7月19日   タイムカプセル(16)昭和45年 (1970年)   タイム・カプセル
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この年、大阪市で日本万国博覧会(EXPO’70)が開催され、「人類の進歩と調和」をテーマに、77カ国が参加した。

入場者は目標を大きく上回る6422万人(外国人170万人)シンボルタワーは岡本太郎の「太陽の塔」。


(映画)第43回アカデミー賞「パットン大戦車軍団」
「イージー・ライダー」「明日に向かって撃て」「ひまわり」「シェーン」「チップス先生さようなら」

日活「戦争と人間」(滝沢修、芦田伸介)松竹「家族」(倍賞千恵子、井川比佐志)現代映画「エロス十虐殺」(岡田茉莉子、細川俊夫)大映「高校生ブルース」(関根恵子、内田喜郎、篠田三郎、八並映子)大映「おさな妻」(関根恵子)


(音楽)第12回レコード大賞「今日でお別れ」菅原洋一

愛の奇跡」ヒデとロザンナ「」はしだのりひことシューベルツ「戦争を知らない子供たち」フォーク・シンガーズ 「走れコータロー」ソルティー・シュガー 「圭子の夢は夜ひらく」藤圭子 「傷だらけの人生」鶴田浩二

(テレビ)NHK大河ドラマ「樅の木は残った」(平幹二朗吉永小百合栗原小巻)NHK「虹」(南田洋子)フジ「クイズグランプリ」(小泉博)TBS「大岡越前」(加藤剛片岡千恵竹脇無我天知茂)TBS「おくさまは18歳」(岡崎友紀石立鉄男)TBS「アテンションプリーズ」(紀比呂子、范文雀、佐原健二)TBS「時間ですよ」(森光子、船越英二、松山英太郎)

TBS「ありがとう」(水前寺清子、石坂浩二、山岡久乃、児玉清)TBS「柔道一直線」(桜木健一、吉沢京子)TBS「むかしの歌」(佐久間良子平幹二朗和泉雅子)TBS「二人の縁」(吉永小百合、伊志井寛)YTV「細うで繁盛記」(新珠三千代)NTV「あしたはまっ白」(酒井和歌子、山本学、中原ひとみ、新克利)NTV「全日本歌謡選手権」フジ「サザエさん」(加藤みどり、近石真介、大山のぶ代)


フジ「旗本退屈男」(高橋英樹、水野久美、柏木由紀子、片岡孝夫)フジ「金メダルへのターン!」(梅田智子、小泉博、三ツ矢歌子)NET「クイズタイムショック」(田宮二郎)NET「だいこんの花」(森繁久彌竹脇無我、加藤治子)NET「宮本武蔵」(高橋幸治山崎努、梓英子、松村達雄加賀まり子)NET「北条政子」(佐久間良子杉浦直樹三島雅夫、岩崎加根子、大友柳太朗石立鉄男) NET「遠山の金さん捕物帳」(中村梅之助、水原麻記)

テレ東「大江戸捜査網」(杉良太郎、瑳川哲朗、梶芽衣子、岡田可愛)テレ東「ハレンチ学園」(児島美ゆき)フジ「あしたのジョー




                                                                    





(スポーツ)大場政夫、世界フライ級チャンピオンに  第1回全日本女子プロ・ボウリング選手権で中山律子優勝


(流行語)「ハイジャック」「ウーマンリブ」「スキンシップ」「鼻血ブー」「モーレツからビューティフルへ」「男は黙ってサッポロビール」「古いやつだとお思いでしょうが」

(社会)日本初の人工衛星、おおすみ打ち上げ(2.11)日本万国博覧会開催。日本万国博開催、入場者6,421万8,770人(3.14〜9.13)日航機「よど号」乗っ取り事件(3.31)中国初の人工衛星、東方紅打ち上げ(4.24)日米安保条約自動継続(6.23)歩行者天国始まる(銀座、浅草、池袋)(8/2)三島由紀夫割腹自殺(11.25)日本の人口一億人を超える(12.2)

(物価)大卒初任給 37,400円
(物故)月形龍之介、大宅壮一、三島由紀夫、円谷英二

(その他)小柳ルミ子、「虹」(NHK)でデビュー。関根恵子、大映「高校生ブルース」でデビュー。佐久間良子平幹二朗と結婚。

TBSの「時間ですよ」銭湯のヌードシーンで話題に。文化放送「セイ!ヤング」(落合恵子)「anan」創刊。リリアン(手芸糸)。カップヌードル。「冠婚葬祭入門」塩月弥生子(光文社)「誰のために愛するか」曽野綾子(青春出版社)「創価学会を斬る」藤原弘達(日新報道)

