミ子「この広い野原いっぱい」森山良子「結婚しようよ」吉田拓郎「女のみち」ぴんからトリオ「どうにもとまない」山本リンダ「せんせい」森昌子デビュー「男の子女の子」郷ひろみデビュー「さそり座の女」美川憲一 「芽ばえ」麻丘めぐみデビュー「あの鐘を鳴らすのはあなた」和田アキ子
(テレビ)NHK大河ドラマ「新・平家物語」(仲代達矢)NHK「藍より青く」(真木洋子、大和田伸也)NHK「楡家の人びと」(宇野重吉、岡田茉莉子)NHK「刑事コロンボ」(小池朝雄)NHK「お笑いオンステージ」(三波伸介、中村メイコ、伊東四朗)NHK「中学生日記」NHK「赤ひげ」(小林桂樹、あおい輝彦、仁科明子)NHK「白鳥の歌なんか聞こえない」(荒谷公之、仁科明子、石立鉄男)
TBS「ぎんざNOW」(せんだみつお)TBS「知らない同志」(田宮二郎、山本陽子、栗原小巻、杉浦直樹、石立鉄男、前田吟) TBS「必殺仕掛人」(林与一、緒形拳、野川由美子、中村玉緒)TBS「おこりんぼ」(藤岡琢也、三条美紀、和泉雅子、小倉一郎、吉沢京子)TBS「ママはライバル」(岡崎友紀、純アリス、高橋悦史)フジ「木枯らし紋次郎」(中村敦夫)NTV「パパと呼ばないで」(石立鉄男、杉田かおる)
NTV「飛び出せ!青春」(村野武範、酒井和歌子)NTV「太陽にほえろ!」(石原裕次郎、萩原健一、松田優作)NET「にんじんの詩」(宇津井健、小川真由美、杉浦直樹、笠智衆、夏川静枝)NHK「セサミ・ストリート」
(スポーツ)パレスチナゲリラ、ミュンヘン五輪村で、イスラエル選手ら11人殺害
(ファッション)マリンルック パンタロン
(流行語)「あっしにはかかわりあいのないことで」「未婚の母」「お客様は神様です」「三角大福戦争」
(社会)1/24 横井庄一氏グアムから28年ぶりの帰還。2/3 札幌五輪開幕。2/28 浅間山荘事件。4/7 失踪中だった舟木一夫、東京千駄ヶ谷の旅館で自殺未遂。4/16
川端康成ガス自殺。5/15 沖縄返還。5/30 日本赤軍がテルアビブで自動小銃を乱射。6/11 日本列島改造論(田中角栄通産大臣)6/17 ウォーターゲート事件。7/7
田中角栄内閣発足。9/29 日中国交正常化。
(物故)川端康成、東海林太郎、柳家金語楼、霧立のぼる
(その他)麻丘めぐみ「芽ばえ」でアイドル歌手デビュー。坂口良子「アイちゃんが行く」(CX)でデビュー。松原智恵子、黒木純一郎と結婚。浅田美代子「時間ですよ」(TBS)でデビュー。杉田かおる、「パパと呼ばないで」でデビュー。松任谷由美「返事はいらない」で歌手デビュー。仁科明子、NHKドラマ「白鳥の歌なんか聞こえない」で女優デビュー。水沢アキ、TBS「夏に来た娘」で女優デビュー。
ゴキブリホイホイ、カシオ・ミニ、ソックタッチ(白元)「同棲時代」上村一夫、「ぴあ」創刊 「セブンイレブン」第1号店が開店。 パンダのランラン、カンカン上野で初公開、「恍惚の人」有吉佐和子、「HOW
TO SEX」奈良林祥、「狼なんかこわくない」庄司薫、「日本列島改造論」田中角栄、若葉マーク(自動車免許取得1年以内)登場。水島新司「ドカベン」(少年チャンピオン)永井豪「マジンガーZ」(少年ジャンプ)池田理代子「ベルサイユのバラ」(週刊マーガレット)牧村美樹(デビルマン)
