5月25日 タイムカプセル(2)昭和31年(1956年) タイム・カプセル |
この年、TVドラマ、スーパーマンが大ヒットした。「鳥だ! 飛行機だ! いや、スーパーマンだ!」
胸には大きくSのマーク。日本でも知らぬ者なしのスーパー・ヒーローとなった。
(映画)第29回アカデミー賞「八十日間世界一周」(デヴィッド・ニーヴン、カンティンフラス)
「王様と私」「愛情物語」「居酒屋」「ピクニック」「白鯨」「トロイのヘレン」
日活「太陽の季節」(長門裕之、南田洋子、石原裕次郎)日活「狂った果実」(石原裕次郎、津川雅彦、北原三枝、岡田真澄)日活「ビルマの竪琴」(三国連太郎、安井昌二、沢村国太郎)日活「風船」(森雅之、芦川いづみ、三橋達也、北原三枝、新珠三千代、左幸子)「洲崎パラダイス赤信号」(新珠三千代、三橋達也、轟夕起子、芦川いづみ)日活「わが町」(辰巳柳太郎、南田洋子、大坂志郎、三橋達也)
東映「赤穂浪士 天の巻 地の巻」(市川右太衛門、片岡千恵蔵、東千代之介、中村錦之助、月形龍之介、河部五郎)東映「剣豪二刀流」(片岡千恵蔵、東千代之介、長谷川裕見子、加東大介)東映「ふり袖太平記」(美空ひばり、大川橋蔵)東映「ふり袖捕物帖 若衆変化」(美空ひばり、大川橋蔵)松竹「子供の眼」(高峰三枝子、高峰秀子)松竹「早春」(淡島千景、池部良、岸恵子、杉村春子)松竹「晴れた日に」(有馬稲子、佐田啓二、高橋貞二、小山明子、笠智衆)松竹「忘れえぬ慕情」(岸恵子、ジャン・マレー、ダニエル・ダリュー、野添ひとみ、山村聡)
大映「赤線地帯」(京マチ子、若尾文子)大映「夜の河」(山本富士子、上原謙、東野英治郎)大映「日本橋」(淡島千景、山本富士子、若尾文子、品川隆二)東宝「猫と庄造と二人のをんな」(森繁久彌、山田五十鈴、香川京子、浪花千栄子)東宝「流れる」(田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子、栗島すみ子)東宝「驟雨」(佐野周二、原節子、香川京子、小林桂樹)東宝「鬼火」(加東大介、津島恵子)東宝「好人物の夫婦」(池部良、津島恵子、青山京子、滝花久子、中北千枝子)東宝「兄とその妹」(池部良、原節子、司葉子、加東大介、斎藤達雄、小林桂樹)東宝「へそくり社長」(森繁久彌、小林桂樹、三木のり平、八千草薫、司葉子)東宝「ロマンス娘」(江利チエミ、美空ひばり、雪村いづみ)
(音楽)ケ・セラ・セラ(ペギー葉山)ここに幸あり(大津美子)リンゴ村から(三橋美智也)Heartbreak Hotel, Love Me Tender (Elvis Presley) Que Sera,Sera (Doris Day)
(テレビ)NHK「お笑い三人組」(三遊亭小金馬、一龍齋貞鳳、江戸家猫八)NHK「ハイウェイ・パトロール」NHK「チロリン村とくるみの木」(黒柳徹子、里見京子、横山道代)NHKドラマ「どたんば」(三国連太郎、加東大介、西村晃、多々良純、津島恵子)KRT「おトラさん」(柳家金語楼)KRT「鞍馬天狗」(市川高麗蔵、坂東好太郎、沢村国太郎、南風洋子)KRT「スーパーマン」(ジョージ・リーヴス)NTV「悦ちゃん」(松島トモ子、竜崎一郎)NTV「名犬リンチンチン」
(ラジオ)ニッポン放送「少年探偵団」1956年(昭和31年)4月~1957年(昭和32年)12月(ラジオドラマ)
(流行語)一億総白痴化(大宅壮一)三種の神器(電気冷蔵庫、テレビ、電気洗濯機)マネービル、愚連隊、ドライ、デイト、戦中派、もはや戦後ではない(経済白書)
