8月30日   タイムカプセル(20)昭和49年 (1974年)   タイム・カプセル
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この年、アメリカ映画「エクソシスト」が記録的にヒット。死後の世界や、霊魂との交信、魔術などを対象にした
「オカルト物」がテレビや雑誌でしばしば取り上げられた。古くから伝わる占いの「コックリさん」も流行した。


(映画)第47回アカデミー賞「ゴッドファーザーPARTⅡ」

タワーリング・インフェルノ」(スティーヴ・マックイーン、ポール・ニューマン)「エクソシスト」「燃えよドラゴン」「パピヨン

東宝「華麗なる一族」(佐分利信仲代達矢月丘夢路京マチ子田宮二郎)東宝「サンダカン八番娼館 望郷」(栗原小巻田中絹代、高橋洋子)日活「赤ちょうちん」(秋吉久美子)松竹「砂の器」(丹波哲郎、加藤剛)東宝「サンダカン八番娼館、望郷」(栗原小巻田中絹代)東宝「伊豆の踊子」(山口百恵、三浦友和)


(音楽)第16回レコード大賞「襟裳岬」森進一

「うそ」(中条きよし)「二人でお酒を」(梓みちよ)「精霊流し」(グレープ)「ひと夏の経験」(山口百恵)「昭和枯れすすき」(さくらと一郎)「傷だらけのローラ」(西城秀樹) 「よろしく哀愁」(郷ひろみ)「ひまわり娘」(伊藤咲子デビュー)

「恋のインディアン人形」(リンリン・ランランデビュー)「
気になる17才」(あいざき進也デビュー)「岬めぐり」山本コータロー&ウィークエンド「積木の部屋」(布施明)「花占い」「はじめての出来事」 (桜田淳子) 「学校の先生」(坂上二郎)

(テレビ)NHK大河ドラマ「勝海舟」(渡哲也松方弘樹、丘みつ子)NHK「鳩子の海」(斎藤こず恵、藤田美保子)NHK「ニュースセンター9時」TBS「寺内貫太郎一家」(小林亜星、西城秀樹)  TBS「白い滑走路」(田宮二郎山本陽子松坂慶子浅丘ルリ子)TBS「おんなの家」(杉村春子、山岡久乃、奈良岡朋子)TBS「赤い迷路」(宇津井健、山口百恵)TBS「事件狩り」(石立鉄男、石橋正次、鈴木ヒロミツ)

TBS「夜明けの刑事」(坂上二郎、石橋正次、鈴木ヒロミツ、石立鉄男)フジ「マチャアキ・幸代のふたりは夫婦」(堺正章十朱幸代、中山仁)フジ「座頭市物語」(勝新太郎)NTV「水もれ甲介」(石立鉄男、原田大二郎、村地弘美)NTV「傷だらけの天使」(萩原健一水谷豊)ABC「斬り抜ける」(近藤正臣和泉雅子、岸田森)

NET「仮面ライダーX」(速水亮) YTV「宇宙戦艦ヤマト
フジ「編笠十兵衛」(高橋英樹片岡千恵蔵大友柳太朗、露口茂、成田三樹夫)フジ「アルプスの少女ハイジ」




                                                 





(スポーツ)21歳2カ月の史上最年少横綱・北の湖誕生(7.24)長島が現役引退(10.14)巨人軍監督に就任(11.21)

(ファッション)バギーパンツ。

(流行語)「便乗値上げ」「ストリーキング」「それは言える」「ゼロ成長」「巨人軍は永久に不滅です」「諸悪の根源」 「英語でやってごらんよ、なまってるよ、外人だろう、あんた」坊屋三郎(松下電器、クイントリックス)