虹と雪のバラード(トワ・エ・モア)
セサミストリート(Sesame Street)(NHK)
アメリカの子ども向けテレビ教育番組。
着ぐるみのキャラクターと人間、パペットによる掛け合いで、歌や劇、数字や
アルファベットを学ぶコーナーなどが展開される。
変化に富み、テンポも良く、見て楽しい番組として教育関係者に大きな影響を与えた。
映画スターのバート・ランカスターに腕立て伏せをやらせたり、2016年には、日本の
お笑いタレント・ピコ太郎と、ラップのコラボを披露するなど、著名人も多く出演している。
押し屋 (おしや)
朝夕のラッシュ時、乗客を車内に押し込む鉄道係員の俗称。
上野にある岩倉高校(鉄道学校)の学生などが、通勤時間帯のバイトでやっている。
ドアからはみ出している客をホームに降ろす場合には剥がし屋と呼ばれる。
状況次第では押し屋が剥がし屋になったり、その逆のケースもある。
この他にも間に合わない駆け込み乗車を止める役割もある。
1955年(昭和30年)10月、国鉄(現JR)の新宿駅で初めて導入された。
列車のドア1つごとに学生1人が配置され、着ぶくれとなる冬には1日に延べ130人、
夏でも60人の押し屋が投入された。
強く押したとたん、自分も車内に入ってしまい、そのままドアが閉まって
乗ってしまうケースもある。
またラッシュ時は乗客も殺気立っているため、無理に押したりすると、
怒鳴られたり、殴られたりするときもあるという。
押し屋という仕事はかなり激務で、想像を絶する以上に大変なのである。
藍より青く
昭和18年、太平洋戦争のさなかの熊本県天草。
地元の郵便局に勤める真紀(真木洋子)は、その帰り道に港を通って帰っていた。
思いを寄せる漁師の周一(大和田伸也)が港で働いているからだった。
だが、帰宅した真紀はいきなり父親の行義(高松英郎)に怒鳴られる。
年頃の男女の付き合いに対する世間の目が厳しい時代であった。
出征を間近に控えた周一に不安を覚えた行義は、二人の結婚に反対する。
そして父親の心配は現実のものとなってしまった…。
ヒロイン・真紀は、厳格な父に反対されながらも網元の息子・周一と結婚する。
しかし、長男が生まれる前に夫は出征し、そのまま帰らぬ人となってしまう。
18歳で戦争未亡人となった真紀は、戦後息子と共に東京に移り住み、同じく戦争で
夫を亡くした女性を集め、アイスキャンディ屋の開店準備を始める。
郵便局員からキャンディ屋、そしてついには中華料理店を経営するまでになる真紀の
バイタリティは、戦争という共通体験をもつ当時の視聴者を勇気づけるものだった。
また、夫・周一を演じた大和田伸也の爽やかな好男子ぶりもこの作品の魅力だった。
なお、本作の放送開始早々、出征する周一に視聴者からの「助命嘆願」が集まった。
「周一を戦死させたら見ないぞ」という内容の投書が多数寄せられたことについて、
脚本を担当した山田太一は「そのようにかけがえのない人を失ったのが戦争だった」
と語っている。
太陽にほえろ!