GIジョー(タカラ)しろうさぎ紙せっけん(三鳩化学)象印電子ジャー(象印マホービン) 歩行者天国(銀座・新宿)「あしたのジョー」の力石徹の「告別式」男どアホウ甲子園(少年サンデー)魔法のマコちゃん(東映魔女っ子シリーズ第3作)



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               愛の奇跡








綿菓子機「ママスイート」(アサヒ玩具)


縁日の屋台などでおなじみの「綿あめ」を、家庭でも作れてしまうという夢のマシン。


スプーン一杯のザラメ砂糖を「ターンホッパー」と呼ばれる回転式の漏斗に入れて、

ボタンを押すと、あ〜ら不思議、洗面器状の器の中に綿あめがどんどん出来てくる。

それを割り箸などでからめとれば、たちまち屋台のものと同じ綿あめが完成。

これさえあれば、毎日家で縁日気分が味わえる?













都電


1903年(明治36年)8月22日、品川−新橋間の都電(路面電車)が開通。


運転手になるには、小学校を出て3か月の教習を受ける必要があった。

教習を終えると一人で運転し、勤務は朝と夜の二交代制だった。


道路事情がよくなかったので、戦後は台風でマンホールから水が噴き上げ、
通行不能になることもあった。





スピードは40キロ以下で遅く、チンチンと鐘を鳴らして走るので、
チンチン電車などと呼ばれた。

昭和30年代は最盛期で、営業キロ約213km、一日約175万人が利用する
日本最大の交通機関となった。


だがその後、都営地下鉄や営団地下鉄の発達によって採算性が悪化、
昭和40年代には、次々と廃止されてしまった。














あしたのジョー


少年院出の矢吹丈がボクシングに魅せられ、宿敵の力石徹と死闘を繰り広げるという

大人も興奮するちばてつやの漫画のアニメ化。


丈との試合で命を落とした力石の葬儀が、1970年3月24日、護国寺にある講談社講堂

で執り行われ、架空のヒーローの葬儀にもかかわらず多数のファンが参列した。


葬儀には、原作者の梶原一騎とちばてつやも参列、葬儀の模様は当時の新聞や

ニュースにも取り上げられるなど社会現象となった。












金メダルへのターン!


