9月4日   タイムカプセル(22)昭和51年(1976年)  タイム・カプセル
直線上に配置



この年、14歳のあどけない少女、ルーマニアのナディア・コマネチが、カナダ、モントリオール第21回オリンピックで話題独占。

体操競技で史上初となる10点満点を7回も連発、ライバルのネリー・キムをおさえ女王に。

個人総合、平行棒、平均台で金メダル、床運動で銅メダル獲得。「白い妖精」と呼ばれ大人気。


(映画)第49回アカデミー賞 「ロッキー」

東宝「犬神家の一族」(高峰三枝子石坂浩二)東宝「不毛地帯」(仲代達矢丹波哲郎)松竹「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(渥美清倍賞千恵子浅丘ルリ子)東宝「春琴抄」(山口百恵、三浦友和)東宝「風立ちぬ」(山口百恵、三浦友和)

 
(音楽)第18回レコード大賞「北の宿から」都はるみ

フィーリング (ハイ・ファイ・セット) 春一番(キャンディーズ) ビューティフル・サンデー(田中星児)おゆき(内藤国雄)横須賀ストーリー(山口百恵)パールカラーにゆれて(山口百恵)赤い衝撃(山口百恵)夏にご用心(桜田淳子)ねえ!気がついてよ(桜田淳子)かけめぐる青春(ビューティーペア)

嫁にこないか(新沼謙治) 山口さんちのツトム君(川橋哲史)東村山音頭(平田満)四季の歌(芹洋子)青春時代(森田公一とトップギャラン)ペッパー警部(ピンクレディー)S・O・S(ピンクレディー)失恋レストラン(清水健太郎)ピンクレディーデビュー  
Love is blind (Janis Ian) Hotel California(Eagles) Dancing Queen (ABBA)


(テレビ)NHK「雲のじゅうたん」(浅茅陽子、中条静夫)NHK「となりの芝生」(山本陽子、前田吟、沢村貞子)NHK「男たちの旅路」(鶴田浩二、森田健作、水谷豊)TBS「高原へいらっしゃい」(田宮二郎、由美かおる、三田佳子)TBS「さかなちゃん」(五十嵐めぐみ、高松英郎、新克利、目黒祐樹、名高達朗)TBS「クイズ・ダービー」(大橋巨泉)NET「徹子の部屋」(黒柳徹子) NET「欽ちゃんのどこまでやるの!?」(萩本欽一、真屋順子、高部知子、倉沢淳美、高橋真美)

NET「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」(伊東四朗、小松政夫、キャンディーズ) NET「玉ねぎ横丁の花嫁さん」(杉浦直樹、香山美子、石立鉄男)フジ「女の足音」(若尾文子、高橋昌也、あおい輝彦、乙羽信子)

中京テレビ「お笑いマンガ道場」(桂米丸、柏村武昭)NTV 「桃太郎侍」(高橋英樹)NTV「大都会 闘いの日々」(渡哲也石原裕次郎仁科明子)NTV「愛が見えますか…」(夏目雅子、宍戸錠、根岸明美)

NTV「気まぐれ天使」(石立鉄男大原麗子酒井和歌子、森田健作)TBS「三男三女婿一匹」(森繁久彌、山岡久乃、西田敏行)TBS「乙姫先生」(吉永小百合、小野武彦、赤塚真人)TBS「グッドバイ・ママ」(坂口良子平幹二朗)TBS「赤い運命」(宇津井健、山口百恵、三国連太郎)TBS「赤い衝撃」(山口百恵、三浦友和)




                                                   




(スポーツ)具志堅用高、ジュニア・フライ級世界選手権を獲得(流行語)「記憶にございません」(小佐野健治・国際興行社主)

(社会)ロッキード疑獄事件発覚(2.4)北京天安門事件。無理な文革路線の下で長年にわたって蓄積されてきた民衆の不満が爆発。四・五運動ともいう(4.5)ベトナム社会主義共和国樹立(7.2)モントリオール五輪(7.17〜8.1)で体操男子団体が5連勝。妖精コマネチ人気。

ロ事件で逮捕者相次ぐ、政治家第1号田中角栄(7.27)橋本登美三郎(8.21)ソ連戦闘機ミグ25亡命事件(9.6)日ソ関係緊張。三木改造内閣成立(9.15)米大統領にカーター氏当選(11.2)福田内閣が発足(12.24)

