9月8日   タイムカプセル(26)昭和55年(1980年)   松田聖子   タイム・カプセル
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この年、ニューヨークの路上で、元ビートルズのジョン・レノンが暴漢に銃で撃たれ死亡。享年40歳。
犯人の25歳の青年、マーク・チャップマンは、熱狂的なレノンファン。

ジョン・レノンの家の前には、1,000人以上のファンが、その夜のうちに集まり、
涙まじりに「イエスタディ」等ヒット曲を大合唱した。


(映画)第53回アカデミー賞「普通の人」
「スターウォーズ/帝国の逆襲」「地獄の黙示録」「クレーマー・クレーマー」「砂漠のライオン

東宝「復活の日」(草刈正雄多岐川裕美オリビア・ハッセー緒形拳)東宝「影武者」(仲代達矢山崎努)東宝「古都」(山口百恵、三浦友和、岸恵子)東映「二百三高地」(仲代達矢、あおい輝彦)

東映「動乱」(高倉健吉永小百合)松竹「遙かなる山の呼び声」(高倉健、倍賞千恵子、吉岡秀隆、武田鉄矢渥美清)松竹「男はつらいよ寅次郎 ハイビスカスの花」(渥美清、倍賞千恵子、浅丘ルリ子



(音楽)第22回レコード大賞「雨の慕情」八代亜紀

しあわせ芝居桜田淳子)ロックンロール・ウィドウ、さよならの向う側(山口百恵)青い珊瑚礁、裸足の季節(松田聖子)ハッとして!Good(田原俊彦)スニーカーぶるーす(近藤真彦)ランナウェイ(シャネルズ)Tokio(沢田研二) ダンシング・オールナイト(もんた&ブラザーズ)

帰ってこいよ(松村和子) 昂(谷村新司)奥飛騨慕情(竜鉄也) 恋人よ(五輪真弓) みちのくひとり旅(山本譲二)大都会(クリスタルキング)SACHIKO(ばんばひろふみ)アンジェリーナ(佐野元春)
Magic (Olivia Newton-John)
Starting Over (John Lennon)  You are Love (Janis Ian) Xanadu (Olivia Newton-John )


(テレビ)あ・うん(NHK フランキー堺杉浦直樹四季〜ユートピアノ〜(NHK 中尾幸世)虹を織る(NHK 紺野美沙子、高松英郎、長門裕之、西村晃、新珠三千代、大地真央)シルクロード(NHK)なっちゃんの写真館(NHK 星野知子)御宿かわせみ(NHK 真野響子、小野寺昭、山口崇)ザ・商社(NHK 山崎努、片岡仁左衛門、夏目雅子水沢アキ

彩の女
(フジ 山本陽子、乙羽信子、田村亮)女たちの家(フジ 京塚昌子、千秋実、大村崑、水沢アキ、中山麻里、篠田三郎)冬の恋人(フジ 若尾文子、仲谷昇、田村正和)翔んだカップル(フジ)3年B組金八先生2(TBS 武田鉄也、直江喜一、沖田浩之)

幸福(TBS 竹脇無我岸恵子、中田喜子)赤い魂(TBS 杉浦直樹、司葉子石立鉄男、柏木由紀子)不断草(TBS 吉永小百合、林与一、三益愛子)赤い死線(TBS 山口百恵、三浦友和、宇津井健三国連太郎石立鉄男松村達雄

(TBS 宇津井健、山岡久乃、長山藍子、大空真弓、赤木春恵、松原智恵子山田五十鈴竹とんぼ(NTV 宇津井健、石野真子、藤谷美和子、杉村春子石立鉄男)熱中時代2(NTV 谷豊、船越英二)江戸を斬る5(NTV 西郷輝彦、松坂慶子池中玄太80キロ(NTV 西田敏行、杉田かおる)

お笑いスター誕生!!(NTV)赤かぶ検事奮戦記(NET  フランキー堺、春川ますみ、倍賞千恵子若き日の北條早雲(NET  北大路欣也、藤岡琢也、柴俊夫、叶和貴子、あべ静江、志垣太郎、芦田伸介結婚の四季(フジ 十朱幸代、山口崇、名取裕子、松原千明、中山仁)




                                               





(スポーツ)巨人、長嶋監督辞任、王引退。モスクワ五輪ボイコット。
(流行語)「赤信号、みんなで渡ればこわくない」(ツービート)「カラスの勝手でしょ」(志村けん)「それなりに」(テレビCM)「可愛い子ぶりっ子」

