10月5日  タイムカプセル(27)昭和56年(1981年)  タイム・カプセル

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この年、英国、チャールズ皇太子がダイアナ・スペンサーと、ロンドンのセントポール寺院にて挙式、披露宴はバッキンガム宮殿。


(映画)第54回アカデミー賞 「炎のランナー」

「タイタンの戦い」(ハリー・ハムリン、ジュディ・バウカー、ローレンス・オリヴィエ

東映「泥の河」(田村高広加賀まりこ)東映「1000年女王」東映「セーラー服と機関銃」(薬師丸ひろ子)東宝「連合艦隊」(永島敏行、金田賢一)東宝「駅 STATION」(高倉健倍賞千恵子古手川祐子)東映「魔界転生」(沢田研二、千葉真一、真田広之)


(音楽)第23回レコード大賞「ルビーの指環」(寺尾聰)

「セーラー服と機関銃」(薬師丸ひろ子)「もしもピアノが弾けたなら」(西田敏行)「鳥の詩」(杉田かおる) 「お嫁サンバ」(郷ひろみ)「スニーカーぶるーす」「ギンギラギンにさりげなく」(近藤真彦)「奥飛騨慕情」(竜鉄也)「ハイスクールララバイ」(イモ欽トリオ)「恋人よ」(五輪真弓)「みちのくひとり旅」(山本譲二)「まちぶせ」(石川ひとみ)「チェリーブラッサム」「風立ちぬ」(松田聖子Starting Over (John Lennon)


(テレビ)NHK「おんな太閤記」(佐久間良子西田敏行) NHK「夢千代日記」(吉永小百合) NHK「蛇蠍のごとく」(小林桂樹池上季実子津川雅彦加賀まりこ)フジ「オレたちひょうきん族」(ビートたけし、明石家さんま島田紳助) フジ「女たちの海峡」(山本陽子、田村亮、高橋昌也、乙羽信子)

フジ「なるほど!ザ・ワールド」NTV「俺はご先祖さま」(石坂浩二、マリアン)NTV「球形の荒野」(島田陽子、三船敏郎香川京子、中村雅俊)
NTV「意地悪ばあさん」(青島幸男)

TBS「関ヶ原」(加藤剛三船敏郎森繁久彌三国連太郎高橋幸治大友柳太朗丹波哲郎芦田伸介竹脇無我松坂慶子杉村春子栗原小巻古手川祐子笠智衆)TBS「茜さんのお弁当」(八千草薫、石原真理子、長山藍子、草笛光子)

TBS「もういちど春」(伊東ゆかり、秋野太作、小野寺昭、音無美紀子)TBS「野々村病院物語」(宇津井健、伴淳三郎、山岡久乃、蟹江敬三、夏目雅子、関口宏、津川雅彦、梶芽衣子)TBS「江戸を斬る6」(西郷輝彦、由美かおる)

テレ朝「新・必殺仕事人」(藤田まこと、三田村邦彦、中条きよし、山田五十鈴)フジ「北の国から」(田中邦衛、吉岡秀隆、中嶋朋子、いしだあゆみ竹下景子)フジ「女の座」(京塚昌子、山本学、新珠三千代、大村崑)



                           




(スポーツ)大関貴ノ花が引退。

(ファッション)ブルゾン。

(流行語)クリスタル族、粗大ゴミ、なめネコ、ノーパン喫茶、ハチの一刺し(榎本美恵子) ベンチがアホやから野球がでけへん(江本猛紀) おかか

(社会)1/20 ロナルド・レーガンが第40代米大統領に就任。7/29 英のチャールズ皇太子がダイアナ・スペンサーと結婚。10/19 福井謙一、ノーベル化学賞受賞。11/18 ロサンゼルスで三浦和義の妻・一美が打たれ、現金強奪される。11/30 鈴木改造内閣発足。

(物故)谷内六郎、市川房枝、向田邦子、湯川秀樹、伴淳三郎、芥川比呂志、横溝正史

(物価)大卒初任給 120,800円

(その他)3/31 ピンク・レディー後楽園球場で解散「サヨナラコンサート」。活動期間は4年7ヶ月。川島なお美、「ハネムーン」で歌手デビュー。

レーザーディスク(パイオニア)紙おむつ、ムーニー(ユニチャーム) 窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子) ノストラダムスの大予言(五島勉) ダカーポ(平凡出版) FOCUS(新潮社)
あだち充「タッチ」(少年サンデー)高橋陽一「キャプテン翼」(少年ジャンプ)