(社会)ルバング島の小野田小尉が帰国(3.12)日中航空協定調印(4.20)日台空路停止(4.21)インド地下核実験(5.18)ウォーターゲート事件でニクソン米大統領辞任(8.9)三菱重工ビル爆破事件、死者8(8.30)日本赤軍によるハーグ(オランダ)仏大使館占拠事件(9.13)佐藤栄作氏がノーベル平和賞を受賞(10.9)田中首相、金脈問題の渦中で辞意表明(11.26)後任は三木氏に(12.9)


(物価)タクシー初乗り220円。地下鉄最低料金 60円。大卒初任給67,400円。封書20円 はがき10円。

(その他)池上季実子、NHK「まぼろしのペンフレンド」でデビュー。多岐川裕美、東映「聖獣学園」でデビュー。草刈正雄、東宝「卑弥呼」でデビュー。林寛子「ほほえみ」で歌手デビュー。早乙女愛、松竹「愛と誠」でデビュー。秋吉久美子、日活「赤ちょうちん」でデビュー。浅野ゆう子「とび出せ初恋」で歌手デビュー。山口百恵、東宝「伊豆の踊り子」で映画初出演。

上野の東京国立博物館で「モナリザ展」開催(4.20~6.10)「ベルサイユのばら」ブーム。圧力釜。紅茶きのこ。幸福行き切符。超能力(ユリ・ゲラー)インスタントみそ汁「あさげ」。「燃えよ!せんみつ足かけ二日大進撃」(ニッポン放送)山上たつひこ「がきデカ」(少年チャンピオン)



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                             宇宙戦艦ヤマト








宇宙戦艦ヤマト


西暦2199年、地球はガミラス星の攻撃を受け、滅亡の危機に瀕していた。


放射能汚染で地上の生物は死滅。人類も滅亡まであと1年と迫っていた。



そんな中、はるか14万光年彼方のイスカンダル星から一通のメッセージが届く。


イスカンダルには、放射能除去装置(コスモクリーナー)があるというのだ。


その言葉に従い「宇宙戦艦ヤマト」を造船した人類は、イスカンダルに向け出航する。





1945年(昭和20年)4月、日本軍の戦艦大和は、米軍戦闘機の空襲を受け、徳之島沖に撃沈した。

250年後の西暦2199年、戦艦大和は引き揚げられ「宇宙戦艦ヤマト」として復活する。


人類滅亡のタイムリミットまで1年。だが目的地のイスカンダルは、14万光年の彼方にある。

ヤマトには、頼りになる沖田艦長以下、古代進、島大介、森雪らが乗り込んで出発した。


途中ガラミス星の攻撃をかわしながら、大遠征を決行するというSFスペースロマンである。

これは、後のヒットアニメ「銀河鉄道999」「機動戦士ガンダム」にも共通する要素だ。


もうひとつは、一種の「メカ・ロマン」という要素が本作にはある。

宇宙船、波動エンジンから、一昔前の戦艦大和やゼロ戦まで登場しており、子供も大人も

楽しめる作品として人気を集めることになった。


その一方、愛国心をテーマとしたストーリーが好評を博したため、賛否両論もあった。











     



クイントリックス(松下電器)


