9月5日   タイムカプセル(23)昭和52年(1977年) タイム・カプセル
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この年、ロカビリーブームの発祥地、東京・有楽町の日劇ミュージックホールが経営不振で閉鎖、
25年の歴史に幕を閉じた。

(映画)第50回アカデミー賞「アニー・ホール」
スター・ウォーズ」「未知との遭遇」

松竹「男はつらいよ 寅次郎と殿様」(渥美清倍賞千恵子、真野響子、嵐寛寿郎)松竹「幸福の黄色いハンカチ」(高倉健倍賞千恵子武田鉄矢渥美清)東宝「八甲田山」(高倉健、北大路欣也三国連太郎栗原小巻秋吉久美子

東映「人間の証明」(岡田茉莉子、松田優作、三船敏郎)松竹「八つ墓村」(萩原健一渥美清山崎努、小川真由美、田中邦衛橋爪功)東宝「悪魔の手毬唄」(石坂浩二岸恵子)東映「宇宙戦艦ヤマト」

(音楽)第19回レコード大賞「勝手にしやがれ」沢田研二

 秋桜 (山口百恵) 夢先案内人、イミテイション・ゴールド(山口百恵)気まぐれヴィーナス(桜田淳子)津軽海峡冬景色(石川さゆり)渚のシンドバッド、ウォンテッド、カルメン’77(ピンクレディー)あずさ2号(狩人
愛のメモリー松崎しげる)北国の春(千昌夫)思秋期(岩崎宏美)花街の母(金田たつえ)なみだの桟橋(森昌子)  Hotel California (EAGLES)  Dancing Queen (ABBA)

(テレビ)NHK「最後の自画像」(山内明、加藤治子、いしだあゆみ)日テレ「アメリカ横断ウルトラクイズ」(福留功男)日テレ「大都会PART2 (渡哲也石原裕次郎)日テレ「気まぐれ本格派」(石立鉄男三ツ矢歌子、山本学)日テレ「チャーリーズ・エンジェル」日テレ「バイオニック・ジェミー」TBS「岸辺のアルバム」(八千草薫杉浦直樹竹脇無我)TBS「眠り人形」(船越英二、加藤治子、長山藍子)TBS「赤い激流」(宇津井健水谷豊竹下景子緒形拳、石立鉄男、山口百恵)

TBS「赤い絆」(山口百恵、国広富之、左幸子、石立鉄男)TBS「横溝正史シリーズ 本陣殺人事件」(淡島千景古谷一行長門勇)フジ「華麗なる刑事」(草刈正雄田中邦衛、檀ふみ)フジ「ドリフ大爆笑」テレ朝「特捜最前線」(二谷英明、藤岡弘、大滝秀治、西田敏行)テレ朝「江戸川乱歩の美女シリーズ」(天知茂、高見知佳、荒井注)テレ東「ピンクパンサー



                                                   



(スポーツ)王貞治、通算本塁打756号(世界記録)を達成(9.3)国民栄誉賞が創設され、第一号受賞者は王貞治(9.5)
(ファッション)パンクモード(セックス・ピストルズに代表されるパンク・ロックから流行)

(流行語)「カラオケ」 「話がピーマン」 「中味がない」「普通の女の子に戻りたい」(キャンディーズ) 「よっしゃ、よっしゃ」(田中角栄) 「ワン・パターン」(せんだみつお) 「母さん、僕のあの帽子はどうしたんでしょうね」(人間の証明) 「たたりじゃあ」(八つ墓村)

(社会)カーター氏、第39代米国大統領に就任(1.20)東京地検、小佐野・児玉を起訴、ロッキード事件の捜査は事実上凍結に(1.21)日本赤軍、日航機ハイジャック事件。ボンベイ−バンコック間で乗っ取られ、ダッカ空港に強制着陸(9.28)白黒テレビ放送が廃止(9.30)パレスチナ解放人民戦線(PFLP)のメンバー4人によるルフトハンザ機(西ドイツ)乗っ取り事件(10.13)