東京・新宿の七曲署に、新米刑事の早見(萩原健一)が赴任してくる。
長髪にノーネクタイの彼は、初出社にもかかわらず始業ギリギリに署に到着する。
おまけに、どことなく人をくった態度は新米刑事とは思えない。
これには七曲署のボスこと藤堂(石原裕次郎)も呆れ顔である。
そんな早見に、七曲署の先輩たちは早速「マカロニ」と渾名をつけた。
七曲署捜査一係を舞台に、ボスの藤堂俊介率いる個性豊かな刑事たちが
文字どおり命がけで事件を捜査し解決していく刑事ドラマ。
そこに一貫して描き込まれているのは、新米刑事の数々の挫折である。
マカロニこと早見刑事は、赴任早々、三つ揃いのスーツを決め込んで出署する。
そんな型破りな男だが、犯人の拳銃を持つ手が震えているのを見て一瞬躊躇する。
それで先輩刑事の石塚(竜雷太)が撃たれ、犯人も取り逃がしてしまう。
マカロニは、ボスに怒鳴られ落ち込む日々が続く。
ボスはそんな彼に「人を平気で撃てるようになったらお終いだ」と声をかける。
マカロニは、そういった失敗と苦悩を繰り返しながら、刑事として独り立ちしていく。
もうひとつ、この作品を語る上で忘れてはならないのが殉職シーンだ。
番組では、マカロニこと早見を筆頭に、計11名の刑事が職務中に命を落としている。
視聴者は、主演級刑事の殉職に少なからぬ衝撃を受け、視聴率も跳ね上がった。
放送後に、ファンによる葬式が行われるほどの反響があり、時には助命嘆願が
殺到するなど番組名物となった。
本作は、刑事ドラマとしては異例の長寿ドラマとなり、14年間で、全718話が放映、
最高視聴率42.5%を記録し、刑事ドラマの金字塔として語り継がれている。
パパと呼ばないで
独身男の安武右京は、亡くなった姉の一人娘・千春を引き取ることになった。
右京の両親はすでに他界していて、ほかに頼る肉親もいない。
二人は、佃島の米屋・井上精米店の2階に下宿することにした。
子育てなどおよそ縁のない人生だと思っていたところへやって来た6歳のチー坊。
はじめは子供の扱いがわからず、とまどう右京だったが、次第に情が通うようになり、
チー坊はかけがえのない存在になっていった。
もじゃもじゃ頭の石立鉄男が演じる新米パパは、人情もろいが、時にイライラを爆発させる。
甲高い声で喜怒哀楽を全身で表現する二枚目半ぶりは、彼ならではのキャラクターであり、
個性派俳優として、ドラマの中で、ひときわ存在感を放っていた。
また、チー坊を演じた杉田かおるは、この作品で一躍、天才子役として注目を集めることになった。
彼女の演技力は、名優ぞろいのキャスティングにあって、一歩も引けを取らないどころか、
大人たちを完全に食ってしまった感さえある。
本作は、独身男の右往左往ぶりと、下宿先の人々の情の深さに泣き笑いしながら、急ごしらえの「親子」が、
強い絆で結ばれていく姿がコメディ・タッチで描かれる、まさに人情喜劇の傑作となった。
楡家の人びと
院長の楡基一郎(宇野重吉)はドイツ帰りの精神科医である。
彼は一代で楡病院を築いたのだが、その病院建築を豪華な外国様式にするとか、
ドイツ留学で取ったドクトルの称号を自慢するとか、娘たちを学習院に入れるとか、
成り上がりの俗物的一面もあった。
彼は、患者の耳の穴をのぞきこんで「ウン、これは大変だ。君の頭は相当くさっとる」
などと迷診断を下すのだが、これは一種の「ショック療法」とでも言うのだろうか。
それで患者の病状は良くなったというのだから、やはり「名医」なのだろう。
1962年(昭和37年)文芸誌「新潮」に連載された芥川賞作家・北杜夫の同名小説のドラマ化。
時は大正時代、東京・青山にある楡病院を舞台に、楡家の一族の悲喜劇をユーモアと詩情をこめて描く。
登場する楡家の人びとは、院長の基一郎(宇野重吉)と老妻のひさ(長岡輝子)、
楡家を切り盛りする長女の龍子(岡田茉莉子)と、その婿の徹吉(内藤武敏)、