(社会)04/25 1億円拾得事件。11/04レーガンがカーター候補を大差で破り当選。05/18韓国で、民主化を要求する学生の反政府デモに対し、戒厳令で対抗、反発する市民と鎮圧部隊が衝突し多数の死傷者がでた(光州事件)06/23大平首相急死。09/22イラン・イラク戦争勃発。10/29二浪生、金属バットで両親惨殺事件。

(物故)新田次郎、五味康祐、大平正芳、林家三平、三遊亭小圓遊、嵐寛寿郎、越路吹雪、スティーブ・マックイーン、ジョン・レノン

(その他)10/5 山口百恵、日本武道館で引退「ファイナル・コンサート」。松田聖子と田原俊彦がデビュー。柏原芳恵「No.1」で歌手デビュー。11/9 山口百恵、三浦友和と結婚。萩原健一いしだあゆみと結婚。森進一、大原麗子と結婚。林寛子、黒澤久雄と結婚(一男一女をもうけるが、2003年離婚)。唐沢寿明、NTV「大激闘マッドポリス'80」でドラマデビュー。

ルービック・キューブ。ポカリスエット。漫才ブーム。ヘッドホン族。イエスの方舟。マイコン。圧力なべ。 蒼い時(山口百恵) とらばーゆ(リクルート)たのきんトリオ。

司馬遼太郎「項羽と劉邦」(新潮文庫)高橋留美子「めぞん一刻」(ビッグコミックスビリッツ)植田まさし「フリテンくん」(まんがライフ)鳥山明「Dr.スランプ」(少年ジャンプ)新沢基栄 「ハイスクール!奇面組」(少年ジャンプ)山岸凉子「日出処の天子」(白泉社)



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  You are Love (復活の日 主題歌)









復活の日


米ソ冷戦下、密かに開発された細菌兵器MM−88を積んだ輸送機がアルプスの山中に墜落。


雪解けの春を迎え、増殖を始めた菌は新型インフルエンザ「イタリアかぜ」として世界中に蔓延。

猛威を振るう謎のウイルスに、人類はほとんど滅亡寸前となる。

このウイルスは超低温では機能せず、南極大陸に滞在していた観測隊員が人類の生き残りとなった。

だがアメリカ東部に大地震が起きる可能性があり、それは核ミサイルの発射を誘発するものだった。





小松左京の同名小説を、高田宏治が脚色、深作欣二が映像化したSF超大作。

細菌兵器により人類はほとんど滅亡、南極に残されたわずかな人々の生きのびる姿を描く。


原作は、1964年(昭和39年)小松左京の書き下ろし作品。当時は、米ソ冷戦の真っただ中である。

第二次世界大戦の戦禍のなかで思春期を過ごした小松左京は、本土決戦で命を落とす覚悟をしていた。
しかし思いがけず生き残り、終戦を見届けた彼を待ち受けていたのは、平和な時代ではなかった。


1962年(昭和37年)にはキューバ危機によって核戦争一歩手前までいった。第三次世界大戦が勃発すれば、
今度こそ世界が滅んでしまうかもしれない。そうした危機感のなか、本作品の執筆が始まったという。



作品では、人類はほとんど滅びてしまうが、何かが少しでも違えば、誰かがもう少しだけ理知的に
振る舞っていれば、違った結末があったのではないかと思わされる。


小松左京は、原作の後書きでこう述べている。

「人類は、断崖の端に立つ自分を発見したとき、理知的に振る舞うことが出来るだろう」

作者は、断崖に追い詰められた人類の姿を描き出すことで、彼らの知性と人間性とに希望を託したのである。









     



お笑いスター誕生!!


1980年の正月、漫才ブームは突然やって来た。

次から次と新しい漫才コンビが登場し、お笑いがカッコいいという時代の幕開けとなった。


数ヶ月後「お笑いスター誕生!!」が始まる。

この番組はオーディション番組「スター誕生!」のお笑い版だった。

厳しい予選を勝ち抜いた挑戦者が「10週勝ち抜きグランプリ」を目指すというもの。


本家と違うのはプロにも門戸が開かれていたこと。
出場者には修行中である大物芸人の弟子がかなり出場していた。

本番組に出場し、その後ブレイクしたお笑いタレントにはとんねるず、コロッケなどがいる。











     



フジカラープリント(お名前編)


この年、最大のヒットとなり「それなりに」という流行語を生んだのが「フジカラープリント」のCM。


樹木希林、岸本加代子というキャラクターの組み合わせのユニークさに加え「美しい人はより美しく、

そうでない方はそれなりに」といった会話や表情が面白く大人気となった。


また「綾小路だけど、知らなかった?」という、女性のミエを皮肉った風刺なども計算されていて、

このCMの「笑い」は一層盛り上がった。











       


