10月6日 タイムカプセル(28)昭和57年(1982年) タイム・カプセル
この年、千代田区永田町のホテル・ニュージャパン9階の客室から出火。9、10階など4380平方メートルを焼いた。
火の回りが早かったためと報知器が作動しなかったため、客の避難が遅れ、煙にまかれたり
地上に飛び下りたりして33人が死亡、重軽傷29人を出した。
同ホテルはスプリンクラーや防火壁のない欠陥構造で、消防署から改善命令が出されていた。
原因は客の寝たばこの不始末とみられる。横井英樹社長ら4人が業務上過失致死容疑で逮捕。
(映画)第55回アカデミー賞「ガンジー 」
「ET」「ランボー」「少林寺」
東映「鬼龍院花子の生涯」(仲代達矢、夏目雅子)東宝「ひめゆりの塔」(栗原小巻、古手川祐子、田村高広)東宝「刑事物語」(武田鉄矢、高倉健、西田敏行、田中邦衛)松竹「蒲田行進曲」(松坂慶子、風間杜夫、平田満)松竹「疑惑」(桃井かおり、岩下志麻、山田五十鈴、松村達雄、丹波哲郎)
(音楽)第24回レコード大賞「北酒場」細川たかし
「聖母(マドンナ)たちのララバイ」岩崎宏美「待つわ」あみん「氷雨」佳山明生、日野美歌「3年目の浮気」ヒロシ&キーボー「さざんかの宿」大川栄策「
めだかの兄妹」わらべ。小泉今日子、中森明菜、早見優、堀ちえみデビュー。
「ウエディング・ベル」シュガー「渚のバルコニー」「赤いスイートピー」松田聖子「けんかをやめて」河合奈保子「立待岬」森昌子「ふたりの大阪」都はるみ・宮崎雅「Thriller」Michael Jackson 「Xanadu」Olivia Newton-John
(テレビ)けものみち(NHK 名取裕子、山崎努、伊東四朗)ハイカラさん(NHK 手塚理美、木村四郎、三国一朗、藤村志保)君は海を見たか(フジ 萩原健一、六浦誠、伊藤蘭、関根恵子)花の影(フジ 古手川祐子、夏目雅子、山本陽子、若尾文子、新珠三千代、高峰三枝子、杉村春子、京塚昌子)花祭(フジ 十朱幸代、平幹二朗、田中健、小林麻美、野際陽子、山村聡)嫁の座(フジ 京塚昌子、財津一郎、大村崑、新珠三千代、大空真弓)笑っていいとも!(フジ タモリ)
黒革の手帖(NET 山本陽子、田村正和、小沢栄太郎、三国連太郎) 遠山の金さん(テレ朝 高橋英樹、樹木希林、あべ静江)黒革の手帖(テレ朝 山本陽子、田村正和)必殺仕事人3(テレ朝 藤田まこと、三田村邦彦、中条きよし、山田五十鈴)
淋しいのはお前だけじゃない(TBS 西田敏行、財津一郎、木の実ナナ)結婚(TBS 三田佳子、赤木春恵、新克利、杉田かおる)ソープ嬢モモ子シリーズ 十二年間の嘘(TBS 竹下景子、蟹江敬三、佐藤慶)野々村病院物語II(TBS 宇津井健、夏目雅子、加賀まりこ、津川雅彦、山岡久乃)さよなら三角またきて四角(TBS 堺正章、古手川祐子、山岡久乃、津川雅彦、沢村貞子)
ああ離婚(TBS 京マチ子、佐藤英夫、渡辺美佐子、長山藍子、新克利)松平右近事件帳(NTV 里見浩太朗、松山英太郎、水沢アキ)さすがの猿飛(フジ)
(スポーツ)(3回目) 北の海、通算873勝、大鵬の記録破る。第12回ワールドカップ (開催国)スペイン(優勝国)イタリア
(ファッション)古着ルック
(流行語)逆噴射、ネクラ、ほとんどビョーキ、ルンルン、なめたらいかんぜよ
(社会)2/8東京赤坂のホテル・ニュージャパンで火災。33人死亡。2/9日航機、羽田沖で逆噴射墜落。4/1 500円硬貨登場。4/2フォークランド紛争勃発、英国の勝利で6/14停戦。6/6レバノン戦争勃発。6/8ロッキード事件全日空ルート裁判で橋本、佐藤被告に有罪判決。政界に衝撃。
6/23東北新幹線開業。8/21 PLOベルイート撤退。9/16ベイルート難民大量虐殺。9/22三越ニセ秘宝展問題で岡田社長解任。10/12鈴木首相退陣。11/10ブレジネフ書記長急死。11/12アンドロポフ新政権発足。11/15上越新幹線開業。11/27中曾根政権誕生。