オイルショック後の不況で、人々は笑いを求めるようになった。

まさに「不況になると喜劇が流行る」である。

それを実践したのが、英会話を題材とした松下電器のCM。


ボードビリアン・坊屋三郎が、大きな外人を相手に、商品名の

「クイントリックス」の発音をネタに「なまってるよ」とやっつける。


日本人の外人コンプレックスを逆手にとり、小気味よい笑いを提供し、

大ヒットとなった。












公衆電話


家庭用のダイヤル式黒電話は1952年(昭和27年)から普及をはじめた。

だが電話があるのは裕福な家か、商売に必要な家のみで、
一般庶民の家庭にはほとんどなかった。

そのため、一般の人が使えるための公衆電話の設置が進められた。



10円硬貨式の電話ボックスは、1953年(昭和28年)に登場した。

また、たばこ屋や駅売店などの店先に赤い公衆電話が置かれた。

その後、遠距離通話の増加に伴い、1972年(昭和47年)に
100円硬貨も使用できる黄電話が導入された。




1982年(昭和57年)には、テレフォンカードの使える公衆電話も登場した。


家族に内容を聞かれるのが嫌で、小銭を握りしめて近くの公衆電話へ…。

テレフォンカードを何枚も用意して、電話ボックスで恋人と長話を…。

公衆電話にまつわるエピソードは、どこか昭和の青春の香りがしたものだ。



その後、1995年(平成7年)頃から携帯電話が爆発的に普及し、
公衆電話の利用者が激減したため、撤去が相次ぐこととなった。














超能力ブーム


超能力者と呼ばれるイスラエル人ユリ・ゲラー(Uri Geller)が来日。

NTV「木曜スペシャル」(3月7日)に出演して、念力でスプーンを曲げて見せた。


これに触発されて全国各地で超能力を持つ少年少女が名乗りをあげ、

テレビ各局が競ってこれらの念力少年・少女を取り上げた。

これがきっかけとなって、全国的に超能力ブームが巻き起こった。














     



