9月6日 タイムカプセル(24)昭和53年(1978年) タイム・カプセル |
この年、東京・原宿に「ブティック竹の子」がオープン。
この店で扱う派手な衣装を着た少年少女が、毎日曜日、路上で小グループを作って踊り始めたのが、原宿「竹の子族」の発祥。
男の子も化粧し、一見して、みんな少女スタイル。
一方、それに反発して、革ジャンにリーゼントのロックンローラー・グループが登場。男のワルっぽさを気取った。
(映画)第51回アカデミー賞「ディア・ハンター」
「サタデー・ナイト・フィーバー 」「グリース」「スーパーマン」
東映「柳生一族の陰謀」(萬屋錦之助、千葉真一、松方弘樹、大原麗子)東映「冬の華」(高倉健、池上季実子、池部良、藤田進、北大路欣也、田中邦衛) 東映「野性の証明」(高倉健、薬師丸ひろ子)
(音楽)第20回レコード大賞「UFO」ピンク・レディー
いい日旅立ち、乙女座宮、プレイバック Part2(山口百恵)追いかけてヨコハマ、リップスティック(桜田淳子)カナダからの手紙(平尾昌晃・畑中葉子)狼なんか怖くない(石野真子デビュー)飛んでイスタンブール(庄野真代)青葉城恋歌(さとう宗幸)モンスター(ピンク・レディー)勝手にシンドバッド(サザンオールスターズ)夏のお嬢さん(榊原郁恵)
君のひとみは10000ボルト(アリス)時間よ止まれ(矢沢永吉)ガンダーラ(ゴダイゴ)Night Fever (Bee Gees) Stain' Alive (Bee Gees) Secret Love(Doris Day)
(テレビ)黄金の日日(NHK 市川染五郎、栗原小巻、高橋幸治)おていちゃん(NHK 友里千賀子、長門裕之、古手川祐子、風間杜夫)ドラマ人間模様・夫婦(NHK 山岡久乃、芦田伸介)ザ・ベストテン(TBS)ウルトラアイ(NHK)白い巨塔(フジ 田宮二郎)女の家庭(フジ 山本陽子、児玉清、山口崇)
火の航跡(フジ 大原麗子、藤竜也、池上季実子、竹脇無我)24時間テレビ・愛は地球を救えるか(NTV)銀河鉄道999(フジ)下町のおんな 風子(フジ 秋吉久美子、杉村春子、浜木綿子、大村崑、山村聡)熱中時代(NTV 水谷豊、志穂美悦子)亭主の家出(NET 小林桂樹、三ツ矢歌子、池上季実子、杉浦直樹、森繁久彌)
暴れん坊将軍(NET 松平健、有島一郎、横内正、北島三郎)西遊記(NTV 夏目雅子、堺正章、西田敏行、岸部シロー)ドラマ人間模様・事件(NHK 若山富三郎)Gメン75(TBS 丹波哲郎、原田大二郎)大岡越前5(TBS 加藤剛、竹脇無我)
こおろぎ橋(TBS 樋口可南子、津島恵子、加賀まりこ、峰岸徹)赤い激突(TBS 宇津井健、国広富之、坂口良子、岸恵子)家族熱(TBS 浅丘ルリ子、三国連太郎、加藤治子、三浦友和、志村喬、風吹ジュン)TBS「幸福の断章」(平幹二朗、山本陽子、川津祐介、清川虹子、酒井和歌子)大都会PART2(NTV 渡哲也、石原裕次郎)人間の証明(TBS 高峰三枝子)
(スポーツ)江川問題でドラフト論争。第11回サッカー・ワールドカップ (アルゼンチン優勝)
(ファッション)フロントホックのブラジャー[ワコール]。マルチレングファッション。タンクトップ
(流行語)フィーバー、君のひとみは10000ボルト、あんたが主役、不確実性の時代、な〜んちゃって、バカにしないでよ、やってられないわ、逆転、アーウー、全方位外交、いい日旅立ち、クロスオーバー、原因不明、田中軍団、ワン・パターン、共通一次、足切り、窓際族、翔んでる、記憶にございません、口裂け女
