8月29日   タイムカプセル(19)昭和48年 (1973年)   山口百恵    タイム・カプセル
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この年、日本テレビ「スター誕生」第5回優勝の山口百恵が「としごろ」でデビュー。

桜田淳子、森昌子とともに「花の中三トリオ」と呼ばれた。


(映画)第46回アカデミー賞「スティング」

燃えよドラゴン 」「エクソシスト」「ウエストワールド」(ユル・ブリンナー、リチャード・ベンジャミン、ジェームズ・ブローリン)「ポセイドン・アドベンチャー」「ゲッタウェイ」「街の灯」「ベン・ハー」「スケアクロウ」「激突!

東映「仁義なき戦い」(金子信雄、菅原文太)青幻記プロ「青幻記」(賀来敦子、田村高広)東宝「朝やけの詩」(北大路欣也関根恵子)斎藤プロ「津軽じょんがら節」(江波杏子)松竹「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」(渥美清浅丘ルリ子)東宝「日本沈没」(藤岡弘、いしだあゆみ


(音楽)第15回レコード大賞「夜空」五木ひろし

 街の灯り (堺正章)ジョニイへの伝言、五番街のマリーへ(ペドロ&カプリシャス)赤とんぼの唄(あのねのね)
赤い風船(浅田美代子)わたしの彼は左きき(麻丘めぐみ)てんとう虫のサンバ(チェリッシュ)

天使も夢見る、わたしの青い鳥(桜田淳子デビュー) としごろ、青い果実(山口百恵) くちなしの花(渡哲也
 神田川(南こうせつとかぐや姫) あなた(小坂明子) 母に捧げるバラード(海援隊)

あなたに夢中(キャンディーズデビュー)イルカにのった少年(城みちる)若葉のささやき(天地真理)
青空のおしゃべり(フォーリーブス)裸のビーナス(郷ひろみ
Yesterday Once More (Carpenters)


(テレビ)NHK大河ドラマ「国盗り物語」(平幹二朗高橋英樹松坂慶子近藤正臣)NTV「たんぽぽ」(宇津井健、音無美紀子、斉藤こず恵、松原智恵子、長山藍子、杉村春子) 1973年(昭和48年)NTV「コント55号のなんでそうなるの?」関西テレビ「パンチDEデート」(桂三枝、西川きよし)NET「プロポーズ大作戦」(横山やすし、西川きよし)NTV「金曜10時!うわさのチャンネル!!」(和田アキ子、ザ・デストロイヤー、せんだみつお山城新伍

フジ「剣客商売」(加藤剛山形勲松村達雄)NET「非情のライセンス」(天知茂)TBS「ゆびきり」(石坂浩二、長山藍子) TBS「江戸を斬る 梓右近隠密帳」(竹脇無我松坂慶子)TBS「必殺仕置人」(山崎努藤田まこと)TBS「白い影」(田宮二郎山本陽子)TBS「それぞれの秋」(小林桂樹久我美子、小倉一郎)

NTV「雑居時代」(石立鉄男、杉田かおる、大原麗子山口いづみ)NTV「子連れ狼」(萬屋錦之介、西川和孝)NTV「百年目の恋」(十朱幸代、浜畑賢吉、植木等、扇千景)NTV「ドラえもん



                                                                     






(スポーツ)ハワイ・オープンで青木功が優勝。日本人初(2.13)競馬でハイセイコー、NHK杯に勝ち10連勝達成(5.6)巨人、日本シリーズ9連覇を達成。

(流行語)じっと我慢の子。日本沈没。ユックリズム。せまい日本、そんなに急いでどこへ。ちょっとだけよ。あんたも好きネ。これにて一件落着。おしん・家康・隆の里(忍耐ブーム)

(社会)拡大EC発足、イギリスが加盟し9ヵ国に(1.1)訪米中の中曽根首相「日本列島、不沈空母」発言で政界大揺れ(1.18)中川一郎科学技術庁長官が札幌市内のホテルで自殺(1.9)田中元首相に懲役五年の求刑(1.26)