(社会)02/25フルシチョフ、スターリン批判。05/21売春防止法が成立。11/22メルボルン・オリンピック大会開催(~12/06)12/18日本が国連に加盟。12/20鳩山内閣総辞職、石橋内閣成立。
(物故)高村光太郎、溝口健二
(物価)お米5キロ89円。映画館143円。公務員初任給8700円。いこい(20本入)40円
(その他)石原裕次郎、日活「太陽の季節」でデビュー。小林旭、日活「飢える魂」でデビュー。津川雅彦、日活「狂った果実」でデビュー。高倉健、東映「電光空手打ち」でデビュー。北大路欣也、東映「父子鷹」でデビュー。川口浩、大映「裁かれる十代」でデビュー。岸恵子、フランスの映画監督イブ・シャンピと婚約。石原慎太郎「太陽の季節」芥川賞受賞。
02/19「週刊新潮」創刊 定価30円。水俣病。横山光輝「鉄人28号」手塚治虫「鉄腕アトム」(少年)「金閣寺」三島由紀夫。横山隆一の「フクちゃん」が毎日新聞に連載開始。ハトヤホテル(ホテルはハトヤ)ホッピング。ライポンF(ライオン)
「名糖テトラ牛乳」(180ml 10円)いこい(20本入 40円)発売(日本専売公社)慎太郎刈り、アロハ・サングラスが典型的な「太陽族」登場。
テレビの影響力を恐れた邦画5社(松竹、東宝、大映、東映、日活)が、テレビへの劇映画提供を打ち切ると同時に、各社専属俳優のテレビ出演を制限(いわゆる五社協定)。このため、テレビ各局はアメリカ合衆国のテレビ映画を購入へ。
To Love Again(愛情物語)
愛情物語(THE EDDY DUCHIN STORY)1956年(米) 両親の反対を押し切ってピアニストになるべくニューヨークへやって来たエディ(タイロン・パワー) 幸いにも、良家の娘マジョリー(キム・ノヴァク)の助力によってデビューを果たした彼は、型にとらわれない タッチで人々の心を虜にしていった。そして二人は結婚。 ところがマジョリーは、一人息子を生んだ直後に急死し、エディはどん底に突き落とされる。 全米を風靡したピアニスト、エディ・マーチンの半生を描く伝記映画。ピアノを弾くことが楽しくてしょうがない 前途明るい青年には、悩める芸術家の表情はかけらもない。 だが、クリスマス・イブに妻を失ったことで、人生が大きく変わってしまう。波乱に富んだ道を歩む事になる 芸術家の姿が、カーメン・キャバレロの演奏によるエディの名曲の数々を交えて綴られてゆく。 (監督)ジョージ・シドニー(GEORGE SIDNEY) (出演)タイロン・パワー(TYRONE POWER)キム・ノヴァク(KIM NOVAK) |
チロリン村とくるみの木
ピーナッツのピー子、タマネギのトン平たちが住むチロリン村には、野菜族、果物族、
そしてもぐらのモグモグやねずみのタコチューなど小動物たちが暮らしている。
貧しい野菜族とお金持ちの果物族とは仲が悪く、いつも対立を繰り返している。
そんな大人同士のいざこざや、チロリン村を訪れる珍客たちによって巻き起こる騒動を、
子供たちの活躍で解決していくという物語。
ユニークなキャラクターたち、そして黒柳徹子ら個性的な声優陣で子供たちの人気を集めた。
制作はセリフを事前録音し、生で人形操作を当てていた。本作は後に続く「ひょっこりひょうたん島」
や「ネコジャラ市の11人」など人形劇シリーズの原型となった。
悦ちゃん
悦ちゃん(松島トモ子)はお転婆でおませな10歳の女の子。
歌がとても上手で、周りのみんなも目が離せない存在。
早くに母親を亡くして、のんびり屋の父親と二人で暮らしている。
が、そこへ突如、父親の再婚話が持ち上がったから、さあ大変。
持ち前の行動力で東京中を奔走、周囲を巻き込みながら最後は驚きの事件が!