弥生学園水泳部の鮎子(梅田智子)は、ボート転覆事故を起こし水恐怖症になってしまう。

その時自分を救ってくれた青年・進介(水谷邦久)の指導により、彼女は恐怖症を克服。


再び水泳に挑戦した鮎子は、ミュンヘン五輪を目指しトレーニングに励むのだった。



スポ根ブーム真っ只中の1970年、本作は「サインはV」に次ぐ少女向け人気ドラマだった。





この時期のスポ根ドラマのパターンは同工異曲で、主人公が血と汗にじむ特訓の末に、

超人的な必殺技を編み出し、強力なライバルを倒すというもの。


「サインはV」では、主人公の岡田可愛と范文雀が鉛シューズを履き、ジャンプ力をつけて

編み出した「魔のX攻撃」や「稲妻落としサーブ」など超人的な技が続出した。


本作「金メダルへのターン!」では、主人公の速水鮎子が聖園泉(森田敏子)ら、強力な

ライバルたちとの切磋琢磨の争いが展開される。


ミュンヘン五輪の切符を掛けた戦いで鮎子は、水泳200M自由形決勝にて、プールの壁を

蹴って空中に飛び出し5メートル先まで一気に飛んで行く「飛び魚ターン」を開発。


飛び魚ターンは、空中を飛んで全ての選手を追い越すというウルトラ必殺技であった。


鮎子に差を付けられたライバルの聖園泉は、打倒「飛び魚ターン」を目指し、隣のコースに

渦を起こして「鳴門の渦潮」を発生させ、両脇の選手を妨害するという「渦巻きターン」を

編み出し、鮎子を再び水の恐怖に落とし入れるのだった。


鮎子を演じた東宝の梅田智子は、中学、高校時代に水泳部で活躍。

本作では吹き替えなしで演じており、その演技力が評価されている。












細うで繁盛記


大阪の料亭の娘に生まれた加代(新珠三千代)は、店を盛り立てることを夢見る。

だが、終戦後に店は没落してしまう。


やがて加代は、伊豆・熱川の老舗旅館「山水館」の正吾(滝田裕介)の元に嫁ぐ。


山水館を近代的な旅館にしようとする加代だったが、伝統的な商売にこだわる
夫の正吾や義妹の正子(冨士眞奈美)に邪魔をされる。


だが、加代の様々なアイデアと丁寧な心遣いで、徐々に客が増え始めていった。





終戦直後、熱川の山水館に嫁いできた関口加代が、身内のいじめに負けずに頑張り
店を大手旅館チェーンにまで育て上げる根性物語。


脇役が揃っていて、大村崑、園佳也子、高島忠夫、大友柳太朗、浪花千栄子らだったが、
なんといっても強烈なのは、牛乳瓶の底の眼鏡をかけた冨士眞奈美扮する正子だった。


「ちょっくら! 加代、おみゃーの出る幕じゃあ にゃーズラよ!」などと、
加代に対するイビリが真に迫っていて、視聴者に強烈な印象を与えた。


本作は、上方ど根性ものを得意とし、脚本6000本を残した花登筐の最高傑作とされている。


当時の日本は、まさに高度経済成長の真っ只中。

努力は報われるというサクセスストーリーは、商店主やサラリーマン世代の絶大な
支持を得て、最高視聴率38.0%を記録し、全国的な大ヒットドラマとなった。












アテンションプリーズ


美咲洋子(紀比呂子)は、佐賀の山奥で父一人、娘一人の二人暮らしだった。


亡くなった登山家の兄に、山頂から見る雲海の美しさを聞かされていた彼女は、
父の反対を押し切って、雲海を見るためにスチュワーデスになろうと決心する。


上京して、スチュワーデス訓練所の試験には何とか合格したものの、教官の元で
行われる訓練は厳しく、洋子にとって試練の連続だった。


断トツの劣等生で、英語が特に苦手な彼女だが、寮のおばさんに励まされながら
持ち前の明るさとファイトで、スチュワーデス目指して訓練に励むのだった。





地方出身の落ちこぼれのヒロインがスチュワーデス試験に合格し、厳しい訓練を経て、
やがて国際線のスチュワーデスに成長するまでを描いた物語。


スチュワーデス物語(1983年)にも繋がる「職業訓練根性ドラマ」の元祖とも言える作品である。

本作が放映された1970年は、新鋭ジャンボ機(ボーイング747)が導入され、海外旅行ブームに
火が付き始めた時期だった。


日本航空は、会社のPRとスチュワーデスの知名度アップ、そして海外旅行客の増加を狙い、
ドラマの制作に全面協力。森英恵デザインの濃紺の制服人気も相まって、ドラマは大ヒット。

放映当時には「日航スチュワーデス」の求人人気が高騰するなど、本作は社会現象にまでなった。


当時は、高度経済成長の真っ只中だったが、女性はまだ、希望の職種になかなか就けなかった時代。

ドラマは、手の届かない夢の職業に思いを馳せる、そんな時代背景を投影していたのである。










おくさまは18歳


志村飛鳥(岡崎友紀)は、高校三年生の18歳。

病床にある祖母に花嫁姿を見せるために婚約者・高木哲也(石立鉄男)と田舎で結婚。


ところが飛鳥は、哲也が教師をしている北辰学園に転校する事になってしまう。

学園長(森川信)が出した条件は「二人の結婚が学校に知れたら、哲也が学校を辞め、
飛鳥も退学する事」だった。




女子生徒にモテモテの哲也、そして飛鳥も男子生徒の憧れの的であったが、そんな二人は
結婚している事をひたすら隠し通すのだった。

そんなある日、隣の世話好きのおばさんは、二人が兄妹と思い、哲也に縁談を持ち込むのだが…。




1969年週刊マーガレット(集英社)に連載された本村三四子の同名漫画のドラマ化。


同じ高校の教師と三年生の女子生徒が結婚し、そのことは学園長命令によって極秘。
昼間は先生と生徒、夜は新婚さんという危なっかしい関係が引き起こす騒動を描くコメディ。


夫兼教師の哲也は、女子の人気者で、新妻兼女子生徒の飛鳥も男子にチヤホヤされている。

だからヤキモキが絶えず、そんな二人の感情むき出しの掛け合いが見どころとなっている。


また、森川信のとぼけた学園長、冨士眞奈美の執念深いオールドミス教師など、個性豊かな
脇役陣がドラマの面白さを一層引き立てていた。


ラブコメの原点とされる作品で、放送が開始されると爆発的人気を得て、平均視聴率25%、
最高視聴率33.1%を記録。このため、当初半年の予定が一年間(53話)に延長された。










     