白い滑走路


国際線機長の杉山(田宮二郎)は、若手から嫌われるワンマン機長である。

一方、安全を最優先する厳格な姿勢は、航空会社からは厚い信頼を受けている。


あるとき、香港から東京へ向かう帰路、機内で若い女性客が睡眠薬で自殺を図る。

乗り合わせていた医師の診断では、一刻も早く胃の洗浄が必要とのこと。
杉山機長は急遽、沖縄の那覇空港への着陸を要請する。

しかし、同機には、東京の病院で必要な緊急用の血清が積まれていた。
血清の輸送を担当する厚生省技官は激しい非難の声をあげる。

「機長は、東京で死に掛かってる血清を必要な人を見捨てるつもりか!」

着陸か、それとも運航継続か、杉山は究極の選択を迫られる。




国際線旅客機の乗務員という女性にとって憧れの職業に大人の恋をからませたドラマ。


妻に蒸発されたパイロットにスチュワーデスと同僚の未亡人、という組み合わせで
当時人気絶頂の田宮二郎、松坂慶子、山本陽子が出演している。


相手役の松坂と山本は、田宮自身によるキャスティングで、失踪した妻の綾子役も
同様に有名女優が指名されていた。


ピアニストである綾子の回想シーンには、ピアノを弾く指先しか画面に映らない。

そのため、綾子を演じる女優はいったい誰なのか、波乱の物語の行方とともに
多くの視聴者を引きつけ、茶の間の話題をさらった。


なお、劇中で綾子が弾く哀しげなメロディの曲は、ショパンの「バラード第1番」、
激情的な曲は、同じくショパンの「即興曲第4番」(幻想即興曲)である。














寺内貫太郎一家


芝居の経験がまったくなかった小林亜星を主役に抜擢し、下町の石材店を舞台にした人情喜劇。


毎回クライマックスは、貫太郎と息子・周平(西城秀樹)との取っ組み合いの大喧嘩であった。

ちなみに、ミヨコ(浅田美代子)が貫太郎に投げ飛ばされるシーンはパンツが見えて話題に。


さらに「ジュ、ジュリー!」と沢田研二のポスターを見ながら腰を振る貫太郎の母きん(悠木千帆)
など、同作からは今も語り草になる名場面がいくつも生まれた。


その一方で、老いや孤独など、シリアスな要素も描かれていた。

石工のタメさん(左とん平)や岩さん(伴淳三郎)のとぼけた掛け合いや、「お涼さん」と
サングラスの向こうでつぶやく藤竜也など、キャスティングの妙が冴えを見せた。


期間平均視聴率は、31.3%を記録。好評を受けて、翌年放送された第2シリーズも
平均視聴率22.4%をマークするほどの国民的ドラマとなった。













マチャアキ・幸代のふたりは夫婦


早瀬雪夫(堺正章)は、レストランでボーイをしながら、将来はミュージカルスターとして

舞台に立つことを目指している。

家は代々歌舞伎役者を輩出した名家なのだが、封建的な梨園の世界を嫌って飛び出したのだ。


しかしまだボーイ姿も板につかず、頼りないことはなはだしい。

その日は、深川のどじょう屋「伊勢治」の主人・橘又造(小池朝雄)のお見合いの席があった。

ところが雪夫はテーブルに水をこぼし、あわてて拭いたので料理の皿をひっくり返した。

いいムードで運んでいたお見合いが、雪夫のドジで台無しになってしまった。




職を転々としながらも、ミュージカルスターを夢見て奮闘する男の涙と笑いのストーリー。


レストランをクビになった雪夫は、又造の好意で、どじょう屋に住み込みで働くことになる。

そこで雪夫は、未来の伴侶となる女性、又造の娘・幸代に出会うのだった。



主演の堺正章は、この年の5月に、一般女性(吉田千恵子)との挙式を控えている。

一方、ヒロインの十朱幸代は、この年の1月に、俳優の小坂一也と式を挙げたばかり。

ドラマの撮影時には、ムード満点のコンビとなった。


TBS「時間ですよ」で助演だった堺は、本格的ドラマの主演は初めて。

そこで仕事や、とくに結婚生活については、先輩の十朱にアドバイスを受けているとか。











赤い迷路


大学教授で精神科医の結城正人(宇津井健)は、アメリカから三年ぶりに日本へ戻った。

母校に犯罪心理学研究所が新設され、その所長として赴任するために帰国したのだ。


研究所の開設パーティーに、正人は妻の妙子(小山明子)と出席した。

だがその席上、謎の電話がかかり、妙子はそのまま姿を消してしまう。


その翌日、モーテルで妙子の無惨な死体が発見された。

正人は全力で犯人を捜し出そうとする。やがて容疑者として都築潤(松田優作)が逮捕された。




妻を殺された精神科医が犯人を突き止めていくサスペンスを軸に、複雑な人間模様が描かれる。


精神科医役は宇津井健、その一人娘で出生の秘密をもつ少女に山口百恵。かげりのある雰囲気が
よく合っていて、その後の山口百恵の役柄イメージがこれで決定づけられた。


百恵が超売れっ子だったために撮影の時間がなかなかとれず、後ろ向きのシーンは代役で撮るとか、
自分の出番だけまとめて撮って、そのまま別番組の出演にいってしまうこともあったらしい。

だが番組に取り組む態度が非常に真剣で、周囲から非難の声はほとんどなかったという。


本作は「赤いシリーズ」全10作の第一弾だが、百恵が出演したのは第1回から第6回までと第10回。
いずれも度重なる不幸に見舞われるヒロインを熱演し、高視聴率をあげている。