(物故)田中絹代近衛十四郎チャールズ・チャップリンジョーン・クロフォード

(その他)7月15日、岡田奈々ストーカー暴漢事件。 大竹しのぶ「青春の門」で映画デビュー。香坂みゆき、ポリドールから「愛の芽ばえ」で歌手デビュー。7月17日、日比谷野外音楽堂のコンサートで、キャンディーズ解散発表。「普通の女の子に戻りたい!」。榊原郁恵、コロンビアから「私の先生」で歌手デビュー。吉田拓朗浅田美代子と結婚。

カネボウCM「Oh!クッキーフェイス」に19歳の夏目雅子。アップルコンピュータ[米]プリントゴッコ[理想化学工業] マイルドセブン(20本入 150円)発売。(日本専売公社)八甲田死の彷徨(新田次郎) 松本零士「銀河鉄道999」(少年キング)ジャスピンコニカ  宝焼酎「純」平均寿命世界一となる(男72.69歳、女77.95歳)



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                                                   愛のメモリー(松崎しげる)






岡田奈々 (おかだなな)


高校在学中にオーディション番組に出演し優勝。

1975年「ポッキー」の初代CMガールに起用されたことから、
清純派アイドルとして爆発的な人気が広がった。


1977年7月15日、刃物を持った暴漢が港区の自宅マンションに侵入し、
数時間本人を監禁する事件が発生。

このとき室内で何があったのか、異常なまでの報道合戦が繰り広げられた。
その後、事件は未解決のまま時効が成立した。










アメリカ横断ウルトラクイズ


「ニューヨークへ行きたいかぁ!?」

福留功男が後楽園球場に集まった挑戦者たちを巧みにアジテートする。


当時は、外国旅行が優勝賞品の定番だった時代。それを逆手にとり
旅行自体をクイズの舞台にした、かつてないスケールのクイズ番組。


〇×クイズでは、たった1問で敗退する者、せっかく予選を勝ち上がったのに
空港のじゃんけんで敗れる者など、様々なドラマが見られた。



知力だけではなく、体力や時の運も試され、しかも過酷な罰ゲームまである。


クイズに答えながらアメリカ大陸を横断して、最終決戦地のニューヨークまで
勝ち残り「クイズ王」となった者たちは、一躍スターとなったのだ。












     



ピンクパンサー


ピンクパンサーは、とぼけた顔のピンクの豹である。


好きな色もピンクで、足跡までピンク。オスで、無口だったが最近はよく喋る。

職業は、宝石泥棒であり、無能なクルーゾー警部によく追いかけられている。


愛嬌溢れるキャラクターと、テンポのよいドタバタ感が、幅広い世代に親しまれている。


映画館でも上映されたこの作品は、1965年度アカデミー賞(アニメ部門)に輝いている。

また同年、ヘンリー・マンシーニ「ピンクパンサーのテーマ曲」もノミネート(作曲賞)された。












     



ドリフ大爆笑


「8時だョ!全員集合」と並び、ザ・ドリフターズの代表作となったコント番組。


この番組から数々の名作コントが生まれた。なかでも代名詞となったのは「もしもシリーズ」だ。


「秋といえば○○」などと、いかりや長介の前口上からはじまり「もしもこんな○○があったら」
と、居酒屋やラーメン屋などで、いかりやがメンバーにひどい目に遭わされるコント。

オチはいかりやの「だめだこりゃ」の一言で締められるのがお約束となっている。


スタート時は、5人による「全員コント」が多かったが、しばらくして「いかりや・高木・仲本」と
「加藤・志村」のそれぞれのチームに分かれて、別々のコントが目立つようになった。