(物故)毛沢東、周恩来、アガサ・クリスティ、武者小路実篤、川崎弘子

(その他)古手川祐子、東宝「星と嵐」でデビュー。夏目雅子、NTV「愛が見えますか…」でデビュー。ビューティー・ペア「かけめぐる青春」で女子プロレスデビュー。松任谷由美、松任谷正隆と結婚。

宝塚公演「ヘルサイユのばら」の大ヒットでベルばらブームに火がつく。知的生活の方法(渡部昇一) ちょっとキザですが(磯村尚徳) ジャンボ宝くじ発売

美内すずえ「ガラスの仮面」(花とゆめ)小泉よしのり「東大一直線」(少年ジャンプ)秋本治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(少年ジャンプ)細川智栄子「王家の紋章」(月刊プリンセス)小林よしのり「東大一直線」(少年ジャンプ)さいとうたかを「サバイバル」(少年サンデー)どん兵衛(日清)




直線上に配置

 


             Love is blind (グッドバイ・ママ 主題歌)







ナディア・コマネチ (Nadia Comaneci)


ルーマニアには国民的英雄が二人いる。

ひとりはドラキュラ伯爵、もうひとりは1976年のモントリオール五輪、
体操の金メダリスト、ナディア・コマネチだ。


14歳のとき、ルーマニア代表として五輪出場、大会史上最年少で金メダル3個を獲得。

その機械のように正確な演技は、世界を驚かせ「ルーマニアの白い妖精」といわれた。


だが帰国後、コマネチは苦難に巻き込まれることになる。




ルーマニアの独裁的指導者・チャウシェスク大統領にとって、スポーツ選手は
外貨獲得の道具に過ぎなかった。

連日のように国家の広告塔として利用された彼女は、ついに決死の覚悟で
アメリカに亡命する。


やがてルーマニア革命で独裁政権が倒れ、コマネチは再びルーマニアの土を
踏むことができた。

その後、五輪出場資格は、16歳以上となり、この規定が変更されない限り
今後も彼女の記録が破られる可能性はない。 











   
   