だいこんの花


永山忠臣(森繁久彌)は、巡洋艦「日高」の元艦長であり、現在は隠居の身である。

妻を亡くし、息子・誠(竹脇無我)と家事手伝いのトミ子(川口晶)と暮らしている。

息子の誠は真面目な会社員、トミ子はあっけらかんとした男勝りな性格だった。


ある日、年頃の誠を心配して忠臣の妹・咲代(ミヤコ蝶々)が見合い話を持ってきた。

見合いの相手は、忠臣の戦友である櫛田(宇佐美淳也)の娘・冬子(江見早苗)だった。


見合いの当日、誠と和服姿の冬子は、緊張しながらもいい雰囲気で会話が弾んだ。

そこへ忠臣が遅れてやってきてテーブルについた。

戦争の話題が大好きな忠臣は、櫛田と戦時中の話しをはじめる。

だが、ついつい熱が高まった二人は激しい口論となり、見合いは壊れてしまった。





元巡洋艦長の父と適齢期の一人息子との世代断絶と心の交流を描いた作品。


昔の事が忘れられなくて、すぐに怒鳴ったり、威張ったりする父親は、都合が悪くなると
かつての部下(大坂志郎)が経営している小料理屋に逃げ込んでしまう。


しかし父親にとっては、自分の心の中に生き続けている亡き妻(加藤治子)が理想の
女性で、息子にもそういう嫁を迎えてやりたいと願っている。


見合いが壊れたあと、忠臣は誠とふたりで風呂へ入った。

息子の誠は父の背中を洗ってやろうと思い声をかける。


忠臣は息子に背中を流してもらいながら、だいこんの花について語り始める。

静かに咲いては散っていくだいこんの花は、どこか妻の繁子に似ていた。

「結婚するならだいこんの花のような女性を」忠臣は誠にそう語るのだった。


本作は、向田邦子の原作によるドラマで、好評につきシリーズ化された。

息子の竹脇無我は、シリーズが代わるごとに独身に戻り、結婚相手も、川口晶、
関根恵子、いしだあゆみと代わっている。









     