(物故)志村喬、江利チエミ、衣笠貞之助、、佐分利信、灰田勝彦、三波伸介、伏見直江、イングリッド・バーグマン、グレース・ケリー
(その他)中森明菜、シングル「スローモーション」でデビュー。早見優「急いで!初恋」で歌手デビュー。秋本奈緒美、アルバム「Rolling907s」でデビュー。大竹しのぶ、服部清治と結婚(1子をもうけるが、1987年死別)。斉藤慶子、「もの想いシーズン」で歌手デビュー。石野真子、長渕剛と結婚。桑田圭祐、原由子と結婚。
500円硬貨発行。窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子)。気くばりのすすめ(鈴木健二)。フルムーン旅行(国鉄) 宮崎駿「風の谷のナウシカ」(アニメージュ)
Xanadu (Olivia Newton-John )
夏目雅子 (なつめまさこ)
1977年(昭和52年)カネボウ化粧品のキャンペーンガールで注目を集める。
このときのCMディレクターが後に結婚することになる伊集院静だった。
周囲からは清純派の「お嬢さん」と見られがちだったが、その後すぐに
外見からは想像もできない激しい女優魂がさく裂。
1982年(昭和57年)東映「鬼竜院花子の生涯」では大胆な濡れ場を披露した。
セリフ「なめたらいかんぜよ」は流行語となった。
だがこの映画の3年後、病魔に襲われ、1985年(昭和60年)死去。
「薄幸美人」という形容が最も似合う天才女優は、わずか27歳の生涯を終えた。
笑っていいとも
タモリ(森田一義)司会のお笑いバラエティ番組(1982年10月から2014年3月まで放映)
主な出演者は、新人お笑いタレントと一般の視聴者が中心。
この素人たちが色々なコーナーで見せる珍芸やハプニングが、タモリの軽妙な司会と
相まって、番組独特のスタイルを生み出していた。
名物コーナー「テレフォンショッキング」は、毎回著名な芸能人がゲストとして登場し、
トークの後、ゲストの友達に翌日の出演を電話で依頼するというもの。
「それじゃお友達を」と言われて、ゲストが次のゲストの名前を口にすると、
観客が「えーっ」と一斉に声を上げる。これはお約束事になっていた。
翌日の友達紹介は、実はヤラセであり、数日前から次回のゲストは決定していた。
だが、28年間一度も途絶えずに友達の輪が続き、ギネスブックに認定されるほどの
長寿番組になったのは、ひとえにタモリの人柄、センスの成せる業なのだろう。
タモリ自身、長く続いた理由は「反省しない」「座右の銘は適当」と語っている。
確かに、ゲストとのトークは「はぁ」「へぇ」「ほぅ」などの相槌が主であった。
誰が相手でも、等しく淡々とした絶妙な距離感が、タモリの真骨頂となっていた。
だが1988年7月、美空ひばりがゲストの時は、さすがのタモリも緊張した様子だった。
昭和の大スターを前にしては、タモリもガチガチで、汗をすごくかいていたのを思い出す。
結婚
花田ハナ(赤木春恵)は、18年前、夫と別れ、区役所に勤めながら、四人の娘を育ててきた。
四人の娘たちはすべて未婚。長女・秋子(三田佳子)は、中堅の商事会社に勤めてはや19年。
美貌なのに浮いた話もない。なぜ独身なのか、会社でも不思議がられている。
次女・冬子(小鹿みき)は、家事一切を担当し、三女・夏子(小川知子)は、私立の医科大生、
そして四女・春子(杉田かおる)は、まだ高校生だ。暮らしは決して楽なものではない。
そんな中、酒に酔った秋子を上司の中原一平(新克利)が家まで送ってくる。
ハナは一平と秋子が一緒になってくれたらと願っているのだが…。
ひとつ屋根の下に暮らす母と女ばかりの五人家族が、それぞれ自分の幸せを模索していく姿を描く。
橋田寿賀子の脚本で「女性の眼から見た結婚とは」がテーマ。
出演者もほとんど、女性ばかりなだけに、女の考え方、感じ方が透視できるドラマとなっている。
母親を演じた赤木春恵の、いかにも日常的な演技が親近感をいだかせる。赤木は昨年、大河ドラマ