次女の聖子(佐藤友美)、三女の桃子(結城美栄子)、長男の欧州(伊丹十三)、
次男の米国(柳生博)、そして院長代理の勝俣(加藤嘉)らだ。
長女の婿・徹吉は、原作者・北杜夫の父で歌人の斎藤茂吉がモデルとされる。
物語は、院長・基一郎の議員落選、次女聖子の家出と続き、震災直後の病院の焼失と基一郎の急死を経て、
昭和の動乱期に入ると、楡家は、いったんは全盛期を超える規模の大病院にまで復活するものの、
大戦勃発を受けて、ゆるやかだが確実に没落の一途をたどっていく。
主演の宇野重吉は、成り上がりのいんちき臭い院長をどこか憎めない人間臭い人物に演じ、
岡田茉莉子は、病院を守る長女を毅然と見せ、二人が物語の中核となった。
次女の佐藤友美、三女の結城美栄子、そして、院長代理を演じる加藤嘉らが好演した。
なお、楡病院は、1945年(昭和20年)都が斎藤家から買い取り、都立梅ヶ丘病院となった。
病院の敷地内には、精神科医でもあった歌人・斎藤茂吉の歌碑が建立されている。
赤ひげ
長崎で西洋医学を修めた青年医師・保本登(あおい輝彦)は、幕府の典医への道が約束されていた。
だが、不潔で見すぼらしい養生所の見習いを命じられたことが気に入らず、ふて腐れていた。
彼は「赤ひげ」と呼ばれる老医師(小林桂樹)にも反発を覚え、徹底的に反抗する。
保本は、暇さえあれば酒を飲み、医者の作業着であるお仕着せも着ず、私服で診療を続けた。
あるとき、保本は「これを着ているとみんな養生所の人とわかって、助けてくれると思っている」
との患者の言葉にハッとする。
その患者は、お仕着せを着た先生なら、すぐに養生所の医者だということがわかり、自分のような
貧しい人間でもためらわず診てもらえると言う。
保本は、お仕着せを着ることに大きな意味があることに、初めて気づくのだった。
山本周五郎原作「赤ひげ診療譚」を、倉本聡の脚本でドラマ化したもの。
長崎帰りのエリート青年医師・保本と貧乏人に尽くす養生所の医師・赤ひげの物語。
保本は、赤ひげの態度に腹を立て、一度は養生所を辞めようとする。
そして、西洋医学の大御所の下で働こうとするが、その金満ぶりにあきれ返ってしまう。
大御所は、次々に西洋の医学書を見せびらかし、これが千両、これが七百両などと
自慢ばかりする。
振り返れば、養生所の赤ひげの慎ましくも誠実な診療の数々。
頑固で口数も少ないが、何よりも患者の救済に最善を尽くそうとする赤ひげの姿に
保本は、長崎がえりを鼻にかけていた自分を恥じるのだった。
本作は、青年医師・保本登と、養生所の医長・新出去定の二人の活躍を軸に、患者たちとの
葛藤や心の交流を描いた人間ドラマが展開される。
最初は去定の考え方に否定的であったが、次第に大きな成長を遂げる保本をあおい輝彦が演じ、
毎回の丁寧な構成と心温まるシナリオによって、多くの視聴者の好評を博した作品である。
飛び出せ!青春
河野武(村野武範)は、私立太陽学園に赴任してきた新任教師である。
赴任の当日、校門でいきなり、女教師の本倉明子(酒井和歌子)にぶん投げられる。
実はこれは「変な男に追いかけられている」という生徒たちのいたずらだった。
あとから新任の教師だと知ってあやまる本倉先生。彼女は柔道2段の腕前だった。
いたずらをしたのは、落ちこぼれの劣等生が集まったサッカー部の生徒だという。
さらに河野は教頭から、新任早々、そのサッカー部の部長を押しつけられてしまう。
「来る者は拒まない」という校長の方針により、無試験入学制度をとっている太陽学園高校には
全国から落ちこぼれが集まっていた。中でもサッカー部は劣等生の集まりだった。
新任の河野は、赴任早々のトラブルで教頭に疎んじられ、早速サッカー部の部長を押し付けられる。
だが、河野は持ち前のチャレンジ精神や正義感を発揮し、生徒たちに熱き思いを伝えてゆくのだった。