ありがとう


古山新(水前寺清子)は、阿佐ヶ谷にある「十(つなし)病院」に勤務する新米看護婦である。

同じ病院で、付き添い婦として働く母親・友(山岡久乃)と、母一人娘一人で暮らしている。


この母親は、仕事への責任感が強く、患者さんには優しいが、自分の娘には何かと厳しい。

新からは鬼のお友と呼ばれている。


新には、恋人がいる。同じ病院の小児科医・虎之助(石坂浩二)だ。

この虎之助は、看護婦たちからモテモテなのだが、本命は新であり、他の看護婦に対しては

上手にかわしているという感じだ。


だが、新が虎之助と交際していることは、母親には内緒というか、なかなか言い出せないのだった。





新米看護婦の娘とその母親を中心に、東京下町の人情の機微を描いたホームドラマ。


主人公の看護婦に、ドラマ初出演の演歌歌手・水前寺清子、その恋人役に、

スマートな二枚目の石坂浩二という一見ミスマッチな組み合わせだった。


だが、ごく普通の「隣のお姉さん」といった水前寺と、当時は雲の上の存在だった

大スター石坂との恋物語は、若い女性たちのロマンス願望を大いにかきたてたようだ。


また、看護婦の同僚には、沢田雅美、小鹿ミキらで、これらのメンバーのからみや

やりとりが、視聴者の好評を博した。


好評につき、水前寺主演の形では三シリーズが制作された。第一シリーズは婦人警官編、

第二シリーズは看護婦編、第三シリーズは魚屋編だ。


当時、婦人警官はあまりよく知られていなかったが、この婦人警官編で人気が出て

応募者が激増し、警視庁から、番組が表彰されるというおまけもついた。


物語の内容や舞台設定はシリーズごとに変更しているが、水前寺清子と山岡久乃が母娘で、

水前寺の相手役が石坂浩二であることは変わらない。


第一シリーズの視聴率は20%前後だったが、その後はうなぎ上りで上昇し、

第二シリーズでは、最高視聴率56.3%という「お化け番組」となった。
















クイズタイムショック


一分間に12問のクイズが出題。

一問あたり、問題読み上げを含めわずか5秒。

挑戦者は時間に追われながら答えていくという
メンタルが重視されるクイズ番組。

初代司会者の田宮二郎が言うように、まさに
「現代は時間との戦い」なのだ。

一人がけの解答席の周りには60個の秒針を模した緑のランプ
が配され、挑戦が始まると1秒ごとにランプが消えていく。



その秒針の音が挑戦者の焦りを生む。

パーフェクトを達成すると100万円の賞金を獲得。

つまりわずか一分間で100万円を稼げるかもしれない
夢のような番組だった。

しかし、挑戦者が自分の知識を総動員して問題に答えていくさなか、
「今、何問目?」といった意地悪な問題が彼らの「夢」を阻んだ。











時間ですよ


東京・五反田にある「松の湯」は、開業して50年になる銭湯である。


切り盛りするのは、女将の松野まつ(森光子)と夫の祥造(船越英二)で、
一人息子の一郎(松山英太郎)は、銭湯を継ぐのを嫌って会社勤めをしている。


従業員は3人。大学浪人3年目の健ちゃん(堺正章)、亭主に逃げられたバツイチの
浜さん(悠木千帆)、そして集団就職で上京した17歳の市子(川口晶)だ。


みんなそれぞれ、生活は苦しいがそれなりに幸せだった。




今日は、息子の一郎が新婚旅行から帰ってくる日だ。

嫁の芙美(大空眞弓)は「番台に上がらない」という条件で結婚したという。

まつは、息子夫婦が銭湯という商売を嫌っていることを残念に思うのだった。



下町の銭湯「松の湯」を舞台にしたドタバタ・ホームコメディ。
各家庭に内風呂が増え、銭湯の客が徐々に減っていった時代の、泣き笑いありの物語である。


話の合間合間に当時流行のギャグ台詞をふんだんに盛り込み、ドラマの中にバラエティ要素を
取り込んだチャレンジ意欲旺盛のこの番組は、常に30%の視聴率をキープした。

また、毎回、女湯のヌードシーンが映るのもお約束だった。


第2シリーズからは「隣のマリちゃん」天地真理が出演、第3シリーズでは「お手伝いのミヨちゃん」
浅田美代子が公募で選ばれ、劇中で歌った「赤い風船」も大ヒットした。













二人の縁


木庭秀豊(伊志井寛)は、池に投身しようとする澄子(吉永小百合)を救い、家に引き取った。

不幸な影を宿す澄子を気に入った秀豊は、誰にも入室させないアトリエの掃除までさせる。


だが、嫁いだ秀豊の娘・辰子(中原早苗)や、息子の連介(波多野憲)にとっては面白くない。


まさかと思うが、二人の間に子供が出来て、財産を横取りされたら、と案じた辰子と連介は、

澄子を、雑誌記者の三園(長谷川哲夫)と結婚させることにした。

秀豊は、心の寂しさを抑えて、やむなく同意するのだった。




1969年「小説新潮」に掲載された芥川賞作家・芝木好子の同名短編小説のドラマ化。


妻に裏切られ、女性不信に陥った68歳の老画家と、男に裏切られ、傷心の22歳の女。

そんな二人の魂が、静かに寄り添う姿を叙情的に描いている。


不思議な縁で出会ったこの二人の物語は、昔の民話のような雰囲気を感じさせる。

民話では、非現実なことが当たり前に起こり、そこにファンタジーが生まれる。


過去のことは一切語ろうとしない澄子は、まるで異界からやって来た存在のようだ。

人に幸運を与える異界の住人よろしく、老画家に生き甲斐というご利益をもたらしている。

まさに本作は、澄子と名乗る異界の乙女をヒロインとしたファンタジーの傑作だ。













あしたはまっ白


国際線スチュワーデスの茜(酒井和歌子)は、搭乗を終えた直後、家からの急な知らせを受ける。

母が亡くなったというのだ。

ひとりでクリーニング店を切り盛りしていた母の葬式が終わると、兄弟は今後の事を話し合う。


店には新しい機械を入れたばかりで、その借金で店をたたむわけにはいかなかった。

長男(山本学)長女(中原ひとみ)らは、いずれも個々の事情から家業をつぐのに背を向ける。

そこで三女の茜は一大決心、スチュワーデスを辞めて店を継ぐことにした。





母の死をきっかけに、スチュワーデスから、突然クリーニング店の女主人になったヒロインが、
周囲の人々に励まされながら奮闘する姿を描く。


茜には信太郎(高橋長英)というエリートの恋人がいたが、婚約もしばらくおあずけ。
最後のフライトでは、小さな貿易会社を経営している亜紀夫(新克利)と知り合う。

茜の店はこうして開業したが、客からの苦情もきたりして、仕事はなかなかうまくいかない。
信太郎と会う時間もなくなり、茜は落ち込んでゆく。


そんな時、裏の家が火事になった。客から預かった大切な洗濯物を燃やすまいと、
茜は火の中に飛び込む。それを助けたのは、茜に好意を持つ亜紀夫だった。

恋人がいながら、茜は亜紀夫にひかれる気持ちを止められなくなっていく。



酒井和歌子はこの当時、 68年東宝「めぐりあい」の初主演で注目され、続いて「若大将シリーズ」に
ヒロインとしてレギュラー出演し、青春スターとして着実にキャリアを重ねていた時期だった。

本作は、クリーニング店の女主人という生活感あふれる役柄で、対照的な二人の男性の間で揺れ動く
女心を細やかに演じるなど、従来の青春ドラマとは一味違った一面を披露している。












柔道一直線


「足でピアノを弾いたドラマ」として伝説となっているのが、この柔道一直線である。


1970年の第54話で、近藤正臣演じる柔道の名手・結城真吾が、ピアノの鍵盤の上に立って
「ねこふんじゃった」を足の指先で華麗に演奏する場面が登場する。

キザ男の美学満載のシーンだが、番組最大のマジカルミステリーとして語り継がれている。


番組自体は、梶原一騎原作のスポーツ根性もので、特撮を取り入れたドラマである。

高校柔道部員・一条直也(桜木健一)と元柔道家の車周作(高松英郎)との波乱万丈の師弟関係が
荒唐無稽な必殺技とともに描かれる。




完全無接触で投げる「真空投げ」や、投げられたら体を海老反りにしてブーメランの要領で返ってくる
「海老車」という人間には不可能な技など、次々と衝撃的な必殺技が繰り出される。