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                        聖母(マドンナ)たちのララバイ(火曜サスペンス劇場 主題歌)








球形の荒野


野上久美子(島田陽子)は、ひとり大和路を旅していた。


そこは、終戦前に欧州の任地で戦死した父が、こよなく愛した土地だった。

彼女は、亡父・野上顕一郎(三船敏郎)に、婚約の報告にやってきたのだ。


ところが、ある寺院の拝観者芳名帳を見て、久美子は驚愕する。

そこには、亡父そっくりの筆跡の署名が記されてあった。





そして別の寺でも同じ筆跡を見つけた久美子は、婚約者の添田(中村雅俊)に伝える。

その翌日、二人は、再びその筆跡を確かめるために、昨日まわった寺を訪れる。


だが、何故か芳名帳には、署名があったページだけが破かれていたのだった。

野上顕一郎は生きているかもしれない…添田は野上の過去の人間関係を調べはじめる。




1960年「オール読物」に連載された松本清張の同名推理小説のドラマ化。


ヒロイン野上久美子が古寺の芳名帳で見た独特の筆跡。

それは大戦末期の欧州で亡くなった外交官の父の筆跡そのものだった。


身内の誰もが取り合わない中、彼女の恋人・添田彰一は、ある疑念を抱く。

調査を進めるものの、口を閉ざす関係者。

その後、久美子の周辺で、不可解な殺人事件が立て続けに起こる。



火曜サスペンス劇場の第一作。主に40歳代から50歳代の主婦層を視聴者に絞り、
豪華キャスト、一流のスタッフによる重厚な作品を目指したシリーズである。


とりわけ本作は、原作者の松本清張までが特別出演する力の入れようであった。


また番組のイメージに合わせた独自の主題歌を作り、毎回番組の最後にオンエア
することにした。

完成した曲は、岩崎宏美が歌う「聖母(マドンナ)たちのララバイ」である。


ドラマは、殺人と言う重いテーマを扱っているが、この曲が流れることで、
生命の尊さ、人間愛の美しさに転化する、それが狙いであった。


その後、視聴者からの大反響があり、急きょ岩崎宏美のシングルとしてレコード化。

発売後たちまちチャート1位を獲得し、70万枚以上の大ヒットを記録。


もちろん、ヒットとともに番組の視聴率も上昇し、年間視聴率22%を叩き出した。










     



新必殺仕事人


南町同心・中村主水(藤田まこと)は、仕事を真面目にやらず、いてもいなくても

変わらない立場の人間であることから、職場では「昼あんどん」と呼ばれている。


一方彼は、闇の世界では、金で殺しを請負う「仕事人」稼業に手を染めていた。


職場では昼あんどん、家でも婿養子の立場で、嫁と姑に頭が上がらない。

が、裏に回れば、スゴ腕の殺し屋に一変するのである。



そのころ江戸市中では、子供をさらってスリに仕立てる一味が荒稼ぎをしていた。

町方を指揮して隠れ家に踏み込んだ主水は、そこで大勢の子供たちを保護する。


その中でただ一人引き取り手のいないおきぬを、主水は不憫に思い家へ連れ帰る。

一緒に過ごす内、いつしかおきぬに情が移っていく主水だが…。


(第37話 主水娘と同居する)





「新必殺仕事人」は、必殺シリーズ第17作目となった人気シリーズ。

すでに中村主水、秀、加代らの主な登場人物は、回を重ねる中で人間的魅力を

付加されて、視聴者のなかに身近な存在として定着していた。


本シリーズでは新たに、三味線屋のおりくと勇次がメンバーに加わったことで、

シリーズきっての顔ぶれが揃い、最もエンターテインメント豊かな作品となった。


物語は、これまでと同じ路線で、殺しのテクニックを毎回の見せ場としている。


この番組の特徴は、主役の仕事人たちが「公」の立場ではなく、「私」の

立場で行動するところにある。

彼らは、法では容易に裁かれない犯罪者に鉄槌を下す「私刑人」だ。


番組が始まった1981年は、中東の石油ショックを契機に、世の中が不況に陥った時代。

不景気にあえぐ庶民にとって、仕事人たちが悪党どもをアナーキーに殺していく様は、

ひたすら痛快だったのである。












佐久間良子 (さくまよしこ)