シルクロード


秘境シルクロードの全容を初めてテレビカメラに収めたNHKのドキュメンタリー。

1979年8月に、日中共同取材班が西安を出発し、パキスタンとの国境であるパミール高原
までの行程をフィルムに収め、1980年4月から12回に渡って放映した。


広大な砂漠を粛々と進むラクダの群れ、悠久の時の流れを感じさせる喜多郎の音楽、
そして、深みのある石坂浩二のナレーション。

このシリーズはその後、日本中にシルクロード・ブームを巻き起こした。












あ・うん


水田仙吉(フランキー堺)は、製薬会社勤めのつましいサラリーマンである。

一方、門倉修造(杉浦直樹)は、軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長だ。


二人は、無二の親友で、二十数年来の付き合いを続けている。

その水田が、三年半ぶりに転勤で上京し、家族と共に東京に戻って来た。


新居となる目黒の自宅は、門倉が用意してくれていた。

その夜、駆けつけた門倉の音頭取りで、引っ越し祝いが始まる。




ラジオは、軍縮ニュースを報じており、祝いの席は時局の話題に花が咲いた。

折からの軍需景気で、門倉の会社は笑うほど儲かっているという。


その門倉は、実は水田の妻たみ(吉村実子)を密かに愛している。

たみも亭主は大事なのだが、実は門倉のことを密かに想っている。

水田も、そんな二人の関係を何となく察してはいるが、口にはしない。


突然たみが口を押えて台所に走り込む。たみは妊娠していたのだった。


宴席後、水田と門倉は、外の屋台で再び祝い酒を酌み交わす。

「女の子が生まれたら。俺にくれないか」突然、門倉が告げる。


門倉には子供がなかったのだ。

「男だったら勘弁してくれ。女だったら喜んで進呈する」と水田。


水田は家に帰り、妻のたみにそのことを報告する。

すると、夫婦の間に微妙な空気が流れるのであった。




1980年、向田邦子の脚本によるドラマ。翌年文藝春秋から同名小説が刊行された。


「あ・うん」とは、神社を守る狛犬のことで「阿吽の呼吸」を意味している。

そのタイトルに象徴されるのが、フランキー堺と杉浦直樹が演じる、容姿も
性格も正反対だが、固い友情で結ばれた水田と門倉である。


門倉は水田の妻を密かに想い、水田も妻もそれとなく察していながら口にしない。

そんな三人が織りなす微妙な人間模様を、こまやかに描いた向田邦子の脚本を、
演出家の深町幸男が見事に映像化している。


三人が同じこたつの中にいる時、寝ている修造の足の方へゆっくりと自らの足を
近づけようとするたみの繊細な身ぶりなど、印象的なシーンが数多い名作である。


本作は、昭和初期の東京・山の手が舞台。当時の風俗や暮らしの情景が随所に
描かれており、それがドラマに効果的な味わいを醸し出している。










     



幸福


殿村数夫(竹脇無我)は、大学受験に失敗して以来、無気力に日々を過ごしていた。

彼は、年の離れた妹・踏子(岸本加世子)と同居しながら、鉄工所に勤めている。


ある時、数夫は、倉田素子(中田喜子)と出会い、真剣に結婚を考えるようになる。

そんな折、以前一度だけ関係を持ったことのある組子(岸恵子)と再会する。


あろうことか、その組子は、素子の姉であった。

さらに彼女は、数夫の兄・太一郎(山崎努)の元恋人でもあった。

数夫は、恋の分かれ道に立つことになってしまった。




「幸福とは何か」をテーマに、町工場で働く殿村数夫を中心に、それぞれの人間模様を描く。


数夫はルーズで優柔不断な男。何を聞かれても「どっちでもいい」としか答えないグータラぶり。

女房気取りで数夫の世話を焼く妹・踏子と、喧嘩別れしたエリート会社員の兄・太一郎がいる。


数夫はある日、交際中の倉田素子に、伊豆にいる父の見舞いに一緒に行ってほしいと頼まれる。

そこには、数夫が過去に一度関係を持った、素子の姉・組子がいた。数夫は二人の間で心が揺れ動く。



主人公は、竹脇無我のイメージとは真逆の、どこか人生を降りたような無気力な青年・殿村数夫。


組子に心を寄せるスナック経営者・八木沢(津川雅彦)は、数夫に向かって「あんた男だろう。

ひとつぐらい決めなさいよ」を連発するようになる。


兄弟、姉妹の微妙な関係に恋愛話が絡んで、題名に即して言うなら、皆それぞれ、決して「幸福」

とはいえない者たちが織りなす、シビアな人間ドラマが淡々と綴られていく。














   
   