水もれ甲介


水道修繕屋の長男・甲介(石立鉄男)は、すぐに水もれ(ミス)を起こすドジな男である。

あるとき、父親(森繁久彌)とケンカして家を出た甲介は、好きなドラマーの道をめざす。


そこへ父危篤の報が舞い込む。

慌てて病院に駆けつけた甲介に、父・保太郎は、あとを頼むと言い残して息絶える。


父との約束を守るため、甲介はドラマーをあきらめ、家業の水道屋を継ぐことになる。

だが、熱血漢でドジばかりの甲介は、弟の輝夫(原田大二郎)や妹の朝美に嫌われ、
母の滝代(赤木春恵)にも心配のかけどおしだった。




水道屋の甲介が、家族を巻き込んで引き起こす騒動を描いたドタバタ人情喜劇。


この作品での石立鉄男の役どころは、向こう見ずで気が短く、早とちりは日常茶飯事。

だけど人情もろくて、自分の事じゃないのに一生懸命やってしまう三枚目を好演している。


父・保太郎が息をひきとる寸前、甲介は自分の出生の秘密を聞かされていた。

甲介と弟・輝夫の二人は、実の子ではなく、父親が恩を受けた元上官の子供だった。

その上官は戦死してしまい、父の保太郎は、上官の二人の子供を引き取ったというのだ。


戦後30年を経ていた当時もなお、戦争の影が人々の身近に残っていたことを感じさせる。


ドラマには、昭和40年代の町並みや商店街の様子が随所に描かれている。

ドラマの舞台となった水道屋は、都電荒川線のガード下にあった実際の水道店が使われた。

そんな場所柄のため、店のすぐ横を通る都電の走行風景がドラマ中に何度も登場する。














傷だらけの天使


木暮修(萩原健一)は、ウダツのあがらない私立探偵である。

探偵というより、金のためなら何でも請け負う便利屋に近い。


その日、ビルの屋上にあるペントハウスのねぐらで修は眼をさます。

冷蔵庫は空っぽで食い物を探しても何もない。

すでに稼いだ金は使い果たしてしまったのだ。


弟分の亨(水谷豊)が訪ねて来たが、これまたすっからかんでどうしようもない。

ちょうどそのとき、うまい具合に綾部探偵事務所から仕事の依頼が来る。




所長の綾部(岸田今日子)から依頼された仕事は、宝石店に強盗に入り、
3億円の宝石を奪うもので、報酬は30万だった。


「そんな事をしたら警察に捕まるのでは」と言うと、所長は「大丈夫だ」と言う。

どうもヤバそうな仕事だが、背に腹は替えられないため、引き受けることにした。


途中でオモチャのピストルを購入した修は、客を装い、宝石店を訪れる。

店で一番高い宝石を見せて貰う中で、修はピストルを突きだし、宝石を奪う。


店が警報装置を鳴らしたために、宝石を奪うとすぐさま逃走する。

しかし逃げる最中に、一人の子供にぶつかり、怪我をさせてしまう。


修は、待機していた亨からラグビーのボールを受け取ると、その中に宝石を詰め込み、
再びラグビーボールを亨に渡して逃げて貰う。

だが、思っていた通り、修は警察に取り囲まれて捕まってしまうのだった。




探偵社の下働きで、危険な仕事や、人の嫌がる仕事を押し付けられた若者たちの
心の葛藤や挫折を描いた文字どおり、傷だらけの青春ドラマ。


主人公の木暮修は、ビルのペントハウスで気ままに暮らし、綾部貴子の経営する
探偵事務所で安くこき使われている。


修が唯一心を許すのは、弟分の乾亨だけである。
この底抜けに善人の亨は、修のおかげで、いつも損な目にばかりあっている。

二人とも金と愛に飢え、虚勢を張って社会の底辺で生きているのだった。


東京の町を全力で疾走する躍動感、若者の苛立ちや怒りの中に、やりきれなさが
漂うストーリーが、当時の時代の空気を反映しており、若者たちの共感を集めた。










     