(社会)(社会)成田新東京国際空港開港(5.20)日中平和友好条約調印(8.12)キャンプデービットの中東和平3ヵ国首脳会議(9.5)ケ小平副首相来日(10.22)大平内閣誕生(12.7)田宮二郎が、東京・元麻布の自宅で猟銃で自殺(12.28)
(物故)柴田錬三郎、水原弘、古賀政男、山岡荘八、大松博文、佐野周二、田宮二郎
(その他)薬師丸ひろ子、東映「野生の証明」でデビュー。浅野温子、日活「高校大パニック」でデビュー。樋口可南子、ドラマ「こおろぎの橋」でデビュー。引田天功、朝風まりの芸名で歌手デビュー。4/4 キャンディーズ解散。後楽園球場に5万5千人を集め、お別れコンサート開催、4年半の活動に終止符を打つ。「本当に私たちは、幸せでした!!」。
第1回日本アカデミー賞。ピンクレディー旋風。東京池袋サンシャインビル完成。24時間TV「愛は地球を救う」(8.26)トスワードJW[東芝、630万円]パンパーズ[P&G]
使い捨てカイロ ホカロン[ロッテ] サラ金地獄 古米 ディスコ 家庭内暴力 もぐらたたきゲーム 「いい日旅立ち」(国鉄) 高橋留美子「うる星やつら」(少年サンデー)翔んだカップル(少年マガジン)室山まゆみ「あさりちゃん」(小学館)いしいひさいち「タブチくん」(週刊漫画アクション)
新たなる旅立ち(劇場版 銀河鉄道999)
銀河鉄道999
西暦2221年、身体を機械にかえて、人間は死なないですむようになった。
だが、そんな時代にも、やはり貧しい人々は存在する。
彼らにとって、機械の身体は高価なものであり、買うことができなかった。
そんな中、一つの噂が流れる。
銀河鉄道999号に乗れば、タダで機械の身体を貰える星に行けるというのだ。
貧しい少年・星野鉄郎は母と二人、噂をたよりに銀河鉄道の停車駅に向かう。
その途中、二人は機械伯爵による人間狩りに遭い、母は殺されてしまう。
鉄郎は、吹雪の中に行き倒れてしまうが、メーテルと名乗る女性に助けられる。
彼女は鉄郎に、銀河鉄道の乗車パスを差し出し、999号に乗ることをすすめる。
そして二人は、目的の星まで共に旅をすることになった。
原作者の松本零士は、本作で「限られた命の大切さ」を描きたかったと語る。
主人公の鉄郎は、不老不死の機械の身体を求めて旅立つ。
だが実際の旅路で、機械化した人間の堕落した姿を見て「永遠の命が果たして
本当に幸せなのか」と自問自答する。
ついに終着駅に到着したとき、これまでの旅を、鉄郎は以下のように総括する。
「ひとつだけはわかったよ。限りある命だから、人は一生という時間の中で
精いっぱいがんばる … 短い時間の中で何かをやりとげようとする。
だからお互い人間同士、思いやりや 優しさが生まれるんだって…」
永遠の生命と限りある命をテーマに、主人公が体験する様々な冒険、出会い、
そして別離。この美しく壮大なスペースロマンは、子どもたちだけでなく、
大人たちにも多くのファンを獲得した。
おていちゃん
大正初めの浅草・猿若町の路地裏には、芝居の関係者や職人たちが、
温かい人情をもって、助け合いながら暮らしていた。
このこじんまりとした家々が寄り添うように立ち並んだ浅草界隈には、
金も無ければ、名誉も無いが、困ったときには手を貸し、知恵を出し合う
人々が揃っている。
そんな下町世界の優しさと、人には甘ったれないという厳しさの中で
育ったのが、おていちゃんこと「大沢てい子」だ。
明治41年5月、浅草三社祭の前日に大沢てい子(友里千賀子)は生まれた。
父・保之助(長門裕之)の第一声は「チェッ、女か」である。
保之助は芝居小屋の座付作者で、本当は役者になりたかった夢を子供に