加藤・志村コンビによるコントは「茶とけん」という冠タイトルが付いていた。
この路線は、のちに特別番組「志村けんのバカ殿様」(1986年)に受け継がれた。


当時の女性アイドル歌手などがゲストとしてコントに参加していた。由紀さおりや渡辺美奈代、
松本伊代などは、レギュラー格として、メインの役柄で出演していた。












岸辺のアルバム


田島則子(八千草薫)は、夫と2人の子供を持つごく普通の主婦である。

夫・謙作(杉浦直樹)は大手商社の部長、娘・律子(中田喜子)は有名私立の女子大生。

そして息子・繁(国広富之)は、大学受験を目前に控えた高校生だ。


多摩川沿いの一戸建てに暮らす一家は、平穏無事を絵に描いたような存在であった。

専業主婦の則子の日々は、炊事、洗濯、掃除、買い物で明け暮れる。

家族が揃うことは滅多になく、夕食も独りで済ますことが多い。





そんなある日、則子のもとに、見知らぬ男性(竹脇無我)から電話がかかってくる。

最初、市場調査を装っていた男の話は、回を追うごとに誘惑の色を帯びてくる。

「こんな情熱を引き出してくださったのは、奥さんなんです。
電話だから言えるんですが、奥さんの美しさなんです」



本作は、1974年実際に起きた多摩川決壊をモチーフにしたホームドラマ。
一見幸福そうな家族が崩壊に進む過程をシリアスに描いた衝撃作である。


電話が一家に一台だった当時、家庭におけるその存在感は大きかった。
ドラマの中の電話は、非日常的な事件を引き起こすきっかけとなっていた。


則子は、見知らぬ男性からかかってきた一本の電話を発端に、定期的に会話を
楽しむようになり、喫茶店で会うようになる。

そこで語られるクラシック音楽や絵画の話題こそ、まさしく則子にとって
非日常的な出来事であった。

やがて二人は、互いの家庭を壊さないという約束のもと、ラブホテルに通うようになる。


商社マンの夫・謙作は、会社が危機に陥ったため、東南アジアから入国させた女性を
クラブへ斡旋するという仕事に手を染めざるを得なくなる。


秀才であり、それを誇りにも感じていた娘・律子は、交際していたアメリカ人に
裏切られ、レイプ・中絶を経験する。

息子の繁は、そんな家族の秘密を知って、ドラマの終盤で一気にぶちまける。


これまでテレビドラマで描かれることのなかったこれらの非日常的な出来事は、
多くの視聴者に衝撃を与えた。


最終回、彼ら家族の家は、多摩川の決壊による濁流で押し流されてしまう。

壊れゆく家からたった一つ持ち出せたのは、家族の平穏な歴史を収めた
一冊のアルバムだけだった。


物質的にも、精神的にも多くのものを失い、再び否応なく家族として生きて
行かざるを得なくなった4人の後ろ姿が映しだされる。

そして彼らの後ろ姿に、エンディングのテロップが流れる。


「これが3年前の田島家の姿である。そして今、この4人がどんな幸せの中にいるか、
どんな不幸せを抱えて生きているかは、みなさんの想像にゆだねることにする…」

家族とは何かという問いに、最後まで安易な答えを与えない、きわめて冷徹な結末であった。












最後の自画像


銀行を定年退職した小塚貞一(山内明)が、旅行に出たまま行方不明になった。


捜査願を受けた警察は、小塚の身辺を調べるが、家出や自殺の動機は見当たらない。


だが足取りを辿るうち、家を出る前に銀行から大金を引き出していた事実が判明。


さらに在職時の部下だった福村慶子(いしだあゆみ)という女性が浮かび上がった。

どうやら、この女性と蒸発して、新たな人生を歩むつもりだったらしい。






