タイムカプセル 戦後編 (5) 昭和24年 (1949年)    タイム・カプセル

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この年、藤山一郎・奈良光枝のデュエットでレコード発売された「青い山脈」が空前の大ヒット!

同タイトルの映画主題歌であるこの曲は、公開に先立って発売されたが、軽快なメロディーが人々の心をつかみ、

映画公開時には観客が合唱できるまでに浸透していた。


(映画)第22回アカデミー賞「オール・ザ・キングスメン」(主演 プロデリック・クロフォード)

哀愁」(ロバート・テーラーヴィヴィアン・リー)「若草物語」(エリザベス・テイラー

東宝「青い山脈」(池部良原節子木暮実千代、杉葉子、若山セツ子)東宝「異国の丘」(上原謙、花井蘭子)東宝「女の一生」(岸旗江、沼崎勲)松竹「朱唇いまだ消えず」(高杉早苗佐分利信久我美子佐田啓二杉村春子)松竹「悲しき口笛」(美空ひばり津島恵子

松竹「破れ太鼓」(阪東妻三郎、村瀬幸子、森雅之桂木洋子)松竹「晩春」(原節子、笠智衆月丘夢路杉村春子三島雅夫)松竹「お嬢さん乾杯」(佐野周二、原節子)大映「痴人の愛」(宇野重吉、京マチ子、森雅之)新東宝「野良犬」(三船敏郎志村喬淡路恵子)新東宝「銀座カンカン娘」(高峰秀子、灰田勝彦)


(音楽)「青い山脈」藤山一郎、奈良光枝「銀座カンカン娘」高峰秀子「別れのタンゴ」高峰三枝子「長崎の鐘」藤山一郎「悲しき口笛」美空ひばり
Some Enchanted Evening(Perry Como)
(ラジオ)NHK クイズ番組「私は誰でしょう」



                                               




(スポーツ)全米水上選手権大会、古橋広之進選手が1500m、400m、800mと世界新記録を樹立(8.16)

(流行語)「ニコヨン」「三バン」(地盤、看板、カバン)「駅弁大学」「フジヤマのトビウオ」

(社会)東京消防庁が「119番」設置(3.1)東京の盛り場に靴磨きの少年や花売り娘が激増(3.1)東京都が女子学童に増えている頭髪シラミの駆除にDDTの使用を開始(3.8)1ドル 360円の単一為替レート実施(4.25)「日本国有鉄道」が発足(6.1)初代総裁に下山定則。

「下山事件」国鉄の下山総裁が足立区の常磐線の線路上でれき死体で発見(7.6)湯川秀樹が中間子論で日本人初のノーベル賞受賞(11.3)「三鷹事件」中央線三鷹駅車庫内で無人電車が突然暴走、付近の民家に突入(7.15)

「松川事件」東北本線金谷川−松川間のカーブで青森発上野行の旅客列車が脱線転覆(8.17)中国共産党の毛沢東主席が北京で中華人民共和国成立を宣言(10.1)国民党政府が首都を成都から台湾の台北に移転(12.7)

(物価)ラーメン20円、カレーライス50円、映画館40円、週間朝日12円

(その他)岡田英次、松竹「花の素顔」でデビュー。淡路恵子、東宝「野良犬」でデビュー。美空ひばり初レコード曲「悲しき口笛」映画化(10.1)

初の「お年玉付き年賀はがき」発売(12.1)景品は、特等がミシン(当時2万3000円)「漫画王」創刊(秋田書店)「少女」創刊(光文社)秋好馨の「轟先生」連載開始(読売新聞)「サザエさん」連載開始(朝日新聞)「あんみつ姫」(倉金章介) が雑誌「少女」(光文社)に連載開始。

缶ピース(50本入)発売。(日本専売公社)映画の主題歌のヒットが相次ぐ−「悲しき口笛」「青い山脈」「月よりの使者」「銀座カンカン娘」など。ブギブーム続く「三味線ブギウギ」「河童ブギウギ」など。街頭紙芝居が人気。観客の子ども1日50万人という最大の娯楽に。


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    Some Enchanted Evening(Perry Como)








紙芝居屋(かみしばいや)


夕方になると、神社や広場に拍子木を叩いてやってくる。

自転車の荷台に紙芝居の箱を積み、上演すると、子供たちに人気を博した。
水飴や昆布など、菓子も売っていた。


出し物は二作品。シリアスものと漫画もの。
この頃の人気作品に「鞍馬天狗」「黄金バット」などがある。


紙芝居が全国に普及し、子供たちの人気の的になったのは、
トーキー映画の登場に関係する。



それまで無声映画だけであった活動写真(映画)が、昭和4年にトーキー映画が登場すると、
こちらが主流となり、やがて無声映画はほとんど作られなくなった。

そのため無声映画でストーリーを話し、セリフを演じる活動弁士が大量に失業した。

彼らが得意の筋立て、セリフなどの口上を活かし、紙芝居屋に転向したため、
一躍子供たちを魅了することになった。



だが昭和30年代後半に入ると、テレビが普及し始め、子供たちは「月光仮面」など
テレビ番組を見るようになり、紙芝居屋は失業するようになってしまった。


紙芝居の料金(昭和24年頃)

見物料2銭〜4銭(5円から10円)菓子(水飴、昆布など)2銭〜4銭

(戦前は、菓子を購入すれば、見物可能だった)