不断草


菊枝(吉永小百合)は突然、夫・三郎兵衛(林与一)に離縁を申し渡された。


結婚してわずか半年、優しい盲目の義母・康代(三益愛子)の世話にも、

やっと慣れた時だった。


やがて三郎兵衛は、謀反に加わったとして、お役御免となり、姿を消す。


菊枝は「お秋」と名を変えて、一人残された康代に仕えるのだった。






1942年(昭和17年)「婦人倶楽部」に連載された山本周五郎の同名短編小説のドラマ化。


武家に嫁いで間もない妻が、理由も分からぬまま離縁され、その真相を知るために身分を隠して

盲目の義母に仕える。


時が経ち、お秋が菊枝だということに気づいた康代は、三郎兵衛が菊枝を離縁した理由は、

妻の実家へ塁が及ぶことを避けるためだった、と真実を告げた。


そのころ米沢藩では、藩主の財政改革に対して、一部の重臣たちが反旗を翻していた。


そしてその政変に三郎兵衛も深くかかわっており、恐らくは自分の身も無事では済まない

ことを悟っていたのだった。


菊枝と義母の暮らしが五年を過ぎた頃、藩の騒動もほぼ収まり、三郎兵衛の名誉も回復されて

米沢へ帰参することが決まる。


その知らせを聞いた菊枝は大変嬉しく思い、これからも義母を支えて夫の帰りを待つ決心をするのだった。


ヒロインの菊枝に扮した吉永小百合は、この当時34歳、十分な芸歴を誇り、物柔らかさの中に、

耐え忍び一途に尽くす武士の妻を見事に演じている。


盲目の義母に扮した三益愛子とともに、本作は女性の芯の強さ、たくましさが前面に出た作品であった。















虹を織る


昭和12年、女学校最後の夏休み、普段から「男になりたい」というのが口ぐせの

活発な佳代(紺野美沙子)は、周囲の反対を押し切って、関西旅行に出かけた。


そこで初めて宝塚の舞台をみた彼女はすっかり魅せられ、やがて入団したいという

情熱にとりつかれてしまった。


昭和13年、女学校の卒業も間近に迫った佳代は、自らの進路を決める時が来た。






だが、父親の宗太郎(高松英郎)に、憧れの宝塚に入りたい気持ちを、どのように

伝えたらよいか、佳代は悩みに悩むのだった。


山口県の城下町・萩に生まれ、青春期には若い情熱を宝塚の舞台に生き、退団後も

絶えず新しい生き方を求め続けたヒロイン佳代の半生を、激動の昭和史のなかで

詩情とユーモアを交えながら明るく描く。


ドラマの四回目までは、佳代の見合い話、剣道に夢中なこと、ラブレターの話、

などを中心に、ヒロインの無邪気な年ごろのエピソードが綴られ、夢を追う

一人の少女の日常がじっくりと描かれる。


ヒロイン島崎佳代をさわやかに演じた紺野美沙子は、慶應義塾大学文学部二年に

在学中の現役女子大生。


その知的さと清楚さを合わせ持つ風貌で、世の「お父様」がたのハートを

がっちりと掴んだ。


宝塚の生徒を演じるため、ドラマ内では初々しいバレエ衣裳姿も披露している。














若き日の北條早雲


国盗りの野望を掲げ、浪人から身を起こした青年武将・伊勢新九郎(北大路欣也)、後の北條早雲は、

応仁の乱で敗れた主君・足利義視(仲谷昇)のもとを離れる。


その後、命を助けた浪人・兵庫(藤岡琢也)、才四郎(柴俊夫)のふたりと血盟の誓いを交わし、

戦国の世へ歩み出す。

伊勢で、神宮の巫女・小笛(叶和貴子)の危機を救った新九郎は彼女と結ばれ、二人は終生の伴侶となる。



一介の無名の浪人から一念発起し、関東に初の戦国大名としての地位を築いた北條早雲の半生を描く。


北條早雲は、応仁の乱直後の戦国時代黎明期にあらわれ、関東一円を平定して北条氏の始祖となった
戦国大名のハシリともいうべき人物である。





北條早雲(若き日の名は伊勢新九郎)の素性については、足利の武将だったとする説、一介の素浪人
だったという説など諸説があって定かではない。


だが、その人となりについては、大いなる野心と自制心、火の烈しさと水の静けといった表裏一体の
性格を併せ持つたぐいまれな人物だったといわれる。


本作の見所といえば、相馬野馬追いで有名な福島県原町で、大人数のエキストラを動員して合戦シーンを
敢行するなど、大型ロケシーン時代劇が民放で久々に復活したことが大きな話題となった。


そのロケで、さっそうの武者姿を披露した主演の北大路欣也は「八年ぶりの時代劇で張り切っています。
やはり日本人はこういう姿で “美” を表現できますね」と抱負を語っていた。