1960年「サンデー毎日」に掲載された松本清張の小説「駅路」のドラマ化。


原作は、全編30ページほどの短編で、清張の短編の中でも、傑作との呼び声の高い作品。


ドラマ化に当たって、脚本を担当した向田邦子は、大胆な脚色を加え、タイトルも変更した。


原作の中で、失踪した男性は定年を機に、それまでガマンし続けた家庭生活や家族を捨て、

自分のためだけに余生を過ごすことを求めたように描かれている。


向田は、失踪した男性の人生を、同じく家族や仕事を捨てて、後半の人生をタヒチで過ごした

フランスの画家・ゴーギャンの人生を重ね合わせて、物語をより興味深く膨らませた。


大胆なアレンジだが、それでいて原作の描かんとしているテーマに深みをもたらしている。


松本清張本人も、雑貨屋の老主人という役柄でドラマに出演しており、原作が改編されたことに

こだわりはないようで、むしろそれを喜んでいる様子であった。












赤い激流


音楽大学ピアノ科助教授の大沢武(宇津井健)は、一流のピアニストを育てたいと思っていた。


あるとき大沢は、場末の雑居ビルにある酒場でジャズピアニストの田代敏夫(水谷豊)と出会う。

大沢は、この田代敏夫に天才的なピアノの才能を見い出し、彼の指導を買って出る。


一方、正式なピアノ教育を受けていなかった敏夫も、渡りに船と意気投合するのだった。

だが折悪しくビルに火災が発生。大沢は敏夫を救うため、利き腕である右腕を負傷してしまう。






音楽大学を舞台に、師弟で義理の親子の二人が殺人事件に巻き込まれる「赤いシリーズ」第5弾。



水谷豊が演じるのは、殺人事件の容疑者となりながらも、ピアノコンクールの優勝を目指す田代敏夫。

それまで「赤いシリーズ」の顔だった山口百恵に代わり、悲運に次ぐ悲運に見舞われる主人公を熱演した。


予想外の展開(実父役の緒形拳がスケジュールの都合で、いきなり殺される)に加え、ピアニストに

なりきった水谷の迫真の演技で最終回は 37.2 %という、シリーズ最高視聴率を記録した。


劇中、何度も演奏されるショパンの「英雄ポロネーズ」の指運びを、水谷は猛特訓したという。

(実際の演奏は、作曲家の羽田健太郎が担当した)


この曲は、2005年「相棒 3 」の第15話「殺しのピアノ」の回でも、水谷演じる刑事・杉下右京が

生演奏を披露している。












     



チャーリーズ・エンジェル


ジル・ケリー・サブリナの三人組は、チャーリー探偵事務所で働く女性調査員。

三人は、声でしか姿を現さない所長チャーリーからの指令を受け、時には変装や

潜入も行い、パワフルなアクションで事件を解決に導いてゆく。


あるとき、高級クラブのバニーガールが2人続けて殺害される事件が発生。

捜査当局は、チャーリー探偵事務所に事件の解明を依頼する。

ジルたちは、バニーガールに化けて潜入調査を開始しようとするのだが…。



元婦人警官の美女三人組が、お色気と空手、柔道などを武器に難事件に挑戦するTVドラマ。

ビキニ姿で派手なアクションを繰り広げるお色気シーンが男性視聴者を楽しませた。


日本での一番人気は、ジル役のフォーセットだった。輝くブロンドとノーブラで揺れる胸に

ノックアウトされた男は多い。彼女のポスターは世界中で爆発的に売れた。


番組は好評により、1976年から1981年まで、シーズン1から5まで制作された。

エンジェルのメンバーはシーズンごとに入れ替わっているが、メンバー3人の中に

必ずブロンド美女がいるのもお約束になっていた。










     