良家の子女に生まれ、映画会社のスカウトにも「断固反対」という厳格な家庭に育った。

東映の入社時には水着審査を拒否したのに合格するという伝説を残している。


デビュー直後から主役級の配役を受け、女優業に開眼。

1963年(昭和38年)「五番町夕霧楼」で遊郭に売られた女を演じ、高い評価を得た。


1981年(昭和56年)の大河ドラマ「おんな太閤記」(橋田寿賀子原作)に主演。




豊臣秀吉の正室・ねねを演じ高視聴率を記録、自身の代表作となった。


秀吉の臨終シーン。病気を押し、ねねと二人で庭を散策していた秀吉が突然倒れ、
ねねの腕の中で静かに息を引き取る。


本来なら、大広間で分厚い布団をかけられ「なにわのことも夢のまた夢」と辞世の句が
詠まれるのが定番だった。


歴史ものを超えた夫婦話として完結させようという、作り手の思いが伝わる作品であった。













夢千代日記


夢千代(吉永小百合)は、山陰の小さな温泉町の置屋・はる家の女将である。


ある日、夢千代のもとに、刑事の山根(林隆三)が訪ねてくる。

彼はかつて夢千代の置屋にいた芸者・市駒(片桐夕子)を追っていた。

市駒には殺人容疑がかかっているという。


その捜査中、山根は夢千代の日記を見つける。

そこには病に冒された彼女の、過酷な日々が綴られていた。



山陰の鄙びた温泉町を舞台に、置屋の女将・夢千代と、彼女を取り巻く
様々な過去を持つ人々との触れ合いを描いたドラマ。


夢千代は、家族を広島の原爆で失い、天涯孤独の身。

自身も胎内被爆で白血病に苦しみ、医者からあと三年の命と言われている。


失踪芸者・市駒(片桐夕子)子連れ芸者・金魚(秋吉久美子)陽気な芸者・菊奴
(樹木希林)町医者・木原(ケーシー高峰)市駒を追う刑事・山根(林隆三)。


ここでは誰もが、他人に言えない事情を抱えていた。

そんな寄る辺ない人々の肩を寄せ合う姿が、夢千代の日記を借りて綴られる。


ロケ地となった兵庫県の湯村温泉町は、今も夢千代の里として知られる。

薄幸のヒロイン・夢千代を演じた吉永小百合は、この町の名誉町民となっており、
町を流れる春来川の川辺には、夢千代の像が建てられている。











     