また、新九郎の恋人小笛に叶和貴子、妹夢子にあべ静江、高利貸しお丹に松尾嘉代といった異色華麗な
女優陣が彩りを添えているのも話題となった。















彩の女


東京駅構内の喫茶店。久しぶりに丹後・峰山の母のもとへ帰る佳奈(山本陽子)は、

呉服店を営む伯母の店の上客である結城章一郎(あおい輝彦)と会っていた。


都内のホテルで結城家の知人の叙勲パーティがあり、呉服店で働く佳奈は、故郷へ

帰るついでに、祝いの品物を届けるように頼まれたのだった。


同じ喫茶店内で、元(田村亮)は婚約者・香子(樋口可南子)の父・嘉良(高橋昌也)

と落ち合っていた。






広告会社に勤務する元は、仕事で大阪へ出張する身だが、奈良の実家へ立ち寄って

結婚の日取りについて、両親と話し合うつもりだった。


一方、建築事務所を営む嘉良も、仕事の関係で京都へ向かうので、同じ新幹線に

乗る約束だった。


奈良へ立ち寄って頼まれた用事を済ませた佳奈は、東大寺の境内で元とばったり出会う。

元は「東京の喫茶店で会いましたね」と話しかけ、一緒にお茶を飲もうと誘う。


佳奈は警戒して断り、丹後の実家へ急いだ。ところが待っているはずの母親の姿はなかった。


同じころ嘉良は京都の宿で一か月ぶりに愛人と会っていた。

相手は、丹後から出て来た佳奈の母せい子(乙羽信子)だった。




1973年(昭和48年)月刊誌「文藝春秋」に連載された平岩弓枝の同名小説のドラマ化。


妻子ある男を愛する母と、婚約者のある青年と恋に陥った娘…。

京都・丹後と東京・浅草を舞台に、哀しい愛と実らぬ恋に苦悩する母娘の姿を描く。


山本陽子といえば、和装が似合う清楚な美人で、本作ではイメージそのままの役柄を好演している。

だが、芸能誌のインタビューによれば、山本の趣味は、乗馬にゴルフに麻雀。

家では、ジーンズ姿でとび回り、左右違ったサンダルで外出することもザラにあるという。

彼女ほど虚像と実像が違う女優も珍しいのでは、というウワサも。













結婚の四季


ヒロインの和子(十朱幸代)は、幼稚園の保母だ。このたび見合いで、高校教師の

浩一郎(山口崇)と結婚した彼女は、幸せいっぱいで新婚旅行に出かけた。


二人は旅行先の北海道で、要子(生田悦子)という女性に出会う。

実は要子は、浩一郎のかつての見合いの相手だった。


和子は、平静を装いながらも、お互いに目であいさつを交わす夫と要子をながめて

一抹の不安にとらわれるのだった。





主婦層に根強い人気を保っている平岩弓枝ドラマシリーズの第13作。

女の幸せをテーマとするシリーズということで、今回も一組の夫婦の結婚生活を通じて

夫婦のきずなや思い遣りといった、心のありようを問いかけるドラマとなっている。


第一回は、結婚式当日の朝から式の模様、新郎新婦の北海道へのハネムーンを描いている。


長女を嫁がせる父親(有島一郎)の感傷、妹たちの情愛など、こうしたホームドラマ風

人情劇を描いてはベテランの平岩ドラマは、さすがに安定してそつがない。


第二回以降は、これもやはり平岩作品お得意の嫁と姑の関係をはじめ、夫の女性関係などを

からませてドラマは展開していく。













女たちの家


青山はるみ(京塚昌子)は、49歳の専業主婦。

はるみの夫・成一(千秋実)は、59歳の公務員。


いま夫が役所を辞めると割増金がついた退職金がもらえるという。

そこで二人はペンションを経営しようと考えた。


すると偶然、甥の要介(篠田三郎)も、脱サラでペンション経営を目論んでいた。

意気投合した三人は早速、浜名湖畔にペンション建設地の下見に出かけた。





ところがそのあと、不幸なことに夫の成一が急死してしまう。

残されたはるみと要介は、亡き夫の遺志を継ぎ、いよいよペンション建設に取りかかる。



50歳で未亡人となったヒロインはるみが、生来の明るさとおおらかさで、

ペンションの経営者として立ち直っていく姿を描く。


女の生き方を様々なアングルから描く平岩弓枝ドラマシリーズだが、

第12作目となる今回のテーマは「未亡人」


一見平凡に生きて来た中年の女性が突然、夫に先立たれた時、彼女の人生観はどう変わるのか。

本作は同年代の女性には、ちょっとシリアスなテーマにチャレンジした作品だ。


主演は久々の連続ドラマ出演となる京塚昌子。肩肘をはらず、そのくせ芯の強い女の生き方を

独特のユニークな味で演じている。














冬の恋人


売れっ子のニュースキャスター(仲谷昇)を夫に持つ杳子(若尾文子)は、ふとしたことから

年下のカーレーサー・中沢(田村正和)と知り合い、激しい恋におちる。


寛容な夫は、一時の気の迷いと見て、中沢に走った杳子を許すが、離婚届に判を押そうとはしない。

やがて中沢と杳子の間にもヒビが入り、杳子は自殺を企てる。



著名なニュースキャスターの夫を捨て、悲運のカーレーサーとの愛に生きる人妻を若尾文子が熱演。







ドラマは杳子の自殺未遂という意外な場面から始まる。

ガス自殺を図った杳子だが、マンションの隣人の若夫婦(三浦洋一、名取裕子)に助けられる。


数ヵ月前からレーサーの中沢と暮らしていたが、南米でのレースで惨敗して、酒浸りとなった中沢と