バイオニック・ジェミー


元プロテニスプレイヤーのジェミーは、スカイダイビング中にパラシュートが破れ瀕死の重傷を負う。

婚約者であるスティーブ空軍大佐は、科学情報局に頼み込み、彼女にバイオニック移植手術を施させた。


両足、右腕、右耳をサイボーグ化された彼女は生命の危機からは脱したものの、移植の拒絶反応から、

スティーブのことを含めて全ての記憶を失ってしまう。


故郷のカリフォルニアに戻った彼女は、育ての親スティーブンス夫妻の牧場で第二の人生を送ることに。

空軍基地内の学校での教師の職も決まり、子供達のいたずらにもめげずに教師生活をスタートさせた。




不慮の事故で瀕死の重傷を負った女性ジェミーは、最新ハイテク医療によりスーパーウーマンとして蘇る。


1km先の音を聞き分ける耳、弾丸並みの足の速さ、そして車を軽々と持ち上げるパワーを手にした彼女は、

科学情報局の諜報員として、さまざまな悪に立ち向かう。


モデル出身で抜群のプロポーションのリンゼイ・ワグナーが、スーパーマンもどきの胸のすく活躍を見せ、

日曜午後10時半という深夜枠にも関わらず、高視聴率を記録、男女を問わず多くのファンを獲得した。
















眠り人形


守屋周一(船越英二)の所に、二人の妹が、それぞれの事情を抱えて訪れる。

上の妹・三輪子(加藤治子)は、金の工面に困っていた。

夫が事業で失敗して莫大な借金を抱えてしまい、兄の周一に相談に来たのだった。


一方、下の妹・真佐子(長山藍子)は、夫の浮気に怒り、家を飛び出してきたのだ。

なかなか本題を出せない中、妹はついつい「子供の頃はお姉さんのお古ばかりもらっていた。

父はお姉さんばかり可愛がっていた」などと、常に損な役回りだったグチが出てしまう。




ところが大人になった今では、立場が逆転していることをまだ二人とも気づいていなかった。


姉にずっとコンプレックスを抱いていた妹は、結婚後、嫁ぎ先の商売が繁盛して、裕福な

マダムになったのに、姉は夫の借金で悩み、女性としての輝きまで失ってしまったのだった。




落ちぶれた姉、金はあるが離婚したい妹、お互いに本音を隠しつつ、意地の張り合い、

僻み合いで、ついつい衝突してしまう。


船越英二演じる周一が、そんな妹たちをとりなし「何でも話すのが姉妹だろう」と諭す。

一見たじたじで頼りなさそうだが、根はしっかりしている長男キャラを好演している。


意地や見栄を張りつつも、最後はやっぱり血のつながり。お互い率直に話をする中で、

それぞれの悩み・苦労を徐々に理解し合い、助け合うようになっていく。


和解のきっかけとなったのが「眠り人形」の思い出話。横に寝かすと目をつぶる人形で、

女の子は幼い時分、たいてい遊んだことがあるかも知れない。


本作は、家族だからこその照れくささや取り繕いが、会話の中に巧妙に描かれていて興味深い。


普段は素っ気なくても、いざというときは互いの幸せを喜べる絆が、きっと家族にはあるんだなと

感じさせてくれる珠玉の一篇。














特捜最前線


退職間近の刑事・西田(中村竹弥)に暴力団との癒着の疑惑が持ち上がる。

それを知った警視庁特命課の刑事達は、密かに西田の行動を調査する。


だが西田は、特命課の課長・神代(二谷英明)の先輩だった。

後輩である神代は、出来うる限りの事をして西田を何とか救おうとする。

やがて暴力団幹部の矢沢が逮捕された。

刑事達は、罪を見逃す代わりに西田と手を切るように持ちかけるのだが。





管轄にとらわれず、様々な事件を担当する警視庁特命捜査課メンバーの活躍を描く。


配役は、エリート警視正の二谷英明を中心に、強面の藤岡弘、おやじさんこと
大滝秀治、庶民派の西田敏行、熱血漢の誠直也など、個性派揃い。


登場する刑事は、いずれも正義感溢れる精鋭ながら、人知れぬ苦悩や葛藤を
抱えており、毎回シリアスで濃密な捜査が繰り広げられる。


刑事ドラマに付き物のアクションは少なく、発砲シーンは年に数回だけという。

物語の核となるのは、哀愁帯びた人間模様であり、ナポリの民謡歌手・チアリーノ
が歌う主題歌「私だけの十字架」もこの哀愁の色調を盛り上げている。


社会の歪みを描くリアルな人間ドラマとして高い評価を得たが、仮面ライダーなど
特撮出身の俳優が多く「特撮最前線」とも呼ばれた。














         



江戸川乱歩の美女シリーズ


私立探偵の明智小五郎(天知茂)は、飛行機の機内で、和装の女性と隣あわせになる。

二人は何気ない会話から、お互いの職業を知り、意気投合する。


女性の名前は北見佳子(萬田久子)有名な推理小説家だった。

和やかな会話のうちに空の旅は終わり、明智は帰京した。


事務所へ戻った明智は、北見佳子の推理小説を読み耽っていた。

すると電話が鳴る。なんと北見佳子からの電話だった。



用件は、今夜21時、東洋ホテルの18階に来てほしいというものだった。


だがその夜、ホテルへやって来た明智が聞いたのは、従業員の叫び声だった。

北見佳子が化粧室で、何者かに襲われて首を締められたのだ…。

(第22話 禁断の実の美女)