託していたのだが、女の子では夢はかなえられそうになかったのだ。
成長したおていは、学校の先生になることを夢見る女学生になった。
進歩的な校長から、男女平等の考えを聞いたのもこのころだった。
やがて、おていは運命の出会いとなる新劇「三人姉妹」を観劇した。
血は争えないというべきか、おていは劇団「新文化」の研究生となり
芝居の世界へとのめり込んでいくのだった。
女優の沢村貞子の自伝エッセイ「私の浅草」をもとにしたホームドラマ。
大正初期から終戦直後の激動の時代を背景に、東京の下町で生まれ育った
ヒロインが芝居の世界へと足を踏み入れ、女優として成長していく姿を、
家族の情愛や下町の人情を通して描かれる。
趣味が三味線という主演の友里千賀子は、庶民的な味を出して、お年寄りから
子供までと幅広いファン層に支持された。
亭主の家出
鯉沼彦九(小林桂樹)は47歳、一流ホテルの宴会課長。
見合い結婚して20年になり、女子大生の長女と高校生の長男の2人の子供がいる。
職場では仕事に追われているが、家に帰れば妻と子供に主権を奪われ邪魔者扱い。
幸せな結婚式を演出する彦九の笑顔の裏にはそんな哀しい悩みがあった。
ある日、亭主の座が家庭にない、そんな亭主族のための理想郷「亭主の館」が
あることを知った彼は、そこへの家出を試みる。
亭主の家出を知った妻の琴江(三ツ矢歌子)は、事の重大さに気づくが…。
家は女房子供に乗っ取られ、居場所すら無い亭主の悲哀をテーマにした作品だが、
こうした悩める小市民役に、小林桂樹という役者は抜群の冴えを見せる。
1980年代に「亭主元気で留守がいい」などというCM(タンスにゴン)が流行り、
1990年代になると、居酒屋や喫茶店などで時間をつぶし、家族が寝静まったのを
見計らって帰宅するという、夫の「帰宅拒否症」が社会問題となった。
その意味で本作は、家でないがしろにされる亭主を題材とした、時代を先取りする
ドラマと言えよう。
事件
スナックを経営する坂井ハツ子(いしだあゆみ)の遺体が神奈川県下の山林で発見された。
容疑者とされた上田宏(丹波義隆)は、被害者の妹・ヨシ子(大竹しのぶ)と同棲中だった。
ヨシ子は妊娠しており、お腹の子供は宏の子だった。
ハツ子は、妹を思う気持ちと渦巻く嫉妬心から、二人の結婚に反対していた。
殺害は認めながらも殺意は否認する宏。
宏の弁護を担当した菊池(若山富三郎)は、事件の真相究明に奔走する。
大岡昇平のベストセラー法廷小説を若山富三郎主演でドラマ化したもの。
19歳の工員が、同棲相手の姉であるスナックのママを刺殺する事件が発生した。
姉妹が彼を巡って争っていた事実が、法廷で明らかになっていく。
若山富三郎の演じる菊池弁護士は、かなりルーズな性格のようだ。
しょっちゅう公判に遅刻したり、眼鏡をどこかに置き忘れたりしている。
そんな菊池が、ここで明らかにするのは、殺人・死体遺棄容疑の真相である。
事件の背景にある被告らの複雑な人間関係を解明していくのだ。
殺されたハツ子は、水商売を転々と経営してきたが、すべてうまくいかない。
ろくでもない男に憂き身をやつしてもいる。
しかも妹のヨシ子は、その男の子供を身籠っている。
そんなドロドロとした人生の修羅場の中から、真相を探っていくのである。
人情味溢れた弁護士役の若山の、ひょうひょうとして温かみのある演技が
好評を呼び、翌年から、年一本、四週完結のペースでシリーズ化された。
こおろぎ橋
佐和子(樋口可南子)は、山中温泉の老舗旅館「みゆきや」の一人娘。
昭和21年、女学校を卒業した彼女は、山の分校の教師になった。
素朴な子供たちとの日々は苦労もあるが充実していた。