南北ベトナム和平協定調印(1.27)円、変動相場制に移行(2.14)千葉県浦安市に東京ディズニーランド開園(4.15)ローマ法王がガリレオに謝罪(5.9)人気作家・梶原一騎が暴行・恐喝容疑で逮捕(5.25)

戸塚ヨットスクール校長を傷害致死罪で逮捕(6.13)沖雅也がホテルから飛び降り自殺「涅槃で待つ」(6.28)金大中氏誘かい事件(8.8)第4次中東戦争(10.6〜22)江崎玲於奈氏がノーベル物理学賞(10.23)

(物故)森雅之ブルース・リー

(その他)大竹しのぶ、ドラマ「ボクは女学生」でデビュー。竹下景子 NHK「波の塔」でデビュー。吉永小百合、岡田太郎と結婚。田辺靖雄、九重佑三子と結婚。

南こうせつとかぐや姫、井上陽水、ガロ、チューリップなどフォークソング全盛期。オセロ(ツクダ)ゴキブリホイホイ(大塚製薬)日本沈没(小松左京)ツチノコ(幻の蛇)

手塚治虫「ブラックジャック」(少年チャンピオン)つのだじろう「うしろの百太郎」(少年マガジン)土田よしこ「つる姫じゃ〜っ」(週刊マーガレット)水島新司「あぶさん」(ビッグコミックオリジナル)山本鈴美香「エースをねらえ」(週刊マーガレット)



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              Yesterday Once More (Carpenters)







ぎょう虫検査


1958年(昭和33年)ぎょう虫検査が小学校3年以下の児童に義務づけられた。

昭和30年代は、くみ取り式トイレの衛生状態が悪く、国民の30%以上が
寄生虫に感染していた。

体内に寄生したぎょう虫は、夜になると肛門周辺の皮膚に卵を産み付ける。

そこで朝起きたときに、検査用の粘着テープを肛門周辺に押し付けて
卵の有無を調べるというものである。



また当時の小学校では、虫下しの薬が配布され、児童はみな飲んでいた。


感染率が高かった理由のひとつに、農作物の肥料に人糞を使っていたことがあげられる。
戦後も農家は、人糞を直接畑に撒いて貴重な有機肥料としていた。


だが人糞が野菜そのものに付着してしまい、その野菜を食べて寄生虫保有者が
増加してしまうという状態だった。

無農薬の有機肥料といえば聞こえはいいが、寄生虫までリサイクルしていたのだ。


その後、化学肥料が普及し、トイレも水洗となったことから、2016年に
ぎょう虫検査は廃止された。













金曜10時!うわさのチャンネル!! (日テレ 1973年10月−1979年6月)



主演は和田アキ子。「ゴッドねえちゃん」という姉御キャラで、ハリセンでせんだみつおや

湯原昌幸をシゴキ、さらにプロレスラーのザ・デストロイヤーも鍛えるといった内容。


普段ひどい目に遭っているせんだたちが、和田が苦手なヘビのおもちゃで逆襲し、和田が悲鳴を

あげることも少なくなかった。


タモリはまだアイパッチをしていた頃で「四か国語麻雀」など得意の密室芸を披露という何でもアリの

カオスのなかで、マギー・ミネンコというハーフの女性タレントが「乳揉め〜!」と叫んでいた。

ザ・デストロイヤーに四の字固めを喰らって悶絶していた徳光和夫も、のちに大ブレイクを果たした。
















     



国盗り物語


一介の油売りから身を起こして美濃の国主となった斎藤道三。

だが義理の息子の謀反により、野望なかばに倒れてしまう。


一方、今川義元を奇襲して鋭鋒を示した信長は、義父道三の仇を打つべく、
賢臣木下藤吉郎、竹中半兵衛の智略を得て美濃を攻略する。

上洛を志す信長はさらに畿内制覇の準備工作を進めてゆく…。


天下の制覇を夢みた斎藤道三(平幹二郎)その志を受け継ぐ織田信長(高橋英樹)
そして道三に才能を見出された明智光秀(近藤正臣)



下克上の乱世を生きたこの三武将にスポットを当て、国盗りに懸ける男たちの姿を
ダイナミックに描いた大河ドラマ。


道三亡き後、ともに後継者として天下統一をめざしながら、信長と光秀は袂を分かち、
本能寺で激突するまでの葛藤が綴られる。

明智光秀役の近藤正臣が信長に対する複雑な心理を表現し、話題を呼んだ。



では何故、明智光秀は謀反を起こしたのだろうか?