ドラマを通しての合言葉で、テーマでもある「レッツ・ビギン Let's begin!」は流行語となり、
生徒役からも多くの人気者が生まれた。
また、青い三角定規が歌った主題歌「太陽がくれた季節」も大ヒット。
同年の「日本レコード大賞」新人賞を受賞し「NHK紅白歌合戦」にも出場した。
刑事コロンボ
女弁護士レスリーは、夫を射殺後、30万ドルの身代金を要求する脅迫状を自分宛てに郵送し、
誘拐事件をでっちあげる。
市警本部とFBIは、営利誘拐事件としてマニュアル通りに捜査を進めようとしていた。
そこに場違いとも思われるレインコートの男が現われる。
コロンボと名乗るその刑事は、彼女の要領を得ない会話の受け答えに違和感を覚えるのだった。
ピーター・フォーク演じるよれよれのコートに、おんぼろの車という冴えない中年刑事、
しかし真犯人を見抜いて、それをあの手この手でじわじわと追い詰めてゆく腕は天才的。
そんなキャラクターのロサンゼルス警察・殺人課のコロンボ刑事の人気は急上昇した。
このドラマは、事件と犯人を先に見せておいてから、コロンボ刑事と、したたかな犯人との
知恵比べが展開する。
しかも真犯人は、上流社会の人間がほとんどで、それを庶民代表のコロンボ刑事が追及する
という形が受けた。
「うちのカミさんがねぇ」という、トボケたセリフは流行語になり、吹き替えの小池朝雄も
ハマり役だとの評価が定着した。
おこりんぼ
田村看板店の主人・一平(藤岡琢也)は、息子の徹(小倉一郎)の大学入試を
明日にひかえて内心落ち着かない。
妻のまき(三条美紀)も、徹の受験準備にそわそわして、職人たちの夜食を
作るのを忘れてしまった。
そのため、一平が怒ってまきを平手打ちする。
いつもの横暴が災いし、娘のかおる(和泉雅子)やひろみ(吉沢京子)は、
事情も聞かず、まきに味方した。
面白くない一平は、お茶漬け屋のみよ子(野川由美子)を相手に酒でまぎらすのだった。
東京・五反田の看板屋を舞台に、大正生まれの短気で頑固な主人・一平と、昭和二けた生まれの
三人の子供、長女・かおる、長男・徹、次女・ひろみとの世代間対立をコミカルに描く。
系列としては、1968年「おやじ太鼓」に近く、根は善良だが、すぐ頭から湯気を立てて怒り出す
カミナリ親父の色彩が強くなっている。
毎回、軽快なテンポでドラマが進み、終わりは父親の情愛をじっくり描いて締めくくる。
類型的な作りだが、思わずホロリとさせられてしまう。
中学生日記
名古屋市内の中学校を舞台に、受験、非行、いじめなど教育現場の直面する問題を、
教師と生徒が一緒に考える一話完結の30分ドラマ。
問題はすべて事実に基づいて取り上げ、簡単に結論は出さない。
現実のもめ事は、そう簡単に割り切れたり、解決するものではないからだ。
NHK名古屋放送局の制作で、その地道で真剣な番組作りには、高い評価が与えられている。
生徒として出演するのは、公募で選んだ市内の中学生で、教師役は湯浅実(風間先生)、
東野英心(東先生)、岡本富士太(南先生)らが務めた。
番組の卒業生からは、竹下景子、中野良子、森本レオ、小西博之など、売れっ子役者も
多数生まれている。
1972年から2012年まで、40年間にわたって放映されたロングランドラマとなり、
思春期の日常を撮り続けた本作は、学園ドラマの金字塔ともいえる作品である。
知らない同志
スーパーの店長を勤める今西健太郎(杉浦直樹)は、営業不振で大阪転勤を命じられる。
妻・節子(栗原小巻)としばらくの間離れて暮らすことになってしまった。
今西の跡を受け継ぐ店長は、仕事ができることで評判の三友竜一(田宮二郎)
新店長の三友は、朝礼でいきなり今までの社訓を破り自分本位の営業方針を語り始める。
売上第一で情を挟まない新店長のやり方に、古株の従業員は不満を感じるのだが…。
左遷された夫と別れて暮らすことになった妻と、そこへ現れたやり手の男とのラブ・ロマンスを描く。