いさかいになり「愛していない」との言葉にショックを受けての行為だった。

駆けつけた夫は、意地を張らずに帰ってこいと言うのだが…。


要するに三角関係のドラマなのだが、それをひたすら甘く感傷的に描いている。


原作は、イギリスの劇作家・テレンス・ラティガンの戯曲で、かつてヴィヴィアン・リー主演で

映画化されたときのタイトルは「愛情は深い海のごとく(The Deep Blue Sea 1955年)」だった。


シナリオ作家の八木柊一郎が若尾のために脚色、若尾を撮って定評のある久野浩平が演出した。

いわば若尾の魅力を引き出すためのメロドラマであり、若尾文子という女優がいなければ

成立し得ないドラマでもある。















四季〜ユートピアノ〜


青森の農家に生まれた志木栄子(中尾幸世)は、東京に暮らすピアノ調律師。


幼いころ、七歳の兄と、雪の夜に学校で弾いたピアノの音が今も忘れられない。

その時、学校に火災がおこり、不幸にも兄は亡くなってしまった。


その後、父と母を次々と事故で失い、祖父母に引き取られて育った。

ある時、栄子は砂浜で音叉を見つける。それは、Aの音叉。




彼女は、音の仕事をしようと決心し、汽車に乗る。

最初は、ピアノ工場。そして、ピアノ調律師への弟子入り。

やがて、栄子は調律師として独立する。



四季折々の風景とマーラーの旋律を背景に、一人の若い女性が旅先での人々との
出会いを通じて成長していく姿を、詩情豊かに描いた映像詩。


主人公は、幼い日ピアノを焼失した記憶を持つピアノ調律師の栄子。

栄子は、その記憶にまつわる過去と現在を心の中で交錯させながら、
各地を旅し、さまざまな人に出会う。


現実社会の厳しさを体験し成長していく栄子の姿が、マーラーの旋律
によって象徴的に描かれた。


栄子を演じた中尾栄子の飾らない清々しい表情と演技が、美しい風景に
溶け込み、詩情を盛り上げた。

本作は、イタリア賞グランプリ、国際エミー最優秀賞を受賞した。













池中玄太80キロ


池中玄太(西田敏行)は、通信社に勤務する報道カメラマンである。


タンチョウ鶴の写真撮影をライフワークにしていた玄太は、鶴の写真が
きっかけで、3人の娘を持つ未亡人・鶴子(丘みつ子)と結婚する。

だが、最愛の鶴子は、結婚からまもなく脳溢血で帰らぬ人に。


鶴子の親族は、残された3人の娘たちを、玄太から引き離そうとする。
だが、玄太は、血のつながらない娘たちを、自分の手で育てると決意。

不器用な30男と、中学生から幼稚園児までの娘3人という奇妙な家族生活が始まる。




西田敏行のユーモラスで温かみのあるキャラクターと演技、池中玄太と娘たちの
ほのぼのとした掛け合いが、笑いと涙を誘った。


シリーズ続編では、西田が歌った主題歌「もしもピアノが弾けたなら」が大ヒット。
さらにNHK紅白歌合戦に出場するおまけもついた。


本作は、西田の初主演にして出世作となり、翌年には大河ドラマ「おんな太閤記」でも
主役に抜擢されるなど、名実ともに西田を国民的俳優へと押し上げるきっかけとなった。

















一村平(宇津井健)は、親の稼業をついで、神楽坂のとんかつ屋「一村」の調理場を預かっている。

彼は早くに両親を失い、店主である姉の糸(山岡久乃)と共に、年の離れた妹弟二人を育ててきた。


そんな40歳を過ぎて独身の平に嫁が来ることとなり、晴れて結納の日を迎えることになった。

平は姉がまとめてくれたこの縁談を承知しているが、何となく気乗りがしない。


一方、小料理屋の跡取り娘で、平の幼なじみである佐和(大空真弓)は心中穏やかでなかった。






神楽坂のとんかつ屋を舞台に、一つ屋根の下に暮らす四人の兄弟姉妹愛を描くホームドラマ。


平(宇津井)は、小料理屋の佐和(大空)と、実は好きあっているのだが、二人とも店の跡継ぎということで、
結婚に踏み切れないでいた。


そんな折、姉の糸(山岡)は、嫁の来てがいない平を不憫に思い、あちらこちら探し回った。

平のほうも、母親代わりとなって育ててくれた姉が、青春時代を犠牲にしてしまった事を申し訳なく思い、
姉がようやく見つけてきた縁談を承諾したのだった。



「渡る世間は鬼ばかり」(1990年)では、山岡久乃と長山藍子は親子だが、本作では姉妹となっている。
昭和のドラマでは、しばしば年の離れた兄弟姉妹が登場する。


これは戦前の大不況や戦時の苦しい時期で、子供をもうける余裕さえなかったという当時の視聴者には
直ぐに察せられる事情があったためである。



ホームドラマは、長らく女性を主人公とした作品が続いたのだが、70年代後半から、寺内貫太郎や池中玄太
といった男性主導型ドラマが高視聴率を記録し、ホームドラマの世界は、父権復活のきざしが見えはじめた。


そのきっかけとなった俳優が宇津井健であった。アクション・スターであった彼が、にんじんの詩(1972年)
たんぽぽ(1973年)赤いシリーズ(1974年)など、数々のホームドラマに主演するようになった。


そして誠実で真面目な中年男性役へと役柄のイメージを拡げるとともに、従来の母親中心のホームドラマから、
頼れる理想の父親像を描くホームドラマへの世代交替に大いに貢献したのである。