原作者の司馬遼太郎は、その動機として、光秀の怨恨説を挙げている。

ドラマの中で、信長が、光秀の頭を欄干に叩きつけるシーンがある。

短気で暴虐な信長に絶望感を抱いた光秀は、ついに謀反を決意するというものだ。



そのほか歴史作家によって「本能寺の変」は、様々な解釈がなされている。

津本陽「下天は夢か」池宮彰一郎「本能寺」では、秀吉の黒幕説が採用されている。

秀吉が派遣した密使の説得で、光秀は謀反を決意するというものだ。



また堺屋太一「鬼と人と 信長と光秀」では、光秀の義憤説を挙げている。

比叡山の焼き討ちなど、信長の蛮行に終止符を打つために、謀反を起こすというものだ。


それぞれの作家が思い描く「本能寺の真相」を堪能してみるのも面白いだろう。












非情のライセンス


会田健(天知茂)は警視庁特捜部の刑事。

原爆で父母を亡くし、親代わりの姉を目の前で占領軍の暴漢に殺された過去を持つ。

悪を憎み、悪を根絶することだけが生きがいの一匹狼である。
容疑者を締め上げ、妥協をせず、徹底的に追いつめるのが彼の信条だった。


あるとき彼に「おとり捜査」の密命が下る。
獄中の麻薬密売の大物と接触して、麻薬工場の在りかを探れというものだった。

暴行傷害で懲役4か月の受刑者に成りすまし、獄中に潜入した会田だったが…。




苦み走っていながら色気を感じるアウトロー刑事の活躍を描いたアクションドラマ。


捜査のためなら手段を選ばぬ一匹狼、会田刑事の非情ぶりが番組最大の見どころだった。

これほど悪人が死んだ番組はない、というほど会田は手当たり次第に彼らを殺してしまう。

殺す前に病死したワルには棺桶の上から銃弾をぶち込んだこともある。


その一方で、心さえ通い合えば犯人も逃がしてしまうという会田刑事の人間性にも
目を配ったところに人気の要因があった。


また天知が歌った主題歌「昭和ブルース」も大ヒットした。











     



白い影


直江庸介(田宮二郎)は、37才独身、東京の私立病院に勤務する外科医である。


彼はかつて大学病院で将来を嘱望された医師だったが、突如大学を去ってこの病院へやって来た。

なぜ大学をやめ、小さな私立病院で雇われ医師となったか不明だが、外科医としての腕は抜群だ。


あるとき、酔っ払って額を割ったやくざ・戸田(尾藤イサオ)が、救急車で運び込まれてきた。

当直の看護婦の知らせで、外出していた直江は帰ってきたが、かなり酒気を帯びていた。


直江は興奮してわめく患者をトイレに閉じ込め、心が静まるのを待つように命じた。

次に、やくざの仲間たちに入院費の保証金を入れるよう要求する。


手術は腕の立つ直江にかかると、素早く、手際よく進められた。

直江は手術を終えた看護婦たちに、寿司を頼んであるからと、さりげなく告げて去っていった。



謎の医師・直江と彼をめぐるさまざまな人間模様を、病院という閉鎖的な世界の中で描く傑作。


直江は「多発性骨髄炎」という不治の病にかかっており、痛み止めの麻薬が簡単に手に入る
街の私立病院へと移ってきたのだった。

彼は自分の命は残り少ないと知っており、自分からは周囲の人間に心を開くことをしなかった。


だが直江は、当直だろうが時間が空けばバーへ繰り出し、浴びるように酒を呑む。
それでも急患と連絡を受ければ、見事に手術を完璧にやってしまうのである。

そんな直江に、志村倫子(山本陽子)をはじめとする看護婦たちが、好意以上のものを
持つのも無理はなかった。


本作は、死を目前にした医師が人間として、残り少ない時間をどう生きるかといったシリアスな
テーマと共に、彼をとりまく女性たちとの人間模様が繊細なタッチで描かれる恋愛ドラマでもある。