本作は昭和40年代後半、セルフサービスという言葉が一般に定着し、急増した総合スーパーが舞台。
杉浦直樹演じる前任の店長は、義理と人情を大切にする、古いタイプの店長だが、売り上げ不振で
大阪の店舗に飛ばされてしまう。妻の節子を東京に残していくことだけが気がかりだ。
一方、田宮二郎扮する新店長は、店の立て直しに敏腕を振るうモーレツ店長である。
だがこの新店長、前任の店長の奥さんにも、モーレツぶりを発揮。ついに「知らない同志」では
なくなってしまうという波乱含みの展開となる。
白鳥の歌なんか聞えない
庄司薫(荒谷公之)は、浪人生だが、大学入試に失敗したわけではない。
今年、高校を卒業したが、東大紛争で入試が中止になり、受験を諦めたのだ。
一方、幼馴染の由美(仁科明子)は、無事女子大学に合格した。
ある日、由美に誘われて、小沢圭子という由美の大学の先輩の家を訪れた。
そこは、コデマリの生垣のある家で、彼女の祖父が所有する立派な図書館があった。
その図書館には、英独仏伊露はおろか、古代ギリシア語やラテン語までもを含む、
世界の国々の言語で書かれた本が並べられている。
しかも飾られているのではなく、すべてに読んだあとがあるのだった。
大書斉の中に、ぎっしり積まれた膨大な書物を、その祖父は全部読んだという。
しかし彼は現在、高齢のため、寝たきりの状態になってしまっている。
東大を目指して勉強を続けている自分からしても、到達できないほどの知識を持つ人物。
だが、膨大な知識を吸収し、様々な学問を修めたというのに、人生の黄昏を迎えたら、
人間の一生の努力なんて虚しさだけが残るのではないだろうか、と薫は思った。
それだけに、人は何のために生きるのか、そして「死とは何か」について考え始めるのだった。
1971年「中央公論社」から出版された芥川賞作家・庄司薫の同名小説のドラマ化。
浪人生活を送る一方、大学で勉強することに疑問を持つ若者の悩みを描いた青春ドラマ。
高校を卒業したものの、まだ次の進路が決まっていない主人公の薫は、あるとき幼馴染の
由美の先輩を通じて、人間の死というものに真正面から向き合うことになる。
勉強して一体何になるのか、人間は何のために生きるのかなど、進路や将来のことに漠然とした
不安を抱えた薫が友人たちと、人生の意味について議論するシーンが見所となっている。
タイトルにある「白鳥の歌」とは、白鳥が死ぬ前に美しい声で鳴くという伝説。
死にゆく白鳥の声に耳をすます、すなわち、死を通じて、いかに生きるべきかを見出す
という意味である。
なお本作は、当時、学習院女子学院在学中だった仁科明子が、NHKスタッフにスカウトされ、
デビューを飾った作品である。
木枯し紋次郎
汚れた合羽に三度笠、口にくわえた長楊枝、諸国さすらう旅鴉。人呼んで、木枯し紋次郎。
あるとき紋次郎は、旅先で、ある渡世人から喧嘩の助っ人を頼まれる。
その渡世人は、紋次郎の腕を見込んで、礼金は五両払うとふっかける。
返答を求める渡世人に対して、紋次郎は言い放つ。「あっしにゃぁ関わりのねぇこって」
滅法腕が立つ無宿者・紋次郎は、長い楊枝を斜めにくわえて旅をするニヒルな男。
何か頼まれても「あっしには関りのねえことでござんす」と言うが、結局は関わってしまう主人公に
中村敦夫が扮して大人気となった。
股旅ものは女性にはあまり好まれないのが相場だが、この番組は女性ファンも多かった。
劇中に登場する悪女の多くが、紋次郎に惚れこんでしまうという描写があるが、人との関りを避け、
ひたすら孤独でクールに生きる彼の姿に、共感するものがあったのかも知れない。
番組が始まった1970年代初頭は、高度経済成長も終わり、大学闘争後の虚無感が漂っていた時代。
若者の間には「神田川」など、個人のささやかな生活や恋愛を歌う四畳半フォークが流行していた。