江戸川乱歩原作の推理小説をベースに、名探偵・明智小五郎が怪奇事件の解決に挑む。

明智小五郎の甘いマスクとダンディな佇まい、そして毎回登場する事件の鍵を握る
謎の美女たちの官能シーンが見どころとなっている。


天知茂にとっては、本作の主人公・明智小五郎が絶好の当たり役となった。

苦み走ったニヒルな表情から醸し出される、彼の独特な雰囲気が作品全体に充満。


変装の名人でもある明智が別人に成りすまし、犯人の前で正体を明かす場面は、
ドラマ最大の見せ場となった。


また、元ドリフターズのメンバー荒井注が波越警部役として登場しており、
ドリフ時代を彷彿とさせるとぼけた演技で笑いを誘った。













横溝正史シリーズ 本陣殺人事件


金田一耕助(古谷一行)は、駆け出しの私立探偵だが、一応日本橋に事務所を構えている。


あるとき彼は、恩人の久保銀造(内藤武敏)と共に、岡山県のとある本陣までやって来る。

じつは銀造の姪・克子(真木洋子)の結婚式に参加するため、やって来たのだ。


克子の結婚相手は、本陣屋敷の長男・一柳賢蔵(佐藤慶)だった。

披露宴が無事に終わり、その日の夜更け、突如、思いがけない琴の音が屋敷に響き渡る。


金田一たちは、一面の新雪を踏んで、音のした離れに赴くと、内側から鍵がかかっていた。




鍵を壊し、中に入った一同は、床を血に染めた新郎新婦の死体を発見し、驚愕する。

雪の上の足跡は、駆けつけた一同のものだけであった。

一体犯人はどこから来て、どこへ消えたのだろうか…?



1946年(昭和21年)月刊誌「宝石」に連載された横溝正史の推理小説「本陣殺人事件」のドラマ化。

一面の新雪で足跡一つない離れ座敷で起こった密室殺人に金田一が挑むミステリーサスペンス。


アメリカの推理作家ディクスン・カーの密室トリックに触発されて書き下ろした作品であり、
金田一耕助が初登場する本作は、横溝正史の出世作となった。


本陣とは、江戸時代に大名や幕府役人が宿泊した旅籠の別称である。

劇中、披露宴が催された一柳家は、本陣の末裔で地元の名士という設定になっている。


その本陣の離れ座敷で、新郎新婦が惨殺されるという事件が発生する。

だが、新雪に囲まれた座敷は完全な密室で、犯人の逃走した形跡も見当たらなかった。


事件の調査の途中、金田一耕助は、一柳家の三男・三郎の趣味・嗜好に非常な興味を示す。

三郎は、推理小説マニアであり、彼の部屋の本棚には、探偵小説がずらりと並んでいた。

その後、三郎と密室殺人の論議を交わした金田一は、ついに謎解きの手がかりを得たのである。


名探偵・金田一耕助をひょうひょうとした演技で好演した古谷一行は、1977年から2005年
まで29年間、一貫して金田一を演じ、自身の最大の当たり役となった。










八つ墓村   (松竹映画)


平家の落武者8人が惨殺されたという「八つ墓村」

数百年の時を経て、そこでは、32人もの男女が殺害されるという凄惨な事件も起きていた。


そしてさらに時は経ち、再び村で連続殺人が発生する。

事件の謎を解くため、探偵・金田一耕助が村を訪れる。


1949年(昭和24年)月刊誌「新青年」に連載された横溝正史の同名推理小説のドラマ化。





かつて皆殺しにされた落武者の怨念に彩られた岡山県の山村・八つ墓村が舞台。


そこへ20数年ぶりに帰郷した旧家の跡取り息子・寺田辰弥(萩原健一)は、続発する血生臭い

殺人事件に巻き込まれてしまう。


しかも辰弥は、相次ぐ殺人事件の犯人ではと、村人たちに疑われ、身の危険を感じるようになる。



最終的に、渥美清扮する金田一耕助が登場し、この連続殺人事件は、祟りという迷信を利用した

旧家の遺産をめぐる犯罪であることが判明する。


なお、渥美清が起用されたのは、原作者である横溝正史の希望によるもので、横溝自身の思い描く

金田一耕助のイメージに最も近い役者ということで抜擢されたという。



本作は、戦国時代まで遡る落武者の祟り、二十数年前の大虐殺、村の地下に伸びる巨大鍾乳洞

での大冒険、といった伝奇的な道具立てが満載で、映像的見どころが多い。


また原作では、戦後まもなくの時代設定だったが、映画では、現代(昭和52年)が舞台となっている。

祟りなどという因習が、今なお根強く人心に残存していることを、より強く印象づけることにもなった。