アメリカ型ライフスタイルへの憧れ


アメリカのマンガ家チック・ヤングの

「ブロンディ」が、週刊朝日(1946年6月〜)に続き、

この年1月より朝日新聞に連載開始。

「家計の苦労という場面は一度も出てこない」とは、

4月12日の天声人語。




ごく普通の家庭の主婦であるブロンディの台所の食料のたっぷり入った冷蔵庫は、

まだ配給制で貧しい食生活を送る庶民には、別の世界を見るような驚きと羨望を与えた。


一回目は、バスの時間に、急いで出かける夫のバスウッド氏に、ブロンディが、

戻ってキスしてちょうだいという内容。


精神的にも物質的にも、豊かな生活は、戦後復興の進む中で、富める国、自由の国アメリカ、

という人々の憧れと幻想をいっそうふくらませることになった。


また小学生の少女たちの圧倒的な支持を受けたのが「少女」(光文社)5月号から始まった

倉金章介の「あんみつ姫」(〜1954年4月号まで)だった。


あまから城のおてんばな一人娘あんみつ姫を中心としたホームドラマだが、日本のチョンマゲ時代

という設定ながら、そこにはアメリカナイズされた生活がふんだんに盛り込まれていた。


甘いものに飢えていた当時の少女たちもまた、アメリカ式の豊かな生活への憧れを抱いて

「あんみつ姫」をむさぼり読んだのである。














轟先生


轟小助は実力学園中学の数学の教師である。

威厳にみちた頑固先生だが、決して厳しいばかりでなく、

明朗な人情家でもある。


また生徒思いなので、学内での人気はかなり高い。

だが、安月給なのが悩みのタネ。


家には老妻のテル子、息子の君太郎、娘のハツ子、娘婿のミツル、

孫のワタル、そして愛犬のテレビジョンがいる。




轟先生は、秋好馨による日本の漫画作品。

1941年、雑誌「漫画」で連載開始。


中断を挟んで1949年の「夕刊読売」創刊号から4コマ漫画として連載開始。

1951年からは「読売新聞朝刊」に移動した。


本作品は、毎日新聞の「フクちゃん」、朝日新聞の「サザエさん」と並ぶ

一時代を築き上げた新聞4コマ漫画と評された。





















青い山脈 (東宝映画)


女子高生の新子は、いたずらのラブレターをもらい、若い英語の島崎先生(原節子)に相談する。


先生は、この事件を材料にして男女の健全な交際を説くが、生徒たちに反感を持たれてしまう。

教員仲間からも非難を受け、ついには新聞沙汰になって、町中の大問題に発展してしまう…。


朝日新聞に連載された石坂洋次郎の小説を、今井正が映画化したもの。

映画も主題歌も大ヒットし、この後、何作ものリメイクが製作された。






「恋愛」についてクラスで話し合うシーンで、ひとりの女生徒が立ち上がって答える。

「昔は恋愛は悪いことでしたが、戦争に負けてからは良いことになったと思います」


現在では考えられないことだが、これは戦前と戦後の恋愛観の変化を端的にとらえた言葉だ。

戦前は、嫁入り前の娘が男と会うことは不道徳とされ、その後の縁談話にも影響したのである。


「青い山脈」では、男女交際を不純で恥ずべきものとみなす戦前の社会通念が操り返し描かれる。

口では民主主義と叫びながら、古い固定観念に縛られている教師たち、そして男女交際に厳しく
当たる大人たちが、実は自分らは芸者遊びをしているという欺瞞に満ちた姿が描き出されている。


そういったタブーを、若い人間のエネルギーで打破していこうとするところに本作の見所がある。

映画のラストは希望に満ちたシーンで完結する。それは封建性から解放された青春讃歌でもある。










      哀愁(WATERLOO BRIDGE)1940年(米)

第一次大戦下、空襲警報が鳴り響くロンドン・ウォータールー橋。
英国大佐ロイ(テイラー)は、バレエの踊り子マイラ(リー)と出会う。
二人は恋し結婚の約束をする。だが戦地へ向かったロイ戦死の悲報。

反ナチスドイツ映画。戦時下に咲いたイギリス将校と踊り子のラブロマンスという
筋書きで制作し、作品に込められた真の意味をカモフラージュしたもの。

ロンドンのウォータールー橋で出会った二人は、ドイツとの戦争で引き裂かれる。
そしてこの映画を見た大衆は、ナチスに対する敵愾心を大いに高揚させるのである。

(監督)マーヴィン・ルロイ(MERVYN LeROY)
(出演)ヴィヴィアン・リー(VIVIEN LEIGH)ロバート・テイラー(ROBERT TAYLOR)
 












    若草物語(Little Women)1949年(米)

アメリカの作家オルコットの同名小説(1868年)の映画化。マサチューセッツに住むマーチ家の四人姉妹は、
南北戦争に従軍した父の留守宅で、母を助け、貧しいながらも希望をもって暮らしている。

長女のメグ(リー)は、女優志望でしっかり者、次女のジョー(アリソン)は、ボーイッシュな作家志望、
三女のエイミー(テイラー)は、いたずらっ子だが絵の才能がある。そして四女のベス(オブライエン)は、
ピアノが得意で心優しい。

「あしながおじさん」の主人公ジュディは、孤児院育ちのため「若草物語」を読んだことがなく、学友たちから
仲間外れにされるというくだりがある。当時、若草物語といえば女子中高生の必読書であり、愛読書でもあった。

多感な少女たちは、マーチ家の四人姉妹の誰かひとりに共感を抱いて、将来の自分の夢を託していたのである。

(監督)マービン・ルロイ(Mervyn LeRoy)(出演)ジューン・アリソン(June Allyson)
ジャネット・リー(Janet Leigh)エリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)
マーガレット・オブライエン(Margaret O'Brien)ロッサノ・ブラッツィ(Rossano Brazzi)