ニヒルでアウトローの紋次郎は、そんなシラケきった時代を象徴するブラウン管のヒーローだった。
にんじんの詩
俊介(宇津井健)は、下着会社の営業課長。
六年前に病死した妻の遺言を守って、三人の義妹(小川真由美、梓英子、吉沢京子)
の面倒を見ながら暮らしている。
朝ねぼうの三人の妹たちを起こすことから俊介の一日は始まる。
おまけに三人とも家事はまるでダメなのだ。
実家の父(笠智衆)は「死んだ女房の実家にいつまでメメしくいるつもりだ」と、
心配でしかたない様子だ。
「だいこんの花」に続く「野菜シリーズ」第二弾。
妻の遺言を守り、必死になって三姉妹を社会へ旅立たせた男の物語。
ある時、俊介の大学時代の親友・昇(杉浦直樹)が九州から転勤して来た。
女ばかりの中で辟易としていた俊介は、さっそく昇を居候させる。
昇は、義妹たちの言いなりになっている俊介を嘆き「態度のデカい女たちを
たたき直してやる」と大見栄をきる。
が、敵もさるもので、ネグリジェで家の中をうろうろするお色気作戦に出る。
昇はあっけなく完敗、そのうえ典子(小川真由美)にホレてしまい、こっそり
部屋に通う始末だ。
「ザ・ガードマン」の大ヒットでアクションスターのイメージが定着した宇津井健が、
初のホームドラマにチャレンジして新境地を開拓した作品。
本作では、病死した妻の遺言を守り、三人の義妹たちを立派な社会人に育て上げるという
誠実で温かみのある役柄を好演し、後の「赤い」シリーズ主演の先駆けとなった。
新・平家物語
平治元年(1159年)平治の乱が勃発し、平清盛(仲代達矢)は宿敵・源義朝を破った。
義朝の息子である頼朝は、13歳の若年とはいえ、戦闘に参加しており、斬首の運命が待っていた。
ところが、清盛の継母である池禅尼(いけのぜんに)が頼朝の助命を清盛に嘆願した。
軍記物「平治物語」によると、頼朝が夭折した池禅尼の息子に生き写しだったからだという。
こうして、頼朝は減刑され、伊豆の小島への流刑で済むことになった。
しかし、この決断が平氏の寿命を縮めることになった。
仁安2年(1167年)清盛は、武士として初めて太政大臣に任命されるという快挙を成し遂げた。
治承4年(1180年)2月、清盛の娘・徳子の息子が安徳天皇として即位し、これを機に、
清盛は天皇の外戚となり、その権力は不動のものとなった。
だが同年4月、源頼朝(高橋幸治)が反平家の兵を挙げ、清盛は衝撃を受ける。
さらに治承4年(1180年)10月、富士川合戦で平家軍が反乱軍に惨敗し、情勢は一変する。
反乱軍の鎮圧に専心し、ようやく平家軍は盛り返すが、翌年2月、清盛は突如熱病に倒れた。
病状は急速に進行し、1181年(治承5年)2月4日、清盛は京の九条河原で死去、享年64。
死期を悟った清盛最期の言葉は「きっと、わが墓前に、頼朝が首を供えよ」であった。
1950年(昭和25年)「週刊朝日」に連載された吉川英治の同名歴史小説のドラマ化。
ドラマは、平安時代に一大栄華を築き、我が世の春を謳歌していた平家一門だが、やがて各地で
「反平家」の兵が挙がり、ついに壇ノ浦で源氏に敗れ、滅亡するまでの盛者必衰の姿が描かれる。
本作は、映画スターが大挙して出演するという超豪華キャストで注目を集めた。
この当時までは、映画で売れている役者はあまりドラマに出ないという風潮があった。
だが前年、大手映画会社の大映が倒産。続いて日活も経営不振に陥り、映画製作を中断。
これらの出来事は、隆盛期を迎えようとするテレビ界と、凋落していく映画界の攻守立場が
入れ替わるという、まさに「盛者必衰の理」でもあった。
仲代達矢演じる平清盛は、武士として初めて太政大臣に就任し、宋(中国)との貿易に力を入れるなど、
従来の「驕れる平家」ではなく、先見の明に富んだ人物として描かれている。
また、出家後の清盛を演じるにあたり、頭髪を剃り落とし、丸坊主にしてリアル感を演出している。