田宮二郎が映画「白い巨塔」(1966年)に続き、二度目の外科医役をクールに演じた本作は、
最高視聴率25.7%、平均視聴率21.7%の高視聴率ドラマとなった。











     



それぞれの秋


大学生の新島稔(小倉一郎)は、平凡なサラリーマン家庭の次男坊である。


ある日、悪友の唐木(火野正平)にそそのかされ、電車の中で痴漢をしてしまう。

運の悪いことに、その痴漢した相手というのがスケバン(桃井かおり)だった。

しかも稔は、そのスケバンに一目ぼれされてしまい、大変なことになる。


彼女に捕まった稔は、不良グループの溜まり場に無理やり連れていかれる。

ところが、不良グループの中に、なんと妹の陽子(高沢順子)がいたのである。



長期ローンでマイホームを建てた五人家族のリアルな日常を描いたホームドラマ。


家族構成は、定年間際の父・清一(小林桂樹)、母・麗子(久我美子)、セールスマンの
兄・茂(林隆三)、弟・稔(小倉一郎)そして高校生の妹・陽子(高沢順子)である。


一見ごく平凡な家庭に見えるが、実は家族の誰もが、隠し事や不満をそれぞれ抱えており、
それを隠したり、我慢しながら暮らしている。


父・清一の疲れ切った日々、兄・茂の躁状態のセールス自慢、妹・陽子の遅い帰宅など、
すべてが隠し事や不満の伏線になっている。

母・麗子だけは、のどかに見えるが、最後に夫の胸の内を知って打ちのめされてしまう。


脚本を担当した山田太一は、本作を「ドラキュラドラマ」と名付けた。

まるで吸血鬼のような家族、つまり隠し事や不満を持っているのに、普通の格好をして、
普通にしゃべっている家族の物語である。













子連れ狼


拝一刀(萬屋錦之介)は居合の達人で、江戸幕府公儀介錯人。

公儀介錯人の地位を巡り、彼と柳生一族は衝突していた。


ある日、柳生の手勢が拝家を襲撃、一族郎党を皆殺しにし、
外出中だった一刀に謀反人の嫌疑をかける。


奸計により公儀介錯人の地位を追われ、さらに妻を殺された拝一刀は、
生き残った一子の大五郎を連れ、刺客稼業に身を落とす。


一刀の心中にあったのはもちろん、柳生一族への復讐であった。

だが柳生もまた、彼を恐れ、強力な刺客を次々と送り込んでくるのだった。







元公儀介錯人・拝一刀と息子・大五郎が、仇である公儀隠密・柳生一族と
その総帥・柳生烈堂を敵に回し、壮絶な戦いを繰り広げる時代劇復讐譚。


原作は小池一夫が「漫画アクション」に連載した作品(劇画・小島剛夕)で、
この前後に映画化(主演・若山富三郎)もされている。


テレビでは、拝一刀役の萬屋錦之介のスゴ味のある雰囲気と立ち回りの
迫力のほか、大五郎役の西川和孝の健気さと可愛さに人気が集まった。


橋幸夫が歌う「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」で始まる主題歌
(子連れ狼第3部)も大ヒットし、流行語にもなった。