しかし、心ならずも婿を取るために実家に帰らなければならなくなる。
婿に入ったのは隣町の旅館の次男幹夫(峰岸徹)であった。
北陸の温泉町が舞台、戦後から現代まで、たくましく生き抜いた女性の波乱の半生を描く。
高等女学校を卒業した佐和子は「家業を継いでくれ」という祖母ぬい(津島恵子)の
たっての願いを振り切って山の分校の教師になる。
彼女が分校に赴任する時に渡るのが「こおろぎ橋」だ。
行路危険(こうろきけん)というのが名前の由来で、そこを渡り、トンネルをくぐって
山奥の村に向かう彼女の将来を暗示する。
ドラマの最初の週は、国体護持者の校長(原保美)との出会い、馴染まない生徒や
排他的な村人たちの間で、健気に頑張る佐和子の姿が描かれる。
軍隊帰りの男に乱暴されそうになって山を下りた佐和子を、子供たちが迎えに来る
シーンは、すがすがしく感動的だ。
脚本は、石川県出身の佐々木守。主題歌は、同じく石川県出身のシンガーソングライター
丹羽応樹の作曲で、山中温泉郷の雰囲気がよく出た作品である。
夫婦
三人の子供に恵まれた高村勝利(芦田伸介)と伸枝(山岡久乃)夫婦。
末っ子・清人(篠田三郎)も、このたび結婚して家を出ることになった。
同居を望んでいた伸枝は寂しくてならない。
そこで、既に家を出ていた長男・昭人(村野武範)夫婦に同居を持ちかける。
だが、今さら家に戻れないと言われてしまう。
定年を迎えた寡黙な夫は、再就職もせず、家でゴロゴロしている。
こんな夫と、この先二人だけで暮らすと思うと耐えられない伸枝だった。
定年を迎えた夫婦の老後の問題を突きつけ、大きな反響を呼んだ辛口ホームドラマ。
子育てを終えた夫婦が、次男の結婚を機に、心のすれ違いに気づく。
妻は「子供たちに見放されるのなら死んだ方がまし」と本音丸出し
夫は「子供達がいなくなったときに何も通い合うものがないのなら、
それは本当の夫婦ではなかったのだ」と寂しくつぶやく。
二人のすれ違いが、熟年離婚の危機すら迎えてしまう。
本作は、女のエゴを露わにする山岡久乃の演技に注目が集まった。
どこか陰気で、意地の悪い、女の執念を内に秘めた中年女をやらせたら、
おそらくこの人の右に出る女優はいないのではないか。
セリフの量も半端ではなく、長台詞を延々とぼやき、愚痴り続ける。
夫役の芦田伸介でなくても、視聴者はいたたまれなくなってしまう。
まさに「そこまで言うか」という橋田寿賀子ワールド全開のドラマとなった。
下町のおんな 風子
三味線を弾かせたら日本一という下谷芸者の千代(杉村春子)はある日、
町で出会った若い娘(秋吉久美子)を自分の家へ連れて来る。
娘は風子といい、ラーメン屋の店員だったが、三日で飛び出したという。
千代と風子は妙に気が合って、風子はその家に住み込み、三味線の内弟子となる。
身寄りのない娘が芸者となり、けなげに生きていく姿を描く下町人情喜劇。
ある日突然、東京・下谷の芸者置屋に舞い込んできたGパンに綿シャツ姿の
風子が、温かい下町の善意に支えられて芸者修業を開始する。
風子はラジオを腰にぶら下げて、ジャズを聴きながら部屋を掃除する。
千代は扇子一本で弟子たちに三味を教える。新旧の取り合わせが面白い。
千代の家の近くで煮豆屋を経営する大村崑と岡本信人の親子、画家で千代の
長年の馴染客の山村聡など、二人を取り巻く脇役陣の存在感も目が離せない。
家族熱
朋子(浅丘ルリ子)は、杉男(三浦友和)が小学生の頃、黒沼家に嫁いできた。
杉男とは、ひとまわりしか歳の違わない朋子は、20歳の時、謙造(三国連太郎)
のもとに、前妻と入れ替わりに、嫁いできたのだった。