竹とんぼ


善兵衛こと善さん(宇津井健)は、九代続いた竹細工店の当主。


早くに妻を亡くし、長男の信(井上純一)を頭に4人の子を育ててきた。

が、23歳の信は、就職してすぐに家を出て行ってしまう。

他の3人にも目が離せない善さんは、日々、悪戦苦闘することに。



舞台は下町の竹細工店。元アクション・スターの宇津井健が竹細工職人を演じ、

男手ひとつで4人の子供を育てる子育て奮闘ドラマ。





宇津井扮する善兵衛は、理想の父親像を模索するのだが、年頃の子供たちだけに

理解し合えない父と子の葛藤がドラマのなかで描かれる。


前作の「たんぽぽ」に引き続き、すっかり職人役が板についた宇津井だが、

根がマジメだけに、役作りのため、東京・杉並の竹工芸の店に「入門」した。


3日でなんとか竹細工の技術をマスターできたものの、腕や手は竹のトゲで

キズだらけになってしまったという。















御宿かわせみ


両替商のひとり息子が身代金目的に誘拐される。

母親が身代金を持って行くが、母子は殺され、お金もとられてしまう。


同心・畝源三郎(山口崇)は血眼になるが、犯人の手がかりは掴めない。

しかも、その後も誘拐事件は次々と起こるのだった。


一方、神林東吾(小野寺昭)が師範代を務める道場に、女剣士が試合を挑みに来る。

女剣士は東吾に破れるが、その後どうやら東吾に惚れてしまったらしい




東吾の幼馴染で、かわせみ宿の女主人・庄司るい(真野響子)は気が気でなかった。


1973年「小説サンデー毎日」に連載された平岩弓枝の同名小説のドラマ化。


江戸・柳橋の旅籠「かわせみ」の女主人るいと、その幼馴染で剣の達人・神林東吾の
恋模様を軸に、二人の周辺に起きる事件と庶民の哀歓が人情細やかに描かれる。


江戸の町の風物や年中行事、四季の移ろいが各話に織り込まれ、そのしっとりとした
情緒が視聴者を惹きつけていた。


八丁堀与力・神林東吾と同心・畝源三郎の友情、かわせみの番頭や女中頭たちの
温かい交流も番組の魅力となっていた。















ザ・商社


江坂産業は、日本の十大商社の一角を占める大手総合商社である。


社主の江坂要造(片岡仁左衛門)は、日本で有数の美術コレクターとして知られている。

かつてピアニストを志し、英国留学の経験を持つ彼は、若い芸術家の保護者でもあった。


あるとき江坂は、無名の女性ピアニスト・松山真紀(夏目雅子)を自分の元へ呼び寄せる。

江坂というパトロンを得た真紀は、その後、音楽を学ぶためニューヨークへ渡る。




一方、江坂産業の米国支社長・上杉(山崎努)の目に、石油についての小さな記事が飛び込む。

石油は総合商社・江坂の唯一の泣き所だった。会社にとって石油は何ものにも替え難い。


上杉はその石油のために、ニューヨークの大ブローカー、アルバート・サッシンと手を握る。

サッシンとの石油代理店契約には、上杉の独断で6千万ドルの金が支払われた。


そんなおり、上杉はニューヨークで、一流ピアニストを目指す松山真紀と知り合うのだった。




安宅産業倒産事件(1975年)を題材にした松本清張の小説「空の城」をドラマ化。


石油事業で後れをとる総合商社・江坂産業は、米国人ブローカーと手を組み、
カナダの一寒村にできた石油精製会社に資金を融資する。


だが、1973年の石油ショックで、精製会社は倒産してしまい、多額のこげつきを