極めつけは、鬼車こと車周作の必殺技「地獄車」だ。

相手の力を利用する形で倒れこみ、そのまま思いきり回転しながら、相手を何度も地面に叩き付けて
最悪の場合死に至らしめるという、文字通り地獄行きの技である。


かつて周作は、この技で対戦相手を殺してしまい、柔道界を追放された。
その後、直也と運命的な出会いをし、直也はこの技に魅入られて周作の弟子になった。


まさに必殺技のオンパレード、SFのようなスポ根ドラマだった。











     




大江戸捜査網


遊び人の珊次郎(杉良太郎)は、元盗賊だったが、今では足を洗い、お上のために

隠密同心として働いている。同心の仲間内からは「十文字小弥太」と呼ばれている。


ある時、珊次郎のもとに結び文が届く。それは隠密同心に向けた集合の合図だった。

早速、相棒の浪人、井坂十蔵(瑳川哲朗)と共に、集合場所の料亭に向かう。


料亭で彼らを待っていたのは、隠密同心の総元締め・内藤勘解由(中村竹弥)だった。

聞けば昨日、江戸城の御金蔵が破られ、財宝が奪われたという。


隠密同心たちへの指令は、御金蔵破りをした輩と、その関係者を探ることであった。






十一代将軍、徳川家斉の時代を背景に、秘密任務につく隠密同心の活躍を描く痛快娯楽時代劇。


身分は同心でも、普段は町人や芸者、浪人などに身をやつして生活しており、命令伝達は、

結び文などで極秘に行われる。

いったん密命を受ければ、身を挺して江戸の街に巣くう悪を見つけ、退治していく。


最初期の主人公は、十文字小弥太(杉良太郎)、131話(1974年)からは、伝法寺隼人

(里見浩太朗)、第410話(1979年)からは、左文字右京(松方弘樹)となっている。


なお、第105話(1973年9月22日)からは、クライマックス・シーンで「死して屍拾う者なし」

というナレーションが流れるようになった。


隠密が主人公のストーリーのため、ハードボイルドな雰囲気も当然あるのだが、それよりも

人気が集中したのは、華やかなコスプレであった。


悪の本拠地に乗り込む時の彼らは、歌舞伎よろしく衣装の早変わりさえしてのける。

そして、チーム内の女性陣は、芸者姿などであでやかにお色気も担当。

このツボを押さえた作りが本作の魅力であった。











全日本歌謡選手権


10週勝ち抜きでチャンピオンを決める実力勝負のオーディション番組。

アマや新人だけでなく、この番組に再起をかけるプロ歌手も多かった。

下積みの長かった五木ひろしや八代亜紀が世に出たのもこの番組から。


全日本歌謡選手権(1970年1月5日〜1976年12月25日)日本テレビ

(司会)長沢純 (審査員)淡谷のり子、船村徹、平尾昌晃、鈴木淳、山口洋子

(主な10週勝ち抜き者)五木ひろし、八代亜紀、天童よしみ、中条きよし、山本譲二

















北条政子


伊豆の豪族・北条時政の娘・政子(佐久間良子)は、流人・源頼朝(杉浦直樹)からの文を受け取る。

清和源氏の嫡男・頼朝は、平治の乱で平清盛に敗れ、島流しとなっていたのだ。


「今宵、三島大社の祭りに、ぜひお目にかかりたい」

年に一度の祭りの夜、男女は、自由な一夜を許されている。

政子は、政敵の御曹司からの誘いに戸惑いつつ、頼朝の家来の案内で館を訪ねた。

その夜、21歳の政子は、頼朝と結ばれる。が、父・時政に知られて、怒りを買ってしまう。



歴史を動かした女・北条政子が頼朝と出会い、夫婦生活、そして頼朝の死までの前半生を描く。


北条政子は鎌倉幕府を開いた源頼朝の妻で、尼将軍と呼ばれた女丈夫だが、彼女には
二つの顔があった。




ひとつは頼朝との初恋にはじまり、結婚、出産、そして夫の浮気に対して燃やす
激しい嫉妬の炎…と、ごく平凡な女の顔。


もうひとつは息子頼家の独裁を排して、13人の合議制を敷いたり、大演説を振るって
承久の変を乗り切る彼女にみられる政治家の顔。


ドラマはそうした政子の前半生に焦点をあて、伊豆の片田舎に生まれた一女性が、
渦まく時代の波の中で、いかに生きたかという「女の姿」を浮き彫りにしていく。


北条政子を演じた佐久間良子は、この年の4月、平幹二朗と結婚。ますます成熟した美しさ
をみせる佐久間の、結婚後初仕事でみせる体当たりの政子像が大きなみものとなっている。