それから13年、朋子は、テキパキと家事をこなし黒沼家を切り盛りした。
そんなある日、思いもよらず夫や息子たちが前妻の恒子(加藤治子)と
会っていることを知り落胆する。
後妻として幼い子どもたちを育て、舅姑の世話をし、尽くしてきた朋子にとっては
耐え難い裏切りだった。
「母さんは家を出た方がいい」杉男は離婚をすすめ、朋子は黒沼家を出た。
本作は、後妻として嫁いで13年たったヒロイン(浅丘ルリ子)の前に、突然前妻が現れ、
そこから家族に波紋が広がっていく物語。
脚本の向田邦子によると、本作は旧約聖書の「ロトの妻」の挿話にヒントを得たという。
悪徳のソドムの町を滅ぼそうと神は火を放つ。神は燃え盛る町を背にした善良なロトという男に
「一度も振り返らずに家族と走り去れば助かる」と教える。
だが、ロトの妻だけは後ろを振り返り、瞬時に塩の柱にされてしまった。
彼女が振り向いた理由が「家族熱」、つまりいままで住んでいた町とか、縁者とか、その町での
記憶とか、そうしたものへの執着が「家族熱」で、それが彼女を振り向かせたというのだ。
こうした未練や執着は、ひとつの病に近い熱病であるとして「家族熱」と表現したのである。
本作「家族熱」は、家に縛られた前妻と後妻を中心にしたドラマであり、女というものはどうしても
「家」に執着してしまう生き物なのだ、という事を言っている。
とりわけ「ロトの妻」に当たる役柄は前妻のほうで、かつての幸せな家庭と妻の座への未練に狂う
前妻の妄執を加藤治子が迫真の演技で魅せている。
火の航跡
久仁子(大原麗子)は、伯父が経営する外国語学校で秘書として働いている。
夫・文夫(藤竜也)は、九州有田の窯業家の長男として生まれたが、
家業を継がずに、プロのカメラマンとして活躍している。
ところがある日、突然この家庭に異変が起こった。
沖縄に取材旅行に行くと言って家を出た文夫の様子がおかしいのだ。
沖縄に行くというのに、冬の装備で出かけたからである。
不審に思った弟の耕一郎(竹脇無我)が、いろいろと調べてみたのだが、
ついに文夫の行方は分からないままになってしまった。
平岩弓枝作品としては珍しく、推理とサスペンスの要素が加わったドラマとなっている。
失踪するカメラマンに藤竜也、その妻に大原麗子、そして意外な謎解きのキーマンとなる
夫婦の義弟に竹脇無我が扮している。
平穏な日常から一転して、異常な事件に直面した若妻(大原麗子)が、夫を気遣う情感の
ある演技、そしてやがて展開されるメキシコロケの旅情などが見どころとなっている。
大原麗子は、渡瀬恒彦との離婚後、本作が初仕事となったが、夫に蒸発された人妻という
役どころに「私にとっても身近な話だと思うの」と意味深長な発言も。
幸福の断章
旅行雑誌の編集長・立木英夫(平幹二朗)は、取材先の佐渡で思いがけない知らせを受ける。
義弟の剛(佐藤佑介)が交通事故を起こし、同業者を死傷させてしまったというのだ。
被害者・久米島(川津祐介)の妻・絹子(山本陽子)は、かつての英夫の恋人だった。
その後二人の悲劇的な再会が始まった。
病身の妻を抱えた生真面目な中年男が、恋の道に落ち込んだらどうなるかを描いたメロドラマ。
ドラマの冒頭は、サンフランシスコでのヒロイン・絹子(山本陽子)と、久米島一夫(川津祐介)の
華麗な挙式シーンから始まる。
式には、ヒロインのかつての恋人・英夫(平幹二朗)も出席しており、この三者三様の立ち位置を
それとなく明らかにしている。
英夫は、絹子がライバル誌の編集長と結婚すると、体の弱い朋子(酒井和歌子)と見合い結婚した。
ところが朋子の弟が車で、その編集長・久米島をひき殺してしまう。