ゆびきり


広野橋蔵(石坂浩二)は、移動販売のホットドッグ屋を営んでいる。

橋蔵の家は、妻の花子(長山藍子)と子供が五人の七人家族。


家は狭く、子供たちは三段ベッドに寝起きし、食事もベッドでするし、勉強も、遊ぶのもベッドだ。

コロッケやカツを売る総菜屋をやっている妻の花子は、夫のために、必死になって金を貯めている。


というのも、結婚のため大学を中退した夫の橋蔵を、再び大学に入学させるためなのだ。

橋蔵も中退した大学へ戻るため、毎日試験勉強をしているものの、実はあまり気が進まないのだった。


子だくさんの貧しい生活だが、心豊かに生きる七人家族を描く。






結婚のため大学を中退した夫(石坂)と、集団就職で上京してきた年上の押しかけ女房(長山)と、

その五人の子供たちが織り成すホームドラマ。


ともかく狭い家で七人が、押し入れまでフル活用してゴチャゴチャ寄り集まって暮らしている。


作品は、核家族化や親子の断絶が問題になってきた世相を背景に、貧しいながらも断絶などとは

無縁に暮らす七人家族が助け合いながら、泣いたり、笑ったり、心温まるエピソードが描かれる。


本作は全13話、平均視聴率39.8 %、最高視聴率49.8%という驚異的な視聴率を記録した。












たんぽぽ


高根元(宇津井健)は、親の稼業をついだ家具職人。東京荒川で木工所を営んでいる。

早くに両親を失い、長男の元は親代わりで、弟妹三人を育ててきた。もはや38歳、それで独身である。


次男の大(林隆三)は、本郷の医大を卒業、今は付属病院で精神科医として勤めている。

末弟の順(田中健)は、叔母の家に養子に入っており、音楽の素養を活かして作曲家を目指している。


一方、妹の幸(音無美紀子)は、家事に精を出していたが、幼なじみで会社員の勇(柴俊夫)との

結婚が決まり、来月には式を挙げる段取りにまでなった。






長男の元も、弟妹をここまで育て、面倒をみてきたのは並大抵の苦労ではなかったし、とりわけ妹の幸が

嫁いでいくのは嬉しく、じいーんと熱いものが胸に込み上げてくるのだった。


そんなある日、区の孤児施設の補導員(松原智恵子)が二人の兄妹を連れて、元のもとを訪れる。

用件は、母親が行方不明になってしまい、唯一の身寄りである元に二人を引き取ってほしいという。


補導員の後ろには、中学生くらいの男の子と、小学校一、二年生くらいの女の子が立っていた。

いきなり子供を預かれと言われても、全く身に覚えがない元は、驚きの目を見張るばかりだった。



下町の小さな木工所を舞台に、両親を亡くした職人とその弟妹たちのひたむきな生活を描く。


身に覚えがない二人の兄妹を預かる破目になった元だが、家族や知人からは「隠し子では」と疑われる始末。

ヤケを起こした元は「かまやしねえ、子は親だけのものじゃねえ、世間の大人はみんな親なんでえ」とタンカを切る。


宇津井健はこの時期、TBS「赤い」シリーズ(主演)と、TBS「夜明けの刑事」(署長役)に掛け持ちで出演している。
これら一連のドラマを経て、アクション・スターだった彼は、誠実で安定感のある俳優へと役柄のイメージを拡げた。


また、幸を演じた音無美紀子は、宇津井扮する昔かたぎの職人の妹役として、ひたむきに生きる心優しい女性を好演。
隣のおねえさんといった印象で素朴な魅力を発揮し、若い世代を中心に好感度を大いに高めた。