となりの芝生


高平知子(山本陽子)は、ごく普通のサラリーマン家庭の専業主婦である。

郊外にマイホームを購入し、夫、娘、息子と4人で平穏に暮らしている。


ある日、夫の要(前田吟)が、会社の同僚たちを引き連れて帰ってきた。

聞けば、会議のあとどこかで一杯という話になり、新築祝いで駆けつけたという。


おかげで子供たちは、なかなか夕飯にありつけず「またお客さん」とご機嫌斜めだ。

さらに明日、夫の母・志乃が家を見に来ると言われ、不安がよぎる知子だった…。




橋田寿賀子の脚本で、嫁・姑戦争を描いた辛口ホームドラマ。


やっとマイホームを手に入れた夫婦のもとに、夫の母親が同居して、熾烈な嫁・姑の戦いが始まる。


丁々発止とやりあう嫁(山本陽子)と姑(沢村貞子)の迫真の演技に、視聴者も嫁派・姑派に

分かれ、大きな社会的反響を呼んだ。


嫁姑二人に翻弄される夫(前田吟)の優柔不断なダメ男ぶりも見どころのひとつである。


番組は、夜9時40分からという時間的ハンディにもかかわらず、常に20%前後の高視聴率を記録。

茶の間に、敢えて争いの火種を持ち込む「辛口ホームドラマ」の元祖的存在になった。















さかなちゃん


女ばかり7人姉妹の末っ子・キヨ(五十嵐めぐみ)は、父の圭造(高松英郎)に

男の子として育てられた。


漁師の圭造は全財産をはたいて、長年の夢だった自分の船を手に入れた。

だが、女のキヨを船に乗せられないのが無念だった。


どうしても父の船に乗りたいキヨは、密かに密航を企て、食料を買い込むなど

着々と準備を進めるのだった。



さかなちゃんこと、18歳のキヨは、塩釜の魚市場で男勝りに働く元気のよい娘だ。






女ながら漁師に憧れる彼女は、ある日、遠洋航海に出かける父の船に、密かに乗り込む。

しかし、途中で見つかり、千葉の銚子港で降ろされてしまう。


物語は、そんなキヨの青春時代を軽快なテンポで描いてゆく。


やがてキヨは、東京で恋をし、結婚し、子供を産んだ。

舞台は変わり、母親となっても、彼女と海との関わりはずっと切れなかった。


1976年10月から半年間の長丁場を、見事に演じ切った五十嵐めぐみの人気は急上昇。

天性のカンの良さ、気取らない性格、さわやかな持ち味が、多くの視聴者に愛され、

番組のタイトル「さかなちゃん」が、そのまま彼女の愛称となった。












男たちの旅路


吉岡晋太郎(鶴田浩二)は、警備会社に勤務する筋金入りのガードマンである。

彼は、戦時中の特攻隊の生き残りで50歳。
チャラチャラと遊んでいる若者の姿を見ると我慢ならなくなる性格だ。


そんな吉岡のもとに、柴田竜夫(森田健作)と杉本陽平(水谷豊)の二人の新人が
配属されてきた。

吉岡は陽平たちにギリギリに生きてきた戦時中から今にかけての自分の思いを語る。

若者に好かれようなどと思わない吉岡に、若い二人はなぜか心引かれるのだった。




彼らの勤務先は自殺の名所とされる高層ビル。夜間の自殺者を防ぐのが三人の仕事だった。

ところがある夜、そのビルに自殺を図る若い女性・島津悦子(桃井かおり)が忍び込んだ。



世の中や人々の平安を陰で支えるガードマンたち。彼らの仕事を通して社会のひずみ、
人生の意味を問い直す脚本家・山田太一の書下ろしのシリーズドラマ。


実際に戦争の惨禍を体験した世代で、自身も特攻機の整備士であった鶴田浩二が、
主人公の吉岡役に選ばれている。


特攻隊生き残りの堅物で、若者に迎合することのない中年男・吉岡と部下の若者たちの
反発し、理解し合う姿を温かく描き、視聴者の共感を呼んだ。


部下に向かって「俺は若いやつは嫌いだ」とズケズケ言いながら、若者の軽挙を諄々と
さとす吉岡役の鶴田の渋い演技は、若い年齢層をも魅了した。











高原へいらっしゃい


主人公・面川清次(田宮二郎)は、かつて一流ホテルのフロントマネージャーを務めていたが、
トラブルから客を殴ってしまい、ホテルを解雇された過去をもつ。

以来酒びたりになり、妻(三田佳子)と別居生活を送っていた。

見かねた妻の父(岡田英次)は、面川に経営不振で廃業した八ヶ岳のホテルを与え、300万円の
資金で立て直す試練を課す。

面川は、一緒にホテルを開業するスタッフ集めに奔走する。

堅物の副支配人・大貫(前田吟)、一流シェフ・高間(益田喜頓)、その弟子・亥太郎(徳川龍峰)、
元ホテルマン・靖雄(潮哲也)、元バーテン・史朗(古今亭八朝)




そして、元ウエイトレス・冬子(由美かおる)、元ボイラーウーマン・ミツ(池波志乃)、
地元の青年・七郎(尾藤イサオ)、おなじく地元のおばやん(北林谷枝)。


面川が料理のウデを見込んで引っ張って来た高間や副支配人の大貫、地元の二人を除けば、
みんな都会での生活にどこか陰を引きずった人間たちばかりだった。

「ホテルを絶対に成功させる」という面川の強い決意の裏には、面川自身の人生の再建を懸けた
意味も込められていたのだった。




荒廃したホテルを改築して、一流のホテルにしようと意気込む男とスタッフたちとの奮戦記。

物語は、冬が終わろうとする頃から始まり、夏の観光シーズンまでにホテル運営を軌道に
乗せるべく、主人公・面川と、彼が集めたメンバーそれぞれの人間模様が描かれる。


支配人・面川を田宮二郎が演じ、宿泊客には、毎回多彩なゲストが出演して話題を集めた。

ドラマの舞台となったのは、長野県の野辺山高原にある八ヶ岳高原ヒュッテ。
放映後は、野辺山や軽井沢などにペンションブーム・リゾートブームが巻き起こった。 










     



三男三女婿一匹


つむじ曲がりで気難しいが名医の大五郎(森繁久彌)は、桂病院の院長である。


長男・啓介(新克利)は外科医。次男・健太郎(井上順)は小児科医。

妻の政江(山岡久乃)は元婦長という大家族。

そんな病院一家に三男・英世(加藤健一)は、山岳専門のカメラマンという変わり種。


大五郎は再婚であり、妻の政江は前夫との間に弓子(あべ静江)と君子(池上季実子)