北の国から


女房に逃げられ、東京暮らしに嫌気が差した五郎(田中邦衛)は、
二人の子供を連れて、五郎の故郷、北海道・富良野にやって来る。


富良野の市街から、20キロ奥地に入った麓郷(ろくごう)という
過疎村に、朽ちかけた五郎の生家がまだ残っていた。


どうにか住めるように修理した家で、五郎と子供たちの生活が始まった。

だが、電気も水道もない丸太小屋でのランプと薪だけの暮らしに、
都会育ちの子どもたちは、拒絶反応を示してしまう…。




北海道の厳しい自然の中で暮らす父と子の触れ合いを叙情豊かに描いたドラマ。

描かれているのは、都会では得られない自然と向き合う人間本来の生活。
沢から水をひく水道工事、丸太小屋作り、くんせい作り、風力発電など。


東京の生活ではパッとしなかった五郎も、ここでは頼もしい父親だ。

最初は、不便な暮らしになじめず、東京へ帰りたがっていた子供たちも、
五郎の一途な姿や、現地の人々の素朴な優しさに触れ、考えを改めてゆく。


人間のキャスト以外にも、キタキツネ、シマリス、エゾシカ、エゾイタチなど
北海道の大自然のなかに生息する動物たちが画面に華を添えている。


このドラマで、富良野市は観光名所になり、過疎の村だった麓郷地区には
休日になると数百人の観光客が見物に訪れることとなった。













野々村病院物語


開院を明日に控えた吉祥寺の野々村病院は慌ただしい雰囲気だ。


婦長の友子(山岡久乃)は看護婦たちの最後の特訓に大わらわである。

院長の野々村隆之(宇津井健)は医師たちを前に「医は人なり」と自らの信念を披露する。


そんなところへ幼い子供を抱えた母親(梶芽衣子)が駆け込んでくる。

若い医者の一平(三浦浩一)は取りあえず応急処置をして帰すが、再度担ぎ込まれたときには

症状がすっかり悪化していた。





子供は重篤な状態で、万が一のことがあってはと、他の大学病院へ移せという意見もあったが、

院長の隆之は敢然として手術を行うのだった…。



物語の舞台は、東京・吉祥寺にある小さなクリニック。

院長の野々村隆之(宇津井健)は、これまで大学病院に勤務していたが、地域医療を目指して

念願の個人病院を開業することに。


大学病院時代から仕えている広島友子(山岡久乃)が、婦長として隆之を支えている。

また、病院の実際の運営は、生真面目な事務長の須崎八一(蟹江敬三)が担当している。


隆之は「患者を人間として接し、心のケアも十分に」と、自らの理想を実践しようとする。

一方、須崎は採算面から「患者を一人でも多く入れ、診察時間も短く」と主張する。

開院早々から、院長と事務長の意見が対立し、地域医療の深刻さを浮き彫りにしている。


本作は、医療ドラマだが、そこには難解な病名やリアルな手術シーンは登場しない。

物語の本筋は、病院内の多様な人間模様を描くことにある。


医師や看護婦などの医療スタッフ側のパーソナルな部分が全編を通して描かれ、またそこに

恋愛の要素も盛り込まれ、ホームドラマ的な側面が満載の作品となっている。



この番組をみるために、夜九時の消灯時間を、火曜日だけ十時に変更した病院がある。

東京・池袋にある大久保病院だ。


火曜の夜は、院長も医師も看護婦も患者さんも、テレビの前で「似た者同士」の

ドラマに夢中になっているわけだ。

なお、この大久保病院は番組の撮影ロケにも積極的に協力してくれているという。













女たちの海峡


医学生としてドイツに留学中の知之(田村亮)は、休暇を利用してスペインへ行った。


ジプシーの踊りを見に行った彼は、踊子の中に晴江(乙羽信子)という日本人女性が

いることに気付いた。


晴江がどういう人生を歩いた末、フラメンコダンサーになったのか、今の知之には

知るよしもない。






やがて帰国した彼は、ふとしたことから生け花師範の麻子(山本陽子)と知り合う。

お互いの趣味であるテニスを通じて、二人は次第に親しくなっていった。


だが知之には叔父の圭一郎(高橋昌也)から勧められた社長令嬢・理佐(金沢碧)