おんなの家


三姉妹が経営する東京下町の炉端焼き「花舎」は、不景気の煽りで客足が伸びない。


ある日、訪れた女の客・貴子(佐久間良子)が現金の持ち合わせがないと言う。

彼女は、代わりにダイヤの指輪を置いて行くが、その後、投身自殺を図ってしまう。


身柄を引き取りに行った桐子(奈良岡朋子)は、貴子を連れ帰り、店で雇うことにした。

美人で愛想のよい貴子は、たちまち人気者となり、店は連日大繁盛となる。


だが、仕事を奪われた長女の梅(杉村春子)は、どうも面白くない。

ある日、来店したてまり(池内淳子)と小桃(長山藍子)が、貴子の顔に見覚えがあると言い出す。




下町の炉端焼き店を舞台に、性格が対照的な三姉妹の泣き笑いを描いたホームドラマ。

毎回、長女の梅が注文を間違えたり、料理の皿を落とす等の粗相をしては、姉妹喧嘩に発展してしまう。

また三姉妹と、店に訪れる人々との交流から起こる様々な事件の顛末などが綴られる。


本作は、1974年から1993年まで「東芝日曜劇場」で計16本が放映された橋田寿賀子原作による
大ヒットドラマである。


1956年から始まった「東芝日曜劇場」は、1993年まで37年間、1877回続いた長寿番組となった。

1956年当時は、ライバル局「日本テレビ」のプロレスや野球の中継が圧倒的な人気を博していた。


その対抗策として出された企画が、一流作家と名優を揃えて正統派ドラマを制作することだった。

「東芝日曜劇場」は、家族が揃う日曜午後9時から10時まで放送され「ドラマのTBS」を代表する
看板ドラマ枠として、視聴者に長年親しまれることとなった。


番組からは、愛と死をみつめて(1964年)女と味噌汁(1965年)誰も知らない愛(1975年)など
数々の名作が生まれている。















編笠十兵衛


時は元禄十四年春、江戸城は松の廊下。

赤穂城主・浅野内匠頭は、吉良上野介からの度重なる侮辱にたえかね、刃傷に及ぶ。


浅野内匠頭は切腹、お家は断絶、だが吉良上野介はお咎めなしという処分であった。

喧嘩両成敗という定法にもかかわらず、幕府の裁定は片手落ちだと世の反感をかう。


ここに月森十兵衛(高橋英樹)という剣客がいた。この男は、旗本・中根正冬(片岡千恵蔵)

の食客なのだが、やはり幕府の裁定を苦々しく思っていた。




幕府の御政道に落ち度があるのなら、それを正そうではないか。

中根正冬と月森十兵衛は、死を覚悟してことに当たる決意を固めるのであった。



1969年(昭和44年)週刊新潮に連載された池波正太郎の時代小説のドラマ化。


主人公の剣客・月森十兵衛は、御政道の歪みを正すべく、幕府の隠密をしている。

その過程で、赤穂浪士と知り合い、吉良邸への討ち入りを成功させるべく、陰から力を貸す。

そんな十兵衛を、高橋英樹が反骨精神溢れる正義漢として演じている。


この十兵衛を援助している旗本・中根正冬は「江戸城留守居役」という閑職にある。

この留守居役は、実は特別な役割を担っていて、将軍や幕府が誤ったことをしたら諫め、

そのための隠密部隊も持っているのだった。


赤穂事件をきっかけに、この中根正冬と柳沢吉保との政争が勃発する。柳沢は老中格で

あるため、留守居役の中根は、直接、柳沢に手を出すことは出来ない。

そこで、赤穂浪士の討ち入りを成功させることで、柳沢を批判しようとしたのである。


本作の見所のひとつは、吉良方のキャスティングが充実していて、見応えがあることだ。

吉良役の伊藤雄之助をはじめ、露口茂や成田三樹夫といった名優が顔を揃えたことで、

敵としての強さが伝わり、十兵衛との対決がスリリングなものとなっている。










座頭市物語


峠道で、座頭市(勝新太郎)は、ひとり旅の初老の男(中村翫右衛門)と道連れになる。

故郷の足尾に帰る道すがらというその男は、世間から恐れられた一匹狼の渡世人だった。


彼が足尾に向かう理由は、かつての兄弟分が切り盛りする一家の支援だった。

銅の採掘を生業とするその一家は、新興の弥三郎(津川雅彦)一家の嫌がらせにより、

崩壊寸前の状態だという。   (第一話 のるかそるかの正念場)