「おんな太閤記」に秀吉の母親役で出演。橋田寿賀子ドラマには欠かせない女優の一人である。
長女を演じた三田佳子はこの時期、良家の奥様など上品な役どころが多かったのだが、本作では
彼女のコミカルな味がほどよく生かされた役柄で新境地を見せている。
黒革の手帖
元子(山本陽子)は、銀行の支店に勤務する33歳のベテラン行員。
ある日彼女は、ニセの送金伝票三枚を次々に端末機に打ち込んだ。
その後、支店次長の村井(井上孝雄)に、医者に行くと断って、
三つの支店を回り、合計7600万円の現金をまんまとせしめる。
その夜、真っ青になっている村井に、元子が電話を入れ、ホテルのロビーに呼び出す。
「金を返せば穏便に処理する。でなければ警察に知らせる」と言う村井に、
元子は、架空名義預金者がびっしりと書かれた「黒革の手帖」を見せた。
それから数か月後、銀座のクラブ「カルネ」では、元子がママとして君臨していた。
松本清張のサスペンス・ミステリー。銀行勤務のハイミスが、業務の盲点をついて金を横領。
それを元手にナイトクラブを開き、群がる男たちを手玉にとって、野望の階段を登っていく。
主演の山本陽子の悪女ぶりが目を引く。ハイミスの行員のときは、髪を後ろに引き詰めて、
化粧っ気はまるでなし。
クラブのママでは、和服を何枚も着替える華麗な変貌ぶりで、これまでのおしとやかな美女の
イメージをかなぐり捨てて、冷徹な悪女を見せつけている。
けものみち
成沢民子(名取裕子)は、半身不随で寝たきりの夫を抱え、働きづめの毎日だった。
ある日民子は、自らが勤める料亭「芳扇閣」の女将から、ひとりの男を紹介される。
小滝章二郎(山崎努)と名乗る彼は、ニューロイヤル・ホテルの総支配人だった。
小滝は民子に、今の生活から抜け出す手助けをすると申し出る。
民子は小滝の誘いに乗り、失火に見せかけて、寝たきりの夫(石橋蓮司)を焼き殺す。
その後、小滝は多額の報酬を約束し、民子を政界の黒幕・鬼頭(西村晃)の屋敷へ送り込んだ。
脳梗塞で不自由な生活を送る鬼頭の楽しみは、女や美術品など、美しいものを愛することだった。
鬼頭に気に入られた民子は、鬼頭の莫大な財力を後ろ盾に、奔放な生活を送るようになる。
1962年「週刊新潮」に連載された松本清張の同名サスペンス小説のドラマ化。
人間社会から逸脱した人間が通る「けものみち」に足を踏み入れた男女の運命が描かれる。
ホテル支配人の小滝は、料亭の仲居だった民子をそそのかし、政財界の黒幕・鬼頭の元に送り込む。
金のために夫を殺し、政財界のドンに囲われる悪女・民子を、名取裕子が熱演している。
半身不随の夫との暮らしに絶望していた、見るからに地味な彼女が、やがて男たちを踏み台に、
次第にしたたかな女に変身してゆくさまが見どころとなっている。
また、ムソルグスキーの「禿山の一夜」などの背景音楽も、ドラマ効果を盛り上げていた。
君は海を見たか
増子一郎(萩原健一)は、造船会社の主任として忙しい毎日を送っている。
彼は早くに妻を亡くし、一人息子の正一(六浦誠)、妹の弓子(伊藤蘭)と暮らしている。
ある日、息子の正一が体の不調を訴え、翌日の学校の欠席を弓子に申し出る。
仕事に忙殺されていた一郎は、正一の世話は妹に任せたまま、出張に出向いてしまう。
翌日弓子は正一を近くの病院に連れていくが、医師は大学病院での精密検査を勧めた。
精密検査の結果、正一は不治の病である腎臓がんと診断される。
急遽出張から戻り、病院に駆け込んだ一郎に、医師は余命三か月であることを告げる。
一郎は、休職願いを出し、息子に残された時間を一緒に過ごそうと決心するのだった。
仕事一筋の父親と、ひたすらにその父の愛を求める難病の子供との心のすれ違いを通して、
真の人間の生き方を問うシリアスドラマ。
息子が余命三か月と宣告された一郎は、会社からの帰宅電車でいつも見馴れた車窓の風景が
「はじめてみる風景」のように変わっていることに気づく。