抱えて江坂産業自体も崩壊の危機に面する。


会社の危機をよそに美術品収集に明け暮れる商社の社主と、倒産を食い止めるため
孤軍奮闘する米国支社長(山崎努)の姿を中心に、ビジネス戦争の非情を描く。


社主の愛人役のピアニストを夏目雅子が熱演し、本格女優への足場を固めた。















赤かぶ検事奮戦記


柊茂(フランキー堺)は、検察事務官から昇進した叩き上げの検事である。

赴任先の岐阜県高山市で、妻の春子(春川ますみ)と二人で暮らしている。


弁護士となった娘の葉子(倍賞千恵子)は、仕事が忙しく、なかなか家に

顔を出さないが、彼女の弁護士としての成長は、嬉しい限りだ。


そんなある日、スナックで働くホステスの美弥子が、自宅で殺害される

という事件が発生する。




現場に到着した柊検事は、第一発見者は、美弥子に交際を申し込んでいた

高山署の榊田刑事(森田健作)だと知らされて驚く。




1976年「角川文庫」から出版された和久峻三「赤かぶ検事奮戦記」のドラマ化。


主人公の柊茂は、叩き上げの苦労人ゆえ、事件に注ぐ眼差しは鋭く、時に温かい。

そんな正義感溢れる、人情に厚い検事を、名優・フランキー堺が好演。

職場や法廷でも、見事な名古屋弁を駆使して、その芸達者ぶりを披露している。


タイトルにもなっている「赤かぶ」は、飛騨高山の名物漬物で、柊検事の大好物。

ある時、赤かぶの袋詰めを法廷で撒き散らしてしまったことから「赤かぶ検事」と

呼ばれるようになった。


また、彼の娘・葉子は弁護士であり、親子の法廷対決も本作の見どころとなっている。


物語の舞台となる岐阜県高山市は「飛騨の小京都」と呼ばれ、その歴史とともに、

どこか懐かしい、人々が暮らす生活の匂いのようなものを感じさせる街である。

そんな古い街並みの景観もまた、作品に独特の奥行きと味わいをもたらしている。
















イラン・イラク戦争


パーレビ国王時代のイランは、アメリカの後押しを受けた傀儡政権だった。


しかし1979年、イラン革命でホメイニが現れてから、パーレビ体制は
あっけなく倒れてしまった。


イランの石油利権を失ったアメリカは、このイラン革命が
他の産油国に波及しては困ると考えた。

そこで今度はイラクを支援して、武器を供与した。





もともとイラクとイランは、シャトル・アラブ川を巡る領土問題で仲が悪かった。

アメリカの後押しを受けたイラクは、イラン・イラク戦争(1980〜1988年)に突入。
双方合わせて百万を軽く越えるという死者を出した。


このように戦争が長引いたのは、イスラエルがイランを支援したからである。

アメリカがイラクを支援し、イスラエルがイランを支援する。
このからくりが、おわかりだろうか。

そう、イスラエルはアメリカから武器を買って、イランに武器供与していた。


どちらが勝っても負けても、必ず利益が得られるというのが、アメリカの手口なのだ。
アメリカにとって、戦争の拡大こそ絶好のビジネスチャンスなのである。


このアメリカの手口は、1950年の朝鮮戦争から、2022年のウクライナ紛争に至るまで連綿として続いている。

ウクライナ問題でも日本は、アメリカの尻馬に乗って、ロシアに対する「経済制裁一辺倒」である。

ロシアに恩を売る絶好のチャンスなのだが、わざわざ何とかの一つ覚えの「制裁」を叫んで、
北方領土問題の解決をますます難しくしているのである。