久米島の母親・はる子(清川虹子)は逆上し、事故の補償金として、英夫に一億円を要求してきた。
しかも、英夫の妻・朋子の心臓病も、この事件によって再発し、英夫は辛い立場に立たされてしまう。
西遊記
花果山の石から生まれた孫悟空(堺正章)は、強い力をもつ乱暴者。
猿たちを率いて暴れまわり、誰も止めることが出来なかった。
この騒ぎを聞いた天帝は、孫悟空を天界に呼び、官職を与えて丸めこもうとした。
だが、自分への待遇が気に入らない孫悟空は、天界でも大暴れしてしまう。
困り果てた天帝は、天竺国の釈迦如来(高峰三枝子)に助けを求める。
釈迦如来は、天界を騒がせた罪で、孫悟空を五行山に閉じ込めてしまう。
500年後、三蔵法師(夏目雅子)に救われた孫悟空は、猪八戒(西田敏行)、
沙悟浄(岸部シロー)とともに、法師の従者となり経典を求めて天竺に向かう。
しかし、道中は妖しい怪物たちが待ち受け、苦難の連続だった。
日本テレビ開局25周年記念ドラマ。当時では珍しい中国ロケを敢行したことで
迫力ある大スケールのシーンが実現した。
当初、三蔵法師役は歌舞伎の坂東玉三郎が想定されていたが、速攻で断られたため、
NTVの企画会議で、当時売出し中だった若手女優の夏目雅子が抜擢された。
大河ドラマ(黄金の日日)の裏番組だったが、最高視聴率27.4%を記録する大ヒットとなり、
以降、三蔵法師を女性が演じるのが定番となった。
江川卓 (えがわすぐる)
作新学院高時代から「怪物」の名をほしいままにした剛腕投手・江川卓(法大)は、
憧れの球団、巨人の指名を待ちわびていた。
だが大学4年の江川をめぐる争いとなった1977年(昭和52年)のドラフト会議では、
クラウンが江川の指名権を獲得した。
江川はクラウンを拒否して一年間の米国留学を決意。翌年のドラフトに賭けた。
クラウンの指名権の有効期間は、翌年のドラフト会議の前日までであった。
その有効期間が切れた会議の前日、巨人と江川が電撃契約を行った。
巨人側はこの前日の時点で、江川はドラフト対象外選手という解釈であった。
セ・リーグ会長がこの契約は認められないとの見解を示すと、巨人側は、
翌日のドラフト会議をボイコットするという強硬手段に出た。
1978年(昭和53年)11月22日、巨人を除く11球団で行われドラフト会議の結果、
阪神が江川の指名権を獲得した。だが江川は、阪神入団を拒否。
そこで阪神側は、いったん阪神に入団した上で巨人へトレードとの収集案を提案した。
阪神は、巨人のエース小林をトレード相手に指名し、一件落着。
だが世間を敵に回した巨人と江川へのバッシングはしばらく暴風のように吹き荒れた。
女の家庭
木村永子(山本陽子)は、夫と5歳になる娘を持つ専業主婦である。
夫・邦夫(山口崇)は、弱電メーカーのバンクーバー支店長だったが、
支店での功績が高く評価され、このたび東京本社へ栄転になった。
だが、日本に帰国してから永子たち家族の生活は一変する。
夫の母(鈴木光枝)や妹(真木洋子)と同居することになったのだ。
母も妹も夫の家族であるから、仲良く暮らそうと永子は健気に努力する。
だが二人と上手く折り合いがつかず、永子は気苦労がつのるばかりだった。
そんな中、永子は帰国途中の機内で出会ったパーサー・佐竹(児玉清)と再会する。
航空会社に勤める佐竹は、妻とは別居中で男手一つで7歳の娘を育てている。
はからずも彼の娘と、永子の娘の綾子は、同じ私立の小学校で同級生だった。
やがて子供たちや、ときには永子の夫・邦夫も交えて、家族ぐるみで親しくなった。