車窓に夕暮れの郊外が飛び、夕日に染まった沿道の情景が色鮮やかに映る。
朝晩通っている電車の外の、見馴れたはずの景色が何故だかとても愛おしかった。
ある時、正一の小学校の担任に、正一が描いた真っ黒に塗りつぶした海の絵を見せられ、
息子さんに青い綺麗な海を見せた事はあるか、と聞かれハッとした一郎だった。
自分自身、仕事で毎日海を観ていた筈なのに、忙しさのあまり心の眼で観ていなかった。
一郎は、自分が仕事場とする真っ青な本当の海を、正一に見せてやろうと決心する。
本作は、谷川俊太郎の詩「生きる」がドラマ内で重要な要素として用いられているほか、
主題曲であるショパン「ワルツ10番」も印象に残る作品となっている。
野々村病院物語II
アメリカの病院に勤めていた野々村隆之(宇津井健)は、契約期間を終え帰国、
亡くなった父が20年前に開業した野々村病院の2代目院長に就任する。
だが、病院の経営の実権は、院長代理の木井省三(津川雅彦)が握っていた。
金儲け優先の経営方針により、病院内は医療の心もすさみ腐敗しきっていた。
正義感に燃える隆之は、早速、病院の立て直しに乗り出すが…。
東京郊外の病院を舞台に、理想主義の院長と現実主義の医師との対立を中心にした人間模様を描く。
主人公の野々村隆之(宇津井健)は、医学が自分の天職だと信じ、仕事に情熱を傾ける。
隆之には、苦しみ悩んでいる病人に手を差し伸べずにはいられない優しさがあった。
だが、3年間の海外勤務を終え、野々村病院の院長に就任すると、院長代理を務めていた
木井省三(津川雅彦)は、隆之の理想とは違う形で病院経営を進めていた。
隆之は、この3年間の間に他所の病院のようになってしまった野々村病院を一歩一歩、
根気よく立て直していこうと決意する。
院長代理の省三は、隆之と大学病院時代の同期で、優秀な外科医だが、名うてのプレイボーイで
看護婦の千恵(夏目雅子)とは、以前から良からぬ噂が立っていた。
そんな折り、婦長の直子(山岡久乃)が隆之に、千恵が病院をやめるつもりだと告げる。
花の影
佐保子(夏目雅子)は、東京へ出て来て六年、大東銀行に勤めていた。
六年前に母親を亡くし、父親とは絶縁状態のまま、故郷の弘前を離れて上京
して来たのだが、今は千鳥ヶ淵のマンションで一人暮らしを満喫している。
そんなある日、佐保子に縁談が持ち上がった。
銀行の上司・石田専務(山村聡)が同じ銀行の俊之(あおい輝彦)と結婚しないか
と打診してきたのだ。
そんな折り、佐保子は幼なじみの宗太郎(田中健)と再会する。
彼はニューヨークから帰国したばかりの新進画家となっていた。
平岩弓枝ドラマシリーズの放映三百回記念番組。
母の不倫の恋とその後の自殺、という暗い過去をもったヒロイン佐保子の一生を、
十代から八十代まで、それぞれ一話完結で、八回に渡って描き分けている。
それぞれの回で、佐保子を演じるのは、古手川祐子(18歳)、夏目雅子(24歳)、山本陽子(35歳)、若尾文子(40歳)、
新珠三千代(51歳)、高峰三枝子(60歳)、杉村春子(70歳)、京塚昌子(82歳)の八人。
それぞれの世代の「佐保子」が抱えた問題が桜の花に託して叙情的に描かれるのだが、そのテーマにかかわる桜は、
全編を通じて随所に咲き乱れ、物語全体が画趣あふれる作品に仕上がっている。
花祭
若林彩子(十朱幸代)は、小田原にある香水研究所で調香師として働く兼業主婦。
彩子の夫・研三(平幹二朗)は、一年のうち半分以上も家をあけている貿易商だ。
同居する母(沢村貞子)は、たまに帰宅する息子の研三を溺愛している。
生活上は何不自由ない彩子だが、やはり心理的には空虚と忍耐の連続であった。
そんなある日、彩子は亡き兄の面影をもつ青年調香師・彰吾(田中健)と出会う。
物語は、調香師・彰吾(田中健)が、海外出張から帰ってくるところから始まる。
彰吾は研究所長(鈴木瑞穂)から、新任の調香師・彩子(十朱幸代)を紹介される。
出張の間、彰吾には、所長の娘・美佐子(小林麻美)との縁談が持ち上がっていた。