雑居時代


平凡な会社員・栗山信(大坂志郎)は、海外赴任する友人・大場(山形勲)から家を譲り受ける。


早速、五人の娘たちと引越したが、家には大場の息子・十一(石立鉄男)が住み着いていた。

彼は、勘当された息子だったが、信は一目で気に入り、一緒に同居することにした。


それを娘たちに話したところ、猛烈に反対されてしまう。

だが、末娘の阿万里(杉田かおる)だけは十一を気に入ったようだ。




信の取り成しで、彼には家の二階に住んでもらうという条件付きで、ようやく娘たちも承諾した。

かくして、栗山家と十一の奇妙な同居生活がはじまった。

だが、年頃の娘が多い中に、貧乏カメラマンの男が一人、てんやわんやの騒動が起きるのであった。



石立演じる大場十一は、貧乏で短気、少しばかりだらしないカメラマンである。

そんな彼が、父独り娘五人の家に同居することになり、いがみ合い、喧嘩しながらも、
かけがえのない家族になっていく姿が描かれる。


栗山家の長女・夏代(大原麗子)は、家事を切り盛りするしっかり者で気が強い性格。

彼女と十一は、事あるごとに衝突する。そんな二人の白熱した喧嘩シーンが見どころだ。

だが、ののしりあいの中に、ゆっくりゆっくり育まれていく愛情が潜んでいる。


末娘の阿万里(杉田かおる)だけは、どういうわけか、初めから十一になついてしまう。

第一話の初対面で、十一が阿万里に、こう尋ねる。「米屋の二階にいなかったっけ?」


米屋の二階にいたのは、前作「パパと呼ばないで」に登場する、パパの娘・チー坊だ。

親子の絆がそのまま、今作にも繋がっていると印象付ける、石立の絶妙なアドリブだった。












必殺仕置人


江戸時代、法によって処刑することを「仕置」と呼んだ。

だが、ここに言う「仕置人」とは、法の網の目をくぐり、
はびこる悪を裁く、彼ら闇の処刑人のことである。


あるとき、凶悪犯の身代わりにされ、打ち首になった百姓がいた。

彼らは、その百姓の娘から依頼を受け、彼女の無念を晴らす。


この出来事をきっかけに、彼らは闇の処刑人「仕置人」を結成。

のさばる悪を闇に裁いて、あの世に送る裏稼業を繰り広げていく。




金や権力で庶民を苦しめる悪を、様々な方法で仕置する殺し屋たちを描く。


中村主水(藤田まこと)は、職場では「昼あんどん」家庭では「種なしカボチャ」
と呼ばれている、うだつの上がらない南町奉行所の同心である。

だが、闇の世界ではスゴ腕の殺し屋に一変する。


このあたりは、現代サラリーマンの実態と願望にピッタリあてはまる。
これが人気のひとつの要因だろう。


もうひとつ、このドラマが受けたのは、多彩な殺しのテクニックだった。


喉元の骨を指先で砕く「骨はずし」をキメる念仏の鉄(山ア努)
細工用のノミで、首すじの急所を貫く棺桶の錠(沖雅也)


三味線糸で相手の首を絞める三味線屋の勇次(中条きよし)「新・必殺仕事人」
など、表の仕事を応用した殺しの職人芸が光っていた。


そして殺す時の表情とアクション、道具や衣装の色彩とがあいまって
鮮やかな様式美にまで高められていた。


必殺シリーズは、1972年から1992年(平成4年)まで計30作、768本が放映され、
うち半分が中村主水シリーズである。













       



剣客商売


老中・田沼意次の時代。

無名の剣客・秋山大治郎(加藤剛)が修行の旅より江戸へ戻ってきた。

大治郎は父・小兵衛(山形勲)と、十二年ぶりの再会を果たす。


小兵衛は江戸でその名を知られた無外流の達人だったが、今は道場を閉めて、

悠々自適の生活を送り、親子ほども歳の違うおはる(梶三和子)を妻にしていた。


小兵衛から道場を引き継いだ大治郎は早速「若先生」として町の人気者になる。

そんな大治郎の許に、ある日、奇妙な仕事が舞い込んでくる。


鰻売りの又六が、何とか十日間で、強くしてくれと頼み込んできたのだった。




1972年(昭和47年)小説新潮に掲載された池波正太郎の時代小説のドラマ化。


親子ほども歳の違う女房をもらい、気楽に生きる老剣客・秋山小兵衛と、剣ひとすじ、

真面目一本槍の息子・大治郎の許には、面倒な事件や揉め事がひっきりなしに舞い込む。


ときには剣にまつわる恨みもあり、多勢での闇討ちなど卑怯な相手にも、ひるまず戦いを

挑む親子の活躍ぶりが清々しい。



父親と女房の仲のよさに赤面するなど、大治郎のウブなところには、思わず笑いがこみあげる。

大治郎は「まじめ」な加藤剛にぴったりで、原作者の池波正太郎も認める存在だったという。


大治郎の一本気もいいが、原作よりも貫禄がある感じの小兵衛・山形勲の笑顔が心に残る。

1973年4月から9月まで全22話、見応えのあるシリーズである。