という二人の娘がいる。

これに加えて、養女となったすみれ(泉ピン子)がいる。これが三女。




そしてこの三女・すみれと熱烈な恋愛の末に結ばれた夫が野中和之(西田敏行)である。

この野中は、実は元患者で、すみれと結婚後、事務員として桂病院に勤務している。

以上、文字通りの「三男三女婿一匹」の大所帯だ。



東京・上野の不忍池近くにある病院の大家族が繰り広げる人間臭い触れ合いを描く。


森繁久彌演じる大五郎は、軍医上がりの昔気質で息子たちからは煙たがられている。

そんな世代間の違いから起こる様々な騒動と人間模様が温かくユーモラスに描かれた
ヒューマンコメディーである。


大五郎の息子三人は実の兄弟だが、娘三人は妻方の連れ子と養女である。

薬剤師として勤務する長女・弓子(あべ静江)は、その美しさゆえに複数の男性から
言い寄られるヒロイン的存在で、白衣姿やヘアスタイルも毎回目を引いていた。


また、三女・すみれ(泉ピン子)の婿さんを演じた西田敏行は、気弱でまじめな
病院の庶務主任で、もっぱら院長の森繁にいびられるという役どころ。


だが、森繁の繰り出すアドリブにも、個性あふれる演技で見事に対応し、存在感を
大いにアピールした。本作は、無名の新人だった彼の出世作となった。













女の足音


木綿子(若尾文子)は、明日香流家元扇之丞の高弟として舞踊一筋に打ち込んできた。

そんな彼女を家元の長男・信之(高橋昌也)は愛し、二人は結婚した。


だが、信之の継母・秋代は、信之とは腹違いの弟であり実子の慎吾(あおい輝彦)を、

次期家元にと策動していた。


実際、慎吾の踊り手としての評判は高く、信之は劣等感を抱かずにはいられなかった。

そんな兄の姿を慎吾は、悲しく思い、家を出ようとも考えるのだった。





家元の長男である病弱な夫に献身的につくす妻と、跡目を狙う姑とその息子との葛藤劇。


ヒロイン木綿子役の若尾文子は、次期家元騒動で揺れる日舞宗家の嫁としての立場、

複雑な人間関係の中を必死に生きる女を好演している。



若尾が日本舞踊の師範代として、弟子たちに稽古をつけ、指導するというシーンがある。

そんな時、日舞の振りや所作など、要所要所を振付指導の花柳梅静氏に簡単に聞くだけで、

本番では師範代らしく見事にキメている。


映画女優にとって日舞は必須の教養といわれるが、とりわけ若尾の着物姿での立ち姿、

歩く所作は息を呑むほどの美しさである。


平岩弓枝の作品には、日舞、長唄、神楽など、日本の伝統芸能を題材にしたものが多い。

本作は、そうした平岩弓枝の独特の世界観を知り尽くしている若尾ならではの演技が

際立った作品となっている。














乙姫先生


北海道・岩内高校の教師・田鶴子(吉永小百合)は、音楽学校時代の

恋人・弘志(小野武彦)と札幌で会った。


弘志は、ウィーンで修行中の新進ピアニストである。


田鶴子と弘志は、かつて演奏家を目指して競い合った仲だったが、

いまは会話に共通性を見いだせなかった。






演奏家を諦め、港町の高校に音楽教師として赴任したものの、その毎日は

田鶴子を落胆させるばかり。


翌日、田鶴子はヒスを起こして、反抗的な生徒・登(赤塚真人)を教室の外へ

追い出してしまう。



女教師が音楽学校時代の恋人に会うが、婚約者もいると聞き、生徒に当たってしまう。

原作は山田洋次の書下ろし作品。山田は吉永小百合を念頭において執筆したという。


主演の吉永は、1973年、フジTV・岡田太郎氏との結婚で引退するが、翌年カムバック。

東芝日曜劇場シリーズの常連として出演を続けている。


吉永演じる田鶴子は、その美貌から生徒たちには、乙姫先生というあだ名で呼ばれている。

生徒の自主性を重んじ、やさしいながらも時には厳しい態度で臨むことも。


ある日、あばれんぼ生徒の登に手を焼いた乙姫先生は、彼を教室から追い出してしまう。