1936年(昭和11年)報知新聞に連載された獅子文六の同名小説のドラマ化。
母と死別した悦ちゃんが、父の再婚に悩みながらも継母を迎え入れるまでの成長を描く。
少女スターで名子役として活躍する松島トモ子が、健気で愛らしい悦ちゃんを熱演。
昔から世間では継母と言うと、白眼視したり同情したりする。
ドラマでは、そんな気分を逆転する悦ちゃんの名セリフが飛び出す。
口さがない友だちから「悦ちゃんは、お母さんがママハハでかわいそう」
と言われて憤慨した悦ちゃん、こう答えて見事に反撃する。
「バカねえあんた達! ママハハというのは、ママとハハとが一緒になったンだから
一番いいお母さんなのよ!」
ハイウェイ・パトロール
ハイウェイ・パトロール隊長・ダン・マシューズのもとへ、
路上の車の中から遺体が発見されたとの通報があった。
被害者は、ゆすりをやっているヴィンス・ガロウという男で
車は、行方不明になっている新聞記者が所有する車だった。
その新聞記者は、汚職を暴露するためにある代議士を追っていた。
マシューズは、ガロウは、その記者から何らかの情報を得たために
殺害されたのではないかと考えた。
カリフォルニア州警察の協力を得て、ハイウェイ警備にあたる機動警察隊の活躍を描いたドラマ。
パトカーやヘリコプターを駆使して犯人を追い詰めるスピード感とスリリングな展開が人気だった。
老練で人間味あふれる機動警察隊のダン・マシューズ隊長の魅力もポイントとなった。
また、ドラマの中で取り上げられた事件は、実話に基づくものが多く、本作の構成は、
翌1957年、日本で公開された「ダイヤル110番」に大きな影響を与えた。
スーパーマン
滅亡の危機に瀕していた惑星クリプトンで生まれたスーパーマンは、惑星が崩壊する直前、
父親の手で地球へ送り出される。
地球へたどり着いた彼は、クラーク・ケントと名付けられ、カンザス州の農家で育てられる。
やがて成長したケントは、新聞社デイリー・プラネットで記者として働きはじめる。
そのかたわら、街で事件が起こると、彼はスーパーマンに変身しては、次々と事件を解決していく。
さまざまな悪と戦うスーパーマンの活躍を描いた物語。
新聞記者である主人公が、事件に遭遇し、電話ボックスでスーパーマンに変身、悪と対決する。
番組では、子供たちにも見てもらおうと、字幕ではなく、アテ師と呼ばれた声優の吹き替えを採用。
当時は生放送のため、間違いがそのままお茶の間へ、ということもあったようだ。
「外国の俳優に対する冒涜だ」として吹き替えを拒否する役者もいたが、視聴者たちは
アテ師たちの吹き替えを大いに楽しんだ。
スーパーマン役の大平透、刑事コロンボ役の小池朝雄など、次々とハマり役が生まれていった。
名犬リンチンチン
1880年代のカリフォルニア、幌馬車隊がインディアンの襲撃に遭い、
両親が殺されて孤児となったラスティ少年と愛犬リンチンチン。
騎兵隊のリップ・マスターズ中尉に救出された彼らは、アパッチ砦に
駐屯する騎兵隊で暮らし始める。
ラスティ少年とシェパード犬のリンチンチンが騎兵隊の一員として
偵察や追跡に活躍する物語。
インディアンと騎兵隊の戦闘場面や山谷を駆けめぐるリンチンチンの
冒険が描かれた。
やがて青年となったラスティは、リンチンチンの働きで、騎兵隊の
伍長として活躍するようになる。
太陽の季節 (日活映画)
高校生の津川竜哉(長門裕之)はボクシングと酒と女と喧嘩に明け暮れる日々を送っていた。
仲間たちと銀座に出た竜哉は英子(南田洋子)と知り合い、二人は逗子にある竜哉の家で結ばれる。
二人はデートを重ねるが、竜哉はだんだん英子のことが煩わしくなり、
兄の道久に英子を五千円で売り飛ばす。
だが英子はすでに竜哉の子供を身ごもっていた。
芥川賞作家、石原慎太郎の同名小説を、古川卓巳が脚色・監督。
本作の後に公開された「狂った果実」とあわせて「太陽族映画」と称された。
原作者の実弟である石原裕次郎のデビュー作としても知られる。
妊娠四ヶ月の英子は、思いあまって中絶の手術をするが、それが失敗して死んでしまう。
英子の死は、竜哉の曖昧な態度によって、中絶の時期が遅れたことが原因だった。
葬式に出かけた竜哉は、祭壇に飾られた英子の写真に、焼香の壺を叩きつけて叫ぶ。
「あんた達には何も判っちゃいないんだ!」
何が判っていないのか、判っているのは竜哉が、いかに身勝手で卑劣な男だという事だけだ。