ドラマの第一回は、そうした登場人物の紹介が、それぞれ丁寧に描き出されている。
彩子と夫の研三(平幹二朗)、やがて結婚するであろう彰吾と美佐子、二組の夫婦を
中心に、波乱に満ちた人間模様が織り成されていくと予想される滑り出しだ。
因みに調香師というのは、香水などの香りを調合する仕事で、何千何百という香りを
嗅ぎ分けなくてはならないという。
つまり香水づくりのプロのことで、高度な臭覚が要求される特殊な技能といってよい。
どうやら家庭の主婦が片手間に出来る仕事ではないようだ。
また、タイトルの「花祭」は、毎年八月に南フランスで開催される花祭りをイメージ
したものだが、物語の舞台も、やがて香水の本場である南仏まで広がるということで、
今後の展開に期待を持たせるドラマとなっている。
嫁の座
舞台は東京・浅草の老舗割烹「鬼の家(おにのや)」
主人公の朱美(京塚昌子)は、49歳の嫁さん。
つまり、舅(小沢栄太郎)、姑(鈴木光枝)に仕える身。
板前の亭主・龍太郎(財津一郎)は、昔気質の頑固者。
気に入らない客とすぐにケンカをおっぱじめる。
そんな亭主をおだてたり、すかしたりして、朱美は店を切り回す。
長男の樹一(篠田三郎)は、大学卒業後、店を継ぐ気になったらしく、板前修業を始めた。
長女の栄(宮崎美子)は、短大を卒業したばかりの典型的な現代っ子。
それに腕のいい板前だが、まだ独身で鬼の家に居候という朱美の弟・友己(大村崑)がいる。
女将の朱美は、気さくな性格で客あしらいが上手い。夫の龍太郎は、腕前は一流だが、気が短いのが玉にキズ。
本日も早速、酒ばかり飲み、料理に手をつけない客と言い争いを始めた。
こんな時には、隠居している父の周平が店に出て、とりなしをするのが毎度の事であった。
京塚昌子主演、下町を舞台にした平岩弓枝の人情劇。庶民の哀歓を浮き彫りにする独特の「平岩調」で、
昨年放映された「女の座」に引き続いて、主婦層を中心に高く支持された作品。
とにかく大家族のうえ、毎回変わる客の顔ぶれを含めると、誰が誰なんだ?ということになるが、
視聴者もいつのまにか、家族に入り込んだような気になってしまうのが平岩ドラマの特色。
もっと気楽にかまえて、バラエティ豊かな登場人物の個性を楽しんでみたらどうであろうか。
さよなら三角またきて四角
東京・高田馬場の奥まった商店街の一角、野沢豆腐店と、桜木家が営むピザの店
「ソレント」が隣り合わせになっている。
野沢家は、未亡人の澄江(山岡久乃)が、二男・徳二(堺正章)の助けを得て、
昔ながらの豆腐の製造法を守っているが、景気はあまり良くない。
一方、桜木家は、当主の雅也(津川雅彦)がやり手で、母・チカ(沢村貞子)の
反対を押し切り、うどん屋ののれんも捨て、当世風のピザ店にして繁盛している。
雅也はさらに、ピザ店の拡張を目論み、野沢家の買収を狙っている。
当然仲の悪い両家だが、徳二と雅也の義理の妹・紀子(古手川祐子)は、密かに恋愛中だ。
また、徳二の弟・留徳(山田辰夫)と、ソレントのウエイトレス・スズ子(大畑ゆかり)
が同せいを始めたりするなど、両家の関係を更に複雑にしているのであった。
登場人物に、ベテランとテレビ初出演という新人を取り混ぜ、軽いタッチのホームコメディ
としてユーモラスに描かれている。
堺正章演じる徳二は、野沢家の二男で、父親が交通事故で亡くなった後、進学をやめて
店を手伝ってきているが、豆腐屋を継ぐ意思が固まっている訳ではない。
そんな徳二と気持ちが通い合うのは、豆腐店を買収してピザ店を広げようとする雅也の
妻(片桐夕子)の妹・紀子である、という含みが面白い。
ハイカラさん
明治15年、サンフランシスコから横浜に向かう貨客船で帰国する野沢文(手塚理美)ら、
三人の日本人留学生は、ひどい船酔いに苦しめられた。
医務室に船酔いの薬をもらいに行った文は、誤って船倉に迷い込む。
そこで日本人青年・次郎太(木村四郎)と知り合った。