が、その直後に登の母親が急死し、登は弟妹たちを養うために学校をやめることになる。


登の境遇を知った乙姫先生は、いてもたってもいられなくなってしまう。本作は、教師と

生徒との心の交流を描き、ほのぼのとした感動を呼び起こす作品となっている。


ドラマの中で乙姫先生がピアノを弾く場面があるが、吉永自身が実際に弾いている。

なんとピアノはプロ級の腕前で、CDも出しているとか。さすが才女だ。















玉ねぎ横丁の花嫁さん


花丸加代子(香山美子)は、七年前、夫に蒸発された女やもめである。

夫の銀平(杉浦直樹)を探して各地を転々としたあげく、今は玉ねぎ横丁で暮らしている。


そんな加代子は、ふとしたことから、運送店の跡取り息子・石橋渡(石立鉄男)と出会う。

つき合いを重ねるうちに二人の仲は深まり、加代子は渡のプロポーズを受け入れて結婚する。


だが隣家に挨拶に行くと、前夫・銀平とばったり再会し、びっくり仰天する加代子だった。





再婚した元未亡人の隣に、蒸発した前夫が住んでいたことから起こる悲喜劇。


「だいこんの花」(1970年)「にんじんの詩」(1972年)から続く「野菜シリーズ」の第九作目。

玉ねぎ横丁を舞台に、好奇心が旺盛な住人達の悲喜こもごもな様子を描いたホームコメディー。


会社をクビになったことを悲観して、妻を捨てて蒸発した花丸銀平は、玉ねぎ横丁に住んでいる。

向かいに住む年下の友人・石橋渡は、銀平を頼りにし、何かと相談ごとを持ってくる。


ある日、思いつめた顔で訪ねて来た渡は、銀平に「好きな人がいる」と告白。

銀平は「思い切って打ち明けろ」と励まし、渡は恋人・加代子に結婚を申し込む。


渡の母親(沢村貞子)は、女が年上で、再婚と聞き反対するが、銀平の取り成しで何とか承諾。


二人は無事結婚するが、相手の女の顔を見た銀平は、腰を抜かすほど驚く。

渡の結婚相手は、銀平が七年前捨てた妻・加代子だったのだ。

加代子も銀平を見て驚くが、渡に本当の事を言えず後ろめたさに苛まれるのだった。



石立鉄男が人生の師として、杉浦直樹に心服していたのは有名な話である。

二人の初共演は、1970年(昭和45年)佐久間良子主演の「北条政子」(NET)だった。

杉浦直樹は、北条政子の夫・源頼朝、石立鉄男は、北条政子の弟・北条義時という配役。


このとき、下戸だった石立が初めて酒の味を覚え、遊びは全て杉浦から教わったという。

杉浦もまた石立のダンディズムを認めていて、当時からとてもウマが合ったようだ。

そういった二人の関係がドラマでそのまま生かされたのが本作品である。











気まぐれ天使


加茂忍(石立鉄男)は、女性下着メーカーに勤務する宣伝部員である。


童話作家の夢を持ちながら、しがないサラリーマンの日々を過ごしている。

最近は、恋人の妙子(大原麗子)とも気まずい雰囲気だ。


そんなある日、忍は街で、行き倒れの老婆・綾乃(悠木千帆)を助ける。

ところが、忍の下宿に、綾乃が腰を据えてしまい、面倒をみるハメになる。


この婆さん、実は酒好きで手癖が悪く、とんだトラブルメーカーだった。




だが忍は「人生は忍の一文字」という父の教えの元、耐え忍ぶことにした。


数日後、綾乃の孫娘・渚(坪田直子)がやって来て、綾乃の面倒をみると言う。

やれやれと、ホッとした忍だったが、なんと下宿に、三人で同居するハメに。



仕事や恋愛に挫折した男が、奇妙な老婆との出会いで、人間性を取り戻していく物語。


主人公・忍を中心に、婚約者の妙子、その妙子に思いを寄せている榎本一光(森田健作)
それに正体不明の老婆・綾乃が絡んで、笑いと涙のドラマが展開される。


忍を下宿させている古本屋のおやじ・荻田(山田吾一)、妙子の妹・真紀(秋野暢子)
など、個性豊かな脇役陣がドラマの面白さを一層引き立てている。


本作は、ほのぼのとした、古き良き昭和のホームコメディで、数ある石立ドラマの中でも