いつしか永子は、陰ながら支えてくれる佐竹に、恋愛感情に近いものを抱きはじめる。
海外暮らしが長かった永子だが、姑との同居には想像を絶する気苦労が待っていた。
だが、平凡な家庭を守るために彼女は、ひたすら耐え続ける。
やがて永子は、嫁姑の関係について、自分なりのあるべき姿を見出していく。
夫の家族は結婚すれば自分の家族になると思っていたが、それは違うのだ。
現実には、様々なあつれきを抱え、折り合いをつけながら暮らしているが、
しょせん「夫の家族は他人」なのではないだろうかと。
忍従の先の女の幸せとは何かを問いかける傑作ドラマである。
白い巨塔
浪速大学医学部では、東教授(中村伸郎)が定年退官となるため、
そのポスト争いが水面下で激化していた。
東の教え子である財前五郎(田宮二郎)が最有力候補だが、
傲慢不遜な態度ゆえ東教授に疎まれていた。
ある日、同期の里見(山本學)から頼まれ、財前は胃癌患者の手術を執刀
する。
術後に患者は苦しむが、財前はその原因を探ろうとせず、
患者は間もなく亡くなってしまう。
財前は後任教授の選挙戦を勝ち抜き晴れて教授となる。
そんな矢先、死亡した患者の遺族が財前と病院を相手取り、医療訴訟を起こした。
山崎豊子の同名小説をドラマ化。大学医学部を舞台に医学界の醜い内幕を描く。
訴訟はマスコミに注目されたが、権威を守ろうとする大学側の証人は、財前を無罪にしてしまう。
だが転移の疑いがあるのに精密検査を怠り、選挙戦にかまけて患者を置き去りにする行為は
医師として許されるべきではなく、誰もが当然、彼は有罪であると考えるだろう。
ドラマは、保守的、権威主義的な医療現場がはらむ問題に鋭く切り込んだ社会派作品となった。
主演の田宮二郎は、番組収録後に、極度の躁うつ症から猟銃自殺し、この作品が遺作となった。
まだ放送中の出来事で、田宮の自殺により、番組の視聴率がはね上がった。
ザ・ベストテン
忙しい売れっ子歌手は、放送時間内に出演できるとは限らなかった。
また中島みゆきなどソングライター系の歌手は、テレビ生放送に出たがらない。
そこで「追っかけ生中継」のコンセプトで登場した歌番組がザ・ベストテンである。
生の歌番組だけに、様々なハプニングがあった。
1980年8月、松田聖子の初登場時、羽田に到着した飛行機のタラップで歌う予定だった。
だが到着が大幅にずれ、追っかけマンの松宮アナが約7分もつなぎ、語り草となった。
ザ・ベストテンは、毎週、番組が定めるヒット曲上位10曲のランキングが発表され、
同時にそれらを歌う歌手が生出演で歌うというスタイルの番組。
初代司会者は「ランキングをいじらないこと」を条件に引き受けた黒柳徹子と、
当時TBSの局アナだった久米宏。
スタジオに来られない歌手を全国どこでも追いかけて中継する臨場感と
どんなハプニングにも臨機応変に対応する司会者2人のトークが人気を集めた。
日本の音楽シーンを変えたこの番組は、最高視聴率41.9%(1981年)を記録した。
暴れん坊将軍
紀州藩主から八代将軍となった吉宗(松平健)は、駕籠で江戸城へ向かう。
だが、その吉宗の駕籠に駆け寄り、直訴しようとする娘がいた。
この時代、直訴は厳罰に処せられるのがならわしだった。
しかし、訴えは一応取上げられるため、一身を犠牲にした直訴者が絶えなかった。
直訴に及んだその娘・お千代が危うく手討ちになる寸前、吉宗が制止する。
聞けば、お千代の父親は、油蔵に放火をした罪で南町奉行所に捕われているという。
吉宗は、命懸けで訴え出た娘の願いを聞き、父親の無実を晴らすべく立ち上がる。
江戸の平和のために徳川吉宗(上様)が世にはびこる悪を「成敗」するストーリー。