との縁談が進んでいたのだった。



山本陽子扮するヒロイン麻子が異国の地で暮らす生みの親を探すという、日本版の

「母をたずねて三千里」を思わせるドラマである。


休暇でスペインに来ていた若い医学生の知之は、ジプシー酒場で日本人ダンサーを知る。

帰国後彼は、銀座のパーラーで生け花師範の麻子と出会い、好意を持つが麻子の面影は

なんとなくあの日本人ダンサーに似ている。


ドラマの第一回は顔見世の感が強いが、物語の筋書きはひねりが効いている。

東京・下町の深川で義母の小夜子(ミヤコ蝶々)と義弟の哲朗(本田博太郎)と暮らす

麻子の生母は行方不明で、父親も誰かわからないという設定だが、どうやらあの日本人ダンサーが

母親ではないかと思わせるところが、母親探しのテーマを感じさせ、まずは興味をつなぐ。


ドラマの冒頭からスペインの町並みが登場してスケールの大きさを感じさせ、東京の下町とスペイン、

生け花とフラメンコと、静と動の取り合わせが面白い。


日本人ダンサーに扮した乙羽信子の年齢を感じさせないフラメンコの踊りも華麗で見応えがある。

情熱的なフラメンコギターの響きも随所に挿入されて効果的だ。


また、しっとりとした趣の山本陽子とチャキチャキの江戸っ子を思わせるミヤコ蝶々とのやりとりが

ドラマにはずみをつけている。












女の座


神田神保町で下宿屋を営む多美(京塚昌子)のところに、時々やって来る中年男の

勝田広和(金田龍之介)を、下宿人たちは多美の亭主だと思い込んでいる。


だが、勝田には妻・信子(新珠三千代)がおり、芦屋にちゃんとした家を構えている。

多美の弟で銀行支店長の英一(山本学)も勤務先に近いため、この下宿に住んでいる。

一方、信子の弟・国三(勝野洋)が神戸から東京に転勤して来て、英一の部下になり、

その関係で、国三も多美の下宿に転がり込んで来たため、ひと騒動が起こった。





一人の男・勝田広和をめぐって、神戸の芦屋に本妻がおり、東京の神田に愛人がいる。

今まで隠して来たその事実が明るみに出た場合、どんな反応が起こるかを描いたドラマ。


東京転勤となった本妻・信子の弟が多美の下宿に部屋を借りたことから、本妻と愛人の

関係がバレそうになったところで第一話が終了する。


京塚昌子がいわゆる「二号さん」を演じているが、彼女は下宿屋のおかみさんには

ふさわしいが、二号という「かげり」のある女のタイプではないような気もする。


だがそこは、平岩弓枝流のマイルドな味付けで、それほど違和感はないようである。


いずれにせよ、割烹着姿のよく似合う「肝っ玉かあさん」が「二号さん」を演じる

ことで、ドラマの面白さが倍増することだけは確実だ。













茜さんのお弁当


夫と離婚した西木茜(八千草薫)は、東京・下町で宅配弁当屋を営んでいる。


ある日突然、従業員が相次いで辞めてしまい、深刻な人手不足に陥ってしまう。

どうやらライバル店の引き抜きがあったらしい。


見かねた従業員の渉(古尾谷雅人)は、少年院上がりのツッパリ四人組を連れてくる。

四人の少年は、窃盗・恐喝・暴行・喫煙・シンナー遊びなど非行歴のある者ばかりだった。




茜は少年たちを従業員として受けいれ、時には母親代わりとして彼らを見守ることになる。



1970年代後半から80年代前半は、全国の中学で校内暴力の嵐が吹き荒れていた。

当時は、高校へ進学しない不良少年と呼ばれる未成年も多かった。


本作は、世間から煙たがれていたツッパリ少年たちが、弁当屋「あかね弁当」の
従業員として働き始めるところから物語は始まる。


当初は強面で乱暴な少年たちに、主人公の茜は振りまわされるばかりだった。

だが、やがて彼らの純粋な心情に理解を示し、愛情を振り注ぐようになる。

一方、彼らも自分たちを信じてくれた茜のために、懸命に働き始める。


本作は、非行少年が更生していく物語であり、愛情さえ注がれれば、不良少年たちも
無限の可能性があるというメッセージが込められている。


ピンク・レディー解散後、連続テレビドラマに初出演したMIEのデビュー作でもある。

また、横浜銀蝿の歌う主題歌「ジェームス・ディーンのように」も大ヒットした。











蛇蠍のごとく


古田修司(小林桂樹)は、仕事一筋で実直な会社部長。


あるとき古田は、部下のOLに悩み相談を持ちかけられる。

だが、相談に乗るうちに、彼女に対してよからぬ感情を抱いてしまう。