隠れた名作との声が高い。











雲のじゅうたん


彼女の名は、小野間真琴(浅茅陽子)。秋田の城下町・角館の生まれだ。


小さい頃から、女の子としては珍しいものに憧れていた。飛行機である。

来日した女性飛行士キャサリン・スチンソンの雄姿を見て夢を抱いたのだ。


県立高女を卒業した真琴は、東京の旧藩主・白川家に行儀見習いに出た。

だが、単なる行儀見習いで満足するはずがない。





何とか飛行機に乗って大空を存分にとび廻りたい夢はふくらむばかり。

真琴の告白を聞いて、父親(中条静夫)は、腰を抜かさんばかりだった。


ハイカラな白川家当主(船越英二)のとりなしもあって、反対する父親を説得した彼女は、

ついに念願の飛行学校に通うことになった。

紅一点、男ばかりの中で、汗と油にまみれたきびしい訓練が始まった…。



大正から昭和の時代、父親の猛反対を押し切って飛行士になる夢を成就させた女性の物語。


女性の半生記という従来の朝ドラ路線を踏襲しながらも、ヒロイン像に大きな変化が見られた。

これまでは夫を立て、家庭を守る良妻型が多かったが、自分の夢を追い続ける主人公が登場。

「翔んでる女」という言葉が流行し、女性の自立が叫ばれた時流とも一致し、反響を呼んだ。


本作の主人公は、努力し苦労して夢を実現するというよりも、むしろ、持ち前の陽気な人柄と

行動力で信頼をかちとり、人々に「何とかしてあげたい」気持ちにさせ、次々に難関を突破

してゆく。そんな行動力溢れるヒロインを浅茅陽子が発溂と演じ、茶の間の人気をさらった。


劇中で、ヒロインの真琴は「それでは」という意味で「へば」という秋田弁を使っていた。

それで、東京に出てきた彼女は「へばちゃん」というあだ名をつけられてしまう。

番組が終了すると、この「へばちゃん」は、浅茅の代名詞になってしまった。


だが彼女は、それを逆手に取って、趣味である料理を題材に「へばちゃんの台所」という

著書を出版、さらに居酒屋「やちぼうず」を開店するなど、ドラマのヒロインさながらの

バイタリティを見せている。












大都会


城西署に派遣されてきた刑事の黒岩(渡哲也)は、寡黙だが正義感の強い男。


両親がいないため、妹の恵子(仁科明子)の親代わりとなって支えている。

彼女には、兄が刑事だという理由でやくざに暴行された暗い過去があった。


ある日、マンションの一室で、殺人事件が起きる。

容疑者は、小沼三吉(石橋蓮司)という暴力団員だった。


城西署の丸山刑事(高品格)と黒岩がこの事件を担当。




小沼には妹がおり、名前を元子(水沢アキ)と言った。

丸山刑事が、元子を会社に訪ね、呼び出す。


公園に呼び出された元子は、小沼とは五年前に父親の葬式で会ったきりだと言う。

もともと縁が薄かったが、今はもう、関係がないと元子はかたくなだった。


それに元子はもうすぐ、会社の重役の息子と結婚する予定だと言う。

「もう勤め先に来ないでください!」と泣き叫ぶ元子。


だが、黒岩と丸山は元子を尾行するしかない。必ず、小沼が接触してくるはずだ。

元子は会社帰りに、婚約者と会っていた。まじめで、やさしそうな男性だった。


兄が、妹の幸せを壊す…。元子の姿と、妹の恵子の姿が黒岩の中で重なった。




東京・新宿「城西署」を舞台に、暴力団担当の刑事と新聞記者の活躍を描いた社会派ドラマ。


主人公・黒岩(渡哲也)は、捜査一課ではなく暴力団相手の四課担当、派手な銃撃戦もなく、
人間ドラマが主軸となっている。


出演は渡哲也、石原裕次郎の他に、中条静夫、高品格、佐藤慶、柳生博といった渋い役者陣で
いたずらに喋らず、寡黙な大人の演技を披露している。


主演の渡は、1974年(昭和49年)大河ドラマ「勝海舟」に出演中に急病で途中降板した。

その後も病状は思わしくなく、病気回復を待って、1976年一月に本作はスタートしたが、
渡にとって二年ぶりのテレビ出演となった。