彼は有り金をはたいて牛を買い、アルバイトをしながら日本に帰るところだという。
アメリカ生活を体験したハイカラ娘が外国人を泊めるホテルを作り上げるという奮闘記。
たくましい明治の女性の生き方とともに、同じ道を歩む夫との夫婦愛を文明開化から
富国強兵へと移り変わる時代相を背景に描く。
物語は、留学を終えた三人の娘が横浜に向かうところから始まる。
日本政府の留学生であり、後に津田塾大学を創設した津田梅子ら、実在の人物が登場し、
文明開化時代の女性像が伺えるのが興味をひく。
また、ヒロインの実家である横浜の油屋を舞台に、アメリカと日本の生活様式や
文化の違いを、劇中で面白おかしく描いている。
だが、物語の舞台が百年以上も前の明治15年とあって、時代に沿ったセットや小道具を
揃えるのに、スタッフは苦労の連続だったという。
例えば、ドラマの第一回目に出て来る横浜港の税関や待合室は、スタッフがひと月近く
東京や横浜の資料館に通って、やっとそれらしい絵図面を探し出したという具合である。
困ったのは、当時流行した「手回しミシン」や「バター製造機」などの輸入舶来品だ。
台本に一行触れられているだけの品を、各地の骨董品店を探し回って借用してくるのだが、
そうした美術スタッフの苦労は並大抵ではなかったという。
ああ離婚
宗子(京マチ子)は、ただいま50歳。一人娘の春子(中田喜子)は、
商社マン・洋介(三ツ木清隆)と結婚し、家事に追われることもない。
夫の圭造(佐藤英夫)が定年退職を迎えた日、妹の香子(渡辺美佐子)、
瑶子(長山藍子)らが祝いを述べにやって来た。
だが、肝心の圭造がなかなか帰宅しない。
なんだかシラけた感じで宴会が始まった。
祝宴も終わった深夜、泥酔して帰宅した夫に、宗子は離婚を申し出るのだった。
橋田寿賀子脚本。一人娘が結婚し、結婚26年の妻(50歳)が夫(55歳)の
定年の日に離婚宣言をするという離婚騒動を描いたドラマ。
かつては、浮気や生活費を渡さない、などが離婚理由の上位を占めていたが、
この時期から「性格の不一致」が第一位にあげられるようになった。
性格の不一致とは、いわゆる「ウマが合わない」ことで、経済的な面よりも
夫婦間で精神的絆を重視するようになったことの現れなのかも知れない。
本作は、離婚率が上昇しつつある世相を背景に、離婚に直面している50代・40代
・30代・20代の各世代の夫婦の離婚騒動とその原因を探りながら日常を描いた作品
であり、初めて離婚を正面からとらえたホームドラマとされている。
淋しいのはお前だけじゃない
沼田薫(西田敏行)は、ウダツの上がらないサラ金の取り立て屋である。
ある日沼田は、サラ金会社の社長から、2000万円の金を取り立てて欲しいと頼まれる。
面倒を見ていた女芸者(木の実ナナ)が借金を背負ったまま、旅役者と駆け落ちしたという。
さっそく沼田は、二人の行方を追って四万温泉に辿り着く。
だが、ふとしたことから沼田は、その女芸者が、かつて情けを受けた恩人の娘と知る。
女芸者に同情した沼田は、なんとか彼女を助けようと考えるようになる。
あるとき沼田は、温泉街の演芸場で、役者たちが高額のおひねりを貰っているのを目撃する。
そこで沼田は、彼らと共にドサ回りの劇団を結成して借金を返済しようとするのだが…。
サラ金取り立て屋の男が、ひょんなことから大衆演劇の世界に足を踏み入れて
巻き起こす騒動を描いた人情コメディ。
最初は血も涙もなく貸金回収をしていた沼田だったが、義理と人情が時代を越えて
呼吸している旅回り一座を結成することになり、少しずつ変化していくという筋書き。
当時社会問題となった「サラ金地獄」と「大衆演劇」をドッキングさせたユニークかつ
時代を鋭く衝いた意欲的で完成度の高い作品となった。
沼田を演じた西田敏行が、劇中で女形を熱演して話題になった。
また、当時は無名だった梅沢富美男が本作で大ブレーク。
「下町の玉三郎」として、その後テレビや舞台などにひっぱりだことなった。