相談後、古田は彼女と食事をとり、一週間後に密会の約束を取り付けた。

だが、密会の当日、古田の妻(加藤治子)が急用と称して来社する。




なんと古田の娘(池上季実子)が、妻子ある男と同棲を始めた…と告げられる。

古田は、とにかく娘を取り戻さなくてはと、相手の男のマンションに乗り込む。


相手の男は、娘より15歳も年上のイラストレーター・石沢(津川雅彦)だった。

「遊びか、真剣か」と詰め寄る古田に、石沢は「遊びだ」とうそぶく。


激怒した古田は、二人を別れさせようとするが、娘はどうしても聞き入れない。




堅物の会社部長・古田は、部下の若いOLと、生涯初の不倫を企てる。

だがその当日、自分の娘が妻子ある男と不倫していることが発覚。


自分の不倫は棚に上げて、娘の不倫相手に怒り爆発。

古田は、相手の男・石沢のもとに乗り込み、大騒動を巻き起こす。


だが、やがて古田は、腹立だしさの中に、どことなく漂う滑稽さを自覚するようになる。

年甲斐もなく、自分自身も若いOLを相手に、一生に一度の浮気を考えていたのではないか。


小心な堅物男の自分、そして理不尽で身勝手な不倫相手の男。

対照的な男二人だが、どこか「同じ穴のムジナ」。奇妙な共感を覚える二人であった。


男の浮気心は、いくつになっても失わぬもののようだ。

「蛇蝎」のように忌み嫌っていた者同士、いつしか「通じ合うもの」が芽生える様を軽妙に
描いた本作は、作者・向田邦子の中年男への優しさと憐みが垣間見える作品である。















竜鉄也  (りゅうてつや)


カラオケがなかった時代、ネオン街には「流し」と呼ばれる芸人がいた。


彼らはギターなどの楽器を手に、酒場をそれこそ流すように一軒一軒まわり、
客の歌の伴奏をしたり、またリクエストに答えて歌を披露したりしていた。

1970年代以降、カラオケの普及により、流したちは失業の憂き目にあう。


だが北島三郎、五木ひろしなど、実力のある者は流しからプロの歌手になった。

飛騨高山出身の盲目の演歌歌手、竜鉄也もその一人である。





病気が原因で視力が落ち、25歳のとき光を失った。
独学で習得したアコーディオンを抱え、流しの世界に入った。


竜は極寒の真冬でも流しをしていた。店に入ると、髪の毛に凍り付いていた雪がとけて、
額からポタポタ落ちたが、途中で演奏をやめることはなかったという。


耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶのがこの商売。「下手くそ」と罵倒されても
「ヘイすみません」と笑い、丸く収めるのも芸なのである。


哀愁にじむ歌声。「演歌とは人の世に踏まれて咲く花」と竜。
聞く人の魂に届くように魂をこめて歌い続けた。


45歳になった1981年に発売した「奥飛騨慕情」が大ヒット。

苦節20年、初出場の紅白の舞台に立った竜の盲目の目は涙で滲んでいた。












もういちど春


彩子(伊東ゆかり)33歳は、小学生の一人息子がいる専業主婦。

会社員の夫・雄三(秋野太作)と、東京の郊外に三人で暮らしている。

夫は、エリートサラリーマンだが、怒りっぽく不実な一面があった。


ある日、彩子は、夫が外で子供をつくったことを知り、離婚を申し出る。

しかし、夫・雄三は、彩子を暴力でねじ伏せてしまう。

我慢できなくなった彩子は、息子・俊一を連れて家を出る計画を立てる。





家を出たものの、行くあてが無い彩子は、かつての上司や友人を頼りながら、

今後の身の振り方を模索していくのだった。



本作は、夫に絶望して別れた子連れの主婦が、どうして生きていくか、その困難さを
描くもので、当時33歳の伊東ゆかりが、自立して生きる等身大の女性を演じている。


人気歌手の伊東だが、ドラマでは、歌番組で見せる華やかさはうかがえず、心細げで
憂いのある女の表情をのぞかせる。ヒロイン・彩子の役柄になりきっているのだろう。


一方、夫・雄三を演じた秋野太作は、俳優座出身のベテランであり、その軽妙洒脱な
演技で独特の存在感を発揮する個性派俳優として人気を博していた。

本作では、感情を抑えられず妻に手を上げる夫を好演し、新たな境地を披露している。


1981年は、東京地裁のロッキード裁判丸紅ルート公判で、榎本被告の前夫人の三恵子さんが
「榎本が5億円受領を認める発言をした」と爆弾発言し「蜂のひと刺し」が流行語になった。