本作は、主演の佐久間、杉浦直樹をはじめ、三島雅夫、岩崎加根子、大友柳太朗など芸達者な
面々の重厚な演技が伯仲して、見ごたえ十分の歴史絵巻となった。
















遠山の金さん捕物帳


遠山の金さんこと入れ墨判官・遠山金四郎が活躍する痛快娯楽捕物時代劇。

取調べにシラを切りとおす悪党どもに、がばっと片肌脱いで啖呵を切る。


「てめえらの悪事はこの桜吹雪がお見通しでい!」歯切れのよい決め科白が

評判となり、また最後の「これにて一件落着」は流行語になった。


お白洲のシーンに登場する悪人役は、代官、ヤクザ、商人たちで、それらを

現代に置き換えると、政治家、反社会勢力、悪徳企業といった面々である。


こういった権力や暴力を笠に着た悪党どもに、遠山の金さんの名捌きが炸裂。

視聴者は、スカッと晴れ晴れした気分になり、また次も見たくなるわけである。






この時期の時代劇は、身分の高い幕府の人物が、市井に現れて、庶民の窮状を救い、

悪を懲らしめるというパターンが、多数現れて定着した。


こうした力も地位もある主人公が、最後には勝つという図式が、やはり日本人の

心にマッチするのだろうか。


長寿番組の「水戸黄門」をはじめ「暴れん坊将軍」など、シリーズ化されて

続いていくものが多いようだ。











       



大岡越前


伊勢の町奉行・大岡忠相は、ある日、禁漁区で密漁をしていた武士を召し捕った。

その武士は、身分の高い紀伊家の若殿だったが、忠相は、罪を咎め、厳しく叱責する。


その後、その若殿は八代将軍となり、忠相のもとに奉行解任と江戸出府の命がとどく。

これは容易ならぬ事になった、と思った忠相は、死を覚悟して江戸へ旅立った。


しかし、予想に反して、忠相は、将軍吉宗から南町奉行に任命されたのだ。

当時、江戸の治安は乱れに乱れていた。


忠相の奉行抜擢は、法の前に正義を貫く、彼の勇気と叡智に期待しての判断であった。

ここに、やがて江戸庶民の味方として活躍する、大岡越前守忠相が誕生したのだった。





将軍吉宗の時代、江戸の南町奉行大岡忠相を主人公にした勧善懲悪の時代劇。


大岡忠相は実在の人物で、伊勢の国(三重県)の奉行から、将軍吉宗にスカウトされ、

吉宗を支える江戸南町奉行として活躍した。


もともと「大岡裁き」と呼ばれる数々の伝説が「大岡政談」という形でまとめられて、

後世へ語り継がれており、遠山の金さんと並んで、名奉行の代名詞的な存在だった。


遠山の金さんは、江戸の街中にも足を延ばした遊び人というキャラクターだが、

大岡忠相は、謹厳実直、品行方正なエリートといった雰囲気だ。


その大岡忠相を、まさに折り目正しくクリーンなイメージの加藤剛が演じたことで、

お茶の間に絶大な人気を得たのは当然と言える。

また、脇を固める榊原伊織役の竹脇無我や、将軍吉宗役の山口崇も適役だった。


とりわけ、忠相の父親役で頑固おやじぶりを発揮した片岡千恵蔵の味のある演技は、

ひょうひょうとした風情の中に、人生の年輪を感じさせるものがあった。

本作はシリーズ化され、約30年間、全402話が制作されるという長寿番組となった。













宮本武蔵


一旗あげようと関ヶ原の合戦に、西軍として参加した武蔵(高橋幸治)