本作は、平均15%の視聴率で、その年の八月にいったん終了。

翌年1977年四月から第二シリーズとして再開。石原が記者から医者になっただけで設定は
前作とほぼ同じだったが、様相は一変した。


逃走する犯人が火炎放射器でパトカーを次々と焼き払うなど、社会派ドラマからアクション
ドラマに変身したのである。


車の爆破シーンを渋谷の住宅街でやってのけ大騒ぎになるなど、過激なロケが話題になった。

「ドンパチ」をエスカレートさせたため、制作費が嵩んだが、視聴率も20%台に上昇した。













     



桃太郎侍


小野派一刀流の使い手・桃太郎(高橋英樹)は、母を亡くし、天涯孤独の浪人。

実は彼は、相模(神奈川県)のある藩の大名の息子で、本名は松平鶴次郎という。


双子の弟として生まれたために、忌み子として江戸で乳母の手で育てられた。

その乳母が亡くなるまで実の母と信じ、立派な侍になって母を喜ばそうと思っていた。


母思いだった彼は、人生の目標を失い、これからどうしたものか、と思っていた矢先、

思わぬ縁で下町の長屋の住人となる。


寺子屋に行けぬ長屋の子供たちに手習いを教えようか、などと思い始めたところで、

自分の国許の跡継ぎを巡るお家騒動に巻き込まれてしまうのだった。





1939年(昭和14年)岡山県の山陽新聞に連載された山手樹一郎の時代小説のドラマ化。


桃太郎侍といえば、ド派手な衣装と「ひとつ、人の世の生き血を」で始まるあの数え歌。

だが番組が始まった当初は、この数え歌は登場せず、衣装も黒一色の着流しだった。 

視聴率もイマイチだったため、主演の高橋自らの提案で、ド派手路線へ変更したという。


物語は、大名の息子として生まれながら、江戸の長屋暮らしを選んだ桃太郎(高橋)が、

庶民を泣かす鬼退治をするという痛快娯楽時代劇。

本作はシリーズ化され、約5年間、全258話が制作されるという大ロングランとなった。


映画にドラマに、桃太郎を演じた俳優は数多いが「桃太郎侍」といえば、この作品と

言えるほど、高橋英樹の代表作となった。








       



徹子の部屋(てつこのへや)


当時、紅白の司会などで活躍していた黒柳徹子がゲストと語り合うトーク番組。

ゲストに関する綿密な事前勉強を伺わせる黒柳の誠実な司会が、ゲストの本音を引き出すとともに、
アットホームな雰囲気を漂わせ、主婦層を中心に絶大な人気と信頼を獲得している。


第1回目のゲストは森繁久彌。ゲストの多くは、著名な芸能人だが、時に伝統芸能や芸術分野で
功労のある無名の人も登場、この番組に教養番組的な色彩を添えている。

2015年(平成27年)5月には、通算一万回目の放映を迎えるという大長寿番組となっている。















     



欽ちゃんのどこまでやるの!  


萩本欽一と真屋順子扮する夫婦が繰り広げるバラエティ番組。通称「欽どこ」


時代を彩った様々なスターがゲスト出演して爆笑トークを展開した。

お茶の間コントを中心に、シンプルな構成ながら、子供からお年寄りまで
幅広い年齢層の視聴者から支持を得た。


関根勤、小堺一機、わらべ、見栄晴など多くのタレントを輩出し、
1970〜80年代のテレビバラエティにおいて、ひとつの歴史を築いた。



三つ子の姉妹「わらべ」は、デビュー曲「めだかの兄弟」が大ヒットした。


だが長女役の高部知子がスキャンダルで脱退を余儀なくされる。

急遽、直後の放送は生放送に差し替えられたが、皮肉にもそれが
番組最高視聴率42%を獲得することになった。


萩本は「欽ちゃんのドンとやってみよう!(欽ドン)」「欽ちゃんの週刊欽曜日」
の視聴率を足すと、100%を超えたことから「視聴率100%男」の異名を取る。


だが、1985年(昭和60年)充電と称して全番組を終了、第一線を去ってしまった。

「夢を実現して、頂点にいるのはつまらないと思った」と自身の著書には記されている。