見えぬ両目に仕込み杖、ご存じ座頭の市つぁんが「およしなせえ」と悪を斬る。


映画の大ヒットにより、勝新太郎の当たり役となった座頭市シリーズのテレビ化。

自らのライフワークとも云える「座頭市シリーズ」だけに、勝新の意気込みも相当で
スクリーンに負けぬみごとな殺陣を披露している。


やくざ渡世の裏街道を生きる陰惨な風貌の中に、悲しさと陽気さが入り混じる座頭市の
キャラクターは、折から戦後初の景気後退の世相にもマッチして人気を得た。














斬り抜ける


作州松平藩士・楢井俊平(近藤正臣)は、藩主・丹波守の命により、親友・森千之助を斬った。

だが、千之助を斬った後、俊平は、上意討ちの真の理由を知り、愕然とする。

それは、千之助の妻・菊(和泉雅子)を我物にしようとする丹波守の下心からのものだった。


俊平は、丹波守の非道を幕府に訴えようと、菊とその一子・太一郎を連れて、江戸へ向かう。

それに対し、丹波守は、俊平と菊が不義密通を働いて友を殺したという汚名をでっちあげる。


そして、殺害された千之助の父・嘉兵衛と弟・伝八郎(岸田森)を追っ手として差し向ける。

さらに、俊平らの手配書を発布し、幕府に訴えようとする二人を追い詰めようとするのだった。






藩主の命で心ならずも親友を上意討ちにした俊平(近藤正臣)だが、藩主の横暴を幕府に
訴えるべく、親友の妻・菊(和泉雅子)とその子供を連れて脱藩する。


幼馴染であった俊平と菊の間には、元から恋情があった。そんな二人が長い道中を、命に危険を
抱きながら、旅を続けるのだから、想いは強くなる一方である。


だが、菊の夫は故人、しかも、その夫を殺したのは俊平であった。逃亡の中、お互いどれだけ
惹かれあっても、一線を越えてしまえば、本当の不義者になってしまうのだった。

そんな二人の葛藤が全編を貫いており、時代劇では珍しく、切ないメロドラマ仕立になっている。



俊平らは道中で、無宿人・よろず屋の弥吉(火野正平)と、浪人・鋭三郎(志垣太郎)に出会う
のだが、この二人のキャラクターが、暗く沈みがちなストーリーに明るさを与えている。


一方、追手側は、殺害された千之助の父で、俊平の剣の師匠でもある森嘉兵衛(佐藤慶)と、
彼の妾腹の子、森伝八郎(岸田森)の二人だった。


嘉兵衛は、息子・太一郎に、何とか家督を継がせようと思うが、妾腹の伝八郎は、自分が家督を
継ぎたいために、三人の皆殺しを謀ろうとする。

こうした歪んだ冷酷なキャラクターを演じさせたら、岸田森の独壇場といってよい。


この追手の二人に加えて、街道という街道には、俊平を待ち伏せていた松平藩の刺客たちが、
次々と襲いかかってくるのだった。


本作は、俊平と菊の純愛の行方と、追手や刺客に追われる逃亡劇というスリリングな展開が
多くの視聴者を最後まで惹きつけた傑作娯楽時代劇となった。













    エクソシスト(THE EXORCIST)1973年(アメリカ映画)

12歳の娘リーガンが、ある日突然奇怪な言動にでる。悪魔に憑りつかれたように、しゃがれた男の声で
卑猥な言葉をわめき始め、顔は見る見る醜く変貌してゆく。やがて悪魔祓いに二人の神父がやって来るが…。

少女に取り憑いた悪魔とキリスト教の神父との壮絶な戦いを描いたオカルト映画の傑作で「ポルターガイスト」
「エクトプラズム」「悪魔祓い師」といったオカルト用語を一般に浸透させた。

日本でも空前のオカルト・ブームが巻き起こり、死後の世界や、霊魂との交信などを対象にした「オカルト物」
がメディアでしばしば取り上げられ、古くから伝わる占いの「コックリさん」も大流行した。

(監督)ウィリアム・フリードキン(WILLIAM FRIEDKIN)
(出演)リンダ・ブレア(LINDA BLAIR)マックス・フォン・シドー(MAX VON SYDOW)