第一回向田邦子賞受賞作品。脚本は、大河ドラマ「黄金の日日」で知られる市川森一。
ソープ嬢モモ子シリーズ 十二年間の嘘
唐沢モモ子(竹下景子)は、ソープ嬢をしてためた金で、郊外に50坪の土地を買った。
休みの日に土地を見にいくと、見知らぬ中年男・桜井(佐藤慶)が草むしりをしていた。
不審なままアパートへ帰ると、ヒモ気取りの村田(堀越大史)が変死していた。
警察に疑われたモモ子のアリバイを証明できるのは、その草むしりの男・桜井だけだった。
脚本は市川森一。マイホームにこだわる妻を殺害したという新聞記事にヒントを得て作ったという。
ある中年サラリーマンが、株に失敗して土地を売却してしまう。だが土地を売った事を家族に言えないまま、
ついに12年後、その土地に家を建てる話が進んでしまう。やむにやまれず、妻を殺害してしまった事件。
その土地の現在の所有者がソープ嬢のモモ子で、彼女も土地をめぐる様々な事件に巻き込まれてしまう。
サラリーマンが郊外に一戸建てを持つことを目標としていた頃の、まさに時代を反映したドラマである。
本作は、主演の竹下景子が、ソープ嬢に扮して話題を呼んだだけではなく、社会現象の深層をえぐる作風
が評価され、1982年度の芸術祭優秀賞を受賞した。
松平右近事件帳
藪太郎(里見浩太朗)は、長屋に診療所を開く心優しい町医者である。
貧しい人から金を取らず、食事抜きで往診に駆けつける姿が評判となり、
このところ大忙しの毎日だ。
ある日、神田祭の最中に、大奥勤めの女中・お光が何者かに殺害される。
お光の死に立ち合った藪太郎は、お光のお守り袋から御禁制の阿片を発見。
不審を抱いた藪太郎は、隠された真実を暴くため、密かに調査を開始する。
将軍家ゆかりの松平右近が、長屋住まいの町医者・藪太郎に身を変え、悪を成敗する痛快時代劇。
右近の右腕は、老中・青山下野守(芦田伸介)の配下で、行商を営む清太郎(松山英太郎)。
同じく老中の配下で、髪結いを稼業とするくノ一のおさよ(水沢アキ)。
おさよは、同じ長屋に住み、探索だけでなく、右近の診療にも協力している。
見どころは、葵の紋の付いた着物で登場し、身分を明かして悪を斬るクライマックス。
里見の代名詞となった華麗かつ優雅な殺陣の立ち回りを、存分に堪能することができる。
その他、ナレーションの第一人者・芥川隆行による名調子と、多くのヒット曲を手がけた
作曲家・小谷充の、力強さと勇ましさに満ちたオープニング・テーマが印象に残る。
フォークランド紛争 (Falklands War)
フォークランド諸島の領有をめぐりイギリスとアルゼンチンの間で勃発した武力衝突。
イギリスの勝利のうちに終結した。
フォークランド諸島は、南太西洋のアルゼンチン沖に浮かぶ島々である。
750以上の島で構成され、総面積は北アイルランドとほぼ同じ(12,173平方Km)
1833年から英国が実効支配していたが、1982年4月2日、アルゼンチン軍が突如、
部隊を派遣して交戦になった。
戦闘終結は約2カ月後。アルゼンチン軍が降服して停戦となったが、
アルゼンチン兵655人、英兵255人が戦死した。
(フォークランド諸島の領土問題)
1816年、アルゼンチンはスペインからの独立を宣言し、当時スペイン領であったフォークランド諸島
も相続したというのがアルゼンチンの主張である。
フォークランド諸島がスペイン領であることは、1713年のユトレヒト条約(Treaty of Utrecht)により、
国際的に承認されている。
一方、フォークランド諸島の実効支配は、1833年にイギリス軍がアルゼンチン兵士26名を諸島から
追い出して、諸島の領有を主張したことで始まった。
イギリス政府によると、英国探検家デイヴィス(John Davis)によるフォークランド諸島の発見は、
1592年のことであり、これが現在のイギリスの領有権主張の根拠となっている。
なお、近海に油田があるとされ、これも領土問題の一因となっている。