本作品に描かれた「女性蔑視、人命軽視」の表現は、大きな社会現象を巻き起こしたのである。
どたんば
炭鉱夫の妻「おらのお父うが、うっ死んだって本当かね!」
現場の主任「誰がそんなこと、ばかなこと言っちゃ困るよ」
炭鉱夫の妻「ほれみろ、噓こいて!」
子供「おら、おっ母ァがよろこぶべえと思って…だって、おっ母ァはしょっちゅう
言ってるじゃねえか、お父うが死んだほうが金持ちになるって」
炭鉱夫の妻「バカ! 何こくだ。あっちいってろ!」
テレビ草創期に制作された90分の単発ドラマ。
炭鉱の落盤事故で生き埋めにされた作業員たちとその救出過程を描く。
落盤事故で閉じ込められた炭鉱労働者たちの極限状態での緊迫感とともに、
安否を心配して駆けつける家族の葛藤など生々しい人間ドラマが描かれる。
炭鉱の落盤事故をスタジオのセットだけで生放送した迫真の救出劇として
その後のテレビドラマに多大の影響を与えた。
お笑い三人組
声帯模写の江戸家猫八(パン屋の六さん)、講談の一竜斎貞鳳(サラリーマンの良さん)
そして、落語の三遊亭小金馬(酒屋の金ちゃん)の新進芸人を起用。
下町のあまから横丁を舞台に、歌あり笑いありのコメディをテンポよく披露して人気番組に。
楠トシエ、桜京美、音羽美子の女房トリオのけたたましさも忘れ難い。
NHKの公開バラエティの草分けとなったが、三人の活躍は、その後のお笑い芸人の
テレビタレント化を促すものとなった。
おトラさん
「主婦の友」連載の漫画「おトラさん」を、落語家の柳家金語楼が自ら脚色したコメディ。
おトラさんは、カッポウ着を着た中年の女中で、これは当時の家政婦の標準的なスタイルだった。
金語楼が、ずけずけものを言うが、面倒見のいい古参女中を熱演し、ショートコント風な笑いを誘った。
番組は、アメリカ「ニューズウィーク誌」に、和製メイド(家政婦)ドラマとして紹介され、話題になった。
赤線 (あかせん)
戦後もしばらくの間、売春は公認であった。
GHQにより、いわゆる遊廓などの公娼は廃止されたものの
戦災で多くの人々が困窮していた。
そこでは社会の安定上、売春は必要悪とされていたのである。
1946年(昭和21年)江戸時代以来の遊廓街は、風俗営業法により
「特殊飲食店街」と改称された。
通称「赤線」と呼ばれたこの地域は、売春婦(女給)を置いて
売春をさせる店が集まっていた場所である。
赤線の代表的な地区としては、東京では吉原、玉の井、州崎など。
大阪では飛田新地、松島新地などがよく知られる。
売買春の料金は「ショート」「お遊び」と呼ばれる15分程度のコース
が500円前後、「泊まり」が1000~2000円だった。
当時、喫茶店のコーヒーが50円程度、タバコ(ピース10本入)が40円だった。
これから考えると、現在と比べて相対的に売買春の料金は安かった。
1956年(昭和31年)に売春防止法が成立、翌々年全国の赤線は廃止された。
大映の映画「赤線地帯」(1956年)は、東京の吉原が売春防止法で
滅びる直前の状況を描いた作品である。
吉原に入った女性の多くは、山形、秋田など東北地方を中心とした
貧農の娘たちであった。
売られた彼女たちは、外出が制限され、給与の大部分も前借金の返済に
充てられ、束縛一色の日々を送りながら、客をとり続けていた。
売春防止法で赤線は廃止されたものの、ザル法にすぎず、従来の特殊飲食店は、
表向きは料亭などと称して、今尚存在しているのが実態である。
王様と私(THE KING AND I)1956年(米) 夫を亡くしたアンナ(カー)は、東洋のシャム王国へはるばるやって来た。 国王(ブリンナー)との約束で、王子や王女たちの家庭教師を引き受けたのだ。 だが、男尊女卑の封建的な国王とアンナは、何度も衝突してしまうのだった。 映画の中で登場するシャム王国は、タイのラーマ4世の時代であった。 劇中では、面白い物語にするために、ラーマ4世は、イギリス人家庭教師を 困らせる粗野な王として描かれている。 だが実際のラーマ4世は、仏教を奉じる敬虔な王で、国民に敬愛されている。 映画は大ヒットしたが、不敬罪が存在するタイでは、上映は禁止された。 (監督)ウォルター・ラング(WALTER LANG) (出演)ユル・ブリンナー(YUL BRYNNER)デボラ・カー(DEBORAH KERR) |