これ以降、女性の力が増し、テレビドラマも「金曜日の妻たち」「くれない族の反乱」など
女性の自立をテーマにした作品が増えるようになった。














関ヶ原


1598年(慶長3年)豊臣秀吉の死後、朝鮮半島に渡っていた日本軍は撤退を始めた。

しかし、この朝鮮からの撤兵は、生命を賭して戦った武将たちに大いに不満を残した。

彼らは何の恩賞も得る事はなく、ただ多大な戦費と兵力を徒に浪費したのみであった。

不満の矛先は、秀吉の側近として強権を振るった石田三成に向けられ、険悪な状況になる。

三成は、秀吉の朝鮮出兵という無謀な行動の残した負の遺産に大いに苦しむことになった。


そうした中、豊臣政権の大老職についていた徳川家康は、この内部対立に巧みにつけ込み、

三成に不満を持つ加藤清正や福島正則などの武将を、次々に味方につけることに成功する。





さらに家康は、自らの養女を加藤清正に娶らせ、縁戚関係を結ぶなど、秀吉により禁止

されていた大名間の婚姻を勝手に進めるようになった。


その後、家康は、豊臣家への謀反の兆しがあるとして、会津の上杉景勝討伐に出征する。

家康と同じく大老職にあった上杉景勝は、居城の改修を行うなどして不穏な動きを見せていた。


これを危険視した家康は、秀頼の名において上洛を命じるが、景勝はこれに従わない。

家康にとっては、後方の脅威であった上杉を討伐する格好の大義名分を得たことになる。


しかし、これは三成の挙兵を挑発する策動であった。一連の家康の行動に激怒した三成は、

打倒家康を掲げ、毛利輝元、島津義弘、小早川秀秋など西国大名を糾合して挙兵する。


1600年(慶長5年)9月15日、美濃国関ヶ原(岐阜県関ヶ原町)にて、石田三成を中心とする

「西軍」総勢十万と、徳川家康を大将とする「東軍」総勢七万五千の両軍が激突となった。

西軍は数で勝っていたものの、諸将の足並みが揃わず戦況は芳しく進まなかった。


家康は事前に、西軍諸将に周到な懐柔工作を重ねており、戦局が佳境に入った後も、西軍は

実に総勢の三分の二が、戦況を傍観したまま微動だにしないといった異常な軍容となった。

それでも残る西軍部隊は奮戦し、寡勢ながらも善戦して、次第に東軍を追い詰めていった。


三成は勝利を確信したが、突如として西軍の小早川隊が東軍に寝返り、友軍に襲いかかった。

この小早川隊の造反を引き金として、寝返りを約束していた他の西軍諸将も次々と東軍に加わり、

西軍はたちまちのうちに総崩れとなった。これによって東軍が大勝し、家康の覇権が確立した。




1964年(昭和39年)「週刊サンケイ」に連載された司馬遼太郎の時代小説のドラマ化。


権謀術数に長けた老獪な徳川家康と、愚直なまでに秀吉への忠誠を貫く石田三成。

家康は徳川の世を招いて、天下に号令しようとし、三成は豊臣の世を一日でも長く存続させようとした。

そのために、一人でも多くの大名を味方につけようと、双方とも様々な多数派工作を展開する。

そうした一連の政治的策謀を重ねて勃発したのが、関ヶ原における天下分け目の決戦であった。


そこで勝ちを引き寄せるために、家康と三成が知略を競い合ったのだが、家康のほうに分があった。

家康自身、開戦前から西軍諸将に入念な懐柔工作を行い、周到な準備を重ねて東軍の勝ちが確定的になる

段階にまで政情を誘導し、最終的に勝利を手にした。


一方、三成は、その優れた行政能力によって、秀吉から過度なまでに重用され、若くして出世した事から

武功派から嫉妬を買いやすく、その生涯全体を見ても、つくづく人望には恵まれなかった。

関ヶ原では、西軍十万の実質的な指揮者として東軍との対決に臨んだものの、人望がないために諸将との

連携も上手くいかず、軍の統御に難渋した。


加えて、防諜・謀略といった感覚に欠け、家康の執拗なまでの攪乱工作を防ぐことができず、無数の

内通者を出して、西軍は内部から瓦解することとなった。

関ヶ原での敗北後、三成は再起を図って戦場から落ち延びるも捕縛され、六条河原で斬首された。


本作は、石田三成が主人公であり、ただ一途に豊臣家に対する「義」を掲げる三成に対して、家康は

天下取りへの野心を露わにし、巧妙な謀略を次々と繰り出す敵役のように描かれている。


司馬遼太郎の原作は、石田三成の立場・視点で物語が語られ、敗軍の将に光を当てた小説と言える。

作者の思いの中には、不器用ながら義を重んじるばかりに散っていった三成という人物に対する同情、

いわゆる判官びいきの気持が込められているかのようである。