普段吉宗は江戸の町へお忍びで出向くときには「徳田新之助」という偽名を名乗り、
肩書きも「貧乏旗本の三男坊」と称し、江戸の庶民は、彼が将軍であることを知らない。
但し、町の火消し・辰五郎ら一部の者だけが、新之助が吉宗だということを知っている。
彼の正体を知る数少ない人々との絶妙な信頼関係や、町の火消し「め組」の人たちとの
ホームドラマのような要素も加わり、人間吉宗の魅力が至る所にちりばめられている。
ドラマの最後、将軍自らが、悪人を成敗する時の決め台詞と殺陣のシーンは迫力がある。
まず、将軍の登場に驚く悪玉を「余の顔を見忘れたか!」と一喝して平伏させる。
悪玉は一度は平伏するも「上様の名を騙る不届き者」「上様とて構わぬ」などと
結局反逆し、手下に命じて吉宗を襲わせる。
テーマ音楽をバックに、吉宗が手下どもをなぎ倒していき、悪玉に迫る。
最後は、悪玉自ら吉宗に斬りかかるも、返り討ちに遭って殺陣終了。
こうした将軍自らが悪を成敗するという痛快無比な設定が絶大な人気を博した。
また吉宗を演じる松平健が、年齢と共に「成長する吉宗」を同時進行の形で
番組の中で見せていることが、この番組の人気と長寿を支えている。
本作はシリーズ化され、約27年間、全832話が制作されるという長寿番組となった。
黄金の日日
永禄11年(1568年)秋、織田信長(高橋幸治)は、15代将軍足利義昭を奉じ上洛を果たした。
その後、信長は、豊かな経済力を持つ交易港・堺に、二万貫の矢銭(軍用金)の献上を課す。
当時の堺は、鉄砲・火薬の製造、さらに中国・明などとの南蛮交易で栄えていた。
信長が堺の商人たちに求めたのは、その莫大な財力、とりわけ鉄砲と火薬であった。
天下統一を目指す信長にとって、将軍の権威と強大な軍事力は必須条件だったのだ。
だが、堺の豪商・能登屋(志村喬)をはじめとする自治組織・会合衆は、信長の要求を拒否。
会合衆の大半は、信長を「田舎武士」「成り上がり」と軽視していたのである。
これに激怒した信長は、六万の軍勢で堺の町を包囲してしまう。
一方、会合衆の一人・今井宗久(丹波哲郎)は、信長と敵対するのは得策ではないと考えていた。
宗久は、千利休(鶴田浩二)と相談し、名器・松島の茶壺を信長に献上し、和睦を結ぼうとする。
そして、宗久に同行して壺を届けるため、五右衛門、善住坊、助左(市川染五郎)の三人を選ぶ。
茶壺で、堺が守られるなら安いものだが、信長がその価値をわかるかどうか、一つの賭けであった。
深夜、宗久らは、ひそかに堺を脱出して、信長のいる芥川城へ向かった。
ようやく芥川城へとたどり着いた宗久たちは、信長との対面を果たす。
茶壺を受け取った信長は、宗久に二万貫を免除する代わりに、相撲をしていけと持ちかける。
宗久は負けてしまうが、割って入った助左が勝ちを収める。
助左の奮闘に感じ入った信長は、家来になれと助左に命じてくるのだが…。
戦国末期、海外に雄飛した堺の豪商・呂栄助左衛門を主人公として、経済の視点から
日本史をとらえるという画期的な構想のもとに制作された大河ドラマ。
単なる戦記物ではなく、庶民の立場から描いたドラマで、初めて商人が主人公と
なったという点でも、これまでの大河ドラマと一線を画している。
主人公の助左衛門役には、当時歌舞伎界のプリンスと謳われた市川染五郎が抜擢された。
また、織田信長役に高橋幸治、豊臣秀吉役に緒形拳と、大河ドラマ第三作「太閤記」と
全く同じ配役が組まれた。
視聴者の評価も高く、最高視聴率34.4%を記録。大河ドラマで初めて、フィリピンでの
海外ロケが行われたことも話題を集めた。