だが西軍は負けてしまい、徳川方に捕われるが沢庵和尚(松村達雄)に救われる。

武蔵の身柄を預かった沢庵は、まだ反抗心を失わない彼を千年杉の枝に吊し上げる。


殺せと怒鳴る武蔵に、沢庵は「強いだけが武士ではない、恐怖を知るのが

真の人間だ」とさとすが、武蔵には通じない。


しかし明日、首をはねてやると沢庵から宣告されると、さすがの武蔵も

急に恐ろしくなり、助けてくれと叫ぶが、沢庵はつめたく突き放す。




なわを斬って、武蔵を助けたのは、幼なじみのお通(梓英子)だった。

助けを求める武蔵の声に、お通はあわれみ以上のものを感じたのであった。




1935年(昭和10年)朝日新聞に連載された吉川英治の同名小説のドラマ化。


根強い人気の原作だけに、これまで映画やドラマで、様々な役者が武蔵を演じた。

だが吉川英治氏の未亡人から「原作の精神が生かされることが少なく失望している」
との指摘があった。



これを受けて「原作に忠実に、吉川武蔵の決定版を目指す」という方針のもとに
制作されたのが、NET版(後のテレビ朝日)の本作である。


序盤で登場する武蔵は、赤茶けた髪を荒縄でくくり、麻袋のような荒い布目の
着物に、泥だらけの袴、といった浪人スタイル。


そんな泥臭く野性的だった武蔵が、禅僧・沢庵の教導により、一人の人間として
知性に目覚めていく姿が重点的に描かれている。


やがて武蔵は、剣の道に生きる志を立て、名乗りを宮本武蔵と改め、剣禅一如を
目指して、武者修行の旅に向かう。


主演の高橋幸治が、野獣のように暴れまくる武蔵(たけぞう)と、修業を積み、
見違えるような人物となった宮本武蔵とを、見事に演じ分けている。


また松村達雄が、若き日の武蔵に人間の道を説き、学問をすすめる沢庵和尚を
独特の味わいで好演している。












 



むかしの歌


明治初期の大阪船場。迴船問屋の娘・澪(佐久間良子)は、油問屋の息子・珊次(平幹二朗)の許嫁だった。

二人は、互いに好きあっている仲なのに、しょっちゅう口喧嘩が絶えない。


そんなある日、澪は病気のお篠(和泉雅子)という娘を看病したことから、二人は仲良くなる。

やがて、お篠の母親・おそよ(丹阿弥谷津子)が澪の生みの母であることが判明する。


だが西南戦争に伴う家の没落で珊次との縁談も破談、お澪は芸者に身を落とすことになってしまう。



大店の迴船問屋が西南戦争の影響で倒産寸前、娘は店の立て直しのため、花街で稼ごうとするが…。


主演の佐久間良子と平幹二朗は、この年の2月に婚約を発表。すでにベテラン映画女優だった佐久間と、
日本を代表する舞台俳優・平との大物俳優同士のカップルということで大きな話題となった。


本作は、婚約直後の初共演となった。大阪・船問屋の娘お澪と油問屋の珊次は、親が決めた許婚同士。

勝気で我儘ないとはん・お澪(佐久間)の白い頬は上気して、心なしか目もうるんでいる。若旦那の
珊次(平)のぼんちぶりも絶品で、幸せ絶頂の二人の演技のテンションは高揚気味のようだ。















樅ノ木は残った


仙台藩の三代藩主・綱宗(尾上菊之助)は、放蕩三昧のどら息子だった。

叔父の伊達兵部(佐藤慶)は、しばしば彼に諌言したが道楽が止まない。


困り果てた兵部は、幕府の大老・酒井忠清(北大路欣也)に提訴した。

万治三年(1660年)幕府は、21歳の綱宗に強制的隠居を命じた。


四代藩主には、綱宗の長男・亀千代(二歳)が就任した。






藩主が幼少のため、兵部が後見人となり、家老・原田甲斐(平幹二朗)

と共に、藩の舵取りを担うことにした。


しかしその後、実権を握った兵部と原田甲斐による専制が行われるようになり、

やがて死罪や追放処分が乱発するという恐怖政治の様相を呈し始める。


ここに及んで、仙台藩の重臣・伊達安芸(森雅之)が不満を爆発、幕府に酷政を訴えた。


寛文11年(1671年)この内紛の審理のため、大老・酒井忠清の屋敷に関係者が集められた。


このとき、不利な決着を受けた原田甲斐が逆上し、やにわに脇差を抜いて、伊達安芸の

首筋に切りつけ、安芸は即死した。このあと、原田も安芸の側近に斬られた。


幕府の大老宅での刃傷沙汰は大問題となり、誰もが仙台藩の行く末を案じた。


幕府の裁定により、原田甲斐はお家断絶、また伊達兵部は、監督不行き届きを咎められ

所領没収のうえ、土佐へと流罪となった。


とはいえ、事件はあくまで私闘であり、幼少の藩主は関わりなしとして咎められず、

仙台藩62万石は存続となった。




1954年「日本経済新聞」に連載された山本周五郎の同名時代小説のドラマ化。


江戸時代初期、仙台藩で発生したお家騒動の当事者である原田甲斐の人間像にスポットを当て、

これまで極悪非道の奸臣とされてきた彼の、イメージ刷新を意図して描かれた作品である。


原田こそが実は、幕府の外様大名取り潰し政策から仙台藩を救ったのだという設定の物語で、

原作者は、原田甲斐が治めた宮城県白石地区では、原田が立派な治世を行ったとして、

今でも尊敬されていることを知り、この物語を書いたといわれる。


ご当地では、原田甲斐の居城であった船岡城址と周辺の改修が行われたり、土産として

「樅ノ木漬け」なとが登場したりで、一躍観光ブームが巻き起こった。


また本作は、原田甲斐を演じた平幹二朗の相手役として、コマキストにサユリストと、

当時男性ファンに絶大な人気のあった栗原小巻と吉永小百合の競演が話題になった。